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#23 肉欲の疼き⑥
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こんな夜更けだというのに、リハビリルームのドアには鍵がかかっていなかった。
担当の看護師がロックし忘れたのだろうか。
中には高級そうなトレーニングマシンが何台もあるのに、不用心にもほどがある。
和夫はこのことを予見していたのだろうか。
ふとそんな疑惑が胸に兆した。
が、とにかく、鍵が開いている以上、中に入るしかなかった。
ラウンジで見知らぬ青年を過度に挑発したことで、和夫は機嫌を損ねているのだ。
これ以上怒らせるのは得策でない気がしたのである。
薄く開けたスライドドアの隙間から、琴子は素早く中に滑り込んだ。
青白い非常灯に照らされた室内に、深海に沈む難破船のように各種のマシンが微光を発して浮かび上がる。
半ば手探りで奥に進むと、右手に短い通路があり、ロッカールームに繋がっていた。
和夫の言ったタオルの所在はすぐにわかった。
ひとつだけロッカーの扉が少し開いていて、その上に黒い布がかかっているのが見えたのだ。
きのう使ったトレーニングマシンに近づくと、琴子はおそるおそるその上に身を横たえた。
露出した肌に、マシンのマットレスがひんやりと心地よい。
頭上を水平に横に走る2本のバーの隙間に、スマホを固定する。
暗くて画面がよく見えないが、なぜか和夫の姿は映っていないようだ。
さっきから静かだと思ったら…。
トイレかもしれない、と琴子は思った。
和夫の怪我は顔の火傷だけだから、個室に収容されているとはいっても、トイレくらいはひとりで行けるのだ。
仮面を外し、サイドテーブルの上に置くと、代わりにタオルで目隠しをした。
両足をペダルに置き、両手でアームの取っ手を握る。
低い音でマシンがうなり始めたのは、その時だった。
何もしていないのに、身体を支えるマットがせり上がっていく。
な、なに?
琴子は危うくパニックに陥りかけた。
マットの動きに合わせて身体が弓なりに反り返り、首をのけぞらせる格好になった。
脆弱なレースでできたブラジャーとショーツが、破れそうなほど引き伸ばされるのがわかった。
目隠しのせいで何も見えないが、それは見るからに卑猥な姿勢に違いなかった。
脳裏に、小さな赤い下着から熟れた肉をはみ出させ、海老ぞりに裸身を反り返らせた女の肢体の幻が浮かんだ。
ぞわりと全身の産毛が総毛立つような快感に、琴子はうっすらと唇を開き、甘い吐息を吐き出した。
両手と両脚に力を入れ、身体を動かそうとした、その時だった。
琴子は思いもよらぬほど近くに人の気配を感じ、どきりとして動きを止めた。
ひそやかな息遣い。
かすかな衣擦れの音。
間違いない。
誰かいる!
「誰?」
琴子が誰何するのと、ほとんど同時だった。
内腿に手が置かれたかと思うと、小さな円を描くように、ゆっくりと肌をさすり始めた。
湿った温かい掌が、味わうように腿を撫でさすり、次第にショーツとの境のデリケートゾーンに近づいていく。
「和夫、あなたなの? やめてよ、こんなところで!」
部屋の外に漏れないように、ささやき声で琴子は非難した。
が、相手は無言のままだ。
息だけが、どんどん荒くなっていく。
「やめなさい!」
身をよじった瞬間だった。
予想外の事態に、琴子は目隠しの暗闇の中で目を見開いた。
下半身を愛撫する2本の手とは別の手が、ふいに両の腋の下をじわじわと撫で始めたのである。
担当の看護師がロックし忘れたのだろうか。
中には高級そうなトレーニングマシンが何台もあるのに、不用心にもほどがある。
和夫はこのことを予見していたのだろうか。
ふとそんな疑惑が胸に兆した。
が、とにかく、鍵が開いている以上、中に入るしかなかった。
ラウンジで見知らぬ青年を過度に挑発したことで、和夫は機嫌を損ねているのだ。
これ以上怒らせるのは得策でない気がしたのである。
薄く開けたスライドドアの隙間から、琴子は素早く中に滑り込んだ。
青白い非常灯に照らされた室内に、深海に沈む難破船のように各種のマシンが微光を発して浮かび上がる。
半ば手探りで奥に進むと、右手に短い通路があり、ロッカールームに繋がっていた。
和夫の言ったタオルの所在はすぐにわかった。
ひとつだけロッカーの扉が少し開いていて、その上に黒い布がかかっているのが見えたのだ。
きのう使ったトレーニングマシンに近づくと、琴子はおそるおそるその上に身を横たえた。
露出した肌に、マシンのマットレスがひんやりと心地よい。
頭上を水平に横に走る2本のバーの隙間に、スマホを固定する。
暗くて画面がよく見えないが、なぜか和夫の姿は映っていないようだ。
さっきから静かだと思ったら…。
トイレかもしれない、と琴子は思った。
和夫の怪我は顔の火傷だけだから、個室に収容されているとはいっても、トイレくらいはひとりで行けるのだ。
仮面を外し、サイドテーブルの上に置くと、代わりにタオルで目隠しをした。
両足をペダルに置き、両手でアームの取っ手を握る。
低い音でマシンがうなり始めたのは、その時だった。
何もしていないのに、身体を支えるマットがせり上がっていく。
な、なに?
琴子は危うくパニックに陥りかけた。
マットの動きに合わせて身体が弓なりに反り返り、首をのけぞらせる格好になった。
脆弱なレースでできたブラジャーとショーツが、破れそうなほど引き伸ばされるのがわかった。
目隠しのせいで何も見えないが、それは見るからに卑猥な姿勢に違いなかった。
脳裏に、小さな赤い下着から熟れた肉をはみ出させ、海老ぞりに裸身を反り返らせた女の肢体の幻が浮かんだ。
ぞわりと全身の産毛が総毛立つような快感に、琴子はうっすらと唇を開き、甘い吐息を吐き出した。
両手と両脚に力を入れ、身体を動かそうとした、その時だった。
琴子は思いもよらぬほど近くに人の気配を感じ、どきりとして動きを止めた。
ひそやかな息遣い。
かすかな衣擦れの音。
間違いない。
誰かいる!
「誰?」
琴子が誰何するのと、ほとんど同時だった。
内腿に手が置かれたかと思うと、小さな円を描くように、ゆっくりと肌をさすり始めた。
湿った温かい掌が、味わうように腿を撫でさすり、次第にショーツとの境のデリケートゾーンに近づいていく。
「和夫、あなたなの? やめてよ、こんなところで!」
部屋の外に漏れないように、ささやき声で琴子は非難した。
が、相手は無言のままだ。
息だけが、どんどん荒くなっていく。
「やめなさい!」
身をよじった瞬間だった。
予想外の事態に、琴子は目隠しの暗闇の中で目を見開いた。
下半身を愛撫する2本の手とは別の手が、ふいに両の腋の下をじわじわと撫で始めたのである。
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