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第8部 妄執のハーデス
#52 バトルロイヤル⑥
警備員や警官たちが、ラウンジを包囲するように動き始めた。
「そろそろ、降りたほうがよさそうだね」
柚木が言い、エスカレーターのほうをあごで示してみせた。
「そうだな」
由羅が杏里の手を取って、マコトを肩で押しのけ、歩き出す。
と、また自動ドアが開いて、新たな来客たちを吐き出した。
杏里たちと同じくらいの年恰好の少女たちが、何組かペアで入ってきたのだ。
コートに身を包んだ、驚くほど背の高い娘。
その逆に、一見、女子とは思えない相撲取りのような体格の者もいる。
新たに現れたのは4組は、杏里たちを無視すると、急き立てられるようにエスカレーターへと向かっていく。
全員そろったということなのだろうか。
警備員たちが、玄関口のシャッターを下ろし始めた。
分厚い鋼鉄のシャッターが2枚、容赦なく外界とホールを遮断していく。
外の光が遮断され、周囲が一気に薄暗くなった。
それを補うように、高い天井で新たな照明が灯り始める。
「行こう」
由羅がを握った手に力をこめる。
「うん」
うなずく杏里。
柚木たちに続いて2階下まで降りる。
リノリウムの床が広がる、無味乾燥な通路に出た。
すぐ左手が集合場所らしい。
『第2会議室』と書かれたプレートを確認して、中に入った。
開け放したドアの脇に警備員がふたり、立っていた。
その間をすり抜けようとした時、腕をつかまれ、左手首に細い金属の輪を嵌められた。
「認識票だ」
もの言いたげににらむ由羅に、そっけない口調で警備員が言う。
認識票?
杏里は手首の腕輪を見た。
シルバーの表面には、なるほど、ランダムに10桁ほどの数字が並んでいる。
こんなの、覚えろと言うほうが無理だろう。
中に入ると、そこは、窓のない殺風景な部屋だった。
20脚ほどのパイプ椅子と長机が、正面のホワイトボードに向けて並べられている。
ホワイトボードの前には演壇がひとつ。
だが、今はまだそこには誰も立っていない。
杏里たちが座ったのは、通路と反対側の壁際だった。
わざと最後列を取ったので、入ってくる連中を逐一観察することができる。
集まったのは、全部で17人。
あの3人組を1ユニットとして考えると、8組のペアである。
全国から集められたにしては、拍子抜けするほど少ない人数だ。
だが、逆に言うとこの8組は、委員会にとってそれほど厳選された問題児たちといえるのかもしれなかった。
トサカのような髪を振り立て、苛々と貧乏ゆすりしているマコト。
その横で顔を伏せているユウ。
泰然自若とした雰囲気の柚木と、その隣の怯えたリスみたいな美晴。
そして、相変らずぺちゃくちゃ私語に忙しいい3人娘たち。
時間になると、何十人もの警備員たちが部屋に入ってきて、ずらりと壁際に立ち並んだ。
こういう時はたいてい、プロジェクターの映像か何かで話が始まるのだろう。
お偉いさんは、どうせ現場には出てこないに違いない。
そう高をくくっていた杏里は、壇上に生身の人間が立ったのを見て驚いた。
カーキ色の制服に身を包んだ、体格のいい中年男性である。
いかめしい顔は、まるで削ぎ落した岩のようだ。
官僚というより、自衛隊の幹部か、戦時中の軍人みたいな雰囲気だった。
「みんな、集まったな」
17人を順に見回して、男が言った。
重い、腹の底に響くような声だった。
「私は、おまえたちの研修を担当する北条だ。まあ、何のために集められたのか、知らない者はいないと思うが。最初に、委員会の決定を伝えておく」
委員会の、決定?
何のことかしら?
