黒い羊 ~ロスト・イノセント~

戸影絵麻

文字の大きさ
14 / 32

#8 発現

しおりを挟む
 少年たちの動きは速かった。

 手首をつかまれ、羽交い絞めにされたかと思うと、あっという間に部室の中に引きずりこまれていた。

 煙草の匂いの充満する饐えたような空気を吸いこんで、鈴は激しくむせた。

「誰からやる?」

 鈴を背後から羽交い絞めしたまま、ニキビ面の少年が訊いた。

「そんなん、決まってるだろ?」

 リーダー格のトサカ頭が前に出る。

 もうひとりのイケメンは、壁にもたれてにやにやしているだけだ。

「相変わらず血の気が多いな、マサは」

「知ってるだろ? キョウコと別れたばっかりで、俺、溜まってんだよ」

 トサカ頭の手が伸び、乱暴に鈴のスカートをめくりあげた。

 むっちりした太腿と白い下着が露わになり、少年たちが息を呑む。

「いいじゃんいいじゃん! よおし、サブ、ちゃんと捕まえてろよ!」

「OK! こんなすべた、滅茶苦茶にしてやりな!」

 下卑た笑い声を立てて、サブが腕に力を込めた。

 マサの手が、リボンを引き抜き、鈴のセーラー服のファスナーをひと息に引き下げた。

 胸元が割れ、スポーツブラに包まれた深い胸の谷間が剥き出しになる。

「やめて」

 鈴は狂ったように首を振った。

「いいだろ? どうせ処女じゃないんだし」

 マサの手が胸元に入ってきた。

「いやあっ!」

 ブラの上から乳房をつかまれ、鈴は悲鳴を上げた。

 反射的に蹴りつけようとしたが、サブが後ろから鈴の足に足を絡め、動きを封じられてしまっていた。

 右手で乳房を鷲掴みしたマサの左手が、股間に伸びる。

「毎日パパにやられてんだろ? だったら俺にもさせろや。近親相姦より、ずっと健全だぜ?」

 イケメンとサブが、そろって爆笑する。

「違う・・・」

 鈴の中で、何かがぞろりと動いた。

「そんなんじゃ、ない・・・」

 なぜか意識が遠くなり、代わりにその”何か”が表面に浮かび上がってくる。

 額が、割れた。

 とたんに視界がクリアになった。

 見えないものが、見える。

 たとえば、この少年たちの躰から立ちのぼる情欲のオーラとか・・・。

 額の髪の生え際に、ふたつの突起が生えてきた。

 それは急成長すると、やがて2本の不可視の触手になった。

 射程距離、3メートル。

 3人とも、もう袋のねずみだ。

 鈴は顔を上げ、正面からマサを睨みつけた。

「言いたいことはそれだけか」

 別人のように低い声でそう言った。

「なんだよ、てめえ。急に居直りやがって」

 マサの眉間に縦皺が寄った時である。

 音もなく触手が伸びた。

 1本が直進してマサの心臓を貫通し、もう1本が弧を描いて翻り、背後のサブのうなじから喉を貫いた。

 すぐさま触手を抜いて、壁際のイケメンに振り向ける。

「お、おい、どうなってんだ」

 それが彼の最期の言葉だった。

 巻きついた触手に首を引き抜かれ、血潮を撒き散らして、少年は絶命した。





 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...