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1章 始まりの街

6話 実践

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 俺は今、外に出ている。
 久しぶりのシャバの空気

 そう、スロー素振りをやり遂げたのだ。
 そして遂に実践編にたどり着いた。

 実に長く、険しい日々だった……

 回復強化で効率よく鍛えれた事もあり、今の俺はアスリートのような身体つきになった。

 おかげで毎日、筋肉が断裂する程の激痛に悩まされたが……思い出すのはやめておこう

 俺は今、久しぶりの外を堪能しながら街中を走っている。
 以前よりかなり早く走れている。
 あー風が気持ちいい

「ギャギャギャ」

 おっと、化け物共が現れた。
 以前の俺ならば逃げていただろうが、

 今の俺は一味違う!

 恐怖より今はこのナイフを試したくて仕方がない。

 というか試さなければならない!

 "ステップ3  慣れろ!"

 "人を成長させるのは実践。実践なくして成長はない。そのためには只管に闘え、命を賭けた血湧き肉躍る戦いを繰り返すのだ。死ねばそこまで……死ぬ気で殺れ!"

 うわぁ~今の日本じゃ不可能だろう。戦国時代にタイムスリップでもしろってか?

 で具体的には

 "死ぬ一歩手前まで闘い続け、死にそうになれば逃げろ。そうする事で自身の限界を知り、退き際を知る事ができる。"

 うん、一見いい事を書いてるが……退き際を間違えれば死ぬじゃねぇか

 だがやるしか無い。
 生憎、今この世界には、化け物共が跋扈している。
 殺らなければ殺られる…ならばやるしかないだろう!

 俺はナイフを構える。
 腰を落とし、若干の前傾姿勢、上半身は脱力、いつでも瞬時に動ける基本姿勢だ。

 俺はそのまま前向きに倒れながら、地面を蹴る。
 ハードな筋トレで鍛えた脚力による爆発的な加速

 化け物が反応するより速く近づき、首筋にナイフを一閃。すぐにバックステップで距離を取る。

 化け物の首から血が吹き出し、そのまま地面に倒れた。
 確実に死んだだろう

 うん、自分の思考に動きがついてくる。これがスーパースロー素振りの効果かもな
 そして、案外、殺した事に対する嫌悪感はないな

 もしかしたら《ハンター》になった事による影響かもしれないな
 そうじゃなかったら俺の精神が変になってきてるということだが……無いな、うん。

 俺は殺した化け物の死体を処理しようと近づいていくと
 化け物の身体が粒子化し、程なくして消滅した。

 緑色の水晶玉を残して

「魔石。ほんと何に使うんだろうな」

 この水晶は魔石という。
 道端で転がっていたのと一緒で、これが魔石と知ったのは俺が部屋の掃除をしている時だ。最初に倒したゴブリンの魔石だ。

 "ゴブリンの魔石を入手"

 拾った瞬間、脳に直接抑揚のない声が流れ、
 疑問を抱くと説明文が浮かび上がった。

 《魔石》
 魔物の命の結晶体

 こんな感じの説明が表示された。

 でも、ほんと何に使えるのだろうか……?
 取り敢えずリュックに入れてはいる。

 後、この化け物共が空想上の怪物ゴブリンだという事も最近知った。
 そーいや、初めて倒した時はゴブリンを倒した的な声が流れたけど、今回は聞こえなかったな

 もしかしたら、最初の達成時だけに聞こえるのかもしれないな

 しばらく時間が経っていたのだろうが、ゴブリンが2体追加で現れた。

 さぁ、2戦目だ!
 俺はナイフを軽く振り、付着した血を飛ばす。
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