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第6章 アンアン魔界行
#20 アンアン、百鬼夜行⑪
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なんせ、魔界最強の美少女戦士ふたり組の乱舞である。
すべての餓鬼が塀にへばりついた肉片と化すのに、ものの3分とかからなかった。
その間に、アンアンが10回、阿修羅が15回、ふたり合わせて計15回のパンチラを披露しており、僕と一ノ瀬は仲よく鼻血を出して勃起してしまったものだった。
それはともかく。
「ガネーシャ、終わったぞ」
店の中に戻ってアンアンが声をかけると、象の神様が大きな手提げ袋を抱えて、カウンターの向こうからよっこらせとばかりに丸っこい姿を現した。
「ありがとう。これはお礼だ。あり合わせだが、道中の腹の足しにでもしておくれ」
中を覗いてみると、干し肉やら果物屋らがいっぱい入っていた。
「悪いな。恩に着る」
受け取った手提げ袋を、アンアンが一ノ瀬に押しつけた。
「ところで、ここからネオシャンハイに行くには、やはり舟がいちばんなのだろうな?」
「そうだな。陸路は砂漠が続くうえに、今は砂虫たちの産卵シーズンだからな。多少は魔物も出るだろうが、河下りのほうが安全だし、早いと思う」
「ネオ上海行の船があれば、乗せてほしいのだが」
「ああ、それなら、夕方の定期便があと1時間もすれば出る。今から波止場に急げば、十分間に合うはずだ」
「色々世話になった。用件済んだら、帰りにまた寄らせてもらう」
「待て。姫」
片手を上げて店を出ようとしたアンアンを、ガネーシャが引き留めた。
「ん? なんだ?」
「さっき、愛犬がどうとか言ってなかったか?」
「ああ。あたしの飼ってた犬のラスが、鬼にさらわれたんだ。前鬼の腕は引っこ抜いてやったが、その隙に後鬼に拉致された。あいつら、絶対に許さない。地獄の底まで追い詰めてやる」
あの時の怒りを思い出したのか、アンアンの頬にさっと血の気が上った。
「犬って、どんなのだ?」
何か心当たりでもあるのか、探るような口調で、ガネーシャがたずねた。
「おでこに小さな角が生えてる、それから、目が3つある。色は茶色で、まだ産まれたばかりの土佐犬だ」
「角だと? しかも、目が3つ?」
ガネーシャの長い鼻が、物言いたげにひくひくうごめいた。
「姫よ、そりゃあ、土佐犬なんかじゃない」
やがて、声を潜めるようにして、そう言った。
「犬じゃない? みんなそう言うけど、じゃ、ラスの正体は、いったい何なんだ?」
「わからないか?」
ガネーシャのつぶらな瞳が、じいっとアンアンを見た。
「いや、さっぱり」
アンアンが、肩をすくめてみせた。
「麒麟だよ。それは、あの神獣の、麒麟の仔に間違いない」
「麒麟?」
阿修羅が横で頓狂な声を上げた。
「ちょっと、やばいじゃん! 『麒麟の仔生まれし時、天地は滅ぶ』って、確か魔界経典にそう書いてなかったっけ?」
すべての餓鬼が塀にへばりついた肉片と化すのに、ものの3分とかからなかった。
その間に、アンアンが10回、阿修羅が15回、ふたり合わせて計15回のパンチラを披露しており、僕と一ノ瀬は仲よく鼻血を出して勃起してしまったものだった。
それはともかく。
「ガネーシャ、終わったぞ」
店の中に戻ってアンアンが声をかけると、象の神様が大きな手提げ袋を抱えて、カウンターの向こうからよっこらせとばかりに丸っこい姿を現した。
「ありがとう。これはお礼だ。あり合わせだが、道中の腹の足しにでもしておくれ」
中を覗いてみると、干し肉やら果物屋らがいっぱい入っていた。
「悪いな。恩に着る」
受け取った手提げ袋を、アンアンが一ノ瀬に押しつけた。
「ところで、ここからネオシャンハイに行くには、やはり舟がいちばんなのだろうな?」
「そうだな。陸路は砂漠が続くうえに、今は砂虫たちの産卵シーズンだからな。多少は魔物も出るだろうが、河下りのほうが安全だし、早いと思う」
「ネオ上海行の船があれば、乗せてほしいのだが」
「ああ、それなら、夕方の定期便があと1時間もすれば出る。今から波止場に急げば、十分間に合うはずだ」
「色々世話になった。用件済んだら、帰りにまた寄らせてもらう」
「待て。姫」
片手を上げて店を出ようとしたアンアンを、ガネーシャが引き留めた。
「ん? なんだ?」
「さっき、愛犬がどうとか言ってなかったか?」
「ああ。あたしの飼ってた犬のラスが、鬼にさらわれたんだ。前鬼の腕は引っこ抜いてやったが、その隙に後鬼に拉致された。あいつら、絶対に許さない。地獄の底まで追い詰めてやる」
あの時の怒りを思い出したのか、アンアンの頬にさっと血の気が上った。
「犬って、どんなのだ?」
何か心当たりでもあるのか、探るような口調で、ガネーシャがたずねた。
「おでこに小さな角が生えてる、それから、目が3つある。色は茶色で、まだ産まれたばかりの土佐犬だ」
「角だと? しかも、目が3つ?」
ガネーシャの長い鼻が、物言いたげにひくひくうごめいた。
「姫よ、そりゃあ、土佐犬なんかじゃない」
やがて、声を潜めるようにして、そう言った。
「犬じゃない? みんなそう言うけど、じゃ、ラスの正体は、いったい何なんだ?」
「わからないか?」
ガネーシャのつぶらな瞳が、じいっとアンアンを見た。
「いや、さっぱり」
アンアンが、肩をすくめてみせた。
「麒麟だよ。それは、あの神獣の、麒麟の仔に間違いない」
「麒麟?」
阿修羅が横で頓狂な声を上げた。
「ちょっと、やばいじゃん! 『麒麟の仔生まれし時、天地は滅ぶ』って、確か魔界経典にそう書いてなかったっけ?」
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