179 / 288
第8部 妄執のハーデス
#28 反乱
しおりを挟む
「そんなやつ、放っておけばいい」
よく通る声が、教室の中に響き渡った。
杏里は目を細め、、声の主を求めてこうべをめぐらせた。
窓側の最前列からこちらを見つめている少年と、目が合った。
長身でやせ型の、落ちついた雰囲気の少年である。
少し長めの前髪の下で、銀縁の眼鏡が光っている。
「佐伯君…」
隣の席で、唯佳がつぶやくのが聞こえてきた。
佐伯?
ああ。
あの子ね。
杏里は思い出した。
まだほとんど名前を覚えていないクラスメートの中でも、佐伯忠雄の名にはかすかに聞き覚えがある。
成績優秀で、しかもクラス委員。
クラスの中で、佐伯は、確かそんなポジションだったはずだ。
「それより、いい機会だ。今のこの状況を、なんとかしてみないか」
佐伯がぐるりとクラスメートたちを見渡して、意味ありげに言った。
「きょうは璃子がいないから、代わりに俺が提案しよう。幸い、まだ30分近く、社会の授業時間は残っている。ここで今、何が起こっても、他の教師たちに乱入される心配はないだろう。だから、この閉塞的な状況を打ち破るのは、今しかない」
「この状況って…?」
佐伯の隣の席のポニーテールの少女がたずねた。
「美里先生がいなくなって、俺たちが置かれたこの状況さ」
何のことを言っているの?
顔にその疑問が浮かんだのだろう。
それにいち早く気づいたのか、佐伯がきっと杏里を睨みつけた。
「正直に言おう。美里先生は、いわば俺たちの防波堤だった。クールに見えて、俺たちの苦悩をいちばんわかってくれていた。みんなもそうだろう? 爆発寸前の体と心を、何度先生の面談に救われたことか。ところが、その先生が消えてしまった。そして、代わりにやってきたのが、あの女だ。あの女は、いわば先生とは真逆の存在だ。あの姿を見ろ。まるで俺たちに襲ってくれと言わんばかりじゃないか。あいつといるだけで、俺たちのストレスはどんどん溜まっていく。それは、俺たちが懸命に抑え込んでいる獣の部分を、いたずらにあいつが引き出そうとするからだ」
あの女って、笹原かよ。
あ、俺もそれ、思ってた。
あいつ見てると、ムラムラがたまんない。
同感。このムラムラ感、どうにかしてえよな。
さすが佐伯、よく言った。おまえのゆーとおり。
いくらなんでもエロ過ぎるよな。あいつガチで巨乳過ぎ。
いつもパンツ見せて歩いてるし、だいたいあの身体、中学生のレベルじゃないし。
まさにエロ原。
何人かの男子が相づちを打つ。
私も。
私もそう思うよ。
あの子、璃子も言ってたけど、なんだか娼婦みたい。
絶対、エンコーとかしてるよね。
顔だってさ、いかにも処女じゃありませんって、ツラしてるもの。
先生も、きっと何かやらしいことされたんじゃない? それでゼッチョーに達して、気絶しちゃったとか。
口々に女子もしゃべり出す。
予想はしていたが、誰ひとりとして杏里に好感を抱いている者はいないようだ。
ただひとり、心配そうに杏里を見やる、隣の席の唯佳を除いては。
「それで、佐伯君は、杏里をどうするつもりなの?」
恐る恐るといった感じで、その唯佳がたずねた。
「決まってるだろ」
佐伯が整った顔に酷薄な笑みを浮かべた。
「今から俺たちみんなでその女を犯すんだ。そう。そいつに、美里先生の代わりを務めてもらおうというわけさ」
よく通る声が、教室の中に響き渡った。
杏里は目を細め、、声の主を求めてこうべをめぐらせた。
窓側の最前列からこちらを見つめている少年と、目が合った。
長身でやせ型の、落ちついた雰囲気の少年である。
少し長めの前髪の下で、銀縁の眼鏡が光っている。
「佐伯君…」
隣の席で、唯佳がつぶやくのが聞こえてきた。
佐伯?
ああ。
あの子ね。
杏里は思い出した。
まだほとんど名前を覚えていないクラスメートの中でも、佐伯忠雄の名にはかすかに聞き覚えがある。
成績優秀で、しかもクラス委員。
クラスの中で、佐伯は、確かそんなポジションだったはずだ。
「それより、いい機会だ。今のこの状況を、なんとかしてみないか」
佐伯がぐるりとクラスメートたちを見渡して、意味ありげに言った。
「きょうは璃子がいないから、代わりに俺が提案しよう。幸い、まだ30分近く、社会の授業時間は残っている。ここで今、何が起こっても、他の教師たちに乱入される心配はないだろう。だから、この閉塞的な状況を打ち破るのは、今しかない」
「この状況って…?」
佐伯の隣の席のポニーテールの少女がたずねた。
「美里先生がいなくなって、俺たちが置かれたこの状況さ」
何のことを言っているの?
顔にその疑問が浮かんだのだろう。
それにいち早く気づいたのか、佐伯がきっと杏里を睨みつけた。
「正直に言おう。美里先生は、いわば俺たちの防波堤だった。クールに見えて、俺たちの苦悩をいちばんわかってくれていた。みんなもそうだろう? 爆発寸前の体と心を、何度先生の面談に救われたことか。ところが、その先生が消えてしまった。そして、代わりにやってきたのが、あの女だ。あの女は、いわば先生とは真逆の存在だ。あの姿を見ろ。まるで俺たちに襲ってくれと言わんばかりじゃないか。あいつといるだけで、俺たちのストレスはどんどん溜まっていく。それは、俺たちが懸命に抑え込んでいる獣の部分を、いたずらにあいつが引き出そうとするからだ」
あの女って、笹原かよ。
あ、俺もそれ、思ってた。
あいつ見てると、ムラムラがたまんない。
同感。このムラムラ感、どうにかしてえよな。
さすが佐伯、よく言った。おまえのゆーとおり。
いくらなんでもエロ過ぎるよな。あいつガチで巨乳過ぎ。
いつもパンツ見せて歩いてるし、だいたいあの身体、中学生のレベルじゃないし。
まさにエロ原。
何人かの男子が相づちを打つ。
私も。
私もそう思うよ。
あの子、璃子も言ってたけど、なんだか娼婦みたい。
絶対、エンコーとかしてるよね。
顔だってさ、いかにも処女じゃありませんって、ツラしてるもの。
先生も、きっと何かやらしいことされたんじゃない? それでゼッチョーに達して、気絶しちゃったとか。
口々に女子もしゃべり出す。
予想はしていたが、誰ひとりとして杏里に好感を抱いている者はいないようだ。
ただひとり、心配そうに杏里を見やる、隣の席の唯佳を除いては。
「それで、佐伯君は、杏里をどうするつもりなの?」
恐る恐るといった感じで、その唯佳がたずねた。
「決まってるだろ」
佐伯が整った顔に酷薄な笑みを浮かべた。
「今から俺たちみんなでその女を犯すんだ。そう。そいつに、美里先生の代わりを務めてもらおうというわけさ」
0
あなたにおすすめの小説
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる