6 / 32
#5
しおりを挟む
そういえば、日付を言ってなかったっけ。
ちなみに、この事件が起こったのは、2021年7月23日月曜日、夏休み初日のこと。
なんで夏休みなのに学校に来てるのかといえば、そこは田舎の悲しさ。
家に居ても退屈だからである。
もちろん部活目的の子も多い。
でも、私と翔ちゃんは帰宅部なので、図書室が目当てだった。
休みが始まる前、ふたりで決めたのである。
夏休み中に、図書室の本を全部読んでしまおうと。
ここまで読んできて、翔ちゃんのこと、変なやつ、と思った人も多いかもしれない。
だから、彼女の名誉のためにひとつ言っておくと、翔ちゃんは本を読むのがびっくりするほど速い。
私が1冊読み終える頃には、3冊は読破してしまっているのが常なのだ。
しかも、お堅い自然科学系とか社会科学系とか、そんなのを好んで読むところがまた変わっている。
おそらく、と思う。
彼女の方が、私よりずっと脳細胞の数が多いのだ。
5分後。
私たちは犬の死骸を取り囲み、めいめい勝手な感想を述べ合っていた。
犬はバットで頭を潰されて瀕死の状態で、横倒しになって四肢をぴくぴく痙攣させている。
「どこから来たんだろ」
「首輪してるから、飼い犬なんだよな」
「頭割れて、脳味噌半分出てるんですけど」
「だよな。狂犬病より、矢守のほうが怖かったりして」
「けどさ、あの、脳味噌に絡まってるの、何だと思う? ソーメンみたいに見えるけど」
男子のひとりが指さした。
そう。
それは私もさっきから気になっていた。
犬の頭は頭蓋が陥没して、割れ目から灰色の脳味噌がはみ出ているのだが、その表面にうねうねと回虫みたいな白い生き物がいっぱいたかっていて、脳に小さな穴を開けてしきりに出たり入ったりしているのだ。
「寄生虫、みたいだね」
犬の傍らにしゃがみ込んで、翔ちゃんが言った。
「この子、これのせいでおかしくなったのかも」
「よせよ、翔子。触るなよ」
地面から棒切れを拾い上げた翔ちゃんに向かって、深瀬君が心配そうに声をかけた。
「保健所に引き取ってもらおうぜ。こいつ、何か病気持ってるかもしれないし」
ちなみに、この事件が起こったのは、2021年7月23日月曜日、夏休み初日のこと。
なんで夏休みなのに学校に来てるのかといえば、そこは田舎の悲しさ。
家に居ても退屈だからである。
もちろん部活目的の子も多い。
でも、私と翔ちゃんは帰宅部なので、図書室が目当てだった。
休みが始まる前、ふたりで決めたのである。
夏休み中に、図書室の本を全部読んでしまおうと。
ここまで読んできて、翔ちゃんのこと、変なやつ、と思った人も多いかもしれない。
だから、彼女の名誉のためにひとつ言っておくと、翔ちゃんは本を読むのがびっくりするほど速い。
私が1冊読み終える頃には、3冊は読破してしまっているのが常なのだ。
しかも、お堅い自然科学系とか社会科学系とか、そんなのを好んで読むところがまた変わっている。
おそらく、と思う。
彼女の方が、私よりずっと脳細胞の数が多いのだ。
5分後。
私たちは犬の死骸を取り囲み、めいめい勝手な感想を述べ合っていた。
犬はバットで頭を潰されて瀕死の状態で、横倒しになって四肢をぴくぴく痙攣させている。
「どこから来たんだろ」
「首輪してるから、飼い犬なんだよな」
「頭割れて、脳味噌半分出てるんですけど」
「だよな。狂犬病より、矢守のほうが怖かったりして」
「けどさ、あの、脳味噌に絡まってるの、何だと思う? ソーメンみたいに見えるけど」
男子のひとりが指さした。
そう。
それは私もさっきから気になっていた。
犬の頭は頭蓋が陥没して、割れ目から灰色の脳味噌がはみ出ているのだが、その表面にうねうねと回虫みたいな白い生き物がいっぱいたかっていて、脳に小さな穴を開けてしきりに出たり入ったりしているのだ。
「寄生虫、みたいだね」
犬の傍らにしゃがみ込んで、翔ちゃんが言った。
「この子、これのせいでおかしくなったのかも」
「よせよ、翔子。触るなよ」
地面から棒切れを拾い上げた翔ちゃんに向かって、深瀬君が心配そうに声をかけた。
「保健所に引き取ってもらおうぜ。こいつ、何か病気持ってるかもしれないし」
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる