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第1章 覚醒
#5 再会④
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「それから、先に言っておくが、おまえが今触れている腕、そして足も、それらは全部つくりものだ」
瞳にかすかな憐みの色を浮かべて、淡々とした口調で、スナフが言った。
「ルリには生まれつき、手足がなかった。魔王の血を引いてるせいか、点滴だけで身体はぐんぐん成長したが、ついに手足は生えてこなかったんだ。獲得形質が遺伝するなど聞いたことがないが、母親の受けたショックががよほど大きかったのかもしれない。胎児のDNAにひずみを及ぼすほど」
「これが…義手?」
ルビイは呆然となった。
信じられなかった。
継ぎ目なんて、まるで見当たらない。
肩と腕のつけ根には、糸ほどの傷もついていないのだ。
スナフの前だということも忘れて、薄いローブの裾をたくし上げ、太腿のつけ根を確かめてみる。
やはり同じだった。
継ぎ目はないし、動きもスムーズだ。
「俺の故郷には、ラブドールっていかがわしい人形が流行ってるんだが、そいつに使われてる技術がとにかくすごいんだよ。それを思い出して、十数年前に一度だけ、向こうの世界に帰ってみたんだ。で、専属の技師をひとり連れてきた。沼正一って若者なんだが、後でゆっくり紹介するよ」
「そんなことが可能なの? 異界とここと行き来するなんて」
「できないことはない。代償さえ払えばな。俺は、俺をここに召喚した神と取引をした。それだけのことさ」
代償…?
ルビイは目を細め、すっかり痩せさばらえてしまったスナフの身体を見た。
命でも半分削ったのだろうか。
スナフは老い以上に、健康になにか問題があるように見えるのだ。
「とにかく、喜んでほしい。つまり、今のおまえには取り換えの利く万能の義手義足がいくらでもあるってことだ。いくさ乙女に戻りたければ、それさえも可能なパーツがちゃんとそろってる。いや、それどころか、米軍の一個師団をひとりで粉砕できるほどの、超強力な戦闘パーツがな」
瞳にかすかな憐みの色を浮かべて、淡々とした口調で、スナフが言った。
「ルリには生まれつき、手足がなかった。魔王の血を引いてるせいか、点滴だけで身体はぐんぐん成長したが、ついに手足は生えてこなかったんだ。獲得形質が遺伝するなど聞いたことがないが、母親の受けたショックががよほど大きかったのかもしれない。胎児のDNAにひずみを及ぼすほど」
「これが…義手?」
ルビイは呆然となった。
信じられなかった。
継ぎ目なんて、まるで見当たらない。
肩と腕のつけ根には、糸ほどの傷もついていないのだ。
スナフの前だということも忘れて、薄いローブの裾をたくし上げ、太腿のつけ根を確かめてみる。
やはり同じだった。
継ぎ目はないし、動きもスムーズだ。
「俺の故郷には、ラブドールっていかがわしい人形が流行ってるんだが、そいつに使われてる技術がとにかくすごいんだよ。それを思い出して、十数年前に一度だけ、向こうの世界に帰ってみたんだ。で、専属の技師をひとり連れてきた。沼正一って若者なんだが、後でゆっくり紹介するよ」
「そんなことが可能なの? 異界とここと行き来するなんて」
「できないことはない。代償さえ払えばな。俺は、俺をここに召喚した神と取引をした。それだけのことさ」
代償…?
ルビイは目を細め、すっかり痩せさばらえてしまったスナフの身体を見た。
命でも半分削ったのだろうか。
スナフは老い以上に、健康になにか問題があるように見えるのだ。
「とにかく、喜んでほしい。つまり、今のおまえには取り換えの利く万能の義手義足がいくらでもあるってことだ。いくさ乙女に戻りたければ、それさえも可能なパーツがちゃんとそろってる。いや、それどころか、米軍の一個師団をひとりで粉砕できるほどの、超強力な戦闘パーツがな」
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