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ヒロ

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第一章:始まりと終わり

-1話-普通の日常

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 カーテンから漏れる太陽の光、外から聞こえる小鳥達の鳴き声。
 部屋に響く、朝を知らせる時計の音。鬱陶しくも感じながら這いずるように起き上がり、煩い時計の音を止める。
「おーい! さくやぁ! 学校遅刻するぞ!!」
 下の階から聞こえてきたのは兄、ある夫の声だ。今更ではあるのだが、自己紹介がまだだった。私は、桜島さくや。極々普通の小学六年生だ。
 私は、部屋の時計を見ると慌てて着替え下へ降りていく。
「お兄ちゃん! なんで起こすの15分前なの!? ちゃんと一時間前に起こしてよぉ!!」
「俺は起こしたぞ? 八回も。」
「えっ、マジで?」
 ほぼ毎朝やっているような、軽い口喧嘩をすれば兄からトーストを受け取り急いで食べる。
『続いてのニュースです。昨夜、○○丁の路地裏で独身男性の遺体が発見されました。刃物で刺された後が幾つもあり、同じ手口から連続殺人として調査を進めています。』
「○○丁ってこの近くじゃん、学校休みにならないかな......」
「なるわけ無いだろ? 前回の犯行場所と近い場所で行う殺人は捕まるリスクも高いし、余程馬鹿な犯人じゃなければ、この辺は他より安全なんじゃないか? あと、時計......」
 呆れた表情で兄は言うと時計を指差す。
「残り5分じゃん!?」
 学校のチャイムが鳴る5分前を指した時計を見るなり、私はランドセルを片手に家を飛び出した。息を切らし、私は全力疾走で学校に向かう。あと少しの所で学校のチャイムが鳴る。
 ガラッ
「ぜぇぜぇ......ずびばぜん......はぁはぁ......おぐれゲホッゲホッ......まじた......」
 勢い良く扉を開け、酷い息切れの合間にそう言うと先生や皆が分かっていたかのような表情で苦笑する。先生は咳に座れと促し、出席確認を続けた。
「よぉ、今日も寝坊か?」
「はぁ...... そうなんだよぉ、夜更かしするもんじゃないねぇ...... てか、なんで君は起きれるわけぇ?」
 話し掛けて来た前の席の子は、誰よりも長い付き合いの親友、藤岡まひる。私より男っぽくて運動も勉強も出来るし、モテモテ女子なんだけど......妬ましいよね。
「また二人でゲームしてたの?飽きないよねぇ」
 後ろの席から話し掛けてきたこの子は、まひるに次いで長い付き合いの友人のミナ。女子力凄く高くて、これまた妬ましいのよね。
「ゲームはロマンだもの! あ、そう言えば家を出る前に、ニュースやってたよ。予想通り○○丁だった!でも、まだ捕まんないんだね犯人......」
「流石に16人目ってなるとさ、怖いよね...」
小さな声で二人と話している。
「流石に次で捕まんじゃねぇ?」
 私達は、第三者から見れば相当物騒な話をしている。しかしこれが私達にとっての普通だ。実は、こういう危ない物事を予測して話すのが何より楽しい、つまり趣味なのである。
「んん。勘だけどねぇ、多分殺人者死ぬと思うけど......?」
「え! なんで?」
 隣の席の男子、アルが急に会話に割り込んできたかと思えばそう言う。勿論私は、彼の言葉に対する疑問を隠すことは出来なかった。
「だって、その方が面白いじゃん?ねぇ?」
 と笑顔で言う。怖っ、怖いわぁ......笑顔でそう言う事言う辺りすげぇわコイツ。なんて、逸脱した私語をしているうちに朝の会は終わる。
「にしてもさぁ、この面子異様だよね」
「だろうね、ヤクザの息子に政治家の娘...人気プニチューバーの妹にシスコンの兄のブラコンな妹、いや、ヒモうとだもんな!」
「誰がブラコンヒモうとじゃい!」
そう、この面子はかなり珍しい...政治家の娘、藤岡まひる。ヤクザの息子、黒川アルト。人気プニチューバーの兄の妹、佐々木ミナ。そして、今日は休みなのだがもう一人......オリンピック選手の両親を持つ息子、紅城しんかい。
中学の先輩にも居て、金持ち貴族家系の一人娘、万人橋マーク。お人好しな大家族の長女、一紋時セノ。最後に、警察一家の娘......鈴野ほのか。正直、この濃ゆい個性的な面子の中で色々普通すぎる私の家系が逆に珍しい......まぁ、兄と二人暮らしなのでハッキリ普通と言うのは言い難いものなのだが。
 仲が良くなる切っ掛けって言うものは実に単純なもので、お互い共通の趣味と意志を持っていたから。内心、何処かでは正義感が擽られるような大きい出来事を皆は待っているのだ。
 そう、今日もそんな事は起きず一日を終える......
  今日の授業を一通り終え、放課後になる。私は、今朝の話しを掘り返した。
「そう言えばさ、殺人犯が出たのって私の家の近くやん? 朝、お兄ちゃんに学校休みならないかなって言ったらさ、お兄ちゃんがこの辺は安全だからまず無いだろって言われたんだよね」
「なんで?寧ろ危険なんじゃねぇの?」
 私の言葉にいち早く反応したのは、まひるだった。
「なんかさ、バカな犯人じゃなければ前回の犯行現場から離れるんだって。なんか、捕まるリスクも高くなるとかで」
「それ、お前の兄貴のハッタリなんじゃない?俺、朝犯人死ぬと思うって言っただろ?夢で見たんだ、それ......犯人と男の人が相討ちで死ぬ夢......その男の人ってのがさ、お前の......」
「やだなぁ、アルくんそう言うの辞めてよね! そんなわけないじゃん!たかが夢っしょ?ないない」
 緊迫した空気を一瞬感じた。嫌な想像もしてしまった。私は、そんな恐怖を誤魔化すように笑って否定する。それでも何故か、家に帰りたくないのだ。それでも、早く帰らねばと思う気持ちが収まらない。
「あ、そろそろ帰るね! 今日お兄ちゃんが唐揚げ作ってくれるから手伝いたいし!」
 そう皆に言うと、私は足早に教室を出ていき走って家へと向かった。嫌な予感、何故か流れる冷や汗、不安が不安を呼んでいる気がする。急な展開過ぎるだろうか?しかし、何かある時は決まって急なのだ。
「ただいま!」
 私は玄関の扉を勢いよく開け、何時もより大きな声で言った。
「おにいちゃん! 居るの?」
 私は家の中に大きな声で呼び掛ける。居るはずの兄に向かって。
 しかし、兄の返事はなかった。
 
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