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15:のんびりな日
強制休暇に入って20日が経った。
ペーターが目覚めると、寝ているシグルドが服を着ていた。月のものがきたらしい。シグルドは、基本的に下着一枚で寝るが、月のものの時はちゃんと服を着る。寝る前は着ていなかったから、多分、夜中に月のものが始まったのだろう。
ペーターは大きな欠伸をしながら、もぞもぞと薄めの毛布を寝ているシグルドの腹回りに巻きつけた。
いつもより少し遅めに起きたシグルドと朝食を食べながら、ペーターはふと思い立った。
「シグルドさん。今日は一日ベッドでゴロゴロしましょうよ。こないだ街で買った盤上ゲームとかカードで遊びたいです」
「まぁ、構わんが」
「あ、腹巻き着けてます? 折角買ったんだし、ちゃんと着けてくださいよ」
「くそだせぇから嫌」
「えー! お腹と腰は冷やしちゃダメなんですよー! お腹痛いんでしょー!!」
「痛いって程痛くもねぇし。慣れてるから問題ねぇな」
「腹巻き着けたら意外と快適かもしれませんよ?」
「だっせぇから絶対に嫌」
「どうせ誰も見ないでしょー!」
「腹巻き着けるなんぞ年寄りみてぇじゃねぇか」
「どんだけお洒落しようが問答無用で厳ついおっさんなんですから、腹巻きしても大丈夫ですよ」
「お前、後でぐりぐりの刑な」
「なんでぇ!?」
「……今日だけ試してやる。特に変わりなかったら二度と着けねぇからな」
「あ、はぁい。お腹と腰を温めると楽になるらしいですし、効果あるといいですねー。シグルドさんって、頭痛とか吐き気はあるんですか? 僕の姉ちゃん、月のものが重くて、頭痛腹痛腰痛、貧血からくる吐き気があったんですよねー」
「そりゃ難儀だな。俺はちょっとだけ腹と腰が痛くなるだけだ。戦闘にも支障が出ない程度のもんだから、血が出るのが面倒なだけで特にしんどくもねぇわ」
「個人差が大きいんですねー。まぁ、月のものの時くらい、のんびりしときましょうよ」
「おー。3日過ぎたら出てくる血の量も減るから、街に行くぞ。こうなったら、遊べるうちに遊び倒す。あと10日だしな。強制休暇」
「はぁい。もうすぐ冬になるじゃないですか。やっぱりお貴族様パーティーとかに出なきゃいけない感じです?」
「だろうな。面倒くせぇ。多分、休暇が終わったらダンスの練習も始まるぞ」
「うげぇ! やだー! 踊るのはどうせおっさんとでしょー! ていうか、僕より背が高いシグルドさんをエスコートって無理じゃないですか?」
「まぁ、間違いなく愉快な絵面になるな。新年を迎えたら、連日パーティーがあるぞ。兄上達は王都に行くだろうが、母上主催で屋敷でもパーティーをする」
「僕の繊細な胃が死んじゃう!!」
「あーー。本気で面倒くせぇな。いっそ、お前の実家に里帰りでもするか? 食料しこたま持って」
「さんせーい! そっちの方が気が楽です!! でも、義母上がいいって言いますかね」
「まぁ、なんとか説得してみる」
「ちょー頑張ってください。僕の胃のために」
「おー。お前の実家って、年越しは何かするのか?」
「えー。んーと、ご馳走作ってー、大人は昼間から酒を飲んでー、子供は遊んでー、わちゃわちゃ騒ぎながら新年を迎えますね。新年迎えて1日目だけはゆっくりゴロゴロしますけど、2日目からは普通に仕事します。基本的に、農作業に休みはないんで。いやまぁ、暇な時期も一応ありますけど、冬野菜が採れる時期だから、普通に忙しいですね」
「ふぅん。農作業なんぞしたことねぇが、まぁ何事も体験してみるのが大事だ。今年の年越しはお前の実家に里帰りだ。片道二か月かかるから、来月の終わりには出発するか」
