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13. 武士の名誉【完】
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その勇姿を見届けていた大勢の銃兵たちは、龍馬と仁を取り囲んでいた。
こうして、仁一人を残し土佐勤王党は全滅した。
しかし、この戦いは決して無駄ではなかった。
陸奥を初めとした政府軍の兵士たちは、龍馬の死に様に涙して敬意を表し、跪いて頭を垂れたのである。
生き残った何千という日本人たちが、手を付き額を地面に付け涙を流していた。
この光景は、維新以降失われて久しかった『武士道の精神』を、軍人たちが取り戻した瞬間であった。
◆
勝利を収めたマッカーサーを連れた米国の役人らが皇室にて、当初の約束通り天皇と協定を結んでいた。
「合衆国を代表し、申し上げマス。この協定は両国にかつてないほどの繁栄と、実りアル友好関係をもたらすでショウ」
するとそこに、生き残った仁が天皇に拝謁しにやってきた。
天皇は頷き、入室を許可した。
仁は足を引きずりながら、皇室に入った。
天皇に深々と一礼した後、両膝をついて頭を下げた仁の手にあったのは、龍馬の遺刀であった。
仁は目を瞑り、龍馬の遺刀を暫し抱き締めた。
そして、両手で捧げるようにして天皇の前に差し出した。
「これは、坂本龍馬の刀でございます。これを陛下にお納めいただき、武士の魂の護りとされたし、と謁見に参りました」
「……」
「坂本龍馬は、今際の際に『自分たちの祖先が何故戦い死んだかを、お忘れなきように』と」
天皇は刀を両手で差し出す仁の前に跪き、刀を受け取った。
「最期を……見届けたのであるか?」
「はい」
「陛下、この者は反徒でありマス」
米国役人が声をかける。
陸奥は黙ってその様子を見つめていた。
「陛下、私を反徒と思われるのであれば、どうか死のご下命を。喜んで、受け入れましょうぞ」
仁は、覚悟を持った声で天皇に言った。
天皇は刀を抱き、何かを決意した面持ちで立ち上がり声を上げた。
「朕の望みは、日本国の統一だ。強力にして独立を誇る、近代国家を確立したい。我々は、鉄道や大砲、洋服は手に入れた。しかし……決して日本人たることを忘れてはならぬ!この国の『歴史と伝統』を忘れてはならぬ!」
天皇は続けて、米国役人らの前に立ちこう言い放った。
「この協定が我が民にとって、最善のものであるとは思われぬ」
「へ、陛下、しかし……ッ!」
「申し訳ない。もうそれ以上何も言うな」
「……What a pity that things should have come to this!(事ここに至らんとは遺憾千万だ!)」
結んだばかりの米国との契約を破棄した天皇に、米国役人らは激怒した。
決意を新にした天皇に対し、全てを水の泡にされたマッカーサーは食ってかかった。
「私はニッポンの軍隊を強くしまシタ。約束が違いマス!ニッポン人は嘘つきデスカ?コレは最大の屈辱デス!」
「その屈辱に耐えられんなら!……この刀を貸そう」
天皇はそう言って、マッカーサーの前に龍馬の刀を突きつけた。
もちろんマッカーサーに切腹の覚悟などなく、米国大臣らは狼狽えた様子の彼を連れて皇室から出ていった。
天皇は静かに涙を流し、仁に向けて『彼の死に様を教えてくれ』と言った。
そんな天皇に仁は力強く、こう返事した。
「それでは、彼の生き様をお話いたしましょう」
こうして侍の時代は終わりを告げた。
仁のその後は知られていない。
武士の誇りを、そして日本の伝統を後世に伝える為に世界中を旅し、最終的には祖先・弥助の故郷でもあるアフリカに渡ったとも噂された。
土佐勤王党に、坂本龍馬そして伊作仁。
彼らの武士道の精神は、近代化がなった後も忘れられることなく日本人の心に強く刻まれ続けていた。
---終---
こうして、仁一人を残し土佐勤王党は全滅した。
しかし、この戦いは決して無駄ではなかった。
陸奥を初めとした政府軍の兵士たちは、龍馬の死に様に涙して敬意を表し、跪いて頭を垂れたのである。
生き残った何千という日本人たちが、手を付き額を地面に付け涙を流していた。
この光景は、維新以降失われて久しかった『武士道の精神』を、軍人たちが取り戻した瞬間であった。
◆
勝利を収めたマッカーサーを連れた米国の役人らが皇室にて、当初の約束通り天皇と協定を結んでいた。
