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第6部 淫蕩のナルシス

#20 虜

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 いつのまにか、窓の外には夕闇が迫っていた。
 それに合わせて、高い天井でシャンデリアが点り、大広間のあちこちに置いてあるガラス製の照明器具も淡い光を放ち始めた。
 が、広間は隅々まで完全に明るくなることはなく、黒々とした闇が広大な空間のそこここにわだかまっていた。
 そのせいで、鏡に映る杏里の裸身は更に妖艶さを増したようだった。
 体の起伏が立体的になり、以前よりも胸や尻のふくらみが強調されているのだ。
「はい、よくできました」
 杏里の返事に満足げにうなずくと、ヤチカがぱちぱちと拍手をした。
「たっぷり可愛がってあげるね」
 にんまりと微笑んで、いった。
 杏里は震えながら待った。
  ヤチカが近づいてくる。
 私・・・触られるんだ。
 杏里は期待と不安で鼓動が高まるのを感じていた。
 ヤチカさんのあの指が、私の・・・。
 が、ヤチカが最初に責めてきたのは、脇の下だった。
 杏里に両手を上げさせると、長い舌で脇を舐め始めたのだ。
「そ、そんなとこ、汗臭いから・・・」
「ううん、そんなことないわ。とってもいい匂いよ」
 いいながら、ヤチカの舌は杏里の鎖骨、首、うなじへとのぼっていく。
「じらさないで・・・」
 杏里は泣き声で懇願した。
 こんなに硬くして待ってるのに、どうしてここを、乳首を触ってくれないの?
 そう叫びだしそうになるほどだった。
 思わず自分で乳房をつかもうとした。
 その手をヤチカが払いのける。
「自分で触るのはダメよ。これはゲームなの。杏里ちゃん、いい? 今度は他人に触られる番。本当に気持ちよくなりたかったら、わたしのいう通りになさい」
「で、でも・・・」
 ヤチカは杏里の右手を取ると、再び舌での愛撫に取りかかった。
 腕の付け根から上腕部、肘の裏側の柔らかな部分、そして指の一本一本まで、丁寧に舐めていく。
 くすぐったさが快感に変わり始めていた。
 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・。
 杏里の息遣いが次第に激しさを増していく。
 眩暈がする。
 体の震えがとまらない。
 徐々にヤチカの舌が下降し始めた。
 肩甲骨、鎖骨の間を通り、鳩尾、そして臍を舐めまわす。
「おなかがひくひくしてるよ」
 口を離すと、そんなことをいってくすりと笑った。
 舌の動きに呼応するように、両手が後ろに回り、杏里のよく張った尻を撫で回し始めた。
 尻の左右の肉をつかみ、もみしだくように愛撫する。
「ああん・・・」
 杏里は身もだえした。
「柔らかくって、とってもすべすべしてるね。こんなにエッチな身体、初めて」
 ヤチカは巧妙にいちばん敏感な部分を避けていく。
 乳房と乳首、陰部だけを残して、杏里の全身を舐め、撫でる。
「お、お願い・・・」
 気がつくと、そう口走っていた。
「そんないじわるなこと、しないで。早く・・・」
 鏡に、全裸で突っ立った自分の身体が映っている。
 突き出したふたつの乳房。
 その先端で震える尖った乳首。
 油を浴びて濡れそぼった、トルソのような裸体。
 やわらかな曲線で形づくられた、成熟した女と少女の初々しさの同居した、アンバランスな肉の彫像だ。
 そこに白い蛇のようにヤチカがまとわりついている。
「早く、何?」
 杏里の太腿を舐めていたヤチカが顔を上げて、訊く。
「ちゃんと口でいわなきゃ、伝わらないよ」
 杏里の頭にかっと血がのぼった。
「早くいじめて。杏里の・・・乳首を・・・」
 ようやく、それだけを口にした。
 ヤチカが立ち上がった。
「わかったわ」
 杏里の重い乳房をそっと下から掌ですくいあげると、乳首の先にふうっと息をかけてきた。
