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十三年前の出来事
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――Myuze side――
これは僕が十五歳、ベルリナが誕生したときの話だ。
「うわぁっ、か、かわいい……っ!」
クラレンス邸に女の赤ちゃんが誕生したと聞いて、今日はお祝いのためにやってきた。
生まれたばかりのベルリナは天使のように可愛かった。切れ長の瞳も、ペチャっとした小さな鼻も、本当に全てのパーツが整っていて、こんなに可愛い赤ちゃんを見たのは初めてだ。
「髪はサクラ夫人、瞳はクラレンス卿に似たんだね」
「そうなんです。欲を言えば、お顔はレオン様に似て欲しかったのですが……」
「いやいや、クラレンス卿に似て欲しいなんて思うの、サクラ夫人だけだから……」
僕の突っ込みに、後ろでクラレンス卿とキャロルはうんうんと頷く。
一年ぶりに会うサクラ夫人はやっぱりサクラ夫人のままで、クラレンス卿を深く愛していた。僕の理想とする家族像がそこにあって、胸の内が温かくなる。
この一年、学園と領地を行き来しながら、船員に発症する原因不明の病の特効薬の開発に勤しんできた。ついに特効薬は完成し、今は治験を行っている段階だ。
特効薬にはローズヒップを使用し、船員には出航後、港の近くを通る際には、こまめに野菜や果物などの生鮮食品を購入し食すよう指導した。
結果は上々。
症状の進行した人は治癒するまでとても時間がかかるけど、この薬を開発した一番の収穫は、病の発症を予防できることだった。
特効薬の効果は帝国のみならず諸外国にも伝わり、特効薬の効果を実感した国々から、信じられないくらいの報奨金を受けとった。
この資金を元手に新たな事業の立ち上げや、父上が今までずっと放棄してきた内政にも力を入れていく予定だ。
ベルリナのプクプクとした小さな手にそっと触れると、僕の指をキュッと握り返した。
「疲れが吹き飛ぶ……。すっごい癒されるんだけど」
「ミュゼ様はまだ子供なのに、背負う荷が重すぎるのです」
「子供って……。僕、来年で成人だよ。立派な大人の男だし」
「ふふふ。ミュゼ様、疲れた時には、ここを自分の家だと思っていつでも帰ってきてくださいね」
サクラ夫人は僕と九歳しか違わないのに、いつも子供扱いをしてくる。なんだか恥ずかしくて、いつも拗ねた口調になってしまう。
「……わかった。疲れた時には寄らせてもらうよ」
「お待ちしていますね。あっ、そうだ。よろしければベルリナを抱っこしませんか」
サクラ夫人はパチンと手を叩くと、ベビーベッドに寝かされていたベルリナを抱っこし、僕の腕に抱かせた。
いきなりのことで、僕は緊張のあまり石像みたいに固まってしまう。でも、腕の中におさまったベルリナは、柔らかくて、小さくて、羽のように軽かった。
ベルリナは僕の緊張なんてお構いなしで、ふにゃふにゃと口を動かしながら大きなあくびをすると、そのままスヤスヤと眠ってしまった。
「赤ちゃん抱いたの、初めてだ」
「いつかミュゼ様も結婚して、新しいご家族ができますよ」
まるで僕に伴侶が現れることを確信しているような表情に目を見張る。
未だ怖くて、人前で仮面を外すことができないのに、そんな未来はくるのかな……。
僕は仮面に触れながら、そんなことを考えていた。
これは僕が十五歳、ベルリナが誕生したときの話だ。
「うわぁっ、か、かわいい……っ!」
クラレンス邸に女の赤ちゃんが誕生したと聞いて、今日はお祝いのためにやってきた。
生まれたばかりのベルリナは天使のように可愛かった。切れ長の瞳も、ペチャっとした小さな鼻も、本当に全てのパーツが整っていて、こんなに可愛い赤ちゃんを見たのは初めてだ。
「髪はサクラ夫人、瞳はクラレンス卿に似たんだね」
「そうなんです。欲を言えば、お顔はレオン様に似て欲しかったのですが……」
「いやいや、クラレンス卿に似て欲しいなんて思うの、サクラ夫人だけだから……」
僕の突っ込みに、後ろでクラレンス卿とキャロルはうんうんと頷く。
一年ぶりに会うサクラ夫人はやっぱりサクラ夫人のままで、クラレンス卿を深く愛していた。僕の理想とする家族像がそこにあって、胸の内が温かくなる。
この一年、学園と領地を行き来しながら、船員に発症する原因不明の病の特効薬の開発に勤しんできた。ついに特効薬は完成し、今は治験を行っている段階だ。
特効薬にはローズヒップを使用し、船員には出航後、港の近くを通る際には、こまめに野菜や果物などの生鮮食品を購入し食すよう指導した。
結果は上々。
症状の進行した人は治癒するまでとても時間がかかるけど、この薬を開発した一番の収穫は、病の発症を予防できることだった。
特効薬の効果は帝国のみならず諸外国にも伝わり、特効薬の効果を実感した国々から、信じられないくらいの報奨金を受けとった。
この資金を元手に新たな事業の立ち上げや、父上が今までずっと放棄してきた内政にも力を入れていく予定だ。
ベルリナのプクプクとした小さな手にそっと触れると、僕の指をキュッと握り返した。
「疲れが吹き飛ぶ……。すっごい癒されるんだけど」
「ミュゼ様はまだ子供なのに、背負う荷が重すぎるのです」
「子供って……。僕、来年で成人だよ。立派な大人の男だし」
「ふふふ。ミュゼ様、疲れた時には、ここを自分の家だと思っていつでも帰ってきてくださいね」
サクラ夫人は僕と九歳しか違わないのに、いつも子供扱いをしてくる。なんだか恥ずかしくて、いつも拗ねた口調になってしまう。
「……わかった。疲れた時には寄らせてもらうよ」
「お待ちしていますね。あっ、そうだ。よろしければベルリナを抱っこしませんか」
サクラ夫人はパチンと手を叩くと、ベビーベッドに寝かされていたベルリナを抱っこし、僕の腕に抱かせた。
いきなりのことで、僕は緊張のあまり石像みたいに固まってしまう。でも、腕の中におさまったベルリナは、柔らかくて、小さくて、羽のように軽かった。
ベルリナは僕の緊張なんてお構いなしで、ふにゃふにゃと口を動かしながら大きなあくびをすると、そのままスヤスヤと眠ってしまった。
「赤ちゃん抱いたの、初めてだ」
「いつかミュゼ様も結婚して、新しいご家族ができますよ」
まるで僕に伴侶が現れることを確信しているような表情に目を見張る。
未だ怖くて、人前で仮面を外すことができないのに、そんな未来はくるのかな……。
僕は仮面に触れながら、そんなことを考えていた。
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