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7. 銀色の闇
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あれ以来、新田が俺を殺すこともなくなり、アミダとヒョウがどうしているのかも分からなくなった。
天界にいる彼らは、新田を『厭魅術を使う呪言師』で俺を呪い殺したという。
新田は『天界の連中は呪言師を根絶やしにしようとしてる』という。
唯一合致している情報といえば、俺も新田と同じ『呪言師』だということだけだ。
七条袈裟の僧侶というのも引っかかる。
そんなやつはいなかった。
……あぁ、やめた、やめた。
俺には何の力もない。
呪言師だという記憶もない。
天界とやらに行ったのは何かの悪い夢だ。
疲れてたんだな、きっと。
仕事帰りに考え事をしながらとぼとぼと歩いていたら、何やら揉めている集団が目に入った。
若者の喧嘩だろうか。
いや、一人が束になって暴行されている。
警察を呼ぶべきか迷っているとスウェット姿の銀髪の男が現れ、暴行していた数人の男たちに何かを呟き、一切触れることなく吹き飛ばした。
暴行されていた男は悲鳴を上げ、走り去っていった。
……もしや、呪言か?
「おい」
「え、……俺?」
「あんた、あん時の呪言師だろ。なんで助けてやらなかった」
どの時の……?
「いや、警察に……連絡しようかな、と」
「はぁ?何言ってんの?あいつらの事見えない警察に何ができるんだよ。暴行してたやつら、何か分かってる?」
「チン……ピラ?」
「力も記憶も奪われてるってわけか」
「……な、何者なんだ?」
「はぁ…。あんたと同じ呪言師だよ」
「そんなわけは……だ、だって、今は俺と新田しか呪言師はいないはずだ」
「新田だぁ?あいつは呪言師の落ちぶれだ。今じゃ厭魅術まで使ってあんたを呪い殺し続けてるってアミダから聞いたぞ」
「いや、あれは呪ってたんじゃなくて言霊で……」
「あのなぁ、呪言ってのはそもそも全部呪いだ。言霊だけで人は殺せん。厭魅術はもっと厄介なもんだ。言葉そのものが現実となって、他者に影響を及ぼすんだ。それほどまでに強力な負の呪術。古に禁じられたものなんだよ」
「なんだよそれ……」
「実際、あんたは新田に何度も殺されてんだろ?そのうち完全に葬られるぞ」
「ど、どういう事だよ……」
「俺はコイツらを片付けてくる。お前も彷徨いてないで、さっさと帰るんだな」
銀髪の男は吹き飛ばした男たちに触れる。
そして、何かまたブツブツと呪文のようなものを唱えると、その男達の身体が徐々に手に吸い込まれていった。
「げぎゃああああぁぁーっ!!」
男達は悶え苦しみながら、慟哭に似た叫びを響かせ消滅した。
「な、なんだ?!」
「こいつ等は……悪霊の類とでも言えばいいのかね。まぁ、いずれ分かるさ」
随分生々しい叫び声を放つ悪霊だ……
こんな禍々しい奴らが跋扈してるのか。
今までそういったモノは見えたこともなかったのに。
これも記憶力が戻ってる証拠なのか?
「とにかくだ。新田には気をつけろよ。あいつは呪言師だった俺達を裏切り、悪逆の限りを尽くした過去がある。協会を追い出され、落ちぶれた野郎だ」
「なんでまた新田が……」
「じゃあ俺はもう行く。奴については、日を改めて話し合おう。んじゃあ」
「おい待ってくれ! お前は一体……」
男は街路樹の影へと消える。
俺が瞬きをしている間に、男は痕跡残さず視界から消え、気配すら感じなくなった。
何なんだ一体……
誰だったんだあいつは。
突如現れた謎の男。
新田を危険だと忠告し、消えていった。
ああ、クソッ!
身の回りで起きる全てが俺を混乱させる。
ここで考えてても仕方ない。
今日はもう帰るとするか。
帰宅し、家の寝床に体重を預けて倒れ込む。
目を閉じると、溜まっていた疲れが突然やってくる……脳内が揺れ目眩がする。
天界にいる彼らは、新田を『厭魅術を使う呪言師』で俺を呪い殺したという。
新田は『天界の連中は呪言師を根絶やしにしようとしてる』という。
唯一合致している情報といえば、俺も新田と同じ『呪言師』だということだけだ。
七条袈裟の僧侶というのも引っかかる。
そんなやつはいなかった。
……あぁ、やめた、やめた。
俺には何の力もない。
呪言師だという記憶もない。
天界とやらに行ったのは何かの悪い夢だ。
疲れてたんだな、きっと。
仕事帰りに考え事をしながらとぼとぼと歩いていたら、何やら揉めている集団が目に入った。
若者の喧嘩だろうか。
いや、一人が束になって暴行されている。
警察を呼ぶべきか迷っているとスウェット姿の銀髪の男が現れ、暴行していた数人の男たちに何かを呟き、一切触れることなく吹き飛ばした。
暴行されていた男は悲鳴を上げ、走り去っていった。
……もしや、呪言か?
「おい」
「え、……俺?」
「あんた、あん時の呪言師だろ。なんで助けてやらなかった」
どの時の……?
「いや、警察に……連絡しようかな、と」
「はぁ?何言ってんの?あいつらの事見えない警察に何ができるんだよ。暴行してたやつら、何か分かってる?」
「チン……ピラ?」
「力も記憶も奪われてるってわけか」
「……な、何者なんだ?」
「はぁ…。あんたと同じ呪言師だよ」
「そんなわけは……だ、だって、今は俺と新田しか呪言師はいないはずだ」
「新田だぁ?あいつは呪言師の落ちぶれだ。今じゃ厭魅術まで使ってあんたを呪い殺し続けてるってアミダから聞いたぞ」
「いや、あれは呪ってたんじゃなくて言霊で……」
「あのなぁ、呪言ってのはそもそも全部呪いだ。言霊だけで人は殺せん。厭魅術はもっと厄介なもんだ。言葉そのものが現実となって、他者に影響を及ぼすんだ。それほどまでに強力な負の呪術。古に禁じられたものなんだよ」
「なんだよそれ……」
「実際、あんたは新田に何度も殺されてんだろ?そのうち完全に葬られるぞ」
「ど、どういう事だよ……」
「俺はコイツらを片付けてくる。お前も彷徨いてないで、さっさと帰るんだな」
銀髪の男は吹き飛ばした男たちに触れる。
そして、何かまたブツブツと呪文のようなものを唱えると、その男達の身体が徐々に手に吸い込まれていった。
「げぎゃああああぁぁーっ!!」
男達は悶え苦しみながら、慟哭に似た叫びを響かせ消滅した。
「な、なんだ?!」
「こいつ等は……悪霊の類とでも言えばいいのかね。まぁ、いずれ分かるさ」
随分生々しい叫び声を放つ悪霊だ……
こんな禍々しい奴らが跋扈してるのか。
今までそういったモノは見えたこともなかったのに。
これも記憶力が戻ってる証拠なのか?
「とにかくだ。新田には気をつけろよ。あいつは呪言師だった俺達を裏切り、悪逆の限りを尽くした過去がある。協会を追い出され、落ちぶれた野郎だ」
「なんでまた新田が……」
「じゃあ俺はもう行く。奴については、日を改めて話し合おう。んじゃあ」
「おい待ってくれ! お前は一体……」
男は街路樹の影へと消える。
俺が瞬きをしている間に、男は痕跡残さず視界から消え、気配すら感じなくなった。
何なんだ一体……
誰だったんだあいつは。
突如現れた謎の男。
新田を危険だと忠告し、消えていった。
ああ、クソッ!
身の回りで起きる全てが俺を混乱させる。
ここで考えてても仕方ない。
今日はもう帰るとするか。
帰宅し、家の寝床に体重を預けて倒れ込む。
目を閉じると、溜まっていた疲れが突然やってくる……脳内が揺れ目眩がする。
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