「杏里ちゃん、あなたまだ中学生よね」
 ヤチカが杏里の潤んだ瞳をのぞきこむ。
「中学生が、こんなに乳首立たせちゃって、恥ずかしくないの?」
 指で、右の乳首の先をぴんと弾かれた。
 痺れが駆け抜ける。
「あう」
 杏里が小さく呻いた。
 ヤチカが人差し指で、ゆっくりと乳輪に沿って、杏里の乳首の根元を撫でまわす。
「さ、触って・・・」
 たまらず杏里はつぶやいた。
「こんなふうに?」
 突然、ヤチカが乱暴に両の乳首をつまんだ。
 快感が脳天を突き抜けた。
「杏里ちゃんったら、いやらしい。こんなにコチコチにしちゃって。じゃ、これでどう? 気持ちいい?」
 杏里の乳首をふたついっぺんに引っ張りながら、ヤチカが上下に激しく振り動かした。
「ほら、勃起乳首、もうちぎれそうだよ!」
「あああッ」
 杏里は白い喉を見せてのけぞった。
「いい・・・!」
 胸を自分から突き出して、叫んだ。
 ヤチカが乳房をわしづかみにした。
 杏里のふくよかすぎる胸の肉が、ヤチカの掌からはみ出した。
 強い力で揉みしだかれる。
 はぁはぁはぁはぁ・・・。
 ヤチカが乳房をしぼるようにして握り、乳首を突出させた。
 左の乳首を力いっぱいつねりながら、右の乳首に吸いついた。
 舌で転がし、ちゅうちゅう音を立てて吸い始める。
 その間も左の乳首は、乳房自体が変形しそうなほど強くつねられ続けている。
 前歯で噛まれた。
 杏里の体が跳ねた。
 すぐに今度は右の乳首をつままれ、左の乳首を吸われた。
「あうっ」
 またしても前歯で先端の丸い部分を噛まれ、杏里は裸体を海老のようにのけぞらせた。
 ヤチカが離れる。
 杏里はカーペットの上に崩れ落ちた。
 うずくまったまま、ひくひくと体を震わせた。
「もう、やめる?」
 頭上でヤチカの声がした。
 杏里は腫れた乳房を腕に抱き、小刻みに震えている。
「なんだか、ちょっと飽きてきちゃったな。杏里ちゃんが何もいわないなら、わたしはここでやめてもいいんだけど」
「・・・いや」
 うなだれたまま、杏里はつぶやいた。
 こんな・・・。
 こんな状態で放り出されたら・・・。
 私の、この、狂いそうなくらい火照った体は、どうなるの?
 そう思った。
 股間で襞という襞がぴくぴく震えているのがわかる。
 たらたらと流れる愛液が太腿の内側を伝い、床に染みをつくっている。
「どうしたの? よく聞こえなかったわ。やめるの? やめないの?」
 意地悪く、ヤチカがいう。
「もっと・・・」
 杏里は小声で答えた。
「もっと、いろいろ、してほしい、です・・・」
「たとえば?」
 ヤチカが横に膝をつき、杏里の顎に手をかけ、顔を上向かせた。
 杏里の頬は涎で濡れて光っている。
 それをひと舐めすると、ヤチカがたずねた。
「たとえば、どうしてほしいの? 今度は、あそこを触ってほしい? 私の長くていやらしい舌で、奥の奥まで舐めてほしいの?」
 うなずく杏里。
「じゃ、はっきりいってごらんなさい。今度は、『私のあそこを、舐めてください』って」
 杏里はいやいやをするように、首を横に振った。
「そ、そんな、は、恥ずかしいこと・・・」
「いわないなら、これで終わりね」
 ヤチカが立ち上がろうとする。
「今更、恥ずかしいも何もないと思うけど。杏里ちゃん、今のあなたは、はっきりいって、娼婦以下だわ」
「ま、待って」
 両腕を広げると、杏里はヤチカの首筋にしなだれかかった。
 痛いくらいに張った乳房をヤチカの胸にこすりつける。
「杏里ちゃんって、本当にエッチな子」
 ふふっとヤチカが笑う。
 その耳元に口を近づけると、杏里はうわ言のように囁いた。
「今度は、私のあそこを、触ってください・・・。もっと、もっと、いじめてください・・・もっともっと、気持ちよくしてください・・」
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