53 / 71
報告書53「脱出、情けは人の為ならずについて」
しおりを挟む
俺とチトセが作った、なり損ないリソーサーの群の中に出来た一本の通り道。そこを全力で駆け抜けていくアラセ隊長。
「援護しろ!隊長に奴らを近づけさせるな!」
ライターことヒナガ少尉が火炎弾を飛ばし、カービンことコハレ曹長はもう立ち上がれないにも関わらず、壁に寄り掛かりながらもブラスターカービンを撃ち続ける。俺も最後のバッテリーの残量を残さず使い切るつもりで刀を振るった。
「あと50m……30m……10m……もう少しです!」
ササヤさんの叫びを聞き、手を止めて先を見た時にはアラセ隊長はもう爆轟弾に辿り着き、プラグを手に取った所だった。
「やったぞ!これで……っ!?」
知らせようと、叫ぼうとした時にはもう遅かった。今まさに手に持ったプラグを差し込もうとした隊長を、その背後からワーウルフの鋭い爪が貫くのをただ遠くから眺めていることしか出来なかった。そしてスキャナーから消える識別信号……
「隊長ぉぉお!」
ヒナガがそれを見て絶叫し、駆け出そうとするのを後ろから組み付いてなんとか押し留める。
「馬鹿野郎!お前までやられるぞ!」
「望むところだ!このまま隊長は見捨てられない!」
「カービンは、コハレさんはどうするんだ!その隊長さんになんて言われたのか思い出せ!」
「しかし……!しかし……!!」
ワーウルフは貫いた爪を引き抜き、プラグを手に持ったままドッと倒れ込んだ隊長のその身体を前に大きな口を開けてやがる。野郎、身体を喰らう事で遺伝子情報を奪う気だ!
「プラグはまだ繋がってない!どうするのよどうするのよ!?」
「こうなりゃ出口まで血路を開いて突破するしかないだろう!」
「それが出来るんだったら初めからこんな所で缶詰になったりしてないわよ!」
バッテリー残量もブラストガスも回復アイテムももう残り僅か。チトセの言う通り無謀だがもう他に手は……!
「とにかくみんなで離れず固まるんだ!散り散りになったらやられるぞ!ササヤさんもこっちに!……ササヤさん!?」
いつもなら元気な返事があるところながら、なにも帰ってこないのでまさかと思い振り向く。そこには、思い詰めたような顔をし、立ち尽くす姿があった。
「一体どうした!?早くこっちに!」
呼び掛けにも応じず、何やらしきりにごめんなさいごめんなさいと呟いている。ついに恐怖に耐えられなくなったのか?それとも……
「ごめんなさい……でもこれしか手は無いの……"天に昇りし魂よ、今一度降りて我に従え……!"」
「一体何を……!?」
見たこともないコードの流れがスキャナー越しに見える。そのコードの行き先を追うと、あり得ない光景を目にした。何と倒れ伏していた隊長が立ち上がり、手に持ったグラビティハンマーを大きく振り回しワーウルフを叩き潰したのだった!
「そんな……まさか……!?」
「隊長……!?」
スキャナーには未だ生体反応とリンクしている識別信号は表示されない。つまりもうとっくに隊長さんは死んでいるはずなのだ。じゃああそこで再び立ち上がったのは一体……!?驚きの光景を目の当たりにし、一瞬動きが止まった俺たちが見てる先で手に持ったプラグを差し込む隊長さん。そして周囲が光に包まれた……しかし俺は確かに見た。アラセ隊長の、最期の敬礼を……
「何あんたら全員ボッと突っ立てるのよ!隊長さんがやってくれたのよ!ほらコハレさんに手を貸して一気に走り抜けるわよ!」
「え……あっ、あぁそうだな!行くぞヒナガ!」
「おっ、おう!掴まれコハレ!」
「うっ、うん……」
俺とヒナガでコハレの両肩を持ち、そのまま駆け出した。直後に襲った爆風は凄まじく、なり損ないリソーサーは次々に閃光の中に消えて行き、天井や壁には亀裂が走り、あちこちで崩落が始まった。
「チトセ!出口はどっちだ!?」
「えーっと、えっと……」
「どうした!?早くしないと生き埋めだぞ!」
「仕方ないじゃない!もうあちこちで崩壊が始まっててスキャナーのマップが役に立たないんだから!」
「これじゃあこのフロアどころか駅ダンジョンごと崩壊するのも時間の問題だぞ!」
「さすが私ね!この威力の爆轟弾を現地クラフトできる山師なんてそうはいないわよ!」
「自慢している場合か!?」
などと言ってる間にも天井の崩落が始まり、次々と瓦礫が落ちてきているこの状況。全く一難去ってまた一難かよ!