「合衆国を代表し、申し上げマス。この協定は両国にかつてないほどの繁栄と、実りアル友好関係をもたらすでショウ」
するとそこに、生き残った仁が天皇に拝謁しにやってきた。
天皇は頷き、入室を許可した。
仁は足を引きずりながら、皇室に入った。
天皇に深々と一礼した後、両膝をついて頭を下げた仁の手にあったのは、龍馬の遺刀であった。
仁は目を瞑り、龍馬の遺刀を暫し抱き締めた。
そして、両手で捧げるようにして天皇の前に差し出した。
「これは、坂本龍馬の刀でございます。これを陛下にお納めいただき、武士の魂の護りとされたし、と謁見に参りました」
「……」
「坂本龍馬は、今際の際に『自分たちの祖先が何故戦い死んだかを、お忘れなきように』と」
天皇は刀を両手で差し出す仁の前に跪き、刀を受け取った。
「最期を……見届けたのであるか?」
「はい」
「陛下、この者は反徒でありマス」
米国役人が声をかける。
陸奥は黙ってその様子を見つめていた。
「陛下、私を反徒と思われるのであれば、どうか死のご下命を。喜んで、受け入れましょうぞ」
仁は、覚悟を持った声で天皇に言った。
天皇は刀を抱き、何かを決意した面持ちで立ち上がり声を上げた。
「朕の望みは、日本国の統一だ。強力にして独立を誇る、近代国家を確立したい。我々は、鉄道や大砲、洋服は手に入れた。しかし……決して日本人たることを忘れてはならぬ!この国の『歴史と伝統』を忘れてはならぬ!」
天皇は続けて、米国役人らの前に立ちこう言い放った。
「この協定が我が民にとって、最善のものであるとは思われぬ」
「へ、陛下、しかし……ッ!」
「申し訳ない。もうそれ以上何も言うな」
「……What a pity that things should have come to this!(事ここに至らんとは遺憾千万だ!)」
結んだばかりの米国との契約を破棄した天皇に、米国役人らは激怒した。
決意を新にした天皇に対し、全てを水の泡にされたマッカーサーは食ってかかった。
「私はニッポンの軍隊を強くしまシタ。約束が違いマス!ニッポン人は嘘つきデスカ?コレは最大の屈辱デス!」
「その屈辱に耐えられんなら!……この刀を貸そう」
天皇はそう言って、マッカーサーの前に龍馬の刀を突きつけた。
もちろんマッカーサーに切腹の覚悟などなく、米国大臣らは狼狽えた様子の彼を連れて皇室から出ていった。
天皇は静かに涙を流し、仁に向けて『彼の死に様を教えてくれ』と言った。
そんな天皇に仁は力強く、こう返事した。
「それでは、彼の生き様をお話いたしましょう」
こうして侍の時代は終わりを告げた。
仁のその後は知られていない。
武士の誇りを、そして日本の伝統を後世に伝える為に世界中を旅し、最終的には祖先・弥助の故郷でもあるアフリカに渡ったとも噂された。
土佐勤王党に、坂本龍馬そして伊作仁。
彼らの武士道の精神は、近代化がなった後も忘れられることなく日本人の心に強く刻まれ続けていた。
---終---
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「みけとが夜々」先生、ご無沙汰しています。
龍馬と弥助の子孫って組み合わせなんですね!
超期待!
ワクワク!ヾ(*´∀`*)ノ
仕事上、「龍馬」はよく取り扱いを求められるのキャラクターなのですが、リアリストの私(笑)としては扱いにくいキャラですね。
クライアントさんの頭の中にあるのは「龍馬」でなく「竜馬」なんでねー!
「乃木大将」と並んで「某大作家」の作品のキャライメージが強すぎて「誤解」が強いキャラクターですね。
「史実」通りに「書く」と
「えー、こんなの「竜馬」じゃないよー!」
って言われちゃう(笑)。
まあ、「剣士」としての「龍馬」は本当にすごいと思ってるんですよ!
好き勝手書いてすみません。
「みけとが夜々」先生の「龍馬」は「政治家」でなく「武士」として描かれてると嬉しいですね!
もちろん「弥助」の子孫の「仁」が全力応援ですね!
続きを楽しみに待たせていただきます。
ぱにゃにゃんだー!
(⋈◍>◡<◍)。✧💓
M-赤井翼様
感想ありがとうございます!
分かります分かります、事実通りに書くと「ぜよなんて言わない」と高知人にご指摘を受けますが「龍馬弁」としてやはり「ぜよ」は求められるのかなぁと思ってます(笑)
龍馬らしいというか☺️
本作品の龍馬は政治よりも武士道に重きを置いている人物です!
仁の活躍もお楽しみにー!🥰
ぱにゃにゃーむฅ^•ω•^ฅ