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第10部 ヒバナ、アブノーマルヘブン!
#35 憤怒!
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頭のの芯が割れるように痛む。
体に痺れが残っていた。
ベッドに横たわったナミは、カっと目を見開いた。
アーモンド形の細面の顔が、心なしか上気している。
ガバっと上体を起こす。
何もかもが白で統一された、殺風景な部屋だった。
傍らにテーブルがあり、ナギがうたたねをしていた。
向かって左手が入口のドア。
右手の壁には楕円形の鏡がかかっている。
そこに映る自分の顔をひと目見るなり、ナミの唇が歪んだ。
ツインテールだった長い髪が焦げて縮れ、ちびくろサンボのようになっている。
「ナギ!」
叫び、枕をぶつけた。
「うわ! ってナミ、起きたの?」
ナギが目をこすりながら振り向いた、
「どういうことなのよ、これ!」
頭に手をやってわめく。
「どういうことって、忘れちゃったの? 玉子の雷魔法にやられたんでしょ? ダゴンもろとも」
そうだった。
ナミは思い出した。
空中から迫り来るヒバナ。
その背中から身を乗り出しているおかっぱ頭の小学生。
ダゴンの向きを変えようと精神を集中したとたんだった。
回りが急に光って、
雷が落ちてきたのだ。
「くそ、あの3頭身! 絶対に許さない!」
ナミは両のこぶしを握り締め、金切り声を上げた。
ナミはプライドが高い。
それだけはおそらく、太古イザナミノミコトだったときから全く変わっていない。
負けるのが、大嫌いなのだ。
「それより、学校どうしよう?」
ナギが心配そうに眉根を寄せる。
「ナミがいつまでたっても起きないから、きのうきょうとこれで2日も休んじゃったよ。一応、家と先生には連絡しておいたけどさ、言い訳考えるの、大変だったんだからね」
「学校?」
ナミが目を剝いた。
「そんなのどうだっていいじゃない! あんたってほんとに人間ちっちゃいんだから!」
「いや、そもそも僕ら、人間といえるかどうか・・・」
「そんなことより、麗奈とシンはどこ? すぐに計画を実行に移さないと! ルルイエをとっとと浮上させて、あの3頭身とレズ女たちに一泡吹かせてやるのよ!」
「3頭身? レズ女? 相変らずキミは口が悪いね。兄として悲しいよ」
ナギが大げさに天を仰いでみせる。
「だいたいね、なんであたしがあんな半魚人の操縦しなきゃなんないのよ! あれさえなかったら、あんなチビに負けないで済んだのに!」
そうなのだ。
あのとき、ナミはダゴンをあやつるのに手一杯だったのである。
ダゴンはよほど頭が悪いのか、手綱を締めていないとすぐに海底にもぐって餌を探したがるので、ヒバナたちと戦うほうに持っていくのにえらく苦労したのだった。
ベッドから飛び降りると、ナミはドアに向かって歩き出した。
「どこ行くの?」
「決まってるでしょ! 麗奈に会うのよ。作戦立てなきゃ。若い女の心臓99個集めるの!」
「麗奈ならたぶんまたお楽しみの最中だと思うよ。どうもスキンシップがこの教団の教義みたいだから。あ、それからさ」
ナギがいいにくそうに目を伏せた。
「何?」
「シンだけど、ヒバナと玉子に腕輪、盗られちゃったんだって。キミがやられてすぐに、あのふたりがここを襲ってきてさ、それで・・・」
「はあん? ばっかじゃないの、あんたたち!
ったく、あたしがいないとどいつもこいつも全然だめなんだから!
