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第6部 ヒバナ、センチメンタルブルー!
エピローグ
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「せっかく遊びに来たってのに、いきなり引越しの手伝いかよ」
「しょうがないでしょ、おうちがなくなっちゃったんだから」
廃墟と化したアパートの跡で、ヒバナは玉子と向かい合っていた。
あの惨事からまる一日経った、午後のことである。
アパートのあったあたりから児童公園にかけて、ほとんどの家屋が倒壊し、更地になっている。
まるで70年前の空襲の跡さながらの、ひどく殺伐とした風景だ。
「ちょっとあんたたち、そんなとこでぼけっと突っ立ってないで、
使えるもんないか、探すの手伝いなさいよ!」
瓦礫の中を漁っていた薫の叱責の声が、飛んできた。
肩をすくめるヒバナ。
「あたい、客なんだけどなあ」
玉子が頬をふくらませて、ぼやく。
「ごめんごめん、あとできっと埋め合わせ、するから」
拝むように両手を合わせるヒバナに、
「焼肉食べ放題確定だな」
玉子がきっぱりと宣言した。
きのう、あれからほどなくして仕事から帰って来た薫は、
アパートの残骸をひと目見るなり、
「い、家が・・・!」
とその場に崩れ落ちた。
やがて、すぐ近くに娘が埃まみれで突っ立ているのに気づくと、
「またあんたの仕業? 今度はいったい何をしでかしたの?」
まさか竜に変身して怪物と戦っていたとも言えないので、とりあえずヒバナは半分だけ真実を語って聞かせることにした。
殺人鬼の正体が相馬あおいだったこと。
その事実に気づいたヒバナをあおいが殺そうとしたこと。
あおいが突然巨大化し、アパートを壊したことetcetc・・・。
「ふーん、それで、あれがそのあおいさんのなれの果てだっていうのかい?」
疑わしげに薫が指差したのは、公園の敷地の大半を埋めつくしたドロドロの肉塊である。
アニメやゲームでは、魔物はたいてい倒されたあときれいに消えてしまうものだが、現実はそうはいかなかった。
たとえ魔物といえども、死体はちゃんと残る。
そして、腐るのだ。
現に、この厳しい残暑の中、怪物の死体は早くもすさまじい腐敗臭を放ち始めていた。
公園の周りはパトカーやらコンテナ車やらがものものしく取り囲み、バリケードを張って一般人の出入りを禁じている。そこかしこに宇宙服のような気密服姿の調査員たちが歩いていた。
「しかし何でまた巨大化なんてするのかねえ。近所迷惑にもほどがあるよ」
ぶつぶつ文句を言う母に、ヒバナはせいいっぱいのつくり笑顔で言った。
「でもママ、ちょうど良かったじゃない。この機会に、もう少しグレードアップしたとこに引っ越そうよ。
今度はちゃんと耐震基準をクリアしてる、鉄筋のマンションにさ」
大家さんは親切だし、アパート暮らしに不満があったわけではない。
ただ、年頃の娘であるヒバナとしては、もう少しこぎれいな生活にあこがれていた、というのも確かだった。
「だねえ。今頃木造アパート暮らしもないもんねえ。よし、そうするか。じゃ、私ちょっと物件探してくるから、ヒバナ、あんた、めぼしいもの残ってないか、探しときなさい」
と、すばらしい立ち直りの早さで、さっそうと不動産探しに出かけていったのだった。
が、その後は例の2人組の刑事の事情徴収が待っており、
結局ヒバナが無罪放免されたのは、今朝になってからのことだったのである。
とりあえず、ミシンは無事だった。
更に、スマホと”如意棒”も回収できた。
今のヒバナにとっては、それだけあれば充分だった。
薫が炊飯器とエアコン、冷蔵庫を発掘し、無事だったものを一箇所にまとめていると、
