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#229 決戦の地へ③
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「姉さん、これ以上は無理でっせ」
バックミラー越しに私をじろじろねめ回しながら、タクシーの運ちゃんが言った。
清水寺に上がる坂のとば口にさしかかったあたりである。
「見なさいよ。最近の京都はどこもあれなんでね」
運ちゃんの言う通りだった。
坂道は、ごった返す人人人であふれ返っている。
しかも、観光客の大半は、どうやら外国人の旅行者のようだ。
「すごい人出だな」
ラルクが眉をひそめた。
「祭りでもやってるのか」
「京都って、今、外国人に大人気の観光スポットなのよ。マナーが悪いっていうんで、色々問題になってるらしいんだけど…。でも、まさかこれほどとはね」
私はため息をついた。
こうなったら、ここから歩くしかない。
それにしても、この人混みを通り抜けててっぺんに着くまでには、相当な時間がかかりそうだ。
「翔子、頼む」
タクシーがUターンして走り去ると、ラルクが私に顎をしゃくってみせた。
「エロ魔法で、この人混みをなんとかしてくれ」
「は? まさか、また愛液トルネードをぶちかませっていうんじゃないでしょうね」
私は呆れた。
そんなことをしたら、ここは坂道だから、逆流してきた愛液に私たちが押し流されてしまう。
「そんな乱暴なものでなくていい。ほら、喫茶店で使ったアレがあるだろう。全員を淫らな気分にさせる範囲エロ魔法」
「エクスタシー・ハリケーン?」
「ああ。そいつでこの人混みを大人しくさせるんだ。我々はその隙に坂を上がるとしよう」
「そのくらいなら、まあ、いいけど。でも、下がってないと、みんなもまた影響受けちゃうからね」
「おいら、あれ、好きなんだけど。だって、ガチでエロイ気分になれるもん」
ニタニタしながら、一平が口を出す。
「ソフィアもその口なんだろ? 隠すなよ」
「うっさいわね、このチビ。なんでもいいから、後ろに下がるよ」
真っ赤になったソフィアが一平を引きずっていく。
その時だった。
ラルクに肩車されて前方を偵察していた花が言った。
「やるなら早くしたほうがいいでちゅよ。敵の刺客が接近中でちゅ」
「刺客ですって?」
伸び上がった私は、人混みの向こうに妙なものを発見して絶句した。
ゾウである。
人々を押し潰しながら、インド象みたいなでかい生き物が、のしのしとこっちに向かって坂を下ってくるのだ。
「しつこいわね」
ソフィアが柳眉を逆立てた。
無理もない。
インド象に乗っているのは、またあのアマゾネスなのである。
いったい何人こっちの世界に派遣されているのだろう。
ソフィアじゃないけど、しつこいにもほどがある。
「あれ、ただのゾウじゃないぜ。鼻と足を見てみろよ」
「やだ! なにあれ!」
ソフィアが悲鳴を上げた。
「鼻の先と、4本の足の先が、みんな…」
「チンポになってやがる」
ソフィアの言いよどんだ部分を、一平が引き受けた。
「はああ?」
またしても絶句する私。
なるほど、あのゾウ、見ようによっては、そんなふうに見えないこともない。
「アラクネの創り出したキメラだな」
したり顔でラルクがつぶやいた。
「気をつけろ。こうなると、アラクネもこっちに来てる可能性が高い」
バックミラー越しに私をじろじろねめ回しながら、タクシーの運ちゃんが言った。
清水寺に上がる坂のとば口にさしかかったあたりである。
「見なさいよ。最近の京都はどこもあれなんでね」
運ちゃんの言う通りだった。
坂道は、ごった返す人人人であふれ返っている。
しかも、観光客の大半は、どうやら外国人の旅行者のようだ。
「すごい人出だな」
ラルクが眉をひそめた。
「祭りでもやってるのか」
「京都って、今、外国人に大人気の観光スポットなのよ。マナーが悪いっていうんで、色々問題になってるらしいんだけど…。でも、まさかこれほどとはね」
私はため息をついた。
こうなったら、ここから歩くしかない。
それにしても、この人混みを通り抜けててっぺんに着くまでには、相当な時間がかかりそうだ。
「翔子、頼む」
タクシーがUターンして走り去ると、ラルクが私に顎をしゃくってみせた。
「エロ魔法で、この人混みをなんとかしてくれ」
「は? まさか、また愛液トルネードをぶちかませっていうんじゃないでしょうね」
私は呆れた。
そんなことをしたら、ここは坂道だから、逆流してきた愛液に私たちが押し流されてしまう。
「そんな乱暴なものでなくていい。ほら、喫茶店で使ったアレがあるだろう。全員を淫らな気分にさせる範囲エロ魔法」
「エクスタシー・ハリケーン?」
「ああ。そいつでこの人混みを大人しくさせるんだ。我々はその隙に坂を上がるとしよう」
「そのくらいなら、まあ、いいけど。でも、下がってないと、みんなもまた影響受けちゃうからね」
「おいら、あれ、好きなんだけど。だって、ガチでエロイ気分になれるもん」
ニタニタしながら、一平が口を出す。
「ソフィアもその口なんだろ? 隠すなよ」
「うっさいわね、このチビ。なんでもいいから、後ろに下がるよ」
真っ赤になったソフィアが一平を引きずっていく。
その時だった。
ラルクに肩車されて前方を偵察していた花が言った。
「やるなら早くしたほうがいいでちゅよ。敵の刺客が接近中でちゅ」
「刺客ですって?」
伸び上がった私は、人混みの向こうに妙なものを発見して絶句した。
ゾウである。
人々を押し潰しながら、インド象みたいなでかい生き物が、のしのしとこっちに向かって坂を下ってくるのだ。
「しつこいわね」
ソフィアが柳眉を逆立てた。
無理もない。
インド象に乗っているのは、またあのアマゾネスなのである。
いったい何人こっちの世界に派遣されているのだろう。
ソフィアじゃないけど、しつこいにもほどがある。
「あれ、ただのゾウじゃないぜ。鼻と足を見てみろよ」
「やだ! なにあれ!」
ソフィアが悲鳴を上げた。
「鼻の先と、4本の足の先が、みんな…」
「チンポになってやがる」
ソフィアの言いよどんだ部分を、一平が引き受けた。
「はああ?」
またしても絶句する私。
なるほど、あのゾウ、見ようによっては、そんなふうに見えないこともない。
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