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第3章 魔獣の巣窟
#10 特殊部隊⑩
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観客のいない闘技場は、巨大な蟻地獄の巣さながらだった。
すり鉢状の空間の底のリングの上にだけ斜めに光が当たっていて、その他は大部分が闇に包まれている。
入口からリングを囲む通路の一角に出ると、道案内を務めてきたターニャがささやいた。
「みんな、そろっています。くれぐれも気をつけてください」
「なんなら、私から話そうか。無駄なことはやめて、大人しくルビイの指揮下に入るようにと」
口をはさんだのは、途中から合流したマリウスである。
ゆうべの記憶が生々しすぎるのか、これまでほとんどルビイと視線を合わせなかったマリウスだが、この時だけは心配そうにルビイを見た。
「彼らの気持ちになってみて。自分より力の劣る者に指図されたくはない。戦士なら誰でもそう思うはず」
ルビイはやんわりとマリウスの申し出を断った。
自分がそうだから、尚更わかる。
初対面の相手に意味もなく上から抑えつけられるなんて、誰だって嫌に決まっている。
「戦士といっても、やつらは各部族の寄せ集めだ。騎士道精神など、誰も持っちゃいない」
顔をしかめるマリウス。
どうやらリング上の4人に対して、あまりいい感情は抱いていないようだ。
「ならばちょうどいいわ。今の私も、そんな面倒なものには無縁だから」
サトだけ連れて、リングに上がった。
ルビイはライダースーツを改良した戦闘服に着替えている。
セコンドについたサトは、いつものメイド服姿である。
リングに立つと、対面の4人の姿がはっきりと視界に入ってきた。
「なんなの・・・これは?」
正直、驚いた。
目の覚めるほど美しい顔立ちの、双子の男児と女児。
雄牛のように巨大な体躯の、岩山みたいな巨漢。
そしてフチなし眼鏡をかけた、図書館司書そうろうのやせっぽちの娘がひとり。
「おまえがルビイか?」
歩み出ると、双子のうち、男のほうが訊いてきた。
声変わりする前の男児特有の、甲高い声である。
「そういうあなたは?」
挑発的な笑みを口元に浮かべて、ルビイは訊き返した。
「見たところ、本当に寄せ集めみたいだけど、あなたたち、本当に特殊部隊のメンバーなの?」
「へっ! 威勢のいいことほざいてられるのも今のうちだぜ。俺はアニムス。こっちがアニマ」
双子の女のほうに顎をしゃくった。
「そして、あのでかいのがマグナで、メガネがエリス」
最後の、エリスと呼ばれた少女だけが、丁寧に頭を下げた。
あの性別不詳の”岩山”は別として・・・。
ルビイは失望を隠せない。
この子たち、どう見ても、私より年下なんだけど…。
双子も眼鏡少女も、十代にしか見えないのだ。
これがミネルバじゅうから選りすぐった異能力者たち?
そんなことがあるだろうか。
「あんたが俺たちのリーダーにふさわしいかどうか、確かめさせてもらう」
にたりと笑って、アニムスが言った。
「死ぬ気でかかってこい。でないとここがおまえの墓場になる」
すり鉢状の空間の底のリングの上にだけ斜めに光が当たっていて、その他は大部分が闇に包まれている。
入口からリングを囲む通路の一角に出ると、道案内を務めてきたターニャがささやいた。
「みんな、そろっています。くれぐれも気をつけてください」
「なんなら、私から話そうか。無駄なことはやめて、大人しくルビイの指揮下に入るようにと」
口をはさんだのは、途中から合流したマリウスである。
ゆうべの記憶が生々しすぎるのか、これまでほとんどルビイと視線を合わせなかったマリウスだが、この時だけは心配そうにルビイを見た。
「彼らの気持ちになってみて。自分より力の劣る者に指図されたくはない。戦士なら誰でもそう思うはず」
ルビイはやんわりとマリウスの申し出を断った。
自分がそうだから、尚更わかる。
初対面の相手に意味もなく上から抑えつけられるなんて、誰だって嫌に決まっている。
「戦士といっても、やつらは各部族の寄せ集めだ。騎士道精神など、誰も持っちゃいない」
顔をしかめるマリウス。
どうやらリング上の4人に対して、あまりいい感情は抱いていないようだ。
「ならばちょうどいいわ。今の私も、そんな面倒なものには無縁だから」
サトだけ連れて、リングに上がった。
ルビイはライダースーツを改良した戦闘服に着替えている。
セコンドについたサトは、いつものメイド服姿である。
リングに立つと、対面の4人の姿がはっきりと視界に入ってきた。
「なんなの・・・これは?」
正直、驚いた。
目の覚めるほど美しい顔立ちの、双子の男児と女児。
雄牛のように巨大な体躯の、岩山みたいな巨漢。
そしてフチなし眼鏡をかけた、図書館司書そうろうのやせっぽちの娘がひとり。
「おまえがルビイか?」
歩み出ると、双子のうち、男のほうが訊いてきた。
声変わりする前の男児特有の、甲高い声である。
「そういうあなたは?」
挑発的な笑みを口元に浮かべて、ルビイは訊き返した。
「見たところ、本当に寄せ集めみたいだけど、あなたたち、本当に特殊部隊のメンバーなの?」
「へっ! 威勢のいいことほざいてられるのも今のうちだぜ。俺はアニムス。こっちがアニマ」
双子の女のほうに顎をしゃくった。
「そして、あのでかいのがマグナで、メガネがエリス」
最後の、エリスと呼ばれた少女だけが、丁寧に頭を下げた。
あの性別不詳の”岩山”は別として・・・。
ルビイは失望を隠せない。
この子たち、どう見ても、私より年下なんだけど…。
双子も眼鏡少女も、十代にしか見えないのだ。
これがミネルバじゅうから選りすぐった異能力者たち?
そんなことがあるだろうか。
「あんたが俺たちのリーダーにふさわしいかどうか、確かめさせてもらう」
にたりと笑って、アニムスが言った。
「死ぬ気でかかってこい。でないとここがおまえの墓場になる」
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