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第5章 屑肉と化した女戦士は魔王討伐の夢を見るか
#41 戦乙女再誕③
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魔王が、”外”から来た?
ルビイは面食らった。
どういうことだろう?
そもそも”外”とは、何の外なのか?
この惑星の外とでもいうのだろうか?
だとしたら、魔王は…。
「お主ら人間は、はるかな太古の昔から魔王がこの星に存在すると、おそらくそう思い込まされておるのだろうが、実のところ、魔王がこの世界に現れたのは、そんなに遠い過去のことではない。お主らの暦で数えても、せいぜい数十年前のこと。つまり、星の立場からいえば、あれは宿痾に巣くった寄生虫のようなものなのじゃ。賢者の遺産の力でも排除できない、強大な害虫じゃよ。害虫を駆除しなければ、やがては幹も枯れてしまう。だから、虫の知らせでサトがお主をここへ連れてくることがわかった時、わしは決めたのじゃ。お主を蘇生させて、害虫退治をしてもらおうと」
「淫魔の長が、星の未来を憂うというのも奇妙な話。でも、あなたと私の利害が一致して、幸いでした」
「なに、淫魔とて、この星の生態系の一部。幹が枯れては生活が立ち行かないことは、人間と同じじゃよ。ああ、申し遅れたようだ。わしはこの蕩源郷の長老、クロエと申す者。日陰者の淫魔の長など、魔王退治に大して力にはなれぬが、何か手伝えることがあれば、遠慮なく申し出るがよい」
「ひとつ、あるにはあるのですが…」
以前、マリウスから聞いた賢人会議の内容を思い出し、ルビイは言った。
「わがミネルヴァの執政官の話では、このあたりの南方諸国は、魔王討伐軍の呼びかけになかなか応えようとしないと聞いています。魔王が東大陸の大国、ネオ・チャイナを陰で操っているという噂を聞いて、どの国も及び腰になり、どちらにつくべきか、様子をうかがうつもりのようなのです。そこを、淫魔族の力で、なんとか変えることはできないでしょうか? あなた方は、人間の夢の中に入り込めるはず。ならば、狙った相手の頭の中に潜入し、閨の営みついでに、その耳にあることないこと吹き込んで、洗脳してしまえるのではありませんか?」
「なるほど、考えたな」
クロエが面白そうに目を細めた。
「いいだろう。やってみよう。それで、お主らはどうする? 今現在、西と東の境界線で、きな臭いいざこざが持ち上がっているようだが、まさかその少人数で助太刀に行く気ではあるまいな?」
「そうですね。それがいかに無謀な手立てかはわかっています。ですから、できればこのあたりで、強力な仲間を調達できないかと」
ここが淫魔の住処のある南方大陸だとすれば、他にも魔族が住んでいる可能性が高い。
魔王が外からやってくる以前より、この星に住みついている生粋の魔族が…。
「ならば、ウラの渓谷をたずねてみよ」
薄く笑って、クロエが進言した。
「あまり世には知られておらぬが、ウラの一族こそ、この世界最強の戦士。きゃつらの力を借りられれば、文字通り、鬼に金棒じゃろうて」
「ウラ? ウラとは、どんな?」
聞いたことのない名前だった。
「文字通りと言っただろう」
クロエの笑みが大きくなる。
「ウラは、鬼じゃよ。身の丈一丈はある、恐るべき人食い鬼の一族じゃ」
ルビイは面食らった。
どういうことだろう?
そもそも”外”とは、何の外なのか?
この惑星の外とでもいうのだろうか?
だとしたら、魔王は…。
「お主ら人間は、はるかな太古の昔から魔王がこの星に存在すると、おそらくそう思い込まされておるのだろうが、実のところ、魔王がこの世界に現れたのは、そんなに遠い過去のことではない。お主らの暦で数えても、せいぜい数十年前のこと。つまり、星の立場からいえば、あれは宿痾に巣くった寄生虫のようなものなのじゃ。賢者の遺産の力でも排除できない、強大な害虫じゃよ。害虫を駆除しなければ、やがては幹も枯れてしまう。だから、虫の知らせでサトがお主をここへ連れてくることがわかった時、わしは決めたのじゃ。お主を蘇生させて、害虫退治をしてもらおうと」
「淫魔の長が、星の未来を憂うというのも奇妙な話。でも、あなたと私の利害が一致して、幸いでした」
「なに、淫魔とて、この星の生態系の一部。幹が枯れては生活が立ち行かないことは、人間と同じじゃよ。ああ、申し遅れたようだ。わしはこの蕩源郷の長老、クロエと申す者。日陰者の淫魔の長など、魔王退治に大して力にはなれぬが、何か手伝えることがあれば、遠慮なく申し出るがよい」
「ひとつ、あるにはあるのですが…」
以前、マリウスから聞いた賢人会議の内容を思い出し、ルビイは言った。
「わがミネルヴァの執政官の話では、このあたりの南方諸国は、魔王討伐軍の呼びかけになかなか応えようとしないと聞いています。魔王が東大陸の大国、ネオ・チャイナを陰で操っているという噂を聞いて、どの国も及び腰になり、どちらにつくべきか、様子をうかがうつもりのようなのです。そこを、淫魔族の力で、なんとか変えることはできないでしょうか? あなた方は、人間の夢の中に入り込めるはず。ならば、狙った相手の頭の中に潜入し、閨の営みついでに、その耳にあることないこと吹き込んで、洗脳してしまえるのではありませんか?」
「なるほど、考えたな」
クロエが面白そうに目を細めた。
「いいだろう。やってみよう。それで、お主らはどうする? 今現在、西と東の境界線で、きな臭いいざこざが持ち上がっているようだが、まさかその少人数で助太刀に行く気ではあるまいな?」
「そうですね。それがいかに無謀な手立てかはわかっています。ですから、できればこのあたりで、強力な仲間を調達できないかと」
ここが淫魔の住処のある南方大陸だとすれば、他にも魔族が住んでいる可能性が高い。
魔王が外からやってくる以前より、この星に住みついている生粋の魔族が…。
「ならば、ウラの渓谷をたずねてみよ」
薄く笑って、クロエが進言した。
「あまり世には知られておらぬが、ウラの一族こそ、この世界最強の戦士。きゃつらの力を借りられれば、文字通り、鬼に金棒じゃろうて」
「ウラ? ウラとは、どんな?」
聞いたことのない名前だった。
「文字通りと言っただろう」
クロエの笑みが大きくなる。
「ウラは、鬼じゃよ。身の丈一丈はある、恐るべき人食い鬼の一族じゃ」
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