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第6章 アンアン魔界行
#140 アンアン、死す⑦
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くそ! こうなったら方法はただひとつ。
タイムリープだ。
3連打すれば15秒、時をさかのぼることができる。
15秒あれば、なんとかやられる前のアンアンの許へたどりつけるだろう。
カチ、カチ、カチ。
奥歯を3回、噛みしめた。
この、奥歯を噛むことが、いつしか僕の能力発動のスイッチになっているのだ。
バン、バン、バンと景色が巻き戻った。
さすがにめまいがする。
でも、弱音を吐いてる場合じゃない。
リングでは、アンアンを羽交い絞めした前鬼が、ちょうど鉤爪を振り上げたところだった。
よし、間に合った!
僕はダッシュした。
一ノ瀬の背中を踏み台にして、リングに飛び上がる。
ロープのすき間をすり抜けようとした瞬間である。
スニーカーのつま先がロープに引っかかったかと思うと、足元でだしぬけにバリバリッと火花が飛び散った。
「あうっ!」
もんどり打って、僕はぶざまに頭からマットの上に転げ落ちた。
しまった。忘れてた。
ロープには電流が流れていたのだ。
とっさに起き上がろうと試みた。
だが、いかんせん、身体がしびれて動けない。
まずい。
このままでは、間に合わないぞ…。
必死で顔を上げた時である。
ズサッ!
目の前で前鬼の右腕が振り降ろされ、アンアンの滑らかな鳩尾に鉤爪ごと突き刺さった。
皮膚と脂肪が弾け、さあっとマットに血が飛び散った。
「もらったぞ!」
勝どきを上げながら、前鬼がずぶずぶと傷口から腕を抜く。
つかみ出されたのは、ずっしりと重そうなアンアンの肝臓だ。
「あああ!」
僕は絶叫した。
まただ。
またこの残虐シーンの繰り返しだ。
間に合わなかった。
なんてことだろう。
肝心の所で、ロープに引っかかるなんて!
込み上げる嗚咽をこらえ、もう一度、奥歯を噛みしめてみる。
だが、何も起こらない。
それもそのはず。
僕のタイムリープは、3回連続、15秒が限界なのだ。
次に発動できるようになるまでに、数時間は待たなくてはならないのが常ときている。
絶望的な気分で、リングサイドを見やった時だった。
意外な光景が、視界に飛び込んできた。
あのヘタレ男阿修羅が、一ノ瀬を押しのけて立ち上がっている。
「おのれ、よくもアンアンを!」
予想外の敏捷さを見せて、リングロープを飛び越えた。
そして、両手で自分の首をつかむと、ギリッ!
一挙動でねじ切った。
「うわあああああっ!」
雄叫びとともに、阿修羅の全身から紅蓮の炎が吹き上がる。
胸が元の大きさを取り戻し、尻がふくらみきゅんと上を向く。
「許さぬぞ。たかが鬼の分際で!」
変身を終えた、阿修羅第3人格が吠えた。
遅ればせながら、ようやく阿修羅王が復活したのである。
タイムリープだ。
3連打すれば15秒、時をさかのぼることができる。
15秒あれば、なんとかやられる前のアンアンの許へたどりつけるだろう。
カチ、カチ、カチ。
奥歯を3回、噛みしめた。
この、奥歯を噛むことが、いつしか僕の能力発動のスイッチになっているのだ。
バン、バン、バンと景色が巻き戻った。
さすがにめまいがする。
でも、弱音を吐いてる場合じゃない。
リングでは、アンアンを羽交い絞めした前鬼が、ちょうど鉤爪を振り上げたところだった。
よし、間に合った!
僕はダッシュした。
一ノ瀬の背中を踏み台にして、リングに飛び上がる。
ロープのすき間をすり抜けようとした瞬間である。
スニーカーのつま先がロープに引っかかったかと思うと、足元でだしぬけにバリバリッと火花が飛び散った。
「あうっ!」
もんどり打って、僕はぶざまに頭からマットの上に転げ落ちた。
しまった。忘れてた。
ロープには電流が流れていたのだ。
とっさに起き上がろうと試みた。
だが、いかんせん、身体がしびれて動けない。
まずい。
このままでは、間に合わないぞ…。
必死で顔を上げた時である。
ズサッ!
目の前で前鬼の右腕が振り降ろされ、アンアンの滑らかな鳩尾に鉤爪ごと突き刺さった。
皮膚と脂肪が弾け、さあっとマットに血が飛び散った。
「もらったぞ!」
勝どきを上げながら、前鬼がずぶずぶと傷口から腕を抜く。
つかみ出されたのは、ずっしりと重そうなアンアンの肝臓だ。
「あああ!」
僕は絶叫した。
まただ。
またこの残虐シーンの繰り返しだ。
間に合わなかった。
なんてことだろう。
肝心の所で、ロープに引っかかるなんて!
込み上げる嗚咽をこらえ、もう一度、奥歯を噛みしめてみる。
だが、何も起こらない。
それもそのはず。
僕のタイムリープは、3回連続、15秒が限界なのだ。
次に発動できるようになるまでに、数時間は待たなくてはならないのが常ときている。
絶望的な気分で、リングサイドを見やった時だった。
意外な光景が、視界に飛び込んできた。
あのヘタレ男阿修羅が、一ノ瀬を押しのけて立ち上がっている。
「おのれ、よくもアンアンを!」
予想外の敏捷さを見せて、リングロープを飛び越えた。
そして、両手で自分の首をつかむと、ギリッ!
一挙動でねじ切った。
「うわあああああっ!」
雄叫びとともに、阿修羅の全身から紅蓮の炎が吹き上がる。
胸が元の大きさを取り戻し、尻がふくらみきゅんと上を向く。
「許さぬぞ。たかが鬼の分際で!」
変身を終えた、阿修羅第3人格が吠えた。
遅ればせながら、ようやく阿修羅王が復活したのである。
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