更地の一角に2トントラックが停まり、野球帽をかぶった少女と、相撲取りのような巨漢が降りてきた。
「おばさん、引越し用のトラック、借りてきたよ」
手を振りながら駆けて来ると、ひずみが叫んだ。
「さっすが、ひずみちゃん、気が利くねえ」
薫が手を叩いて喜んだ。
「で、そちらの大柄な方は、ひずみちゃんのお友達?」
近づいてくる革ジャン姿の巨漢のほうを、おそるおそる目顔で示す。
「まあそんなもんです。力仕事用に、来てもらいました」
「岩崎明日香です。よろしく、です」
ブッチャーが深々とお辞儀をして、たどたどしく挨拶した。
「ヒバナさんには、色々と、お世話に、なっています」
「は、はあ・・・」
薫は少し引き気味で、わが娘と刺青革ジャンの巨漢とを見比べている。
そのとき突然、玉子が笑い出した。
「アスカって柄かよその顔で!」
誰もが思ったことだった。
が、何の分別もなしにそれを平気で口にできるのは、この地球広しといえども玉子だけだろう。
「見かけと違って悪かったな」
さほど怒っている風でもなく、玉子を見下ろして、ブッチャーが言う。
「いいってことよ。それよりあんた、玄武だろ? あたい、白虎の玉子、ヨロシクな!」
玉子がブッチャーの太い腕に取りついて、握手のつもりか、勢いよく上下に振った。
「ゲンブとかビャッコって、あんたたちもヒバナのコスプレ仲間なの?」
薫が眉をひそめたとき、背後から明るい声がした。
「おばさん、お掃除の道具、持ってきましたよ。さ、早く新居に行きませんか?
私、ヒバナさんの新しいおうち見るの、すごく楽しみなんです」
緋美子だった。
袖の短い真っ白なTシャツに、紺のショートパンツが均整の取れた体にぴったりフィットしている。
両手に紙袋を提げていて、その片方からモップの柄が突き出していた。
「みんな、ありがとうね。ヒバナ、持つべきものは友って、ホントだねえ」
感涙の涙にむせぶ薫。
ヒバナも同感だった。
みんな、本当に、ありがとう・・・。
荷物と掃除道具をトラックの荷台に積み込むと、ハンドルはブッチャーが握り、ヒバナが真ん中、薫が助手席に座った。
薫が見つけてきた新しいマンションは、大猫観音商店街をはさんだ反対側に位置しており、ここから歩いても10分ほどの距離だから、ひずみと緋美子は徒歩で現地に向かうことになった。
ひずみちゃん、大丈夫かな・・・。
肩を並べて歩き出す2人の後姿を見送りながら、ヒバナは思った。
ひずみの緋美子に対するライバル心は、日増しに強くなっている気がする。
その原因はヒバナにあるのだが、それが我ながら面映いというか、申し訳なくてならない。
そんなことをぼうっと考えていると、ふと思い出したように薫がつぶやいた。
「そういえば、あおいさんのとこ、子どもはどうなったんだろう。103号室のタジマさんの奥さんも見かけなかったけど、大丈夫だったのかねえ」
「あ」
ヒバナは小さく叫んだ。
そうなのだ。
きのうの戦闘のとき、子どもの姿はなかった。
確か、哲夫君っていったっけ?
公園の砂場で遊んでいた、可愛らしい男の子を思い出す。
但馬緑と相馬あおいは同一人物だから、緑の姿が見えないのは当たり前だった。
あそこで死んでいる化け物が但馬緑その人なのである。
でも、哲夫はどうなったのだろう?
あおいの子どもだった『てっちゃん』が、緑の連れていた『哲夫』であることは、まず間違いない。
少なくとも、子どもがひとりは存在していたはずなのだ。
まさか、母親の体に融合して化け物の一部にでもなってしまった、とか・・・?
哲夫のことを思い出したとたん、苦い後悔の念が胸を締めつけてきた。
わたしたちは、ひょっとして、とんでもなくひどいことをしてしまったのではないだろうか?
