19 / 45
19:賑やかな出迎え
シグルドは箒に跨るペーターの後ろに乗って空を飛んでいた。そろそろ夕方が近い時間帯だ。今日は朝からずっと箒に乗っている。少し遠目にペーターの実家が見えてきた。ペーターの実家は二階建ての家で、周りには広い畑がある。
前にいるペーターが嬉しそうに話しかけてきた。
「やっと見えてきましたー! もうすぐ着きますね!」
「あぁ。日が暮れる前に着けてよかった」
「ちょっと速度を上げて、先に実家に到着しちゃいます?」
「いいぞ。馭者に一声かけてから速度を上げろ」
「はぁい」
ペーターが箒を操って、ふわっと馭者の近くまで下降した。ペーターが先に行くことを馭者に告げ、またふわっと上昇して、さっきまでより速く飛び始めた。微かに頬を撫でる風が強くなるが、寒くて堪らないという程ではない。意外過ぎるが、ペーターは本当に風の魔法だけはそれなりに得意らしい。
ペーターの実家に近づくと、庭に女性陣の姿が見えた。庭に干してある洗濯物を取り込んでいるようだ。
あっという間にペーターの実家に到着して、箒に乗ったまま庭に降りた。
箒から降りると、洗濯物の山を抱えたペーターの母ベルナが驚いた顔をした後で、ぱぁっと顔を輝かせた。
「あらぁ! おかえりなさい! 予想よりちょっと早かったわね!」
「ただいまー。母ちゃん」
「お久しゅうございます。義母上」
「あらやだ。シグルドさんってば、『義母上』なんてやめてちょーだいよー。お尻がむずむずしちゃうわ。『母ちゃん』でいいわよー」
「は、はぁ……えーと、『母ちゃん』。暫くお世話になります」
「はいなー。父ちゃん達もそろそろ戻ってくると思うわー。晩ご飯の支度の前でよかったわ! 今夜はご馳走作らなきゃ!」
「あ、母ちゃん。シグルドさんがいっぱい食べ物とかお土産を用意してくれたよー。馬車二台分にみっちみち」
「あらまぁ! ありがとう! シグルドさん! 今年は豪華な年越しができそうね! みんなー! さっさと洗濯物を取り込んでご馳走作るわよー!」
「「「はぁい」」」
女性陣達が嬉しそうに笑いながら、手早く干してある洗濯物を取り込んで家の中に入っていった。
シグルドはペーターと一緒に家の中に入ると、なんとなく家の中を見回した。
古い家だが、シグルドには馴染みがない素朴な温かさがある気がする。家族が多いし、まだ小さな子供がいるから家の中はごちゃっとしているが、ちゃんと掃除がしてあるのは分かる。
今、この家に住んでいるのは、ペーターの両親、長兄夫婦とその子供が3人、ペーターの下の兄弟が5人である。以前は次兄一家も住んでいたが、割と最近近所に家を建てたらしい。三男は村の大工の家に婿にいっており、ペーターのすぐ上の姉も染物屋に嫁いでいる。次兄は通いで実家の農業の手伝いをしているそうだ。
居間に行けば、6歳くらいの男の子と4歳くらいの男の子、1歳くらいの女の子が二人いた。ペーターの兄弟の末っ子と、長兄夫婦の次男・長女、次兄夫婦の長女だろう。手紙に書いてあったのを読んだことがあるし、ペーターから話を聞いていたので、一応ペーターの実家の家族構成は把握している。
シグルド達を見た子供達がきょとんとした後で、わーっと泣き出した。
「うぉっ!? ちょっ、どうした!?」
「あー。シグルドさんの顔が怖いんじゃないですか? あとデカいから威圧感ありますし」
「お前、後でぐりぐりの刑」
「なんでぇ!? ほらほらー。泣かなくていいよー。ペーター兄ちゃんとシグルド兄ちゃんだよー。久しぶりー」
「……あっ! ペーター兄ちゃんだ!」
「あ、思い出してくれた?」
「おかえりなさい!」
「ただいまー」
この中では一番上の末っ子がペーターとシグルドの顔を思い出してくれたようで、末っ子は泣きやんだ。ペーターが優しくニコニコ笑っているからか、ギャン泣きに近い泣き方をしていた下の子達も泣きやんできた。シグルドは、顔を見るなり子供達に泣かれてほんのり傷ついたが、自分でも顔が厳つくて怖い自覚があるので仕方がないのかもしれない。が、後でペーターに八つ当たりしようと思う。
義母ベルナがお盆を持って居間にやって来た。ベルナにすすめられて椅子に座り、この地域でよく飲まれているという香草茶を飲む。空を飛んできたので身体が少し冷えていた。熱めのいい香りがする香草茶が素直にありがたい。
ペーターとよく似た柔和な顔立ちをしたベルナが、ニコニコ笑って話しかけてきた。
「ちびっ子達の泣き声が聞こえてきたから大丈夫かしらー? って思ったけど、もう泣きやんでるわね。今日は2人ともゆっくりしてなー。明日からはお手伝いよろしく! やることはいっぱいあるからね! あ、ねぇ。ペーター」
「なに? 母ちゃん」
「アンタ、魔法が使えるんだし、毎日お風呂に入れるわね! 確か、宿にはお風呂がなかったでしょ? 毎日うちでお風呂に入ったらいいわー」
「あ、母ちゃん。火の魔法で水を沸かすのはできるけど、水の魔法は苦手だから、浴槽に水を溜めるのは無理だよ。最悪、風呂場が壊れる」
「流石、へっぽこ魔法使い。えーと、母ちゃん。水はいつも人力で溜めるんですか?」
「えぇ。そうよ。えー。薪を気にせず毎日お風呂に入れると思ったのにー」
「母ちゃん。俺が浴槽に水を溜めますよ。俺も風呂に入りたいんで」
「あら。いいの? シグルドさん。裏の井戸から水を運ばなきゃいけないんだけど」
「身体を動かす方が性に合ってるんで問題ないです」
「あっらー! じゃあ、よろしく! ふふーっ。今年の冬は最高ね! いつもはお風呂に入るのは3日に一回くらいなの。準備が大変だし、薪がいっぱいいるからねぇ。あっ! ご飯作る時の薪も節約できるわね! ペーター! それは大丈夫よね!?」
「炎を起こすくらいなら大丈夫だよー」
「おい。本当に大丈夫か? 爆発しないだろうな」
「しませんよ!? 僕をなんだと思ってるんですかー!!」
「へっぽこ魔法使い」
「酷いっ!!」
「まぁ、送られてきてた魔法学園の成績、かなり酷かったものね……。本当に騎士団に入団できたのが奇跡よねー」
「あ、それ。学園の恩師の先生からも言われた」
「だろうな」
「でしょうね」
「2人とも酷くないっ!?」
「はいはい。じゃあ、ペーター! 前言撤回! 台所で火を起こしてちょうだい! 今日の晩ご飯は張り切っちゃうわよー!」
「はぁい」
「母ちゃん。俺も台所を見てみていいですか? 台所を見たことがないので」
「あらそうなの? じゃあ、ついでだし、シグルドさんも手伝ってちょうだいな。野菜の皮剥きとかできる?」
「野菜の皮剥きはやったことがありませんが、刃物の扱いには慣れています。一般の家庭料理は作ったことがありませんが、野営料理なら一応作った経験があります」
「まぁ、騎士様だったものね。じゃあ、教えるから覚えてちょうだいな。ふふー。人手が増えて大助かりよー!」
シグルドはペーターと一緒に、うきうきしているベルナの後ろを歩いて台所に入った。
台所でベルナから芋の皮剥きの仕方を習っていると、ペーターの父ダグラスを筆頭とする男性陣や子供達が帰ってきた。
台所に顔を出したダグラスが、嬉しそうにニッと笑った。
「おかえり。ペーター。シグルドさん。畑から空飛んでるとこ見えてたぞー。魔法使いっぽいな!」