杏里は緊張で身がすくむのを覚えた。
無意識のうちに由羅の手を求め、手探りしていた。
やっとその手を握りしめた時、北条と名乗った男が言った。
「我々には、おまえたちを個々に矯正している暇はない。外来種の脅威が、これまで以上に高まっているからだ。だから、おまえたちには、お互い同士、ここで殺し合いを演じてもらうにことする。そう、最後のひと組になるまでだ。もちろん、勝ち残った者には、無条件の自由と新たな使命を授けてやる。みんな、そのつもりで、がんばってほしい」
「そろそろ、降りたほうがよさそうだね」
柚木が言い、エスカレーターのほうをあごで示してみせた。
「そうだな」
由羅が杏里の手を取って、マコトを肩で押しのけ、歩き出す。
と、また自動ドアが開いて、新たな来客たちを吐き出した。
杏里たちと同じくらいの年恰好の少女たちが、何組かペアで入ってきたのだ。
コートに身を包んだ、驚くほど背の高い娘。
その逆に、一見、女子とは思えない相撲取りのような体格の者もいる。
新たに現れたのは4組は、杏里たちを無視すると、急き立てられるようにエスカレーターへと向かっていく。
全員そろったということなのだろうか。
警備員たちが、玄関口のシャッターを下ろし始めた。
分厚い鋼鉄のシャッターが2枚、容赦なく外界とホールを遮断していく。
外の光が遮断され、周囲が一気に薄暗くなった。
それを補うように、高い天井で新たな照明が灯り始める。
「行こう」
由羅がを握った手に力をこめる。
「うん」
うなずく杏里。
柚木たちに続いて2階下まで降りる。
リノリウムの床が広がる、無味乾燥な通路に出た。
すぐ左手が集合場所らしい。
『第2会議室』と書かれたプレートを確認して、中に入った。
開け放したドアの脇に警備員がふたり、立っていた。
その間をすり抜けようとした時、腕をつかまれ、左手首に細い金属の輪を嵌められた。
「認識票だ」
もの言いたげににらむ由羅に、そっけない口調で警備員が言う。
認識票?
杏里は手首の腕輪を見た。
シルバーの表面には、なるほど、ランダムに10桁ほどの数字が並んでいる。
こんなの、覚えろと言うほうが無理だろう。
中に入ると、そこは、窓のない殺風景な部屋だった。
20脚ほどのパイプ椅子と長机が、正面のホワイトボードに向けて並べられている。
ホワイトボードの前には演壇がひとつ。
だが、今はまだそこには誰も立っていない。
杏里たちが座ったのは、通路と反対側の壁際だった。
わざと最後列を取ったので、入ってくる連中を逐一観察することができる。
集まったのは、全部で17人。
あの3人組を1ユニットとして考えると、8組のペアである。
全国から集められたにしては、拍子抜けするほど少ない人数だ。
だが、逆に言うとこの8組は、委員会にとってそれほど厳選された問題児たちといえるのかもしれなかった。
トサカのような髪を振り立て、苛々と貧乏ゆすりしているマコト。
その横で顔を伏せているユウ。
泰然自若とした雰囲気の柚木と、その隣の怯えたリスみたいな美晴。
そして、相変らずぺちゃくちゃ私語に忙しいい3人娘たち。
時間になると、何十人もの警備員たちが部屋に入ってきて、ずらりと壁際に立ち並んだ。
こういう時はたいてい、プロジェクターの映像か何かで話が始まるのだろう。
お偉いさんは、どうせ現場には出てこないに違いない。
そう高をくくっていた杏里は、壇上に生身の人間が立ったのを見て驚いた。
カーキ色の制服に身を包んだ、体格のいい中年男性である。
いかめしい顔は、まるで削ぎ落した岩のようだ。
官僚というより、自衛隊の幹部か、戦時中の軍人みたいな雰囲気だった。
「みんな、集まったな」
17人を順に見回して、男が言った。
重い、腹の底に響くような声だった。
「私は、おまえたちの研修を担当する北条だ。まあ、何のために集められたのか、知らない者はいないと思うが。最初に、委員会の決定を伝えておく」
委員会の、決定?
何のことかしら?
杏里は緊張で身がすくむのを覚えた。
無意識のうちに由羅の手を求め、手探りしていた。
やっとその手を握りしめた時、北条と名乗った男が言った。
「我々には、おまえたちを個々に矯正している暇はない。外来種の脅威が、これまで以上に高まっているからだ。だから、おまえたちには、お互い同士、ここで殺し合いを演じてもらうにことする。そう、最後のひと組になるまでだ。もちろん、勝ち残った者には、無条件の自由と新たな使命を授けてやる。みんな、そのつもりで、がんばってほしい」
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