「皆さんこちらです!」
その時、ササヤさんが先頭に立ち、俺たちを呼び寄せた。
「ササヤさん!道が分かったのか!?」
「"この子"が案内してくれるそうです」
見るとそこには、どこから現れたのか行きで助けたあのワン公リソーサーが尻尾を振ってワンワン吠えていた。
「こっ、こいつが!?」
「ええ!さあ行きましょう」
ええいもうどうにでもなれだ!ワン公を追いかけ右へ左へと走り、階段を登り、改札を越えた。周囲では壁や天井が次々と崩れ、大きな瓦礫が崩落してくる中、とにかく必死に走った。
「あそこが出口だそうです!」
ササヤさんが指差す方向を見ると、外光が、希望の光が差し込むのが見えた。天井から下がる看板に書かれたその名前、8番出口から滑り込むように外に飛び出した時には駅構内は完全に崩壊し、まさに間一髪だった……危なかったー!かっー!
「みんな無事!?」
チトセの声に周囲を見渡すと、みんな無事……と思いきやササヤさんがいない!
「ササヤさん!?ササヤさんがいないぞ!?」
「私はここです……」
慌てて周囲を探すと、とある銅像の横にいるササヤさんの姿を見つけ、ホッと息が出た。
「まさかリソーサーに助けられるとはな……それで我らが恩犬はどこに行った?今なら連れ帰って飼うのも大賛成だ」
「"あの子"なら……」
そう言いながら、ササヤさんが優しく撫でた銅像は、なんとワン公リソーサーとそっくりな姿であった。
「援護しろ!隊長に奴らを近づけさせるな!」
ライターことヒナガ少尉が火炎弾を飛ばし、カービンことコハレ曹長はもう立ち上がれないにも関わらず、壁に寄り掛かりながらもブラスターカービンを撃ち続ける。俺も最後のバッテリーの残量を残さず使い切るつもりで刀を振るった。
「あと50m……30m……10m……もう少しです!」
ササヤさんの叫びを聞き、手を止めて先を見た時にはアラセ隊長はもう爆轟弾に辿り着き、プラグを手に取った所だった。
「やったぞ!これで……っ!?」
知らせようと、叫ぼうとした時にはもう遅かった。今まさに手に持ったプラグを差し込もうとした隊長を、その背後からワーウルフの鋭い爪が貫くのをただ遠くから眺めていることしか出来なかった。そしてスキャナーから消える識別信号……
「隊長ぉぉお!」
ヒナガがそれを見て絶叫し、駆け出そうとするのを後ろから組み付いてなんとか押し留める。
「馬鹿野郎!お前までやられるぞ!」
「望むところだ!このまま隊長は見捨てられない!」
「カービンは、コハレさんはどうするんだ!その隊長さんになんて言われたのか思い出せ!」
「しかし……!しかし……!!」
ワーウルフは貫いた爪を引き抜き、プラグを手に持ったままドッと倒れ込んだ隊長のその身体を前に大きな口を開けてやがる。野郎、身体を喰らう事で遺伝子情報を奪う気だ!
「プラグはまだ繋がってない!どうするのよどうするのよ!?」
「こうなりゃ出口まで血路を開いて突破するしかないだろう!」
「それが出来るんだったら初めからこんな所で缶詰になったりしてないわよ!」
バッテリー残量もブラストガスも回復アイテムももう残り僅か。チトセの言う通り無謀だがもう他に手は……!
