ヒバナ、オーバードライブ DX!

戸影絵麻

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終章 ヒバナ、リインカーネーション!

#1 あずみ

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 あずみが立ち上がった。
 
 左手に盾代わりの座布団、右手に剣の代わりの30センチ定規を構えて。

 出雲あずみは、クラスでもベスト3に入る美少女だ。

 雰囲気が寡黙で孤高なため、これまでほとんど口をきいたことがない。

 が、その存在感は際立っていた。

 ボーイッシュな顔立ちと、その真逆に発達したナイスな肢体。

 背も高く、男子女子問わず、クラス全員のあこがれの的だ。

「いっくよおー!」

 そのあずみが、跳んだ。

 信じられないほどのジャンプ力だった。

 助走もつけていないのに、生徒たちの頭上を一気に飛び越えて、化け物に襲いかかった。

 ミニ丈のひだスカートが鳥の翼のように翻る。

 襲い来る触手の群れを座布団でかわし、空中でしなやかな足を交差させて、鋭い蹴りを放った。

 1発、2発。

 目にも止まらぬスピードで、強烈な前蹴りが連続して化け物の顔面にさく裂する。

「グエエエエッ!」

 化け物が血を吐き出した。

「くらええーっ!」

 のけぞった化け物のその口の中に、あずみが30センチ定規を突き立てる。

 おびただしい数の触手がうねり、あずみのダイナマイトボディに絡みつく。

 それを片っ端から引きちぎりながら、あずみが更に定規を化け物の顔面に突き刺した。

 と、その時だ。

 首をちぎられて昏倒していた女教師の身体が、ふらりと立ち上がった。

 かと思うと、爆ぜた首の断面から、うわっとばかりに大量の触手が伸び出してきた。

「いかん、感染してる」

 レオンがうめいた。

「ヒバナ、よく聞け。今度こそ、おまえの番だ」

 緋華の肩に飛び乗ると、いつになく真剣な口調でそう言った。

「だって、そんなこといったって、私には何もできないんだってば」

 泣き声で抗議する緋華。

 他の生徒たちは、凍りついたようにみんな自分の席で縮こまっているばかりだ。

「やってみなきゃ、わかんねーだろ? ここでは腕輪も何にも要らないのかもしれない。あの子がその何よりの証拠だろう。それともおまえ、仲間を見捨てるつもりか?」

「仲間? あずみちゃんが?」

「ああ。おまえはセカイを蝕む絶対悪と戦うためにこの世に生まれてきたんだ。現に、俺の知ってるヒバナは最後まで勇敢だった。あっちのヒバナにできたなら、こっちおまえにもできるはずだ」

「あっちとかこっちとか、わけわかんないよ。それに、最後まで勇敢だったって、なんで過去形なの?」

「いいから行きな」

 レオンの言葉に押されるようにして、緋華はよろよろと前に歩み出た。

 触手と格闘するあずみのほうに、首のない死体が向かっていく。

 これじゃ、まるでゾンビ映画だと思う。

 でも、頭の代わりに触手の生えたゾンビなんて、いくらなんでもキモすぎる。

 どうしよう。

 それ以上進めず立ちすくんでいると、ふいに足首を誰かに掴まれた。

「きゃ!」

 悲鳴を上げて見下ろすと、血まみれのセーラー服が床から起き上がるところだった。

 化け物の触手に投げ飛ばされ、天井に叩きつけられて絶命したはずのあのクラスメートである。
 
 顔が半分潰れ、鮮血と脳漿で見るも無残な有様だ。

「まずいな。こいつも感染してるぞ。まったく、なんて感染力なんだ」

 肩先でレオンがつぶやいた。

 立ち上がった3人目のゾンビが、がっしりと緋華の両腕をつかんできた。

 はずれた顎が動き、ぽっかり空いた喉の奥から、どっとばかりに触手を吐き出してきた。

「いやああ!」

 緋華は絶叫した。
 
 触手が顔に触れそうになる。

 が、両腕を拘束され、身体が動かない。

「やめて!」

 もう一度、声を限りに叫んだ。

 と、その瞬間だった。

 後頭部の奥のほうで乾いた音がして、緋華の中で何かが外れたようだった。

「あれ?」

 緋華は目をぱっちりと見開いた。

「何、この感じ?」

 体が熱い。

 なんだか少し大きくなったような気さえする。

 それは。

 リミッターが解除され、緋華がヒバナに戻った瞬間だった。

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