106 / 249
第6章 アンアン魔界行
#11 アンアン、百鬼夜行②
しおりを挟む
「下見って、ハワイまで?」
僕が横から口を出すと、
「ゴールドコーストと迷ったんだけど、貿易風の向きとかさ、いろいろあって」
阿修羅が、形よく尖った鼻の頭を指先でかいた。
貿易風?
てことは、おまえ、空飛んでハワイまで行ったのかよ!
「にしてもアンアン、あんたこそどうしたの? なんかすっごく顔色悪いよ? ああ、その恰好からして、二人で徹夜でニャンニャンしてたとか?」
ニャンニャン?
それって、いつの言葉だよ?
もはや死語を通り越して化石だろ?
「そんなんじゃない。ラスがさらわれた。犯人は前鬼と後鬼だ」
「ラスってだれ?」
「生後0か月の、あたしの愛犬、ラスプーチンだ。目が3つあって、額に角もある」
「ってそれ、犬じゃないんじゃない? 第一、名前からして超ヤバそうだし」
「いや、たぶん犬だと思う。おまえが旅に出ているうちに、蚊トンボのとこの太郎が産んだのをもらって、飼ってたんだ」
「太郎って、名前からしてオスって気がするけど…」
「ああ。だが、本当に太郎が産んだのだから、仕方がない」
「それにしても…」
無駄な追及をやめ、阿修羅が顎の手を当てた。
「前鬼後鬼っていったら、あれでしょ? 去年の魔界格闘技選手権の優勝者。確か鬼の夫婦だったよね」
「ああ。地獄界にタイトルを奪われたって、うちの親父が激怒してた覚えがある」
「そのチャンピオン・ペアが、なんで犬を拉致しなきゃならないわけ?」
「知らないよ。とりあえず、前鬼の腕は引っこ抜いてやった。庭に転がってるから、欲しかったら持っていけ」
「ふふふふ、アンアンらしいね。あ、わかった。それで、私に手伝ってほしいと? そういうことなのね?]
茶目っ気たっぷりに、阿修羅がアンアンの顔を下からのぞき込む。
「はあ? まだ何も頼んでないぞ。あたしはこの元気と一緒に…」
「いいっていいって! 遠慮しなくても! あ、いいこと考えた! ついでにあの蚊トンボも呼んじゃおうか。
そうすりゃ、海水浴の代わりになるじゃない!」
は?
魔界行きが、海水浴の代わり?
僕はその大胆な発言に舌を巻く思いだった。
さすが究極の破壊神。
スケールが違う。
というか、感覚がずれすぎている。
「遊びじゃないんだぞ。地獄界のやつらは、魔人どもよりたちが悪い。強敵だ」
眉をひそめて、アンアンがたしなめた。
が、男の時はまだしも、女阿修羅には脅しなんてききっこない。
「だから面白いんじゃない。よし、決めた。じゃ、蚊トンボに電話するね。今からすぐ来いって」
スマホを耳に当て、円を描いて歩き始めた阿修羅を横目で見ながら、アンアンが僕にささやいた。
「ということなら、元気、おまえも一緒に行ってくれるよな? そう。魔界まで」
僕が横から口を出すと、
「ゴールドコーストと迷ったんだけど、貿易風の向きとかさ、いろいろあって」
阿修羅が、形よく尖った鼻の頭を指先でかいた。
貿易風?
てことは、おまえ、空飛んでハワイまで行ったのかよ!
「にしてもアンアン、あんたこそどうしたの? なんかすっごく顔色悪いよ? ああ、その恰好からして、二人で徹夜でニャンニャンしてたとか?」
ニャンニャン?
それって、いつの言葉だよ?
もはや死語を通り越して化石だろ?
「そんなんじゃない。ラスがさらわれた。犯人は前鬼と後鬼だ」
「ラスってだれ?」
「生後0か月の、あたしの愛犬、ラスプーチンだ。目が3つあって、額に角もある」
「ってそれ、犬じゃないんじゃない? 第一、名前からして超ヤバそうだし」
「いや、たぶん犬だと思う。おまえが旅に出ているうちに、蚊トンボのとこの太郎が産んだのをもらって、飼ってたんだ」
「太郎って、名前からしてオスって気がするけど…」
「ああ。だが、本当に太郎が産んだのだから、仕方がない」
「それにしても…」
無駄な追及をやめ、阿修羅が顎の手を当てた。
「前鬼後鬼っていったら、あれでしょ? 去年の魔界格闘技選手権の優勝者。確か鬼の夫婦だったよね」
「ああ。地獄界にタイトルを奪われたって、うちの親父が激怒してた覚えがある」
「そのチャンピオン・ペアが、なんで犬を拉致しなきゃならないわけ?」
「知らないよ。とりあえず、前鬼の腕は引っこ抜いてやった。庭に転がってるから、欲しかったら持っていけ」
「ふふふふ、アンアンらしいね。あ、わかった。それで、私に手伝ってほしいと? そういうことなのね?]
茶目っ気たっぷりに、阿修羅がアンアンの顔を下からのぞき込む。
「はあ? まだ何も頼んでないぞ。あたしはこの元気と一緒に…」
「いいっていいって! 遠慮しなくても! あ、いいこと考えた! ついでにあの蚊トンボも呼んじゃおうか。
そうすりゃ、海水浴の代わりになるじゃない!」
は?
魔界行きが、海水浴の代わり?
僕はその大胆な発言に舌を巻く思いだった。
さすが究極の破壊神。
スケールが違う。
というか、感覚がずれすぎている。
「遊びじゃないんだぞ。地獄界のやつらは、魔人どもよりたちが悪い。強敵だ」
眉をひそめて、アンアンがたしなめた。
が、男の時はまだしも、女阿修羅には脅しなんてききっこない。
「だから面白いんじゃない。よし、決めた。じゃ、蚊トンボに電話するね。今からすぐ来いって」
スマホを耳に当て、円を描いて歩き始めた阿修羅を横目で見ながら、アンアンが僕にささやいた。
「ということなら、元気、おまえも一緒に行ってくれるよな? そう。魔界まで」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
85
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる