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第1話 溢れ出すもの
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うかつだった。
学校帰り、図書館に寄った。
そこでそのまま試験勉強をしていて、致命的な失敗に気づいた時には、すでに18時を過ぎていた。
校門は、18時きっかりに閉まって、警備会社の警備下に入る。
そうなると、中へ侵入するのはもう至難の業だ。
それでも、行くしかなかった。
明日の学年末試験最終日。
ーこれさえ覚えておけば満点だよー
そう言って先生が配ってくれた英語の例文集のプリントを、教室の机の中に置いてきてしまったのだ。
何を隠そう、私は英語が苦手である。
特にリスニングがダメなので、筆記で点数を稼ぐしかないのだが、その最後の希望のアイテムを学校に忘れてきてしまったというわけだ。
苦手だからと言って、英語を後回しにしたのがまずかった。
最初に取り掛かってさえいれば、もっと早くに忘れ物に気づいたはずなのに。
自分を呪うしかなかった。
ていうか。
でも。
と、走りながら、思い直す。
もともと悪いのは学校ではないか。
こんな大事な時に旧校舎の解体作業なんか始めるもんだから、そのとばっちりで、図書室が使えなくなってしまったのだ。
従来通り図書室さえ使用できれば、帰りにわざわざ市営図書館に寄る必要もなかったのだから…。
私は普段、神なんて信じない。
本当に神様が存在するのなら、この世から戦争とか貧困とか児童虐待とか、そういった悪いことすべてがとっくの昔になくなっているはずだから。
でも、そうでないのはひとえに神が不在である証拠。
そんなふうに思っているのだが、この時ばかりはほんの少しだけ、その信念を曲げたくなった。
息も絶え絶えに正門までたどり着いた時、ラッキーなことに、ちょうど中から担任の斎藤先生が出てくるところだったのだ。
「どうした島袋、おっかない顔して」
「わ、忘れ物、とりに来たんですけど」
レデイに向かっておっかない顏とはなんだとムッとしたけど、あえて口には出さない。
「なんだ、明日じゃダメなのか? もうセキュリテイ、セットしちまったんだけどな」
「そこをなんとか。テスト勉強に絶対必要なプリントなんです」
「明日の科目ってことか」
「英語のプリントです」
「ははあ、そういえばおまえ、同じ文系でも国社は得意なくせに英語音痴だったっけな」
「生粋の日本人なんで」
「ネトウヨみたいなこと言うなよ」
「なんでもいいですから、なんとか中へ入らせてくださいよ」
「無理言うなって」
「成績下がったら、先生のせいですよ。一生恨みます」
「仕様がねえなア」
押し問答の末、先生が管理会社に連絡してくれることになり、私は無事校内へ。
けどー。
今考えると、ほんとはあそこで引き返しておくべきだったのだ。
そうすれば、あの後、あんなー。
学校帰り、図書館に寄った。
そこでそのまま試験勉強をしていて、致命的な失敗に気づいた時には、すでに18時を過ぎていた。
校門は、18時きっかりに閉まって、警備会社の警備下に入る。
そうなると、中へ侵入するのはもう至難の業だ。
それでも、行くしかなかった。
明日の学年末試験最終日。
ーこれさえ覚えておけば満点だよー
そう言って先生が配ってくれた英語の例文集のプリントを、教室の机の中に置いてきてしまったのだ。
何を隠そう、私は英語が苦手である。
特にリスニングがダメなので、筆記で点数を稼ぐしかないのだが、その最後の希望のアイテムを学校に忘れてきてしまったというわけだ。
苦手だからと言って、英語を後回しにしたのがまずかった。
最初に取り掛かってさえいれば、もっと早くに忘れ物に気づいたはずなのに。
自分を呪うしかなかった。
ていうか。
でも。
と、走りながら、思い直す。
もともと悪いのは学校ではないか。
こんな大事な時に旧校舎の解体作業なんか始めるもんだから、そのとばっちりで、図書室が使えなくなってしまったのだ。
従来通り図書室さえ使用できれば、帰りにわざわざ市営図書館に寄る必要もなかったのだから…。
私は普段、神なんて信じない。
本当に神様が存在するのなら、この世から戦争とか貧困とか児童虐待とか、そういった悪いことすべてがとっくの昔になくなっているはずだから。
でも、そうでないのはひとえに神が不在である証拠。
そんなふうに思っているのだが、この時ばかりはほんの少しだけ、その信念を曲げたくなった。
息も絶え絶えに正門までたどり着いた時、ラッキーなことに、ちょうど中から担任の斎藤先生が出てくるところだったのだ。
「どうした島袋、おっかない顔して」
「わ、忘れ物、とりに来たんですけど」
レデイに向かっておっかない顏とはなんだとムッとしたけど、あえて口には出さない。
「なんだ、明日じゃダメなのか? もうセキュリテイ、セットしちまったんだけどな」
「そこをなんとか。テスト勉強に絶対必要なプリントなんです」
「明日の科目ってことか」
「英語のプリントです」
「ははあ、そういえばおまえ、同じ文系でも国社は得意なくせに英語音痴だったっけな」
「生粋の日本人なんで」
「ネトウヨみたいなこと言うなよ」
「なんでもいいですから、なんとか中へ入らせてくださいよ」
「無理言うなって」
「成績下がったら、先生のせいですよ。一生恨みます」
「仕様がねえなア」
押し問答の末、先生が管理会社に連絡してくれることになり、私は無事校内へ。
けどー。
今考えると、ほんとはあそこで引き返しておくべきだったのだ。
そうすれば、あの後、あんなー。
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