「おぉ! 本当に帰っちゃうんですね! やったー! 実家に手紙書いときます! 宿の部屋を押さえとかないと。寝る場所ないですし」
「今年は気楽な年越しができるな。毎年こうはいかんだろうが、俺だって連日パーティーに連れ出されるのは心底嫌だしよぉ。2年に一回は里帰りするようにするか」
「はぁい! ふふー! 楽しみです! あ、うちの母ちゃん、多分容赦なくお手伝いさせてくるだろうけど大丈夫ですか? 使えるものはなんでも使う人なんですけど」
「問題ねぇな。炊事洗濯はやったことがねぇが、掃除くらいならしてたし。新しいことに挑戦してみるのも一興だ。やることがある方が退屈しないだろうしな」
「まぁ、田舎の村だから、特に遊べる場所とかないですしね。夏場なら森の中の泉とかで遊びますけど、真冬に森に行くのもなー」
「持っていく食料類と土産の手配をさせておくか。大食らいはお前だけか?」
「んー。多分、下から二番目の妹も食べる方かも? あの子も魔法使いの素養があるんで」
「あ? 魔法使いは大食らいなのか?」
「そういう傾向にあるらしいですよー」
「ふぅん」
魔法使いの素養がある者は、人口の比率でいくと三割程度だ。魔法使いの素養がある者は、国立魔法学園への入学が義務になっている。妹も15歳になったら、王都の国立魔法学園に入学することになる。
食後の珈琲も飲み終えたので、寝室に戻る。ペーターはいそいそと盤上ゲームとカードを取り出してきて、先にベッドに寝転がっているシグルドの隣に腰を下ろした。
「あ、シグルドさん。腹巻き」
「……しょうがねぇ。今日だけだぞ」
「はいはい。早く着けてきてくださいよ」
シグルドが露骨に顔を顰めながら、ベッドから下りて、衣装箪笥の前でズボンを脱ぎ、街で買ったばかりの黒い腹巻きを着けて、ズボンを穿いた。自分の下腹部をすりすり撫でながら、シグルドがベッドの上に戻ってきた。
「地味に温い」
「でしょうね。お腹痛くないですか?」
「別にそんなに」
「とりあえず、毛布もお腹周りに巻いときましょう」
「逆に暑いだろ」
「痛いよりマシです!」
「あっそ」
ペーターは、シグルドの腹回りに薄めの毛布を巻きつけると、盤上ゲームの遊び方の説明書を読み始めた。初めて見るものだったので買ってみたのだが、遊び方がよく分からない。
遊び方の説明書を頭に叩き込んでから、ペーターは昼食の時間まで、シグルドと盤上ゲームで遊んだ。
今日も美味しい昼食をがっつり食べた後、少しだけ昼寝をしてから、今度はカードで遊ぶ。騎士団の騎士達が遊んでいるところを見たことはあるのだが、実際に遊んだことはない。
シグルドが遊び方を教えてくれたので、ペーターはワクワクしながら、初めてのカード遊びを楽しんだ。
夕食後にシグルドと一緒に風呂に行くと、脱衣場で服を脱いだシグルドがぼそっと呟いた。
「やべぇ。腹巻き、地味に快適だった」
「やったー! ね! ね! 買ってよかったでしょ!」
「なんか悔しい」
「ふふん。月のものの時はお腹と腰を冷やしちゃダメなんですからー!」
「心底ぐりぐりしたい」
「マジでやめてください。早くお風呂に入りましょうよ。身体冷えますし」
「あぁ」
シグルドは、風呂上がりにも自主的に腹巻きを着けていた。本当に気に入ったようである。次に街に行く時に、追加で腹巻きを買った方がよさそうだ。月のものじゃない時も、冬場に使ったらいいだろう。
ペーターは頭の中の買い物リストにシグルド用の腹巻きを追加すると、ほこほこに温まった状態で寝室に向かい、少し早い時間だが、シグルドとベッドに上がって布団に潜り込んだ。
そろそろ本気でペーター用の寝間着も欲しいので、次に街に行く時は買い物祭りだ。
ペーターは寝落ちるまでシグルドと他愛のない話をして、なんとなくシグルドにくっついて寝た。
ペーターが目覚めると、寝ているシグルドが服を着ていた。月のものがきたらしい。シグルドは、基本的に下着一枚で寝るが、月のものの時はちゃんと服を着る。寝る前は着ていなかったから、多分、夜中に月のものが始まったのだろう。
ペーターは大きな欠伸をしながら、もぞもぞと薄めの毛布を寝ているシグルドの腹回りに巻きつけた。
いつもより少し遅めに起きたシグルドと朝食を食べながら、ペーターはふと思い立った。
「シグルドさん。今日は一日ベッドでゴロゴロしましょうよ。こないだ街で買った盤上ゲームとかカードで遊びたいです」
「まぁ、構わんが」
「あ、腹巻き着けてます? 折角買ったんだし、ちゃんと着けてくださいよ」
「くそだせぇから嫌」
「えー! お腹と腰は冷やしちゃダメなんですよー! お腹痛いんでしょー!!」
「痛いって程痛くもねぇし。慣れてるから問題ねぇな」
「腹巻き着けたら意外と快適かもしれませんよ?」
「だっせぇから絶対に嫌」
「どうせ誰も見ないでしょー!」
「腹巻き着けるなんぞ年寄りみてぇじゃねぇか」
「どんだけお洒落しようが問答無用で厳ついおっさんなんですから、腹巻きしても大丈夫ですよ」
「お前、後でぐりぐりの刑な」
「なんでぇ!?」
「……今日だけ試してやる。特に変わりなかったら二度と着けねぇからな」
「あ、はぁい。お腹と腰を温めると楽になるらしいですし、効果あるといいですねー。シグルドさんって、頭痛とか吐き気はあるんですか? 僕の姉ちゃん、月のものが重くて、頭痛腹痛腰痛、貧血からくる吐き気があったんですよねー」
「そりゃ難儀だな。俺はちょっとだけ腹と腰が痛くなるだけだ。戦闘にも支障が出ない程度のもんだから、血が出るのが面倒なだけで特にしんどくもねぇわ」
「個人差が大きいんですねー。まぁ、月のものの時くらい、のんびりしときましょうよ」
「おー。3日過ぎたら出てくる血の量も減るから、街に行くぞ。こうなったら、遊べるうちに遊び倒す。あと10日だしな。強制休暇」
「はぁい。もうすぐ冬になるじゃないですか。やっぱりお貴族様パーティーとかに出なきゃいけない感じです?」
「だろうな。面倒くせぇ。多分、休暇が終わったらダンスの練習も始まるぞ」
「うげぇ! やだー! 踊るのはどうせおっさんとでしょー! ていうか、僕より背が高いシグルドさんをエスコートって無理じゃないですか?」
「まぁ、間違いなく愉快な絵面になるな。新年を迎えたら、連日パーティーがあるぞ。兄上達は王都に行くだろうが、母上主催で屋敷でもパーティーをする」
「僕の繊細な胃が死んじゃう!!」
「あーー。本気で面倒くせぇな。いっそ、お前の実家に里帰りでもするか? 食料しこたま持って」
「さんせーい! そっちの方が気が楽です!! でも、義母上がいいって言いますかね」
「まぁ、なんとか説得してみる」
「ちょー頑張ってください。僕の胃のために」
「おー。お前の実家って、年越しは何かするのか?」
「えー。んーと、ご馳走作ってー、大人は昼間から酒を飲んでー、子供は遊んでー、わちゃわちゃ騒ぎながら新年を迎えますね。新年迎えて1日目だけはゆっくりゴロゴロしますけど、2日目からは普通に仕事します。基本的に、農作業に休みはないんで。いやまぁ、暇な時期も一応ありますけど、冬野菜が採れる時期だから、普通に忙しいですね」
「ふぅん。農作業なんぞしたことねぇが、まぁ何事も体験してみるのが大事だ。今年の年越しはお前の実家に里帰りだ。片道二か月かかるから、来月の終わりには出発するか」
