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「げげ? なんでわかったの? ひょっとして超能力?」
 唖然とする高田刑事。
「どうして、名前まで・・・。さすが亜美ちゃん、というか、信じられない・・・」
「見えてるんだよ」
 見るに見かねてあたしは横から口を出した。
「あんた、手にメモの切れ端、持ってるだろ? エクボは目ざといから、そういうの、すぐ気づくんだよ」
「あ、やば」
 右手のメモ用紙を見下ろして、高田刑事が青ざめた。
 こいつ、典型的な脳筋らしい。
「てへ、バレたか」
 ポリポリ。
 口でそう言いながら頭を掻く久保。
「相変わらずキミはドジだな」
 頭を抱えているのは、源さんである。
「よりによって彼女たちの目の前に飛び込んでくるとは・・・。だから、最悪のタイミングだと言ったんだ」
「けどさ」
 とある疑問を覚えて、あたしは源さんの嘆きを遮り、久保に声をかけた。
「いっこだけわかんないんだけど・・・。久保はなんでその『大久保重明』とかいうやつが、3月の”女子高生体液ぶっかけ事件”の時の犯人だって、覚えてたのさ? あんなの、ローカルニュースでしかやんなかったじゃん」
 確かあれは、こんな案件だったはず。
 近所を走る私鉄の中で起こった、よくある変態事案。
 うちらと同じ高校の2年生が、通学途中の電車の中で、突然下半身を露出した犯人に精液をかけられたのである。
 久保が不満そうに口を尖らせ、答えた。
「大久保と久保。変態のくせに亜美とよく似た苗字だから、むかついて忘れようにも忘れられなかったんですよ」
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