「魔法使いですけど!? ただいま。父ちゃん」
「お久しゅうございます。義父上。暫くお世話になります」
「あ、シグルドさん。『父ちゃん』って呼んでもらいたいっす。『義父上』って呼ばれると、なんか尻がむずむずするんで」
「父ちゃん、母ちゃんとおんなじこと言ってる」
「そりゃそうだろー! こちとら先祖代々農家やってるド庶民だわ! ということで、『父ちゃん』でよろしく!」
「分かりました。父ちゃん。酒はお好きでしたよね。土産に色々買ってきたので、一緒に飲みましょう」
「おっ! ありがてぇ。シグルドさんも酒好きなのかい?」
「好きですね。特に蒸留酒が好きです」
「美味いよなー! 蒸留酒! 滅多に口に入らねぇけど! うちの倅達は皆酒に弱くてよー。家で飲む相手がいなかったから嬉しいわー」
ダグラスが本当に嬉しそうに笑った。夕食の時に早速一緒に酒を飲もうという話になった。ベルナがちょっと呆れた顔で笑いながら、『それなら、おつまみも作らなきゃ』と言って、台所にある保冷庫から色んな食材を追加で取り出してきた。
長兄達にも次々と声をかけられた。皆、シグルドのことも歓迎してくれている。素直に嬉しい。
シグルドは賑やかなペーターの家族の様子になんだか楽しくなって、クックッと笑いながら芋の皮を剥いた。
前にいるペーターが嬉しそうに話しかけてきた。
「やっと見えてきましたー! もうすぐ着きますね!」
「あぁ。日が暮れる前に着けてよかった」
「ちょっと速度を上げて、先に実家に到着しちゃいます?」
「いいぞ。馭者に一声かけてから速度を上げろ」
「はぁい」
ペーターが箒を操って、ふわっと馭者の近くまで下降した。ペーターが先に行くことを馭者に告げ、またふわっと上昇して、さっきまでより速く飛び始めた。微かに頬を撫でる風が強くなるが、寒くて堪らないという程ではない。意外過ぎるが、ペーターは本当に風の魔法だけはそれなりに得意らしい。
ペーターの実家に近づくと、庭に女性陣の姿が見えた。庭に干してある洗濯物を取り込んでいるようだ。
あっという間にペーターの実家に到着して、箒に乗ったまま庭に降りた。
箒から降りると、洗濯物の山を抱えたペーターの母ベルナが驚いた顔をした後で、ぱぁっと顔を輝かせた。
「あらぁ! おかえりなさい! 予想よりちょっと早かったわね!」
「ただいまー。母ちゃん」
「お久しゅうございます。義母上」
「あらやだ。シグルドさんってば、『義母上』なんてやめてちょーだいよー。お尻がむずむずしちゃうわ。『母ちゃん』でいいわよー」
「は、はぁ……えーと、『母ちゃん』。暫くお世話になります」
「はいなー。父ちゃん達もそろそろ戻ってくると思うわー。晩ご飯の支度の前でよかったわ! 今夜はご馳走作らなきゃ!」
「あ、母ちゃん。シグルドさんがいっぱい食べ物とかお土産を用意してくれたよー。馬車二台分にみっちみち」
「あらまぁ! ありがとう! シグルドさん! 今年は豪華な年越しができそうね! みんなー! さっさと洗濯物を取り込んでご馳走作るわよー!」
「「「はぁい」」」
女性陣達が嬉しそうに笑いながら、手早く干してある洗濯物を取り込んで家の中に入っていった。
シグルドはペーターと一緒に家の中に入ると、なんとなく家の中を見回した。
古い家だが、シグルドには馴染みがない素朴な温かさがある気がする。家族が多いし、まだ小さな子供がいるから家の中はごちゃっとしているが、ちゃんと掃除がしてあるのは分かる。
