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第7部 蹂躙のヤヌス

#59 監禁調教③

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 どうやら猫は、杏里の太腿の間に割って入りたがっているようだ。
 そこが固く閉じているのを知ると、もの問いたげに杏里を見上げて、また、みゃあと鳴いた。
「何なの、あなた? おなか空いてるの?」
 杏里はペットというものを飼ったことがない。
 だから猫をこれほど間近で見るのも初めてだ。
 太腿の外側に背中を摺り寄せられると、こんな不細工な猫でもどことなく可愛くなってくるから不思議だった。
 だから、特に警戒するでもなく、猫が丸い頭を突っ込んでくるのに合わせて、膝頭を左右に開いていた。
「うわ、くすぐったい」
 ふわふわの毛皮が内股に触れ、杏里は思わずそう声を上げた。
 なんて気持ちいいの。
 縛られてなきゃ、両手で抱き上げられるのに。
 猫はぐるぐる首を回して、頭を杏里の股間や太腿の内側にすりつけてくる。
 喉をごろごろ鳴らしているのは、機嫌のいい証拠だろうか。
 無意識のうちに、杏里は腿で猫の頭を挟み込んでいた。
 ぬいぐるみを股に挟んだみたいで、ふかふかして気持ちがいい。
 しかも、このぬいぐるみは生きていて、温かいのだ。
 本来なら抱きしめて頬ずりしたいところである。
  そんなことを思ってつい気を緩めていた杏里だったが、次の瞬間、危うくあっと声を上げそうになった。
 下着をつけていないむき出しの会陰部に、異様な感触を覚えたからだった。
 ざらりとした生温かいもので舐め上げられるみたいな感じ。
 まるで股間にサンドペーパーでも当てられたかのようだ。
「ちょ、ちょっと、猫ちゃん」
 あわてて体の向きを変えようとしたが、もう遅かった。
 猫はしっかり杏里の太腿と太腿の間に入り込んでしまっている。
 大きな体を丸くして、まるで石にでもなったかのように動かない。
 べろり。
 猫がまた杏里の局部を舐めてきた。
 割れ目に沿って、意外な強さで舐め上げる。
「くっ」
 杏里は上体を折った。
 ただでさえ媚薬で敏感になってしまっている皮膚に、猫の紙やすりのような舌はこたえた。
 もちろん、痛いのではない。
 気持ちいいのである。
 しかも、長い猫の舌は肛門に近い部位からリングに押し出された陰核までの間を、正確になぞってくる。
 ぴちゃぴちゃ音を立てて、ミルクを舐める時のようなスピードで、それを繰り返されたから、たまらない。
「や、やめて」
 杏里は、猫に向かって反射的にそう抗議の声を上げていた。
 が、もちろん猫に言葉が通じるはずもない。
 それどころか、割れ目からにじみ出てきた透明な汁がお気に召したのか、猫の舌の動きが更に熱心になる。
 媚薬成分を含んだ杏里の愛液は、猫にとってマタタビと同じ効果があるのかもしれなかった。
「ああああ」
 ざらついた舌で執拗に肉襞のあいだをかき回され、杏里はもぞもぞと尻を動かした。
 猫の舌は容赦なかった。
 肥大した陰核を責めると淫汁の分泌量が増えることにいち早く気づいたらしく、皮の剥けた豆を噛んできた。
「だ、だめっ!」
 ビクンと硬直する杏里。
 エクスタシーの高まる気配とともに強くなってきたのは、一時収まりかけていた尿意である。
「もう、よして! あっちへ行って! でないと私」
 身も世もなく全身をよじる。
 が、鎖が鳴るばかりで手足は相変わらず不自由なままだ。
 その間にも、猫は舌を蜜壺の中にまで挿入し始めている。
 中にわき出した芳醇な愛液の匂いを嗅ぎつけたのに違いない。
 杏里が身をよじるたびに、丸いふたつの乳房が生き物のように跳ねた。
 赤剥けになり、びんびんに尖った乳首が、愛撫を欲して原価にまで膨張している。
 下腹に薄い筋肉が浮き出てきて、ひくひくと波打ち始めている。
「どうしよう」
 杏里はすすり泣いた。
「もう、がまん、できない」
 知らず知らずのうちに、太腿が全開になっている。
 M字開脚の体勢で、腰を前につき出していた。
 そのむき出しになった陰部に、獲物に飛びかかるように猫がむしゃぶりついた。
 前足で杏里の股を押し開き、股間に顔を埋めてくるさまは人間の男と変わらない。
「あふっ」
 ふいに陰核に牙を当てられ、その痺れるような快感に杏里は思わず床から尻を浮かせた。
 あっと思った時には、ダムが決壊していた。
 黄金色の熱湯が、凄まじい勢いで猫の口めがけて噴き出した。
「にゃんっ!」
 アンモニア臭のする液体を顔にぶちまけられ、悲鳴を上げて飛びのく猫。
 杏里の小水が激しい音を立てて、猫の居た辺りの床に、湯気の立つ水たまりをつくっていく。
 ふすまの開く音がしたのは、その時だった。
「あらあら、ひどいことになってるわね」
 振り仰ぐと、背後にグレーのスーツ姿の美里が立っていた。
 虫けらを見るような冷たい視線が、小便を垂れ流す杏里に突き刺さった。
「自分で汚したんだから、自分で綺麗にしてもらわなきゃね」
「ご、ごめんなさい…」
 杏里は真っ赤になって、うなだれた。
 放尿はまだ続いている。
 そのことが、たまらなく恥ずかしい。
「自由にしてあげるから、その舌で舐めとるのよ」
 さも当然といった口調で、美里が言う。
 首輪だけ残して、杏里の手足から拘束具を外す。
 首輪のリードの先を、美里が取った。
「さ、歩いてごらん。四つん這いになって、犬みたいにね」


 
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