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#224 暗黒の塔⑱
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ラルクはなぜか定規とコンパスを持っていた。
ウェイトレスが嫌な顔をするのも顧みず、テーブルの上に京都の地図を広げると、
「ここだ」
その上にコンパスの脚を伸ばし、定規に沿って直線を引く。
「清水寺?」
ラルクが指差した一点に目を凝らし、私はつぶやいた。
清水寺といえば、清水の舞台で有名な、小学生の修学旅行スポットナンバー1のあの寺院である。
京都駅からバスで約15分。
京都でも、もっと日本海側かと思っていた私にはちょっと意外なチョイスだった。
「こっちの世界の清水寺が、あっちの世界の暗黒の塔の所在地と一致するってこと?」
「ああ、そうだ。俺の計算に間違いなければな」
「そうとわかれば、すくに出発しましょうよ。ぐずぐずしてると、向こうの世界、魔王に占領されちゃうよ」
パフェをせっせと口に運びながら、ソフィアが言う。
「それもそうでちゅが、まだイチゴパフェが残っていまちゅ。これを食べ切らないことには、動けまちぇん」
「おいらも賛成」
「ふたりとも、でら盛なんか頼むからよ。普通のサイズにしとけばいいのに、いざという時、おなかこわしたらどうするの」
ひいひい言って山盛りのデザートを食べている花と一平に、ソフィアがあきれ顔を向けた。
ちなみに、”でら盛”というのはこの名古屋特有の表現で、正確に言えば「どえりゃあ大盛」とでもいった意味になる。
つまり、『超特盛』とか『ギガ盛』に当たるサイズというわけだ。
「それに、さっきからあたしたちのほうをちらちら見てるカップルがいるんだけど、あれ、ひょっとして」
「そりゃ、単に翔子がエロいからだろ」
「失礼ね。今の私は普通です。シースルーモード、オフにしてるし」
むっとして一平に言い返すと、しれっとした顔で花が割り込んだ。
「さすがお姫ちゃま。よく気がつきまちたね。あそこにいるのはおそらく魔王の刺客でちゅ。女ふたり組ということは、たぶんアマゾネス族の暗殺者かと」
「アマゾネス?」
ラルクが眼を剥いた。
「そういうことは先に言いなさいよ!」
ソフィアがとっさに背中の剣に手をかける。
「どこ? どこに暗殺者が?」
びっくりして振り向くと、隅っこの席から大柄の女がふたり、のっそりと立ちあがるところだった。
ふたりとも、顔をサングラスで隠し、なぜか虎皮のハーフコートを羽織っている。
「翔子、ひめちゃま、戦闘準備でちゅ。あたちと一平は食べるのでいそがちいですから、あとよろぴく」
パフェの中に顔を突っ込みながら、他人事のように花が言った。
ウェイトレスが嫌な顔をするのも顧みず、テーブルの上に京都の地図を広げると、
「ここだ」
その上にコンパスの脚を伸ばし、定規に沿って直線を引く。
「清水寺?」
ラルクが指差した一点に目を凝らし、私はつぶやいた。
清水寺といえば、清水の舞台で有名な、小学生の修学旅行スポットナンバー1のあの寺院である。
京都駅からバスで約15分。
京都でも、もっと日本海側かと思っていた私にはちょっと意外なチョイスだった。
「こっちの世界の清水寺が、あっちの世界の暗黒の塔の所在地と一致するってこと?」
「ああ、そうだ。俺の計算に間違いなければな」
「そうとわかれば、すくに出発しましょうよ。ぐずぐずしてると、向こうの世界、魔王に占領されちゃうよ」
パフェをせっせと口に運びながら、ソフィアが言う。
「それもそうでちゅが、まだイチゴパフェが残っていまちゅ。これを食べ切らないことには、動けまちぇん」
「おいらも賛成」
「ふたりとも、でら盛なんか頼むからよ。普通のサイズにしとけばいいのに、いざという時、おなかこわしたらどうするの」
ひいひい言って山盛りのデザートを食べている花と一平に、ソフィアがあきれ顔を向けた。
ちなみに、”でら盛”というのはこの名古屋特有の表現で、正確に言えば「どえりゃあ大盛」とでもいった意味になる。
つまり、『超特盛』とか『ギガ盛』に当たるサイズというわけだ。
「それに、さっきからあたしたちのほうをちらちら見てるカップルがいるんだけど、あれ、ひょっとして」
「そりゃ、単に翔子がエロいからだろ」
「失礼ね。今の私は普通です。シースルーモード、オフにしてるし」
むっとして一平に言い返すと、しれっとした顔で花が割り込んだ。
「さすがお姫ちゃま。よく気がつきまちたね。あそこにいるのはおそらく魔王の刺客でちゅ。女ふたり組ということは、たぶんアマゾネス族の暗殺者かと」
「アマゾネス?」
ラルクが眼を剥いた。
「そういうことは先に言いなさいよ!」
ソフィアがとっさに背中の剣に手をかける。
「どこ? どこに暗殺者が?」
びっくりして振り向くと、隅っこの席から大柄の女がふたり、のっそりと立ちあがるところだった。
ふたりとも、顔をサングラスで隠し、なぜか虎皮のハーフコートを羽織っている。
「翔子、ひめちゃま、戦闘準備でちゅ。あたちと一平は食べるのでいそがちいですから、あとよろぴく」
パフェの中に顔を突っ込みながら、他人事のように花が言った。
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