今、この家に住んでいるのは、ペーターの両親、長兄夫婦とその子供が3人、ペーターの下の兄弟が5人である。以前は次兄一家も住んでいたが、割と最近近所に家を建てたらしい。三男は村の大工の家に婿にいっており、ペーターのすぐ上の姉も染物屋に嫁いでいる。次兄は通いで実家の農業の手伝いをしているそうだ。
居間に行けば、6歳くらいの男の子と4歳くらいの男の子、1歳くらいの女の子が二人いた。ペーターの兄弟の末っ子と、長兄夫婦の次男・長女、次兄夫婦の長女だろう。手紙に書いてあったのを読んだことがあるし、ペーターから話を聞いていたので、一応ペーターの実家の家族構成は把握している。
シグルド達を見た子供達がきょとんとした後で、わーっと泣き出した。
「うぉっ!? ちょっ、どうした!?」
「あー。シグルドさんの顔が怖いんじゃないですか? あとデカいから威圧感ありますし」
「お前、後でぐりぐりの刑」
「なんでぇ!? ほらほらー。泣かなくていいよー。ペーター兄ちゃんとシグルド兄ちゃんだよー。久しぶりー」
「……あっ! ペーター兄ちゃんだ!」
「あ、思い出してくれた?」
「おかえりなさい!」
「ただいまー」
この中では一番上の末っ子がペーターとシグルドの顔を思い出してくれたようで、末っ子は泣きやんだ。ペーターが優しくニコニコ笑っているからか、ギャン泣きに近い泣き方をしていた下の子達も泣きやんできた。シグルドは、顔を見るなり子供達に泣かれてほんのり傷ついたが、自分でも顔が厳つくて怖い自覚があるので仕方がないのかもしれない。が、後でペーターに八つ当たりしようと思う。
義母ベルナがお盆を持って居間にやって来た。ベルナにすすめられて椅子に座り、この地域でよく飲まれているという香草茶を飲む。空を飛んできたので身体が少し冷えていた。熱めのいい香りがする香草茶が素直にありがたい。
ペーターとよく似た柔和な顔立ちをしたベルナが、ニコニコ笑って話しかけてきた。
「ちびっ子達の泣き声が聞こえてきたから大丈夫かしらー? って思ったけど、もう泣きやんでるわね。今日は2人ともゆっくりしてなー。明日からはお手伝いよろしく! やることはいっぱいあるからね! あ、ねぇ。ペーター」
「なに? 母ちゃん」
「アンタ、魔法が使えるんだし、毎日お風呂に入れるわね! 確か、宿にはお風呂がなかったでしょ? 毎日うちでお風呂に入ったらいいわー」
「あ、母ちゃん。火の魔法で水を沸かすのはできるけど、水の魔法は苦手だから、浴槽に水を溜めるのは無理だよ。最悪、風呂場が壊れる」
「流石、へっぽこ魔法使い。えーと、母ちゃん。水はいつも人力で溜めるんですか?」
「えぇ。そうよ。えー。薪を気にせず毎日お風呂に入れると思ったのにー」
「母ちゃん。俺が浴槽に水を溜めますよ。俺も風呂に入りたいんで」
「あら。いいの? シグルドさん。裏の井戸から水を運ばなきゃいけないんだけど」
「身体を動かす方が性に合ってるんで問題ないです」
「あっらー! じゃあ、よろしく! ふふーっ。今年の冬は最高ね! いつもはお風呂に入るのは3日に一回くらいなの。準備が大変だし、薪がいっぱいいるからねぇ。あっ! ご飯作る時の薪も節約できるわね! ペーター! それは大丈夫よね!?」
「炎を起こすくらいなら大丈夫だよー」
「おい。本当に大丈夫か? 爆発しないだろうな」
「しませんよ!? 僕をなんだと思ってるんですかー!!」
「へっぽこ魔法使い」
「酷いっ!!」
「まぁ、送られてきてた魔法学園の成績、かなり酷かったものね……。本当に騎士団に入団できたのが奇跡よねー」
「あ、それ。学園の恩師の先生からも言われた」
「だろうな」
「でしょうね」
「2人とも酷くないっ!?」
