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#65 隣家の女②
同じ間取りのはずなのに、朝比奈仁美の住居はずいぶんと広々とした印象だった。
家具調度類が、圧倒的に少ないせいである。
部屋のアレンジはひどく簡素で、かろうじて殺風景の一歩手前で踏み止まっているといった感じだ。
琴子を居間に導き入れ、ソファに座るよう促すと、仁美はキッチンに立ち、麦茶の入ったグラスを持ってきた。
「ごめんなさいね。こんなものしかなくって」
琴子の前のテーブルにグラスを置く時、ワンピースの胸元が開いて深い胸の谷間がのぞいた。
琴子が目を見張ったのは、仁美がブラジャーをつけていないことだった。
豊満な乳房はおろか、その頂の桜色の乳輪と乳首までもが、あまさず見えてしまっている。
しかも、それだけではなかった。
視線を動かすと、乳房の間からその下の滑らかな腹、太腿の合間の淡い陰りまでが視界に入ってきたのである。
信じられなかった。
ブラジャーどころか、仁美はワンピースの下に何も身に着けていないらしい。
全裸の上に、薄いワンピースをかぶっているだけなのである。
大きく開いた胸元から、濃厚な女の匂いが立ちのぼり、強烈に琴子の嗅覚を刺激した。
見えたのはほんの一瞬のことだったが、その匂うような裸体は琴子を動揺させるのに十分な衝撃を備えていた。
あわてて目を逸らした時、テーブルの端にそれが見えた。
吸いかけの煙草のパッケージ。
見慣れたデザインだった。
夫の正一がいつも吸っている銘柄である。
あまりにあからさまな不倫の証拠に、琴子はふと笑い出したい衝動に駆られた。
「朝比奈さん、お煙草、吸われるんですか?」
さもびっくりしたように、わざとらしく訊いてやる。
仁美のものであるはずがなかった。
小学校低学年の子どもを持つシングルマザーが、家の中で喫煙するとはとても思えないからだ。
「あ、これは・・・」
対面に腰かけた仁美の顔に同様の色が走った。
だが、それもつかの間のことで、煙草の箱を手に取ると、琴子のほうへ滑らせて仁美が答えた。
「これは私のものではありません。正一さん・・・いえ、琴子さんの旦那様がお忘れになったものです」
「それは・・・どういうことですか?」
単刀直入すぎる返答に、さすがの琴子もかちんときた。
なんてふてぶてしい。
反省の色どころか、隠す気もないっていうの?
「ゆうべ、正一はここにいたんですね」
畳みかけるように続けると、
「はい」
青ざめた顔で、仁美が小さくうなずいた。
「正一さん、私のこと、色々気にかけてくださって・・・それでよく、ここに顔を出してくださるんです」
「気にかけるって・・・それはつまり・・・」
琴子の声が怒気を帯びた。
と、それを遮るように、仁美が早口に答えた。
「あ、でも、誤解なさらないでください。私たち、琴子さんが考えてるような仲じゃないんです」
家具調度類が、圧倒的に少ないせいである。
部屋のアレンジはひどく簡素で、かろうじて殺風景の一歩手前で踏み止まっているといった感じだ。
琴子を居間に導き入れ、ソファに座るよう促すと、仁美はキッチンに立ち、麦茶の入ったグラスを持ってきた。
「ごめんなさいね。こんなものしかなくって」
琴子の前のテーブルにグラスを置く時、ワンピースの胸元が開いて深い胸の谷間がのぞいた。
琴子が目を見張ったのは、仁美がブラジャーをつけていないことだった。
豊満な乳房はおろか、その頂の桜色の乳輪と乳首までもが、あまさず見えてしまっている。
しかも、それだけではなかった。
視線を動かすと、乳房の間からその下の滑らかな腹、太腿の合間の淡い陰りまでが視界に入ってきたのである。
信じられなかった。
ブラジャーどころか、仁美はワンピースの下に何も身に着けていないらしい。
全裸の上に、薄いワンピースをかぶっているだけなのである。
大きく開いた胸元から、濃厚な女の匂いが立ちのぼり、強烈に琴子の嗅覚を刺激した。
見えたのはほんの一瞬のことだったが、その匂うような裸体は琴子を動揺させるのに十分な衝撃を備えていた。
あわてて目を逸らした時、テーブルの端にそれが見えた。
吸いかけの煙草のパッケージ。
見慣れたデザインだった。
夫の正一がいつも吸っている銘柄である。
あまりにあからさまな不倫の証拠に、琴子はふと笑い出したい衝動に駆られた。
「朝比奈さん、お煙草、吸われるんですか?」
さもびっくりしたように、わざとらしく訊いてやる。
仁美のものであるはずがなかった。
小学校低学年の子どもを持つシングルマザーが、家の中で喫煙するとはとても思えないからだ。
「あ、これは・・・」
対面に腰かけた仁美の顔に同様の色が走った。
だが、それもつかの間のことで、煙草の箱を手に取ると、琴子のほうへ滑らせて仁美が答えた。
「これは私のものではありません。正一さん・・・いえ、琴子さんの旦那様がお忘れになったものです」
「それは・・・どういうことですか?」
単刀直入すぎる返答に、さすがの琴子もかちんときた。
なんてふてぶてしい。
反省の色どころか、隠す気もないっていうの?
「ゆうべ、正一はここにいたんですね」
畳みかけるように続けると、
「はい」
青ざめた顔で、仁美が小さくうなずいた。
「正一さん、私のこと、色々気にかけてくださって・・・それでよく、ここに顔を出してくださるんです」
「気にかけるって・・・それはつまり・・・」
琴子の声が怒気を帯びた。
と、それを遮るように、仁美が早口に答えた。
「あ、でも、誤解なさらないでください。私たち、琴子さんが考えてるような仲じゃないんです」
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