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#221 暗黒の塔⑮
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「そうそこ。その世界に私たちを連れて行ってほしいわけ。東山動物園と名古屋駅のある、その異世界に」
勢い込んで私が言うと、麗子像そっくりの花の顔にむき出しの猜疑心が浮かんだ。
「どうちてでちゅか? あなたたちが動物好きにはどうしても見えないでちゅ。さてはあたちを異世界に拉致して、強姦でもしゅるちゅもりなのでちょう?」
「何わけのわかんないこと言ってんだよ! なんでおめーみたいなガキにそんな手間のかかることしなきゃなんないんだよ!」
かみつく一平を、
「こら、時空魔導士様に失礼でしょ?」
ソフィアが後ろから羽交い絞めにする。
「仕方がないわね。事情を説明するわ」
私は眉間にしわを寄せ、わざと難しい表情をつくってみせた。
「あなたも知っての通り、この世界は魔王の侵略を受けてるわ。王都の近くには黒い塔が出現し、次から次へと魔物を吐き出しているという話よ。私たちは、こう見えても、勇者のパーティなの。私はエロ魔導士、ソフィアが戦士、一平がシーフ、ラルクが学者というわけ。勇者の存在意義は、わかるわね? そう、魔王を退治すること。ただし、この人数では、正面突破は難しい。そこで考えたのが、いったん異世界に転移して、平和なそっちで距離を稼ぎ、ここぞというポイントでこっちに戻って、魔王の虚を突くって作戦なの。そのためにはどうしても、異世界転移を自在に行える、時空魔導士の助けが必要なの」
私の台詞が長すぎたのか、気がつくと花は立ったままいびきをかいていた。
ったく、これだから幼児相手の交渉はいやなのだ。
「ちょっと起きてよ! ちゃんと話聞いてたの?」
肩をつかんで揺すると、でっかい頭をがくがくさせて花がびっくりしたように目を見開いた。
「わかったでちゅ。要はあたちにパーチイに入ってほちいわけでちゅね。どう見てもあなたたち、戦力的に弱そうでちゅから」
「ま、まあ、そういうことになるかな」
私が怒りに任せて何か言い返す前に、あっさりラルクがうなずいた。
「メンバーになってくれたら、礼ははずむぞ。向こうの世界でもカードは使えるから、なんでもほしいものを言ってくれればいい」
「ほんとでちゅか」
花の細い眼が、きらんと光った。
「じゃ、一緒に行ってあげまちゅ。男に二言はないでちゅね?」
「当然だ」
少し後ろめたそうに、ラルクが言った。
勢い込んで私が言うと、麗子像そっくりの花の顔にむき出しの猜疑心が浮かんだ。
「どうちてでちゅか? あなたたちが動物好きにはどうしても見えないでちゅ。さてはあたちを異世界に拉致して、強姦でもしゅるちゅもりなのでちょう?」
「何わけのわかんないこと言ってんだよ! なんでおめーみたいなガキにそんな手間のかかることしなきゃなんないんだよ!」
かみつく一平を、
「こら、時空魔導士様に失礼でしょ?」
ソフィアが後ろから羽交い絞めにする。
「仕方がないわね。事情を説明するわ」
私は眉間にしわを寄せ、わざと難しい表情をつくってみせた。
「あなたも知っての通り、この世界は魔王の侵略を受けてるわ。王都の近くには黒い塔が出現し、次から次へと魔物を吐き出しているという話よ。私たちは、こう見えても、勇者のパーティなの。私はエロ魔導士、ソフィアが戦士、一平がシーフ、ラルクが学者というわけ。勇者の存在意義は、わかるわね? そう、魔王を退治すること。ただし、この人数では、正面突破は難しい。そこで考えたのが、いったん異世界に転移して、平和なそっちで距離を稼ぎ、ここぞというポイントでこっちに戻って、魔王の虚を突くって作戦なの。そのためにはどうしても、異世界転移を自在に行える、時空魔導士の助けが必要なの」
私の台詞が長すぎたのか、気がつくと花は立ったままいびきをかいていた。
ったく、これだから幼児相手の交渉はいやなのだ。
「ちょっと起きてよ! ちゃんと話聞いてたの?」
肩をつかんで揺すると、でっかい頭をがくがくさせて花がびっくりしたように目を見開いた。
「わかったでちゅ。要はあたちにパーチイに入ってほちいわけでちゅね。どう見てもあなたたち、戦力的に弱そうでちゅから」
「ま、まあ、そういうことになるかな」
私が怒りに任せて何か言い返す前に、あっさりラルクがうなずいた。
「メンバーになってくれたら、礼ははずむぞ。向こうの世界でもカードは使えるから、なんでもほしいものを言ってくれればいい」
「ほんとでちゅか」
花の細い眼が、きらんと光った。
「じゃ、一緒に行ってあげまちゅ。男に二言はないでちゅね?」
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