どうせあんたはそのときコウモリさんになってたんでしょうよ!」
激怒に駆られ、ナミは怒鳴った。
ナギの心を読むまでもなかった。
よく知っている。
こいつは、そういうやつなのだ。
麗奈の気配を探るのは造作なかった。
迷路のような回廊を一度も迷うことなく、ナミはそのドアにたどりついた。
鍵はかかっていなかった。
麗奈は見られたがりである。
鍵なんかかけるわけがない。
オレンジ色の照明に照らされた、薄暗い部屋だった。
中央に裸の男が逆さに吊り下げられている。
その股間から飛び出した生殖器に紐が巻きつけられ、テーブルの上のウィンチに伸びていた。
そのハンドルを回しながら、ボンテージ衣装の麗奈が煙草を吸っている。
「あら、ナミじゃない? やっとお目覚め?」
「あいかわらず、趣味悪いね」
麗奈の前の椅子にに腰かけて、ナミはいった。
「この子、いじめるの、癖になっちゃってさ」
麗奈がにこりともせずいい、更にハンドルを回す。
ロープが引かれ、全裸の若者、水島光男のペニスが伸びる。
ペニスはもう赤黒く充血し、太い血管を表面に浮き立たせている。
これ以上引っ張ったらちぎれるんじゃないかと、ナミは他人事ながら少し心配になる。
「ほら、喜んでるでしょ。これでもあたし、人助けしてるのよ。だってこれ、ドMの童貞ニートには一生かけても味わえない、極上の快楽なんだから」
麗奈が平然といった。
確かにそれは否定できないようだった。
ペニスが引っ張られる度に、光男はうめく。
が、その声は苦痛に耐えているというよりも、快感のあまり喘いでいるように聞こえるのだ。
もちろん、ナミにはどっちでもいいことである。
「ルルイエ浮上の99人目って、水族館の職員だっていってたよね」
目を光らせて、訊く。
「そうよ。確か名前は望月桜子。23,4歳だったと思うけど」
「その女って、玉子と仲良しだったよね?」
「うーん、どうなのかな。でも、そういわれてみれば、一緒にいるところを何度か見かけたわね」
「やっぱり」
ナミがにやりと笑う。
「じゃ、そろそろ始めようよ。ルルイエ作戦。ダゴンがあれじゃ、かっこがつかないでしょ。だいたいさ、腕輪も取り返されちゃったっていうし。先を越されて黄竜召喚されたらどうするの?」
「そうなのよねえ」
麗奈がハンドルを回す手を止め、頬杖をつく。
「ただ、この施設の信者の女全員血祭りにあげないといけないでしょ? そうすると、信者がぐんと減っちゃうし、あたしの夜の楽しみも半減しちゃうんだよね」
「何いってるの!」
ナミは声を強めた。
「ルルイエが本当に浮上してみなさいよ。信者なんかいくらでも集まってくるよ。それこそ世界中から!」
麗奈の大きな瞳に面白がっているような耀きが宿る。
「それもそうね。ナミ、あんた、いいこというじゃない。じゃ、準備にかかるかな」
立ち上がった。
網タイツに包まれた長い右脚をテーブルの上に乗せたかと思うと、ウィンチのハンドルをピンヒールの踵で思い切り踏みつけた。
「グワァ!」
背後で光男が絶叫した。
反射的に振り返ったナミは、30センチほどにも伸びきったそのペニスの先から、ひと筋血が噴き出すのを見た。
体に痺れが残っていた。
ベッドに横たわったナミは、カっと目を見開いた。
アーモンド形の細面の顔が、心なしか上気している。
ガバっと上体を起こす。
何もかもが白で統一された、殺風景な部屋だった。
傍らにテーブルがあり、ナギがうたたねをしていた。
向かって左手が入口のドア。
右手の壁には楕円形の鏡がかかっている。
そこに映る自分の顔をひと目見るなり、ナミの唇が歪んだ。
ツインテールだった長い髪が焦げて縮れ、ちびくろサンボのようになっている。
「ナギ!」
叫び、枕をぶつけた。
「うわ! ってナミ、起きたの?」
ナギが目をこすりながら振り向いた、
「どういうことなのよ、これ!」
頭に手をやってわめく。
「どういうことって、忘れちゃったの? 玉子の雷魔法にやられたんでしょ? ダゴンもろとも」
そうだった。
ナミは思い出した。
空中から迫り来るヒバナ。
その背中から身を乗り出しているおかっぱ頭の小学生。
ダゴンの向きを変えようと精神を集中したとたんだった。
回りが急に光って、
雷が落ちてきたのだ。
「くそ、あの3頭身! 絶対に許さない!」
ナミは両のこぶしを握り締め、金切り声を上げた。
ナミはプライドが高い。
それだけはおそらく、太古イザナミノミコトだったときから全く変わっていない。
負けるのが、大嫌いなのだ。
「それより、学校どうしよう?」
ナギが心配そうに眉根を寄せる。
「ナミがいつまでたっても起きないから、きのうきょうとこれで2日も休んじゃったよ。一応、家と先生には連絡しておいたけどさ、言い訳考えるの、大変だったんだからね」
「学校?」
ナミが目を剝いた。
「そんなのどうだっていいじゃない! あんたってほんとに人間ちっちゃいんだから!」
「いや、そもそも僕ら、人間といえるかどうか・・・」
「そんなことより、麗奈とシンはどこ? すぐに計画を実行に移さないと! ルルイエをとっとと浮上させて、あの3頭身とレズ女たちに一泡吹かせてやるのよ!」
「3頭身? レズ女? 相変らずキミは口が悪いね。兄として悲しいよ」
ナギが大げさに天を仰いでみせる。
「だいたいね、なんであたしがあんな半魚人の操縦しなきゃなんないのよ! あれさえなかったら、あんなチビに負けないで済んだのに!」
そうなのだ。
あのとき、ナミはダゴンをあやつるのに手一杯だったのである。
ダゴンはよほど頭が悪いのか、手綱を締めていないとすぐに海底にもぐって餌を探したがるので、ヒバナたちと戦うほうに持っていくのにえらく苦労したのだった。
ベッドから飛び降りると、ナミはドアに向かって歩き出した。
「どこ行くの?」
「決まってるでしょ! 麗奈に会うのよ。作戦立てなきゃ。若い女の心臓99個集めるの!」
「麗奈ならたぶんまたお楽しみの最中だと思うよ。どうもスキンシップがこの教団の教義みたいだから。あ、それからさ」
ナギがいいにくそうに目を伏せた。
「何?」
「シンだけど、ヒバナと玉子に腕輪、盗られちゃったんだって。キミがやられてすぐに、あのふたりがここを襲ってきてさ、それで・・・」
「はあん? ばっかじゃないの、あんたたち!