相馬あおいはツクヨミに操られていただけなのだ。
そのあおいを、わたしたちはこの手で・・・。
殺した。
何かもっといい方法があったのではなかったか。
あおいの命を奪わずに、元の体に戻せる方法が・・・。
ヒバナは唇を噛みしめた。
涙がひとつぶ、握り締めたこぶしの上に落ちた。
-気にするなー
頭の中の、遠い遠いところで、レオンの声がした。
-あの場合、仕方なかったよ。やらねば、おまえたちが、やられていたー
ひどくかすかな気配になってしまっているが、
久々のレオンの登場は、ヒバナを力づけてくれた。
「そう言ってくれると、助かるよ」
ヒバナはつぶやいた。
突然独り言を言い出した娘を、薫がいぶかしげに見つめて、言った。
「ヒバナ、あんた誰としゃべってるの?」
◇
見渡す限りの氷の平原。
動くものひとつない、全くの静寂の世界である。
その中央に、ちょっとした山脈ほどもある巨大な生物が横たわっている。
金色の鱗に覆われた蛇に似た胴体、8本の尾。
ヤマタノオロチだった。
だが、その名に反して、首は7本しかない。
1本は、ヒバナと玉子の連携攻撃で、焼き切られてしまったのだ。
しかも、首の付け根にある大脳を緋美子に破壊されたため、今は全くの戦闘不能状態に陥っている。
その脇に、ツクヨミが立っている。
裸の小さな男の子を、両腕に抱えていた。
オロチの首の付け根の肉がぱっくりと裂けている。
その裂け目の中に、少年の体をゆっくりと下ろしていく。
「哲夫、おまえは幸せ者だね。大好きなママと、これからはずっと一緒にいられるんだから」
目をつぶり、口を半開きにした幼児の上にかがみこむ。
ツクヨミの唇の間から、青白いエクトプラズムが吐き出される。
それは一瞬若い女の姿をとると、やがて収縮し、幼児の口の中へと音もなく吸い込まれていった。
「これだけの巨体に行き渡らせるには、もっともっと必要だな。人間の”憎悪”っていうやつが」
処置を終えて、立ち上がる。
「盤古、居るか?」
天に向かって呼びかけた。
「行くぞ。次の仕事だ」
氷の天空から、ふわりと一匹のイトマキエイが舞い降りた。
「しょうがないでしょ、おうちがなくなっちゃったんだから」
廃墟と化したアパートの跡で、ヒバナは玉子と向かい合っていた。
あの惨事からまる一日経った、午後のことである。
アパートのあったあたりから児童公園にかけて、ほとんどの家屋が倒壊し、更地になっている。
まるで70年前の空襲の跡さながらの、ひどく殺伐とした風景だ。
「ちょっとあんたたち、そんなとこでぼけっと突っ立ってないで、
使えるもんないか、探すの手伝いなさいよ!」
瓦礫の中を漁っていた薫の叱責の声が、飛んできた。
肩をすくめるヒバナ。
「あたい、客なんだけどなあ」
玉子が頬をふくらませて、ぼやく。
「ごめんごめん、あとできっと埋め合わせ、するから」
拝むように両手を合わせるヒバナに、
「焼肉食べ放題確定だな」
玉子がきっぱりと宣言した。
きのう、あれからほどなくして仕事から帰って来た薫は、
アパートの残骸をひと目見るなり、
「い、家が・・・!」
とその場に崩れ落ちた。
やがて、すぐ近くに娘が埃まみれで突っ立ているのに気づくと、
「またあんたの仕業? 今度はいったい何をしでかしたの?」
まさか竜に変身して怪物と戦っていたとも言えないので、とりあえずヒバナは半分だけ真実を語って聞かせることにした。
殺人鬼の正体が相馬あおいだったこと。
その事実に気づいたヒバナをあおいが殺そうとしたこと。