「おぉ! 本当に帰っちゃうんですね! やったー! 実家に手紙書いときます! 宿の部屋を押さえとかないと。寝る場所ないですし」
「今年は気楽な年越しができるな。毎年こうはいかんだろうが、俺だって連日パーティーに連れ出されるのは心底嫌だしよぉ。2年に一回は里帰りするようにするか」
「はぁい! ふふー! 楽しみです! あ、うちの母ちゃん、多分容赦なくお手伝いさせてくるだろうけど大丈夫ですか? 使えるものはなんでも使う人なんですけど」
「問題ねぇな。炊事洗濯はやったことがねぇが、掃除くらいならしてたし。新しいことに挑戦してみるのも一興だ。やることがある方が退屈しないだろうしな」
「まぁ、田舎の村だから、特に遊べる場所とかないですしね。夏場なら森の中の泉とかで遊びますけど、真冬に森に行くのもなー」
「持っていく食料類と土産の手配をさせておくか。大食らいはお前だけか?」
「んー。多分、下から二番目の妹も食べる方かも? あの子も魔法使いの素養があるんで」
「あ? 魔法使いは大食らいなのか?」
「そういう傾向にあるらしいですよー」
「ふぅん」
魔法使いの素養がある者は、人口の比率でいくと三割程度だ。魔法使いの素養がある者は、国立魔法学園への入学が義務になっている。妹も15歳になったら、王都の国立魔法学園に入学することになる。
食後の珈琲も飲み終えたので、寝室に戻る。ペーターはいそいそと盤上ゲームとカードを取り出してきて、先にベッドに寝転がっているシグルドの隣に腰を下ろした。
「あ、シグルドさん。腹巻き」
「……しょうがねぇ。今日だけだぞ」
「はいはい。早く着けてきてくださいよ」
シグルドが露骨に顔を顰めながら、ベッドから下りて、衣装箪笥の前でズボンを脱ぎ、街で買ったばかりの黒い腹巻きを着けて、ズボンを穿いた。自分の下腹部をすりすり撫でながら、シグルドがベッドの上に戻ってきた。
「地味に温い」
「でしょうね。お腹痛くないですか?」
「別にそんなに」
「とりあえず、毛布もお腹周りに巻いときましょう」
「逆に暑いだろ」
「痛いよりマシです!」
「あっそ」
ペーターは、シグルドの腹回りに薄めの毛布を巻きつけると、盤上ゲームの遊び方の説明書を読み始めた。初めて見るものだったので買ってみたのだが、遊び方がよく分からない。
遊び方の説明書を頭に叩き込んでから、ペーターは昼食の時間まで、シグルドと盤上ゲームで遊んだ。
今日も美味しい昼食をがっつり食べた後、少しだけ昼寝をしてから、今度はカードで遊ぶ。騎士団の騎士達が遊んでいるところを見たことはあるのだが、実際に遊んだことはない。
シグルドが遊び方を教えてくれたので、ペーターはワクワクしながら、初めてのカード遊びを楽しんだ。
夕食後にシグルドと一緒に風呂に行くと、脱衣場で服を脱いだシグルドがぼそっと呟いた。
「やべぇ。腹巻き、地味に快適だった」
「やったー! ね! ね! 買ってよかったでしょ!」
「なんか悔しい」
「ふふん。月のものの時はお腹と腰を冷やしちゃダメなんですからー!」
「心底ぐりぐりしたい」
「マジでやめてください。早くお風呂に入りましょうよ。身体冷えますし」
「あぁ」
シグルドは、風呂上がりにも自主的に腹巻きを着けていた。本当に気に入ったようである。次に街に行く時に、追加で腹巻きを買った方がよさそうだ。月のものじゃない時も、冬場に使ったらいいだろう。
ペーターは頭の中の買い物リストにシグルド用の腹巻きを追加すると、ほこほこに温まった状態で寝室に向かい、少し早い時間だが、シグルドとベッドに上がって布団に潜り込んだ。
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