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「別にいいよ。なんならボクから話そうか」
 興味なさげに久保が言う。
 一人称がなぜか「亜美」から「ボク」にかわっている。
「ご要望に応じて、写真撮らせてるんです。ボクの躰のパーツの」
「躰のパーツの写真?」
 あたしは目を剥いた。
「ちょっとお、いくらなんでもそれはヤバいんと違う?」
 SNSを使って変質者が未成年の女子に裸の写真を送らせる事案が増えている。
 まさか久保、いくら捜査のためとはいえ、おまえそこまで堕ちたのか。
「でへでへでへ。なんなら今までに撮らせてもらったの、見せようか?」
 助平笑いを顔いっぱいに浮かべながら高田刑事がスマホを差し出した。
 ひと目見て、眉間に縦じわを刻むあたし。
「はあん? 何これ?」
 躰のパーツっていうから、てっきりおっぱいとか太腿かと思ったら、そこに映っていたのは桜色の貝殻である。
「ボクの右足の中指の爪だよ。これできょう小指を撮れば、右足の爪はコンプリートだね」
 画面の桜貝と自分の右手の中指の爪を見比べながら、久保が補足する。
 バカバカしい。
 あたしはため息をついた。
 心配して損した。
 そんなの完成までどんだけかかるんだよ!
 デアゴスティーニじゃあるまいし!
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