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第1章 覚醒

#36 悪役令嬢への道⑧

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「そういえば、食事は済んだのか? まだならサトに用意させるが」

 スナフに言われ、ルビイは結局昼食にあずかれないまま、王宮を追い出されたことを思い出した。

「すっかり忘れてたけど、どうやらまだみたい」

 苦笑いすると、音もなくサトが腰を上げた。

「ただ今お持ちします。しばらくお待ちください」

「食事が済んだら、義手と義足のメンテだ。新しいパーツの調整が済むまで、早速サトに教えを乞うがいい」

「教えとは…?」

「性技だよ。が、まずはおまえの性感帯の開発が先だろうな」

 義手と義足をはずしたまま?

 ルビイの顔に警戒の色が浮かんだ。

 アネモネの魔窟での屈辱まみれの体験が、脳裏をよぎったからだった。

「心配ない。サトはアネモネの客たちとは根本的に違う。あれはおまえを歓ばせることだけを考えて尽くしてくれる。俺がそう育てたんだ。信用しろ」

 ルビイの心を読んだかのように、スナフが言った。

 
 食事を済ませ、部屋に戻ると、髪の長い、長身の青年が入ってきた。

 作務衣のような服を着た、見るからに陰気な感じの若者だった。

 歳の頃は30前後だろうか。

 垂らした前髪の間から、片方の黒い瞳がのぞいている。

「あなたが、ヌマ・ショウイチ?」

 ベッドに寝そべったまま、ルビイが訊くと、男がかすかにうなずいた。

「今からそれを外す。しばらく大人しくしててくれ」

 ルビイの脚を顎で示して、低い声で男が言った。

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