「とにかくみんなで離れず固まるんだ!散り散りになったらやられるぞ!ササヤさんもこっちに!……ササヤさん!?」
いつもなら元気な返事があるところながら、なにも帰ってこないのでまさかと思い振り向く。そこには、思い詰めたような顔をし、立ち尽くす姿があった。
「一体どうした!?早くこっちに!」
呼び掛けにも応じず、何やらしきりにごめんなさいごめんなさいと呟いている。ついに恐怖に耐えられなくなったのか?それとも……
「ごめんなさい……でもこれしか手は無いの……"天に昇りし魂よ、今一度降りて我に従え……!"」
「一体何を……!?」
見たこともないコードの流れがスキャナー越しに見える。そのコードの行き先を追うと、あり得ない光景を目にした。何と倒れ伏していた隊長が立ち上がり、手に持ったグラビティハンマーを大きく振り回しワーウルフを叩き潰したのだった!
「そんな……まさか……!?」
「隊長……!?」
スキャナーには未だ生体反応とリンクしている識別信号は表示されない。つまりもうとっくに隊長さんは死んでいるはずなのだ。じゃああそこで再び立ち上がったのは一体……!?驚きの光景を目の当たりにし、一瞬動きが止まった俺たちが見てる先で手に持ったプラグを差し込む隊長さん。そして周囲が光に包まれた……しかし俺は確かに見た。アラセ隊長の、最期の敬礼を……
「何あんたら全員ボッと突っ立てるのよ!隊長さんがやってくれたのよ!ほらコハレさんに手を貸して一気に走り抜けるわよ!」
「え……あっ、あぁそうだな!行くぞヒナガ!」
「おっ、おう!掴まれコハレ!」
「うっ、うん……」
俺とヒナガでコハレの両肩を持ち、そのまま駆け出した。直後に襲った爆風は凄まじく、なり損ないリソーサーは次々に閃光の中に消えて行き、天井や壁には亀裂が走り、あちこちで崩落が始まった。
「チトセ!出口はどっちだ!?」
「えーっと、えっと……」
「どうした!?早くしないと生き埋めだぞ!」
「仕方ないじゃない!もうあちこちで崩壊が始まっててスキャナーのマップが役に立たないんだから!」
「これじゃあこのフロアどころか駅ダンジョンごと崩壊するのも時間の問題だぞ!」
「さすが私ね!この威力の爆轟弾を現地クラフトできる山師なんてそうはいないわよ!」
「自慢している場合か!?」
などと言ってる間にも天井の崩落が始まり、次々と瓦礫が落ちてきているこの状況。全く一難去ってまた一難かよ!
「皆さんこちらです!」
その時、ササヤさんが先頭に立ち、俺たちを呼び寄せた。
「ササヤさん!道が分かったのか!?」
「"この子"が案内してくれるそうです」
見るとそこには、どこから現れたのか行きで助けたあのワン公リソーサーが尻尾を振ってワンワン吠えていた。
「こっ、こいつが!?」
「ええ!さあ行きましょう」
ええいもうどうにでもなれだ!ワン公を追いかけ右へ左へと走り、階段を登り、改札を越えた。周囲では壁や天井が次々と崩れ、大きな瓦礫が崩落してくる中、とにかく必死に走った。
「あそこが出口だそうです!」
ササヤさんが指差す方向を見ると、外光が、希望の光が差し込むのが見えた。天井から下がる看板に書かれたその名前、8番出口から滑り込むように外に飛び出した時には駅構内は完全に崩壊し、まさに間一髪だった……危なかったー!かっー!
「みんな無事!?」
チトセの声に周囲を見渡すと、みんな無事……と思いきやササヤさんがいない!
「ササヤさん!?ササヤさんがいないぞ!?」
「私はここです……」
慌てて周囲を探すと、とある銅像の横にいるササヤさんの姿を見つけ、ホッと息が出た。
「まさかリソーサーに助けられるとはな……それで我らが恩犬はどこに行った?今なら連れ帰って飼うのも大賛成だ」
「"あの子"なら……」
そう言いながら、ササヤさんが優しく撫でた銅像は、なんとワン公リソーサーとそっくりな姿であった。
0
あなたにおすすめの小説
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる