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第6章 アンアン魔界行
#72 アンアン、地底軍艦に乗る④
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玉の指摘した通りだった。
叶姉妹の姉に酷似した氷の魔神シヴァ。
その右肩にちょこんと腰掛けているのは、コップのふち子ならぬ、醜い餓鬼である。
餓鬼は腹を抱え、僕らのほうを指さしてケタケタ笑っている。
「むう」
アンアンの歯ぎしりが聞えてきた。
「こうなったら、あたしが行って、ぶっ飛ばしてやる」
元気になったのはいいが、”ぬっぺっぽう細胞””の新陳代謝がよすぎるのか、前より短気になっているようだ。
巨乳をゆさゆさ揺らし、右手をスウィングバックして、すでにストレートの構えを取っている。
「まあ、待ちなさいって」
阿修羅がその二の腕に手を置いて、はやるアンアンを引き留めた。
「よく見なさいよ。シヴァの吐く息、白いでしょ? 彼女の武器は超低温のマリンスノーなの。いくらアンアンでも、まともにあれをくらったら、一瞬にして札幌雪祭の氷の彫刻だよ」
「うう。じゃ、どうしたらいい?」
「こういう時のために、彼がいるんじゃない」
そう言って阿修羅が振り返った先には、そう、一ノ瀬がいた。
「え? え? 何のこと? それって、何の悪だくみ? だいたい、こういう時って、どういう時?」
つぶらな瞳で、ふたりの美少女を交互に見やる一ノ瀬。
「こういう時ってのは、今だよ」
だしぬけにアンアンが一ノ瀬の右手をつかんだ。
ぐっと引き寄せたかと思うと、軽々頭上に持ち上げた。
出た。
ドラゴンスープレックス!
と思ったら、
「行ってこい!」
シヴァに向かって、やせた一ノ瀬の身体をミサイルみたいにぶん投げた。
シヴァの赤い目が光った。
何やら叫ぶと、両腕を組み、上体を踊るようにくねらせた。
と思うと、次の瞬間、振り上げたその両手から、真っ白な吹雪が噴き出した。
「うわあああああ! つめて! さぶっ! し、死ぬ…」
一ノ瀬の叫びが、徐々に弱くなっていく。
カラン。
やがて、氷の彫像と化して、シヴァの足元に転がった。
だが、その時には、すでにアンアンと阿修羅は走り出していた。
腰を低くして、地を這う低空飛行のステルス戦闘機よろしく、武器庫めがけて駆けていく。
すれ違いざま、アンアンが左腕を突き出した。
うおおお!
出たぞ、アンアンの必殺ウェスタン・ラリアット!
喉を砕かれ、シヴァが仰向けに昏倒する。
肩から転げ落ちた餓鬼を、逃がさず裸足でアンアンが踏みつぶす。
その間に、阿修羅は取っ手に取りついて、武器庫の扉を開きにかかっている。
「開いたよ」
阿修羅が言った。
「こっちもOK」
打てば響くように、アンアンが答えた。
「作戦成功ですね」
玉が笑った。
が、もちろん、一ノ瀬は答えなかった。
叶姉妹の姉に酷似した氷の魔神シヴァ。
その右肩にちょこんと腰掛けているのは、コップのふち子ならぬ、醜い餓鬼である。
餓鬼は腹を抱え、僕らのほうを指さしてケタケタ笑っている。
「むう」
アンアンの歯ぎしりが聞えてきた。
「こうなったら、あたしが行って、ぶっ飛ばしてやる」
元気になったのはいいが、”ぬっぺっぽう細胞””の新陳代謝がよすぎるのか、前より短気になっているようだ。
巨乳をゆさゆさ揺らし、右手をスウィングバックして、すでにストレートの構えを取っている。
「まあ、待ちなさいって」
阿修羅がその二の腕に手を置いて、はやるアンアンを引き留めた。
「よく見なさいよ。シヴァの吐く息、白いでしょ? 彼女の武器は超低温のマリンスノーなの。いくらアンアンでも、まともにあれをくらったら、一瞬にして札幌雪祭の氷の彫刻だよ」
「うう。じゃ、どうしたらいい?」
「こういう時のために、彼がいるんじゃない」
そう言って阿修羅が振り返った先には、そう、一ノ瀬がいた。
「え? え? 何のこと? それって、何の悪だくみ? だいたい、こういう時って、どういう時?」
つぶらな瞳で、ふたりの美少女を交互に見やる一ノ瀬。
「こういう時ってのは、今だよ」
だしぬけにアンアンが一ノ瀬の右手をつかんだ。
ぐっと引き寄せたかと思うと、軽々頭上に持ち上げた。
出た。
ドラゴンスープレックス!
と思ったら、
「行ってこい!」
シヴァに向かって、やせた一ノ瀬の身体をミサイルみたいにぶん投げた。
シヴァの赤い目が光った。
何やら叫ぶと、両腕を組み、上体を踊るようにくねらせた。
と思うと、次の瞬間、振り上げたその両手から、真っ白な吹雪が噴き出した。
「うわあああああ! つめて! さぶっ! し、死ぬ…」
一ノ瀬の叫びが、徐々に弱くなっていく。
カラン。
やがて、氷の彫像と化して、シヴァの足元に転がった。
だが、その時には、すでにアンアンと阿修羅は走り出していた。
腰を低くして、地を這う低空飛行のステルス戦闘機よろしく、武器庫めがけて駆けていく。
すれ違いざま、アンアンが左腕を突き出した。
うおおお!
出たぞ、アンアンの必殺ウェスタン・ラリアット!
喉を砕かれ、シヴァが仰向けに昏倒する。
肩から転げ落ちた餓鬼を、逃がさず裸足でアンアンが踏みつぶす。
その間に、阿修羅は取っ手に取りついて、武器庫の扉を開きにかかっている。
「開いたよ」
阿修羅が言った。
「こっちもOK」
打てば響くように、アンアンが答えた。
「作戦成功ですね」
玉が笑った。
が、もちろん、一ノ瀬は答えなかった。
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