臓物少女

戸影絵麻

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♯98 再起は茨の道②

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「なにそれ? 嫌な言い方」
 アーモンド形の紗英の目に猜疑の色が漲った。
 上目遣いに明を睨み、無意識のしぐさなのか、両腕で豊か過ぎる胸を抱きしめる。
「どうなんだ? 俺の言うことを聞くのか聞かないのか。まあ、俺はいいけどね。君がいくら醜態をさらしても、俺は痛くも痒くもない。ただ言えるのは、君も自覚しているように、今のままじゃ何度対戦しても君はあいつに勝てないってことだ。つい最近まで生娘だったからしょうがないといえばそうだが、一度性の悦びを教えられてしまったら女はしばらくその相手に逆らえなくなってしまうものなんだ。次にそれを超える快楽を与えてくれるやつに出会うまでは、ね。まあそのことは、女だけの現象とは限らないんだけれど」
 性経験の無さでは人後に落ちない明ではあるが、なまじエロ漫画や官能小説に精通しているだけあって、耳学問で得た知識だけは豊富だった。
 それらは相当な勢いで偏向しており、この令和の世の中では反ポリコレの最たるものではあるけれど、その方面に疎い紗英を言いくるめるには十分な迫力を持っていた。
「わ、わかったよ…」
 明の獣欲に燃えた視線を避けながら、観念したように紗英がつぶやいた。
「あんたの言う方法って、何? そしてあたしは、どうすればいいの?」
「ふ、ふ、ふ、よくぞ言ってくれた」
 明は改めて紗英の前に全裸の身体を曝け出し、特に股間からそびえる生殖器官が目立つよう腰を前に突き出した。
「特訓するんだよ。セックスの特訓を。ちょっとやそっとのことでは絶頂に達しないように、性交の快楽に身体を慣れさせるんだ。むろん、その特訓には、この俺が全面的に協力する。君はただ、文句を言わずに俺とセックスしてくれればいいのさ。それも一度や二度ではなく、それこそその可憐なおまんこが擦り切れるくらいにね」
「く…くう」
 嬉々として語る明を睨みつける紗英の双眸からは、憎しみのあまり真っ赤な血が吹き出しそうだった。
「なんて,汚い…。どこまで、下劣な品性してるの…」
「いやならいいんだぜ」
 胸を引き裂くような紗英の呪いの言葉に目に見えぬ血を流しつつ、あえてへらへら笑って見せる明。
 紗英とのセックス。
 それは、本来ならばまっとうな恋愛の末に到達したい境地だったのに、そのあるかなきかのわずかな可能性さえをも、明はついに自分で踏みにじってしまったのだ。
 こうなったら、最後まで道化に徹するしかないではないか。
「君が今度は衆人環視の場であの巨大チンポ野郎に犯されて、ひいひいヨガッた挙句、子種を植えつけられてもさ、俺はぜーんぜん、かまわない。むしろ、醜いもの同士の交尾から、いったい何が生まれるのかって興味もあるくらいだよ」
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