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#107 浮遊都市ポラリスの秘密⑦
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そうこうしているうちに他の穴にまで触手状のものを挿入され、感極まってシビレエイみたいにぴくぴくしていると、突如としてすーっと液体が引き始めた。
ずぼっ。
ずぼっ。
いやらしい音を立て、複数の触手が全身の穴という穴から抜けていく。
「ふあああ。もう、2回はイっちゃったじゃないの」
ふと我に返ると、カプセルの蓋がスライドし始めている。
明るい天井を背に、誰かがこちらをのぞき込んでいた。
見たことのない顔だ。
妙に特徴のない顔立ちの、年齢不詳の男である。
男?
「きゃっ!」
私はあわてて胸と股間を手でガードした。
なんせ、一糸まとわぬ丸裸なのである。
見知らぬ男に見せてやる筋合いはない。
「終わりましたよ」
柔和な微笑を口元にたたえ、眼を細めて男が言った。
「私はこのポラリスの司政官、ソゴル・ゲンです。要件を承りましょう」
1時間後。
私たちは司政官を前に、馬蹄型のテーブルを囲んでいた。
滅菌室の1階下にある、ホテルのラウンジみたいな洒落た部屋である。
一応、着ていた服も殺菌が終わっていたので、私たちは元の服装に戻っていた。
よれよれだった私のセーラー服も、パリッと糊が効いていて、久しぶりに匂いが爽やかだ。
一番の変わりようは一平だった。
十年分の垢をこそぎ落されたせいで、体がひと回り小さくなったように見える。
黒人並みに黒かった顔も、今は部活少年の日焼け程度に収まっていた。
「魔王の復活は、私たちポラリス市民の関心の的でもあります。科学技術部からの報告では、すでに3日前、魔王軍の本隊が、氷の大陸を出発したとか。もう数日すれば、このロンバルディア大陸に上陸するに違いありません」
電子煙草をくゆらせて、ソゴル・ゲンが言った。
「それだけわかっていながら、ポラリスは迎撃態勢に入っていない。これはどういうことですか?」
すでにお互い自己紹介は済ませてあるので、単刀直入にラルクが切り込んでいく。
こと議論にかけては、私たちの出る幕ではない。
ラルクにもアビリティが存在するとすれば、それは”弁が立つ”ことなのだ。
「私たちは、厳密にいえば、ロンバルディアには属していません。何も、無理して魔王を挑発することもないですから」
「つまり、高みの見物を決め込むと?」
「言葉は悪いが、まあ、そんなところですね。あなたほどの知識人なら、知っているでしょう? 第1次、第2次ともに、魔王大戦には私どもは参戦していないのです。ここは永遠に、そう、永世中立国ですからね」
銀色のスーツに身を固めた優男は一見知的で優しそうだが、話を聞いていると、すぐに嫌なやつだとわかった。
自己保身しか、考えていない。
地上がどうなろうと、この浮遊都市さえ無事ならそれでいい。
そう考えているのだ。
「もういいよ。ラルク」
苛ついた口調で、ソフィアが横から分け入った。
「初めからあたしたちだけでやるつもりだったんだ。鍵のありかさえ教えてもらえば、それでいいって」
「鍵というと?」
ソゴルがソフィアに顔を向け、物問いたげに細い眉を片方吊り上げた。
「知らないとは言わせない。かつて魔王を封印した勇者たちが、ここに預けた幻界の鍵だよ。ミューズの扉を開く、黄金の鍵さ」
ソゴルをにらみつけ、一平が言った。
いつのまにか、肩にコボちゃんが戻ってきている。
そういえばこの子、殺菌の間、どこに行ってたのだろう?
「ミューズの鍵? ああ、あれですか」
だしぬけに、ソゴルが笑い出した。
私たちは、呆気にとられた。
何を笑っているのだ? この男。
ヒトがむちゃくちゃ真面目な話をしているのに。
ずぼっ。
ずぼっ。
いやらしい音を立て、複数の触手が全身の穴という穴から抜けていく。
「ふあああ。もう、2回はイっちゃったじゃないの」
ふと我に返ると、カプセルの蓋がスライドし始めている。
明るい天井を背に、誰かがこちらをのぞき込んでいた。
見たことのない顔だ。
妙に特徴のない顔立ちの、年齢不詳の男である。
男?
「きゃっ!」
私はあわてて胸と股間を手でガードした。
なんせ、一糸まとわぬ丸裸なのである。
見知らぬ男に見せてやる筋合いはない。
「終わりましたよ」
柔和な微笑を口元にたたえ、眼を細めて男が言った。
「私はこのポラリスの司政官、ソゴル・ゲンです。要件を承りましょう」
1時間後。
私たちは司政官を前に、馬蹄型のテーブルを囲んでいた。
滅菌室の1階下にある、ホテルのラウンジみたいな洒落た部屋である。
一応、着ていた服も殺菌が終わっていたので、私たちは元の服装に戻っていた。
よれよれだった私のセーラー服も、パリッと糊が効いていて、久しぶりに匂いが爽やかだ。
一番の変わりようは一平だった。
十年分の垢をこそぎ落されたせいで、体がひと回り小さくなったように見える。
黒人並みに黒かった顔も、今は部活少年の日焼け程度に収まっていた。
「魔王の復活は、私たちポラリス市民の関心の的でもあります。科学技術部からの報告では、すでに3日前、魔王軍の本隊が、氷の大陸を出発したとか。もう数日すれば、このロンバルディア大陸に上陸するに違いありません」
電子煙草をくゆらせて、ソゴル・ゲンが言った。
「それだけわかっていながら、ポラリスは迎撃態勢に入っていない。これはどういうことですか?」
すでにお互い自己紹介は済ませてあるので、単刀直入にラルクが切り込んでいく。
こと議論にかけては、私たちの出る幕ではない。
ラルクにもアビリティが存在するとすれば、それは”弁が立つ”ことなのだ。
「私たちは、厳密にいえば、ロンバルディアには属していません。何も、無理して魔王を挑発することもないですから」
「つまり、高みの見物を決め込むと?」
「言葉は悪いが、まあ、そんなところですね。あなたほどの知識人なら、知っているでしょう? 第1次、第2次ともに、魔王大戦には私どもは参戦していないのです。ここは永遠に、そう、永世中立国ですからね」
銀色のスーツに身を固めた優男は一見知的で優しそうだが、話を聞いていると、すぐに嫌なやつだとわかった。
自己保身しか、考えていない。
地上がどうなろうと、この浮遊都市さえ無事ならそれでいい。
そう考えているのだ。
「もういいよ。ラルク」
苛ついた口調で、ソフィアが横から分け入った。
「初めからあたしたちだけでやるつもりだったんだ。鍵のありかさえ教えてもらえば、それでいいって」
「鍵というと?」
ソゴルがソフィアに顔を向け、物問いたげに細い眉を片方吊り上げた。
「知らないとは言わせない。かつて魔王を封印した勇者たちが、ここに預けた幻界の鍵だよ。ミューズの扉を開く、黄金の鍵さ」
ソゴルをにらみつけ、一平が言った。
いつのまにか、肩にコボちゃんが戻ってきている。
そういえばこの子、殺菌の間、どこに行ってたのだろう?
「ミューズの鍵? ああ、あれですか」
だしぬけに、ソゴルが笑い出した。
私たちは、呆気にとられた。
何を笑っているのだ? この男。
ヒトがむちゃくちゃ真面目な話をしているのに。
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