あおいが突然巨大化し、アパートを壊したことetcetc・・・。
「ふーん、それで、あれがそのあおいさんのなれの果てだっていうのかい?」
疑わしげに薫が指差したのは、公園の敷地の大半を埋めつくしたドロドロの肉塊である。
アニメやゲームでは、魔物はたいてい倒されたあときれいに消えてしまうものだが、現実はそうはいかなかった。
たとえ魔物といえども、死体はちゃんと残る。
そして、腐るのだ。
現に、この厳しい残暑の中、怪物の死体は早くもすさまじい腐敗臭を放ち始めていた。
公園の周りはパトカーやらコンテナ車やらがものものしく取り囲み、バリケードを張って一般人の出入りを禁じている。そこかしこに宇宙服のような気密服姿の調査員たちが歩いていた。
「しかし何でまた巨大化なんてするのかねえ。近所迷惑にもほどがあるよ」
ぶつぶつ文句を言う母に、ヒバナはせいいっぱいのつくり笑顔で言った。
「でもママ、ちょうど良かったじゃない。この機会に、もう少しグレードアップしたとこに引っ越そうよ。
今度はちゃんと耐震基準をクリアしてる、鉄筋のマンションにさ」
大家さんは親切だし、アパート暮らしに不満があったわけではない。
ただ、年頃の娘であるヒバナとしては、もう少しこぎれいな生活にあこがれていた、というのも確かだった。
「だねえ。今頃木造アパート暮らしもないもんねえ。よし、そうするか。じゃ、私ちょっと物件探してくるから、ヒバナ、あんた、めぼしいもの残ってないか、探しときなさい」
と、すばらしい立ち直りの早さで、さっそうと不動産探しに出かけていったのだった。
が、その後は例の2人組の刑事の事情徴収が待っており、
結局ヒバナが無罪放免されたのは、今朝になってからのことだったのである。
とりあえず、ミシンは無事だった。
更に、スマホと”如意棒”も回収できた。
今のヒバナにとっては、それだけあれば充分だった。
薫が炊飯器とエアコン、冷蔵庫を発掘し、無事だったものを一箇所にまとめていると、
更地の一角に2トントラックが停まり、野球帽をかぶった少女と、相撲取りのような巨漢が降りてきた。
「おばさん、引越し用のトラック、借りてきたよ」
手を振りながら駆けて来ると、ひずみが叫んだ。
「さっすが、ひずみちゃん、気が利くねえ」
薫が手を叩いて喜んだ。
「で、そちらの大柄な方は、ひずみちゃんのお友達?」
近づいてくる革ジャン姿の巨漢のほうを、おそるおそる目顔で示す。
「まあそんなもんです。力仕事用に、来てもらいました」
「岩崎明日香です。よろしく、です」
ブッチャーが深々とお辞儀をして、たどたどしく挨拶した。
「ヒバナさんには、色々と、お世話に、なっています」
「は、はあ・・・」
薫は少し引き気味で、わが娘と刺青革ジャンの巨漢とを見比べている。
そのとき突然、玉子が笑い出した。
「アスカって柄かよその顔で!」
誰もが思ったことだった。
が、何の分別もなしにそれを平気で口にできるのは、この地球広しといえども玉子だけだろう。
「見かけと違って悪かったな」
さほど怒っている風でもなく、玉子を見下ろして、ブッチャーが言う。
「いいってことよ。それよりあんた、玄武だろ? あたい、白虎の玉子、ヨロシクな!」
玉子がブッチャーの太い腕に取りついて、握手のつもりか、勢いよく上下に振った。
「ゲンブとかビャッコって、あんたたちもヒバナのコスプレ仲間なの?」
薫が眉をひそめたとき、背後から明るい声がした。
「おばさん、お掃除の道具、持ってきましたよ。さ、早く新居に行きませんか?
