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 はあ?
 あたしはあんぐりと口を開けた。
 横から見るとマジオニオコゼみたいになるので、本当は無防備に口など開けたくはない。
 でも、心底、呆気に取られてしまったのだから、この際仕方がなかった。
 同居人から入手した、だって?
 精液って、そんなに簡単に手に入るものなのか?
「どうやったんですかね。検尿や検便じゃあるまいし」
 ムスッとした顔で久保が言う。
「なんでも、手伝ってやったお礼にもらったそうだよ」
「ああ、わかりました。オナニーを、ですね。つまり、同居人のオナニーを手伝う代わりに、その時出した精子をもらったと。シコシコピュピュッで一件落着というわけですね」
「そんなにあからさまに言わなくても・・・」
 あまりにあっさり久保が言ったので、源さんが後退した生え際まで真っ赤になった。
 その時である。
「お待たせでえ~す!」
 場違いに明るい声がして、あの脳筋刑事が居間に滑り込んできたのは。
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