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第8部 ヒバナ、イノセントワールド!
プロローグ1
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予習を終え、秋津緋美子はほっとため息をついた。
これで明日の古文の小テストはなんとかクリアできるだろう。
テキストとノートをかばんにしまい、机の上に伏せてあった写真立てを元に戻す。
緋美子と一緒に、水着姿の岬ヒバナが映っている。
この夏、八代ひずみの養父、源造じいさんの持つ海の家に遊びに行ったとき、撮ったものだ。
花柄のビキニを着たヒバナは、いつものように泣き笑いのような表情をしている。
肩までのセミロングのやわらかそうな髪。
少し丸顔で、少し垂れた目が可愛らしい。
歳は緋美子より2つ上だが、もとより童顔なので、同い年か年下に見える。
写真のヒバナに唇を近づけたとき、背後で引き戸の開く音がして、
「ひみねえ、お風呂」
妹の安奈の声が聞こえた。
「あ、もうそんな時間?」
机の上のデジタル時計は8時近くを示している。
緋美子はあわてて写真を裏返すと、椅子から立ち上がって安奈のほうを振り向いた。
安奈は6歳。
9時には寝かせないといけないから、もうお風呂に入れてやる時間である。
「よっこらしょっと」
抱き上げ、お風呂場に連れて行く。
母の薫が浴槽にお湯を張っているところだった。
「変ねえ」
緋美子を見るなり、いった。
「水しか出ないのよ。湯沸かし器、故障してるみたい」
「ちょっと代わって」
安奈を母に任せると、緋美子は蛇口から出る水に手をかざしてみた。
確かに冷たい。
少し待ったが、全然温かくならない。
「困ったわね」
薫が眉根を寄せた。
「安奈ちゃん、きょう運動会の練習で、体中汗まみれなのよ」
「みんなで、銭湯に行くってのは、どう?」
ふと思いついて、緋美子はいった。
「このへんに、お風呂屋さんなんて、あったかしら? もう時間も時間だから、あんまり遠いのはねえ」
薫がつぶやいた。
「わーい! お風呂屋さん!」
安奈が歓声を上げる。
以前3人で少し遠くのスーパー銭湯に出かけた事があり、そのときのことを覚えているのだろう。
「極楽湯はどう? ほら、前にお母さんの怪我を治してもらった、ひずみちゃんの家」
「ああ、あの親切なおじいさんがやってみえる所?」
「白鶴公園なら、地下鉄で15分だし」
「いいけど、ご迷惑なんじゃないかしら?」
「私、電話して聞いてみるね」
自分の部屋に戻り、スマホで極楽湯にかけた。
ひずみではなく、老人が出た。
「OKだって」
部屋の戸口に顔を出した母に向かって、緋美子は笑顔を向けた。
「ひずみちゃんは塾でいないけど、入りに来てもいいそうだよ」
これで明日の古文の小テストはなんとかクリアできるだろう。
テキストとノートをかばんにしまい、机の上に伏せてあった写真立てを元に戻す。
緋美子と一緒に、水着姿の岬ヒバナが映っている。
この夏、八代ひずみの養父、源造じいさんの持つ海の家に遊びに行ったとき、撮ったものだ。
花柄のビキニを着たヒバナは、いつものように泣き笑いのような表情をしている。
肩までのセミロングのやわらかそうな髪。
少し丸顔で、少し垂れた目が可愛らしい。
歳は緋美子より2つ上だが、もとより童顔なので、同い年か年下に見える。
写真のヒバナに唇を近づけたとき、背後で引き戸の開く音がして、
「ひみねえ、お風呂」
妹の安奈の声が聞こえた。
「あ、もうそんな時間?」
机の上のデジタル時計は8時近くを示している。
緋美子はあわてて写真を裏返すと、椅子から立ち上がって安奈のほうを振り向いた。
安奈は6歳。
9時には寝かせないといけないから、もうお風呂に入れてやる時間である。
「よっこらしょっと」
抱き上げ、お風呂場に連れて行く。
母の薫が浴槽にお湯を張っているところだった。
「変ねえ」
緋美子を見るなり、いった。
「水しか出ないのよ。湯沸かし器、故障してるみたい」
「ちょっと代わって」
安奈を母に任せると、緋美子は蛇口から出る水に手をかざしてみた。
確かに冷たい。
少し待ったが、全然温かくならない。
「困ったわね」
薫が眉根を寄せた。
「安奈ちゃん、きょう運動会の練習で、体中汗まみれなのよ」
「みんなで、銭湯に行くってのは、どう?」
ふと思いついて、緋美子はいった。
「このへんに、お風呂屋さんなんて、あったかしら? もう時間も時間だから、あんまり遠いのはねえ」
薫がつぶやいた。
「わーい! お風呂屋さん!」
安奈が歓声を上げる。
以前3人で少し遠くのスーパー銭湯に出かけた事があり、そのときのことを覚えているのだろう。
「極楽湯はどう? ほら、前にお母さんの怪我を治してもらった、ひずみちゃんの家」
「ああ、あの親切なおじいさんがやってみえる所?」
「白鶴公園なら、地下鉄で15分だし」
「いいけど、ご迷惑なんじゃないかしら?」
「私、電話して聞いてみるね」
自分の部屋に戻り、スマホで極楽湯にかけた。
ひずみではなく、老人が出た。
「OKだって」
部屋の戸口に顔を出した母に向かって、緋美子は笑顔を向けた。
「ひずみちゃんは塾でいないけど、入りに来てもいいそうだよ」
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