私、ヒバナさんの新しいおうち見るの、すごく楽しみなんです」
緋美子だった。
袖の短い真っ白なTシャツに、紺のショートパンツが均整の取れた体にぴったりフィットしている。
両手に紙袋を提げていて、その片方からモップの柄が突き出していた。
「みんな、ありがとうね。ヒバナ、持つべきものは友って、ホントだねえ」
感涙の涙にむせぶ薫。
ヒバナも同感だった。
みんな、本当に、ありがとう・・・。
荷物と掃除道具をトラックの荷台に積み込むと、ハンドルはブッチャーが握り、ヒバナが真ん中、薫が助手席に座った。
薫が見つけてきた新しいマンションは、大猫観音商店街をはさんだ反対側に位置しており、ここから歩いても10分ほどの距離だから、ひずみと緋美子は徒歩で現地に向かうことになった。
ひずみちゃん、大丈夫かな・・・。
肩を並べて歩き出す2人の後姿を見送りながら、ヒバナは思った。
ひずみの緋美子に対するライバル心は、日増しに強くなっている気がする。
その原因はヒバナにあるのだが、それが我ながら面映いというか、申し訳なくてならない。
そんなことをぼうっと考えていると、ふと思い出したように薫がつぶやいた。
「そういえば、あおいさんのとこ、子どもはどうなったんだろう。103号室のタジマさんの奥さんも見かけなかったけど、大丈夫だったのかねえ」
「あ」
ヒバナは小さく叫んだ。
そうなのだ。
きのうの戦闘のとき、子どもの姿はなかった。
確か、哲夫君っていったっけ?
公園の砂場で遊んでいた、可愛らしい男の子を思い出す。
但馬緑と相馬あおいは同一人物だから、緑の姿が見えないのは当たり前だった。
あそこで死んでいる化け物が但馬緑その人なのである。
でも、哲夫はどうなったのだろう?
あおいの子どもだった『てっちゃん』が、緑の連れていた『哲夫』であることは、まず間違いない。
少なくとも、子どもがひとりは存在していたはずなのだ。
まさか、母親の体に融合して化け物の一部にでもなってしまった、とか・・・?
哲夫のことを思い出したとたん、苦い後悔の念が胸を締めつけてきた。
わたしたちは、ひょっとして、とんでもなくひどいことをしてしまったのではないだろうか?
相馬あおいはツクヨミに操られていただけなのだ。
そのあおいを、わたしたちはこの手で・・・。
殺した。
何かもっといい方法があったのではなかったか。
あおいの命を奪わずに、元の体に戻せる方法が・・・。
ヒバナは唇を噛みしめた。
涙がひとつぶ、握り締めたこぶしの上に落ちた。
-気にするなー
頭の中の、遠い遠いところで、レオンの声がした。
-あの場合、仕方なかったよ。やらねば、おまえたちが、やられていたー
ひどくかすかな気配になってしまっているが、
久々のレオンの登場は、ヒバナを力づけてくれた。
「そう言ってくれると、助かるよ」
ヒバナはつぶやいた。
突然独り言を言い出した娘を、薫がいぶかしげに見つめて、言った。
「ヒバナ、あんた誰としゃべってるの?」
◇
見渡す限りの氷の平原。
動くものひとつない、全くの静寂の世界である。
その中央に、ちょっとした山脈ほどもある巨大な生物が横たわっている。
金色の鱗に覆われた蛇に似た胴体、8本の尾。
ヤマタノオロチだった。
だが、その名に反して、首は7本しかない。
1本は、ヒバナと玉子の連携攻撃で、焼き切られてしまったのだ。
しかも、首の付け根にある大脳を緋美子に破壊されたため、今は全くの戦闘不能状態に陥っている。
その脇に、ツクヨミが立っている。
裸の小さな男の子を、両腕に抱えていた。
オロチの首の付け根の肉がぱっくりと裂けている。
その裂け目の中に、少年の体をゆっくりと下ろしていく。
「哲夫、おまえは幸せ者だね。大好きなママと、これからはずっと一緒にいられるんだから」
目をつぶり、口を半開きにした幼児の上にかがみこむ。
ツクヨミの唇の間から、青白いエクトプラズムが吐き出される。
それは一瞬若い女の姿をとると、やがて収縮し、幼児の口の中へと音もなく吸い込まれていった。
「これだけの巨体に行き渡らせるには、もっともっと必要だな。人間の”憎悪”っていうやつが」
処置を終えて、立ち上がる。
「盤古、居るか?」
天に向かって呼びかけた。
「行くぞ。次の仕事だ」
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