「はいはい。じゃあ、ペーター! 前言撤回! 台所で火を起こしてちょうだい! 今日の晩ご飯は張り切っちゃうわよー!」
「はぁい」
「母ちゃん。俺も台所を見てみていいですか? 台所を見たことがないので」
「あらそうなの? じゃあ、ついでだし、シグルドさんも手伝ってちょうだいな。野菜の皮剥きとかできる?」
「野菜の皮剥きはやったことがありませんが、刃物の扱いには慣れています。一般の家庭料理は作ったことがありませんが、野営料理なら一応作った経験があります」
「まぁ、騎士様だったものね。じゃあ、教えるから覚えてちょうだいな。ふふー。人手が増えて大助かりよー!」
シグルドはペーターと一緒に、うきうきしているベルナの後ろを歩いて台所に入った。
台所でベルナから芋の皮剥きの仕方を習っていると、ペーターの父ダグラスを筆頭とする男性陣や子供達が帰ってきた。
台所に顔を出したダグラスが、嬉しそうにニッと笑った。
「おかえり。ペーター。シグルドさん。畑から空飛んでるとこ見えてたぞー。魔法使いっぽいな!」
「魔法使いですけど!? ただいま。父ちゃん」
「お久しゅうございます。義父上。暫くお世話になります」
「あ、シグルドさん。『父ちゃん』って呼んでもらいたいっす。『義父上』って呼ばれると、なんか尻がむずむずするんで」
「父ちゃん、母ちゃんとおんなじこと言ってる」
「そりゃそうだろー! こちとら先祖代々農家やってるド庶民だわ! ということで、『父ちゃん』でよろしく!」
「分かりました。父ちゃん。酒はお好きでしたよね。土産に色々買ってきたので、一緒に飲みましょう」
「おっ! ありがてぇ。シグルドさんも酒好きなのかい?」
「好きですね。特に蒸留酒が好きです」
「美味いよなー! 蒸留酒! 滅多に口に入らねぇけど! うちの倅達は皆酒に弱くてよー。家で飲む相手がいなかったから嬉しいわー」
ダグラスが本当に嬉しそうに笑った。夕食の時に早速一緒に酒を飲もうという話になった。ベルナがちょっと呆れた顔で笑いながら、『それなら、おつまみも作らなきゃ』と言って、台所にある保冷庫から色んな食材を追加で取り出してきた。
長兄達にも次々と声をかけられた。皆、シグルドのことも歓迎してくれている。素直に嬉しい。
シグルドは賑やかなペーターの家族の様子になんだか楽しくなって、クックッと笑いながら芋の皮を剥いた。
あなたにおすすめの小説
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。毎日18時50分公開予定です
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
影武者は身の程知らずの恋をする
永川さき
BL
孤児院出身のライリーは農場で働いている傍ら、冒険者を副業としている。
しかし、農場では副業が禁止である上に、冒険者は孤児院で嫌悪の対象となっている。
解雇や失望されてしまう可能性があっても冒険者として働くのは、貧しい孤児院に仕送りをするためだった。
そんなある日、冒険者ギルドから帰宅する途中、正体不明の男に尾行される。
刃を交え、ギリギリのところで男を振り切ったが、逃げ切れていなかったとわかったのは、その数日後のこと。
孤児院に現れたのは王宮の近衛騎士の三人。
そのうちの一人であるユリウスは、ライリーが尾行を振り切った正体不明の男だった。
自身の出自を餌に、そして言外に副業やその内容をバラすと脅され、王宮に行くことを決意したライリーを待ち受ける運命とは……。
近衛騎士×元孤児の影武者の切ない身分差BL。