ゾンビになった妹を救うため、終末世界で明日に向かってゴールをめざす

戸影絵麻

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第2章 仲間

action 5  無双

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 足を踏み出す寸前、あずみが振り返った。

 いいの?

 眼でそう訊いてきた。

 力強くうなずいて、僕は右手の親指を立てた。

 思う存分やってこい、の合図である。

 あずみの瞳が輝いた。

 うなずき返すと、ポールを掲げて走り出す。

 シャキーン。

 あずみの一振りで、ポールが伸びた。

 壁を作って接近するゾンビたちは、およそ10人、

 圧倒的に元キャバ嬢が目立つ。

 が、元の美貌はどこへやら、今はみんなそろいもそろって肌はカサブタに覆われ、眼は裏返ってしまっている。

 耳まで裂けた口を全開にして迫ってくるさまは、さながら口裂け女の軍団だった。

 ゾンビ軍団の直前でポールを地面に突き立てると、その反動であずみが大きく垂直に飛び上がった。

「うはあ!」

 一平が歓声を上げた。

 それほどの大ジャンプだった。

 空中でポールを引き寄せ、元の長さに戻すと、今度は足から落下する。

 スカートが腰までめくれ上がり、形のいいヒップが丸出しになる。

 ゾンビ軍団の頭上に差しかかったところで、右脚と左脚を交差させ、連続してキックを放った。

 頭蓋を砕かれたゾンビ女がふたり、後方に吹っ飛んだ。
 
 そこにできた空きスペースに着地するなり、腰を沈めたあずみが、左足を軸にして右足を伸ばし、独楽のように回転した。

 ちょうどフィギュアスケートの競技を見るような塩梅だった。

 薙ぎ払われたゾンビたちが昏倒するのを見計らい、まだ立っている数人に向かって今度は強力な後ろ蹴りを放つ。

 起き上がろうともがくゾンビの顔面を前蹴りで粉砕すると、振り向きざま右腕を振り回して背後から襲ってきた別のゾンビをぶちのめす。

 それでも次から次へと立ち上がってくるゾンビたちの顔面に、破壊力抜群のパンチの連打が襲いかかる。

 あずみのGカップがぶるんと揺れるたびに、目玉が飛び、折れた歯がパラパラと四散した。

 ゾンビの体液である黒い液体が噴水のように吹き上がり、驟雨のごとくあたりに降り注ぐ。

「す、すっげえ」

 一平がうめいた。

「あずみ、ガチで強すぎじゃね? しかもめちゃエロいし」

 獅子奮迅という四字熟語そのままの阿修羅のごとき猛攻に、たちまち総崩れになるゾンビたち。

「お、おいら、な、なんか、ファンになりそう」
 
 一平は興奮のあまりぶるぶる震えている。

「おまえ、まだ小学生だろ。十年早いよ」

 僕はあわててそんな一平の頭を押えつけた。

 そうでもしないと、一平のやつ、今にもあずみに抱きつきかねない勢いだったからである。








 

  
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