37 / 71
報告書37「新たなる力、備品をケチるのはブラック企業の証について」
しおりを挟む
結局チトセに事務所まで引きずり戻された俺は、そのまま次回任務のブリーフィングに強制的に参加させられる事となった。全く、優しさの欠片も無い奴だ。知ってたけど。そもそも装備も何も無い俺には任務なんて到底無理なのになんで参加しなくてはならないのか。
「先輩、良かったらこれを……」
「フガッ、すまんな」
チトセの強烈な足蹴りで鮮血が吹き出した鼻に、ササヤさんに貰ったティッシュを詰める。全く文字通りの踏んだり蹴ったりだ。
「さて今回の任務なんだけど依頼元はS.O.U.R.CE、内容は東京駅ダンジョンで未確認のリソーサーの調査よ」
「フガフガ、東京駅ダンジョンで……未確認のリソーサー?」
「そう、未確認のリソーサー。詳しくは情報収集してくれたイクノから説明して貰おうかしら」
「情報収集したと言っても、大した事は分からなかったんじゃがな……」
話を振られたイクノさんは、そう言いつも端末を操作し液晶ホワイトボードに解像度の良くない画像を再生し始めたが、そこに映し出されてる姿はどう見ても……
「ヒトガタ……ですか……!?」
「そうじゃ。目撃情報によるとこのリソーサー、何でもヒトガタをしており、おまけに刀状の武器まで扱うらしいのじゃ」
「フガッ、刀だって!?」
思わず声が出る。今までリソーサー・ヒトガタなんて聞いた事も見た事もない。おまけにそいつが武器を扱うなんて、前代未聞じゃないだろうか?
「この未確認リソーサー、正式名称はまだつけられてないんじゃが、目撃者の間では剣技を使いこなし、まるでスペキュレイターを写したような姿から"影"……ドッペルゲンガーと呼ばれてるそうじゃ」
「そんでそいつがなかなか強くて、東京駅ダンジョンに潜ったスペキュレイターがもう何人もやられてるってんで、今回の調査任務が発令されたってわけ」
なるほどねぇ……チトセとイクノさんの話を聞きつつ、自分の携帯端末に送られてきた任務情報を見ていたが、ある一項目を見て動きが止まった。
「この任務の報酬額、危険度に比べて随分少ないけど、よくこんな任務引き受けたなチトセ」
「たまたまよ!いいからさっさと準備に取り掛かりなさい!」
「……?」
チトセは何をそんなにムキになってるんだろうか。まぁなんにしても機動鎧甲も刀も失った俺には関係無い話だ。
「未確認のリソーサー相手に大変だとは思うけどチトセにササヤさん頑張ってきてくれよな」
「は?何言ってんの。あんたも行くに決まってんでしょ。一体誰のためにこの任務引き受けたと思ってんのよ!」
「いや、装備も無いのに行けるわけないだろ!」
まさか俺に生身で行って肉壁にでもなれと言うのか!いや、こいつの事だ、本当に言いそうだ……
「装備なら、あれを見せてあげる頃合いね」
「うむ。格納庫まで来るのじゃ」
そう言われ、先を行く3人に続いて格納庫に移動する。回復アイテムまでケチるこの零細企業で一体どんな物を用意したと言うのだろうか。ま、あまり期待しない方が良さそうだな。
格納庫に到着すると、早速イクノさんが装備保管庫に入っていき、何やら大型コンテナを運搬して来たでは無いか。そして開かれるコンテナ。
「これは……!」
そこには、真新しい一領の機動鎧甲が格納されていたではないか。
「源流製作所製機動鎧甲"ハチリュウ"じゃ。壊されたシチリュウのバージョンアップ版であると同時に、その出来栄えから同社の代表作とまで言われている代物じゃ」
「そんな……まさかこんな……」
それを見て思わず声が漏れ、手が出る。黒地に基部が赤という色彩、小さく目立ちすぎず、しかし確かな存在感を感じさせる各部に意匠された八匹の金色の龍、基本的な部分はシチリュウと変わらないものの、改良されている事が一目でわかる細かな変更点。どれを取っても素晴らしい仕事がされた作品だと言うのが分かる。
「このハチリュウはシチリュウよりも出力、防御力、バッテリー容量などの基本性能が上がっているのはもちろんのこと、わしが直接チャーンナップしたまさに当世具足と言える代物じゃ!」
「分かる……分かりますよ……これの素晴らしさ……」
思わず触れる手、漏れ出す声まで震えてしまう。が、そこではっとする。幾ら素晴らしい機動鎧甲でも、これだけではどうにもならない。
「いや、やっぱりダメだ。刀も無いんだ、戦えないよ」
「ん」
それを聞いてか、チトセが手に持った何やら小太刀状のモノを俺に突き出して来た。訳が分からないまま受け取り、鞘から抜き刀身を確かめる。刀身は短く反りも浅いがこれは……
「これ、まさか……!」
「何よ。いらないんだったら今度こそ売り飛ばして設備投資に回すわよ」
「先輩、それはシャチョーが折られたヒトマルを鍛え直せる刀工を探しに探し、頼み込んでようやく出来た小太刀なんですよ」
「あぁー!余計な事言わなくて良いのよ!」
腕を組み、恥ずかしさかもしくは怒りの余りかやや赤らめた顔を背けるチトセ。
「最後は私からですね。先輩、これ使ってみて下さい」
そう言ってササヤさんが差し出して来たのは、最新モデルの鉢金形スキャナーだった。
「ありがとう……ありがとうみんな……!」
かつての同期に手も足もですにやられ、全てを失い腐っていた俺。もはや何も無い俺に手を差し伸べてくれる人達がいるなんて……この零細企業には力も金も無いけど、言葉では言い表せない何かが確かにあるようだ。
「先輩、良かったらこれを……」
「フガッ、すまんな」
チトセの強烈な足蹴りで鮮血が吹き出した鼻に、ササヤさんに貰ったティッシュを詰める。全く文字通りの踏んだり蹴ったりだ。
「さて今回の任務なんだけど依頼元はS.O.U.R.CE、内容は東京駅ダンジョンで未確認のリソーサーの調査よ」
「フガフガ、東京駅ダンジョンで……未確認のリソーサー?」
「そう、未確認のリソーサー。詳しくは情報収集してくれたイクノから説明して貰おうかしら」
「情報収集したと言っても、大した事は分からなかったんじゃがな……」
話を振られたイクノさんは、そう言いつも端末を操作し液晶ホワイトボードに解像度の良くない画像を再生し始めたが、そこに映し出されてる姿はどう見ても……
「ヒトガタ……ですか……!?」
「そうじゃ。目撃情報によるとこのリソーサー、何でもヒトガタをしており、おまけに刀状の武器まで扱うらしいのじゃ」
「フガッ、刀だって!?」
思わず声が出る。今までリソーサー・ヒトガタなんて聞いた事も見た事もない。おまけにそいつが武器を扱うなんて、前代未聞じゃないだろうか?
「この未確認リソーサー、正式名称はまだつけられてないんじゃが、目撃者の間では剣技を使いこなし、まるでスペキュレイターを写したような姿から"影"……ドッペルゲンガーと呼ばれてるそうじゃ」
「そんでそいつがなかなか強くて、東京駅ダンジョンに潜ったスペキュレイターがもう何人もやられてるってんで、今回の調査任務が発令されたってわけ」
なるほどねぇ……チトセとイクノさんの話を聞きつつ、自分の携帯端末に送られてきた任務情報を見ていたが、ある一項目を見て動きが止まった。
「この任務の報酬額、危険度に比べて随分少ないけど、よくこんな任務引き受けたなチトセ」
「たまたまよ!いいからさっさと準備に取り掛かりなさい!」
「……?」
チトセは何をそんなにムキになってるんだろうか。まぁなんにしても機動鎧甲も刀も失った俺には関係無い話だ。
「未確認のリソーサー相手に大変だとは思うけどチトセにササヤさん頑張ってきてくれよな」
「は?何言ってんの。あんたも行くに決まってんでしょ。一体誰のためにこの任務引き受けたと思ってんのよ!」
「いや、装備も無いのに行けるわけないだろ!」
まさか俺に生身で行って肉壁にでもなれと言うのか!いや、こいつの事だ、本当に言いそうだ……
「装備なら、あれを見せてあげる頃合いね」
「うむ。格納庫まで来るのじゃ」
そう言われ、先を行く3人に続いて格納庫に移動する。回復アイテムまでケチるこの零細企業で一体どんな物を用意したと言うのだろうか。ま、あまり期待しない方が良さそうだな。
格納庫に到着すると、早速イクノさんが装備保管庫に入っていき、何やら大型コンテナを運搬して来たでは無いか。そして開かれるコンテナ。
「これは……!」
そこには、真新しい一領の機動鎧甲が格納されていたではないか。
「源流製作所製機動鎧甲"ハチリュウ"じゃ。壊されたシチリュウのバージョンアップ版であると同時に、その出来栄えから同社の代表作とまで言われている代物じゃ」
「そんな……まさかこんな……」
それを見て思わず声が漏れ、手が出る。黒地に基部が赤という色彩、小さく目立ちすぎず、しかし確かな存在感を感じさせる各部に意匠された八匹の金色の龍、基本的な部分はシチリュウと変わらないものの、改良されている事が一目でわかる細かな変更点。どれを取っても素晴らしい仕事がされた作品だと言うのが分かる。
「このハチリュウはシチリュウよりも出力、防御力、バッテリー容量などの基本性能が上がっているのはもちろんのこと、わしが直接チャーンナップしたまさに当世具足と言える代物じゃ!」
「分かる……分かりますよ……これの素晴らしさ……」
思わず触れる手、漏れ出す声まで震えてしまう。が、そこではっとする。幾ら素晴らしい機動鎧甲でも、これだけではどうにもならない。
「いや、やっぱりダメだ。刀も無いんだ、戦えないよ」
「ん」
それを聞いてか、チトセが手に持った何やら小太刀状のモノを俺に突き出して来た。訳が分からないまま受け取り、鞘から抜き刀身を確かめる。刀身は短く反りも浅いがこれは……
「これ、まさか……!」
「何よ。いらないんだったら今度こそ売り飛ばして設備投資に回すわよ」
「先輩、それはシャチョーが折られたヒトマルを鍛え直せる刀工を探しに探し、頼み込んでようやく出来た小太刀なんですよ」
「あぁー!余計な事言わなくて良いのよ!」
腕を組み、恥ずかしさかもしくは怒りの余りかやや赤らめた顔を背けるチトセ。
「最後は私からですね。先輩、これ使ってみて下さい」
そう言ってササヤさんが差し出して来たのは、最新モデルの鉢金形スキャナーだった。
「ありがとう……ありがとうみんな……!」
かつての同期に手も足もですにやられ、全てを失い腐っていた俺。もはや何も無い俺に手を差し伸べてくれる人達がいるなんて……この零細企業には力も金も無いけど、言葉では言い表せない何かが確かにあるようだ。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる