夜通しアンアン

戸影絵麻

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第4章　海底原人

#5　アンアンと夏休み⑤

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「どっちにしろ、まずいだろ？　ダゴンと戦う気なら、その恰好じゃ」
　僕はアンアンから少し身を引いて、黄色い水着を顎でしゃくってみせた。
「んー、露出度の問題より、安定性があったほうがいいというわけか」
　アンアンがこぼれそうな己の胸を、両手のひらで支えてぷるぷるさせながら言う。
　うは。
　だからやめろって、そうやって僕を刺激するのは。
「よし、待ってろ。着替えてくる」
　意を決したように腰を上げると、いつものモンローウォークで出ていった。
　戻ってきたのは、かなり時間が経ってからである。
　再びパソコンでダゴンの画像などを見ていた僕を、
「これでどうだ？」
　そう、アンアンが呼んだ。
「ぶ」
　振り向きざま、僕は反射的に鼻を押さえた。
　鼻血が出るかと思ったからである。
「これなら、安定性は抜群だぞ」
　右手をうなじに、左手をくびれた腰に当て、しなをつくってアンアンが言った。
「それ…水着なの？」
　返す言葉が出てこない。
　アンアンが身に着けているのは、ほとんど紐だけでできている奇妙なコスチュームだった。
　布があるのは乳首のところと股間のVゾーンだけ。
　あとは無数の細い革紐が、複雑な曲線を描いてその豊満バディをしぼりあげている。
　それは、水着というより、SMの女王様が身に着けるボンテージ衣装の一種みたいだった。
　マシュマロのように白くやわらかいアンアンの身体を締めつける真紅の紐。
　乳房など、根元から何重にも締め上げられて、あたかもロケットみたいに突き出してしまっている。
「着るのに時間がかかるということは、一度着たらなかなか脱げないということだろう？」
　ロケットおっぱいを僕のほうに突き出して、自慢げにアンアンが言う。
「そりゃそうだけど…」
　なるほど確かにここまでがんじがらめにされていたら、いくらブラがちっちゃくても、戦闘の途中でずれたりすることはあるまい。
　しかし、こいつ、この格好でほんとに泳ぐつもりなのか…？
　警察は大丈夫だろうか。
　わいせつ物陳列罪で捕まるんじゃなかろうか。
　あまりといえばあまりにエロい格好に、僕は立ち上がれなくなっていた。
　息子がてきめんに反応し始めたからである。
　と、そんな僕の変化に気づいたのか、僕の前に片膝をつくと、アンアンがすれすれまで顔を近づけ、にいっと笑うと小声でささやいた。
「やっぱり可愛いな、元気は。魔界の者たちとは大違いだ。あたしはそんなおまえが、大好きだよ」
　その後どうやら軽くキスまでされてしまったようだ。
　だが、アンアンが立ち去った後も、僕はしばらく動けないでいた。
　あふれ出る鼻血を手のひらで押さえていたからである。
　

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