ったく、あたしがいないとどいつもこいつも全然だめなんだから!
どうせあんたはそのときコウモリさんになってたんでしょうよ!」
激怒に駆られ、ナミは怒鳴った。
ナギの心を読むまでもなかった。
よく知っている。
こいつは、そういうやつなのだ。
麗奈の気配を探るのは造作なかった。
迷路のような回廊を一度も迷うことなく、ナミはそのドアにたどりついた。
鍵はかかっていなかった。
麗奈は見られたがりである。
鍵なんかかけるわけがない。
オレンジ色の照明に照らされた、薄暗い部屋だった。
中央に裸の男が逆さに吊り下げられている。
その股間から飛び出した生殖器に紐が巻きつけられ、テーブルの上のウィンチに伸びていた。
そのハンドルを回しながら、ボンテージ衣装の麗奈が煙草を吸っている。
「あら、ナミじゃない? やっとお目覚め?」
「あいかわらず、趣味悪いね」
麗奈の前の椅子にに腰かけて、ナミはいった。
「この子、いじめるの、癖になっちゃってさ」
麗奈がにこりともせずいい、更にハンドルを回す。
ロープが引かれ、全裸の若者、水島光男のペニスが伸びる。
ペニスはもう赤黒く充血し、太い血管を表面に浮き立たせている。
これ以上引っ張ったらちぎれるんじゃないかと、ナミは他人事ながら少し心配になる。
「ほら、喜んでるでしょ。これでもあたし、人助けしてるのよ。だってこれ、ドMの童貞ニートには一生かけても味わえない、極上の快楽なんだから」
麗奈が平然といった。
確かにそれは否定できないようだった。
ペニスが引っ張られる度に、光男はうめく。
が、その声は苦痛に耐えているというよりも、快感のあまり喘いでいるように聞こえるのだ。
もちろん、ナミにはどっちでもいいことである。
「ルルイエ浮上の99人目って、水族館の職員だっていってたよね」
目を光らせて、訊く。
「そうよ。確か名前は望月桜子。23,4歳だったと思うけど」
「その女って、玉子と仲良しだったよね?」
「うーん、どうなのかな。でも、そういわれてみれば、一緒にいるところを何度か見かけたわね」
「やっぱり」
ナミがにやりと笑う。
「じゃ、そろそろ始めようよ。ルルイエ作戦。ダゴンがあれじゃ、かっこがつかないでしょ。だいたいさ、腕輪も取り返されちゃったっていうし。先を越されて黄竜召喚されたらどうするの?」
「そうなのよねえ」
麗奈がハンドルを回す手を止め、頬杖をつく。
「ただ、この施設の信者の女全員血祭りにあげないといけないでしょ? そうすると、信者がぐんと減っちゃうし、あたしの夜の楽しみも半減しちゃうんだよね」
「何いってるの!」
ナミは声を強めた。
「ルルイエが本当に浮上してみなさいよ。信者なんかいくらでも集まってくるよ。それこそ世界中から!」
麗奈の大きな瞳に面白がっているような耀きが宿る。
「それもそうね。ナミ、あんた、いいこというじゃない。じゃ、準備にかかるかな」
立ち上がった。
網タイツに包まれた長い右脚をテーブルの上に乗せたかと思うと、ウィンチのハンドルをピンヒールの踵で思い切り踏みつけた。
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