38 / 249
第2章 蠅の王
#14 アンアンと二人目の貴公子⑩
しおりを挟む
小便を済ませて、家の外に出ると、沈みゆく夕陽を背景にして、ふたりの巨人がそびえ立っていた。
いうまでもなく、巨大化したアンアンと、蠅の王、ベルゼブブである。
アンアンは、さっきと同じ、純白のスポーツブラと木綿のパンツといった、実にシンプルな出で立ちだ。
しかし、これだけ大きいと、その迫力は最たるもので、もはやエロスを通り越して女神の如く神々しい。
かたやベルゼブブは、見るからに醜悪な外見の持ち主だった。
漆黒の昆虫型アーマーに、2本の触角が突き出たでっかい蠅の頭部。
両手に細身の剣を引っ提げ、気味の悪い複眼を動かして、じっとアンアンの柔肌を切り刻む隙を窺っている。
ふたりが対峙しているのは、放置された水田の跡の荒れ地だった。
政府の減反政策の犠牲になった休耕地のひとつである。
だからいくら暴れてもらっても問題はないのだが、とばっちりでうちが壊されるのだけは勘弁してほしかった。
「おい、ベルゼブブ。おまえ、あたしを殺そうとしただろう」
アンアンが口を切った。
よく通る声が、閑静な田舎町にとどろきわたる。
「ガガガ、ブブブブ」
ベルゼブブの答えはほとんど意味不明だ。
おそらく、
『おまえこそ、幼虫のおいらを、いきなり魔界に吹っ飛ばしたくせに』
とでも言い返しているのに違いない。
「あたしはこの人間界で生きてくって決めたんだよ」
腰のあたりでこぶしを握りしめ、挑みかかるような口調でアンアンが言った。
「こっちで好きな男もできたんだ。もう魔界へは帰らない」
「ギギギギ、@@@@#ププ::?」
突然のアンアンの告白に、蠅男は度肝を抜かれたようだった。
剣を握った両手を万歳するように頭上に掲げて、ショックのあまりか、よろよろとあとじさった。
「だからおまえには死んでもらう」
そんな理不尽な台詞を投げつけると、アンアンが跳んだ。
長い脚が伸び、身体が一本の槍になる。
たたらを踏んで立ち止まった蠅男が、二刀流を突進するアンアンめがけて振り下ろす。
クロスさせた両腕で、その切っ先を受け止めるアンアン。
見ると、アンアンの手首から肘までは、金属の防具に覆われていて、それで怪物の一撃を防いだのだった。
「くらえ! アンアン・パーンチ!」
咆哮とともに、アンアンの右ストレートが、蠅男の左の複眼を打ち砕く。
「とどめだ! アンアン・キーック!」
続く動作で垂直に飛び上がり、蠅男の喉元に、腰のばねを効かせた渾身のドロップキックをお見舞いする。
爆音を響かせて、怪物の頭が吹っ飛んだ。
地響きを立てて、胴体が地面に倒れていく。
「仕上げはこれだ! ”地獄の業火”!」
アンアンの眼が光った。
と思うと、なんと、発射されたのはレーザー光線だ。
ボンッ!
ベルゼブブの胴体が爆発し、紅蓮の炎を上げてめらめらと燃え上がる。
僕は呆れた。
強いにもほどがある。
アンアン、おまえ、アメコミのスーパーヒーローかよ?
いうまでもなく、巨大化したアンアンと、蠅の王、ベルゼブブである。
アンアンは、さっきと同じ、純白のスポーツブラと木綿のパンツといった、実にシンプルな出で立ちだ。
しかし、これだけ大きいと、その迫力は最たるもので、もはやエロスを通り越して女神の如く神々しい。
かたやベルゼブブは、見るからに醜悪な外見の持ち主だった。
漆黒の昆虫型アーマーに、2本の触角が突き出たでっかい蠅の頭部。
両手に細身の剣を引っ提げ、気味の悪い複眼を動かして、じっとアンアンの柔肌を切り刻む隙を窺っている。
ふたりが対峙しているのは、放置された水田の跡の荒れ地だった。
政府の減反政策の犠牲になった休耕地のひとつである。
だからいくら暴れてもらっても問題はないのだが、とばっちりでうちが壊されるのだけは勘弁してほしかった。
「おい、ベルゼブブ。おまえ、あたしを殺そうとしただろう」
アンアンが口を切った。
よく通る声が、閑静な田舎町にとどろきわたる。
「ガガガ、ブブブブ」
ベルゼブブの答えはほとんど意味不明だ。
おそらく、
『おまえこそ、幼虫のおいらを、いきなり魔界に吹っ飛ばしたくせに』
とでも言い返しているのに違いない。
「あたしはこの人間界で生きてくって決めたんだよ」
腰のあたりでこぶしを握りしめ、挑みかかるような口調でアンアンが言った。
「こっちで好きな男もできたんだ。もう魔界へは帰らない」
「ギギギギ、@@@@#ププ::?」
突然のアンアンの告白に、蠅男は度肝を抜かれたようだった。
剣を握った両手を万歳するように頭上に掲げて、ショックのあまりか、よろよろとあとじさった。
「だからおまえには死んでもらう」
そんな理不尽な台詞を投げつけると、アンアンが跳んだ。
長い脚が伸び、身体が一本の槍になる。
たたらを踏んで立ち止まった蠅男が、二刀流を突進するアンアンめがけて振り下ろす。
クロスさせた両腕で、その切っ先を受け止めるアンアン。
見ると、アンアンの手首から肘までは、金属の防具に覆われていて、それで怪物の一撃を防いだのだった。
「くらえ! アンアン・パーンチ!」
咆哮とともに、アンアンの右ストレートが、蠅男の左の複眼を打ち砕く。
「とどめだ! アンアン・キーック!」
続く動作で垂直に飛び上がり、蠅男の喉元に、腰のばねを効かせた渾身のドロップキックをお見舞いする。
爆音を響かせて、怪物の頭が吹っ飛んだ。
地響きを立てて、胴体が地面に倒れていく。
「仕上げはこれだ! ”地獄の業火”!」
アンアンの眼が光った。
と思うと、なんと、発射されたのはレーザー光線だ。
ボンッ!
ベルゼブブの胴体が爆発し、紅蓮の炎を上げてめらめらと燃え上がる。
僕は呆れた。
強いにもほどがある。
アンアン、おまえ、アメコミのスーパーヒーローかよ?
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる