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4:顔合わせ
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チヒロは顔合わせ当日の朝、かなり早い時間に一緒のベッドに寝ていたミアデージュによって起こされた。ミアデージュとは子供の頃からよく一緒に寝ている。チヒロはミアデージュのぽよんぽよんの大きな胸に顔を埋めて眠るのが大好きだ。すごく落ち着くし、ミアデージュはいつでもいい匂いがするから、すっかり癖になっている。
半分閉じた目のまま軽い朝食を食べると、拷問のような時間の始まりである。チヒロはドレスは別に嫌いじゃない。でも、コルセットを着ける時だけは地獄のように感じる。内臓が口から出ちゃうのではないかと思うくらいギリッギリ締め付けられる。チヒロはドレスを着る度に、毎回潰れた蛙のような声を出して、この拷問タイムをなんとか耐えている。
今日のドレスは昨日シャルロッテとミアデージュが選んだ若草色の少し落ち着いた雰囲気のデザインのドレスだ。豊かな長い黒髪を侍女の手によって結い上げられ、普段はしない化粧を施される。スッピンじゃ童顔なチヒロも、化粧をすれば流石に年相応に見えるようになる。厳密に言うと、年相応に見えるように化粧をしてもらっている。
支度を終えて自室から出ると、別室で渋めの青色のドレスに着替えた眩いまでに美しいミアデージュが、嬉しそうな顔で近寄ってきた。
「まぁまぁ。可愛いですわ。ちーちゃん。ダーナなんかに見せるのが勿体ないですわ」
「ミアちゃんはいつも以上に綺麗だね」
「ふふっ。ありがとう。さ、この可愛らしい姿をダンケ侯爵様とシャルロッテ様にもお見せいたしましょうね」
「うん」
チヒロは上機嫌なミアデージュと手を繋いで、2階の自室から階段を降り、1階の居間へと向かった。居間には神々しいまでに美しいシャルロッテとダンディまっしぐらな素敵なダンケ侯爵が優雅にソファーに座っていた。
「まぁ!ちーちゃんのドレス姿なんて久しぶりに見るわ。とても可愛らしいわ」
「……むぅ。やはり嫁にやるのは止めないか?」
「何をおっしゃるのですか。お父様。ちーちゃんの可愛らしい花嫁姿や可愛い曾孫が見たくありませんの?」
「そりゃ見たいが……」
「あと半刻もすればダーナとシュタイナー伯爵夫妻が到着しますよ。ちーちゃん。心の準備はよろしくて?」
「はい。お母様。いつでもどんとこーいです」
「その意気よ」
シャルロッテが可笑しそうにクスクス笑った。
ーーーーーー
ダンケ侯爵家の応接室にて、両家の顔合わせが始まった。
シュタイナー伯爵はダーナとよく似たどこにでもいそうな普通の顔立ちの人物で、義母となるシュタイナー婦人は少しふくよかな可愛らしい顔立ちをした優しげな雰囲気の人だった。
ダーナはどこからどう見ても普通である。パッと見ただけでは、凄腕の魔術師には全然見えない。チヒロはあんまりダーナの顔をまじまじと見たことはなかった。栗色の癖のない髪とアーモンドのような色合いの瞳をしている。穏やかな目をした男だ。ミアデージュが言っていたようなえげつない戦い方をするようには全然見えない。
適当な世間話をした後、チヒロはダーナと2人で庭に出た。庭には庭師が整えているちょっとした薔薇園がある。そこを案内してこいとダンケ侯爵に言われたのだ。所謂、あとはお若い2人で、というやつなのだろう。
ダーナにエスコートされながら、歩いて薔薇園へと向かう。ダーナは男性の平均身長くらいの背の高さだが、チヒロが小柄なので、2人の身長差は30センチは余裕である。腰に添えられている手は当然ながら、チヒロは勿論、シャルロッテやミアデージュよりも大きい。なんとなく、男の人なんだなぁ、とぼんやり思っていると、薔薇園に着いた。薔薇園には色とりどりの鮮やかな薔薇の花が咲いている。
「見事なものですね」
「はい。祖父が好きなんです」
「へぇ。ところで単刀直入に聞きますけど」
「はい」
「貴女はこの結婚に納得していますか?僕はもう世間的にはおじさんですけど」
「私も世間的にはもうおばさんですね」
「まぁ、そうですね」
「はい」
「んー。で?納得はしてますか?僕は伯爵家の跡取りではないですし、貴女よりも結構年上ですけど」
「はい。特に不満はありません。仕事を続けていいという条件は守っていただけるんですよね?」
「えぇ。それはむしろ僕からお願いしたいくらいですね。貴女がいないと魔術局は事務的な意味で機能しなくなります。それは困ります」
「前々から思ってたんですけど、事務専門の人を雇わないんですか?」
「魔術の知識がない者が魔術師が求めている備品や研究費用を経理等からもぎ取ってこれると思いますか?」
「なぜ必要かを説明する段階で多分無理ですね」
「でしょう?魔術師達がやった方が早いんですよ。とはいえ、僕はそれなりに事務仕事もできますけど、まるでできない者とやる気がない者が多いのもまた事実ですからね。魔術の知識が深く、かといって魔獣討伐や魔術開発に携わっていない事務処理能力に優れた貴女は、今となっては魔術局に必要不可欠な存在なんですよ」
「はぁ……そうなんですか」
「そうなんです」
お互い視線は薔薇に向けられている。チヒロは正直この状況に現実味を感じていなかった。チヒロが結婚する気がなくても、シャルロッテに引き取られて貴族の一員になった時点で、いつかはダンケ侯爵やシャルロッテが決めた相手と結婚するのだろうとは思っていた。恋とか興味がなかった。1番身近な男はダンケ侯爵くらいだろうか。ミアデージュが魔獣討伐に行っていない時はたいていミアデージュと一緒にいるし、いない時は基本的にシャルロッテと一緒にいる。魔術局には仕事で関わる顔見知りや騎士団にも顔見知りがいるが、異性として意識した相手はいない。チヒロが唯一使える魔術は性犯罪者にかけられるもので、その関係でそれなりに男性器を見たことはあるが、だからといって別になんとも思ったことがない。ぶっちゃけチヒロの性に関する知識はかなりふわっとしたものだ。男性器を小さくすることは男にとってはプライドを完全にへし折られることらしいが、それが何故なのかもよく分かっていない。
そんな自分がいよいよ結婚するという実感がまるで湧かない。ダーナはチヒロが結婚相手でいいのだろうか。
「ダーナさん」
「はい」
「ダーナさんこそ私で大丈夫ですか?私、『男の敵』とか言われてるらしいんですけど」
「あー……貴女、男の間じゃかなり有名人ですもんね。エッグい魔術しか使えないっていう」
「そんなにエッグいんですか?」
「男にとってはエッグいですね」
「へぇー」
「まぁ、別に特に好きな相手もいませんし。仕事ばかりしていたら婚期を逃しちゃいましたからね。そもそも惚れたはれたで結婚できるとは思っていませんでしたから」
「貴族ですからね」
「そう。一応貴族ですから。とはいえ、僕は跡取りではありませんから、結婚したら住む家はこのお屋敷とは比べ物にならないくらい小さな家ですよ。使用人はいますが、3人だけです。魔獣討伐で遠征に行くことも多いので、不在の時も多いです」
「家は寝れる場所があればそれで十分です。身の回りのことは一応できますし、必要なら家事を覚えます。長期で不在の時に、実家に帰ったりしても大丈夫ですか?」
「はい。それは構いません」
「ありがとうございます。あ。私、面倒くさいことが嫌いなんです」
「はい」
「もし好きな相手ができたら早めに申告をお願いします。妾にするならするで構いませんけど、後から発覚してごちゃごちゃ面倒なことになるのは嫌です」
「分かりました。……まぁ、1番の問題は貴女の小姑ですけどね」
「小姑?」
「ミアデージュです」
「ミアちゃんですか?」
「はい。うっかり妾や愛人なんてつくったら殺されそうな気がします」
「そうですか?」
「貴女を溺愛してますからね。拗らせていると言ってもいい。遠征の時はいつも貴女の話を垂れ流してますよ」
「へぇー」
淡々と会話している2人の視線は薔薇に固定されたままである。
柔らかい春の風がふわっとチヒロのドレスの裾を撫でた。薔薇の花弁が1枚ひらひらと風にのって飛んで行く。チヒロはなんとなくそれを目で追った。本当に自分が結婚するという現実味がない。結婚したら子供を産むのだろう。自分に子供なんて産めるのだろうか。夫婦とはどういうものなのだろうか。ダンケ侯爵はシャルロッテがチヒロを引き取る前に奥方を亡くし、以来独り身だし、シャルロッテもミアデージュも未婚である。シャルロッテの兄は結婚しているし、チヒロとそんなに歳の変わらない子供もいて、シャルロッテの兄一家からも可愛がってもらっているが、普段は領地にいるので会う機会は少ない。自分の生母はチヒロがまだ4歳の頃にチヒロの父親と離婚をしているので、シングルマザーだった。父親の浮気が離婚原因らしい。チヒロは夫婦というものを、なんとなくしか知らない。シャルロッテの兄夫婦は親同士が決めた結婚だったが、仲良しである。お互い愛人とかつくっていない。ダーナとは特に必要なこと以外話したことはないが、一緒に暮らしていたら仲良くなるものなのだろう。多分。
チヒロがぼんやりとそんなことを考えていると、ダーナが話しかけてきた。
「貴女は家族からなんと呼ばれていますか?」
「『ちーちゃん』です」
「僕もそう呼んでも?」
「どうぞ。私は貴方をなんて呼べばいいですか?」
「お好きな呼び方で」
「じゃあ、『だーちゃん』で」
「わぉ。僕、子供の頃でさえ、そんな風に呼ばれたことがないんですけど」
「初体験ですね」
「その言葉は別のものを連想しちゃうから、あんまり言わない方がいいですよ。いや、確かに初体験ではありますけど」
「だーちゃん。不束者ですが、よろしくお願いします」
「はい。ちーちゃん。こちらこそ、末永くよろしくお願いします」
チヒロはダーナと向かい合って、軽く握手をしてから、ダーナにエスコートをされて、皆が待つ部屋へと戻った。
半分閉じた目のまま軽い朝食を食べると、拷問のような時間の始まりである。チヒロはドレスは別に嫌いじゃない。でも、コルセットを着ける時だけは地獄のように感じる。内臓が口から出ちゃうのではないかと思うくらいギリッギリ締め付けられる。チヒロはドレスを着る度に、毎回潰れた蛙のような声を出して、この拷問タイムをなんとか耐えている。
今日のドレスは昨日シャルロッテとミアデージュが選んだ若草色の少し落ち着いた雰囲気のデザインのドレスだ。豊かな長い黒髪を侍女の手によって結い上げられ、普段はしない化粧を施される。スッピンじゃ童顔なチヒロも、化粧をすれば流石に年相応に見えるようになる。厳密に言うと、年相応に見えるように化粧をしてもらっている。
支度を終えて自室から出ると、別室で渋めの青色のドレスに着替えた眩いまでに美しいミアデージュが、嬉しそうな顔で近寄ってきた。
「まぁまぁ。可愛いですわ。ちーちゃん。ダーナなんかに見せるのが勿体ないですわ」
「ミアちゃんはいつも以上に綺麗だね」
「ふふっ。ありがとう。さ、この可愛らしい姿をダンケ侯爵様とシャルロッテ様にもお見せいたしましょうね」
「うん」
チヒロは上機嫌なミアデージュと手を繋いで、2階の自室から階段を降り、1階の居間へと向かった。居間には神々しいまでに美しいシャルロッテとダンディまっしぐらな素敵なダンケ侯爵が優雅にソファーに座っていた。
「まぁ!ちーちゃんのドレス姿なんて久しぶりに見るわ。とても可愛らしいわ」
「……むぅ。やはり嫁にやるのは止めないか?」
「何をおっしゃるのですか。お父様。ちーちゃんの可愛らしい花嫁姿や可愛い曾孫が見たくありませんの?」
「そりゃ見たいが……」
「あと半刻もすればダーナとシュタイナー伯爵夫妻が到着しますよ。ちーちゃん。心の準備はよろしくて?」
「はい。お母様。いつでもどんとこーいです」
「その意気よ」
シャルロッテが可笑しそうにクスクス笑った。
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ダンケ侯爵家の応接室にて、両家の顔合わせが始まった。
シュタイナー伯爵はダーナとよく似たどこにでもいそうな普通の顔立ちの人物で、義母となるシュタイナー婦人は少しふくよかな可愛らしい顔立ちをした優しげな雰囲気の人だった。
ダーナはどこからどう見ても普通である。パッと見ただけでは、凄腕の魔術師には全然見えない。チヒロはあんまりダーナの顔をまじまじと見たことはなかった。栗色の癖のない髪とアーモンドのような色合いの瞳をしている。穏やかな目をした男だ。ミアデージュが言っていたようなえげつない戦い方をするようには全然見えない。
適当な世間話をした後、チヒロはダーナと2人で庭に出た。庭には庭師が整えているちょっとした薔薇園がある。そこを案内してこいとダンケ侯爵に言われたのだ。所謂、あとはお若い2人で、というやつなのだろう。
ダーナにエスコートされながら、歩いて薔薇園へと向かう。ダーナは男性の平均身長くらいの背の高さだが、チヒロが小柄なので、2人の身長差は30センチは余裕である。腰に添えられている手は当然ながら、チヒロは勿論、シャルロッテやミアデージュよりも大きい。なんとなく、男の人なんだなぁ、とぼんやり思っていると、薔薇園に着いた。薔薇園には色とりどりの鮮やかな薔薇の花が咲いている。
「見事なものですね」
「はい。祖父が好きなんです」
「へぇ。ところで単刀直入に聞きますけど」
「はい」
「貴女はこの結婚に納得していますか?僕はもう世間的にはおじさんですけど」
「私も世間的にはもうおばさんですね」
「まぁ、そうですね」
「はい」
「んー。で?納得はしてますか?僕は伯爵家の跡取りではないですし、貴女よりも結構年上ですけど」
「はい。特に不満はありません。仕事を続けていいという条件は守っていただけるんですよね?」
「えぇ。それはむしろ僕からお願いしたいくらいですね。貴女がいないと魔術局は事務的な意味で機能しなくなります。それは困ります」
「前々から思ってたんですけど、事務専門の人を雇わないんですか?」
「魔術の知識がない者が魔術師が求めている備品や研究費用を経理等からもぎ取ってこれると思いますか?」
「なぜ必要かを説明する段階で多分無理ですね」
「でしょう?魔術師達がやった方が早いんですよ。とはいえ、僕はそれなりに事務仕事もできますけど、まるでできない者とやる気がない者が多いのもまた事実ですからね。魔術の知識が深く、かといって魔獣討伐や魔術開発に携わっていない事務処理能力に優れた貴女は、今となっては魔術局に必要不可欠な存在なんですよ」
「はぁ……そうなんですか」
「そうなんです」
お互い視線は薔薇に向けられている。チヒロは正直この状況に現実味を感じていなかった。チヒロが結婚する気がなくても、シャルロッテに引き取られて貴族の一員になった時点で、いつかはダンケ侯爵やシャルロッテが決めた相手と結婚するのだろうとは思っていた。恋とか興味がなかった。1番身近な男はダンケ侯爵くらいだろうか。ミアデージュが魔獣討伐に行っていない時はたいていミアデージュと一緒にいるし、いない時は基本的にシャルロッテと一緒にいる。魔術局には仕事で関わる顔見知りや騎士団にも顔見知りがいるが、異性として意識した相手はいない。チヒロが唯一使える魔術は性犯罪者にかけられるもので、その関係でそれなりに男性器を見たことはあるが、だからといって別になんとも思ったことがない。ぶっちゃけチヒロの性に関する知識はかなりふわっとしたものだ。男性器を小さくすることは男にとってはプライドを完全にへし折られることらしいが、それが何故なのかもよく分かっていない。
そんな自分がいよいよ結婚するという実感がまるで湧かない。ダーナはチヒロが結婚相手でいいのだろうか。
「ダーナさん」
「はい」
「ダーナさんこそ私で大丈夫ですか?私、『男の敵』とか言われてるらしいんですけど」
「あー……貴女、男の間じゃかなり有名人ですもんね。エッグい魔術しか使えないっていう」
「そんなにエッグいんですか?」
「男にとってはエッグいですね」
「へぇー」
「まぁ、別に特に好きな相手もいませんし。仕事ばかりしていたら婚期を逃しちゃいましたからね。そもそも惚れたはれたで結婚できるとは思っていませんでしたから」
「貴族ですからね」
「そう。一応貴族ですから。とはいえ、僕は跡取りではありませんから、結婚したら住む家はこのお屋敷とは比べ物にならないくらい小さな家ですよ。使用人はいますが、3人だけです。魔獣討伐で遠征に行くことも多いので、不在の時も多いです」
「家は寝れる場所があればそれで十分です。身の回りのことは一応できますし、必要なら家事を覚えます。長期で不在の時に、実家に帰ったりしても大丈夫ですか?」
「はい。それは構いません」
「ありがとうございます。あ。私、面倒くさいことが嫌いなんです」
「はい」
「もし好きな相手ができたら早めに申告をお願いします。妾にするならするで構いませんけど、後から発覚してごちゃごちゃ面倒なことになるのは嫌です」
「分かりました。……まぁ、1番の問題は貴女の小姑ですけどね」
「小姑?」
「ミアデージュです」
「ミアちゃんですか?」
「はい。うっかり妾や愛人なんてつくったら殺されそうな気がします」
「そうですか?」
「貴女を溺愛してますからね。拗らせていると言ってもいい。遠征の時はいつも貴女の話を垂れ流してますよ」
「へぇー」
淡々と会話している2人の視線は薔薇に固定されたままである。
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チヒロがぼんやりとそんなことを考えていると、ダーナが話しかけてきた。
「貴女は家族からなんと呼ばれていますか?」
「『ちーちゃん』です」
「僕もそう呼んでも?」
「どうぞ。私は貴方をなんて呼べばいいですか?」
「お好きな呼び方で」
「じゃあ、『だーちゃん』で」
「わぉ。僕、子供の頃でさえ、そんな風に呼ばれたことがないんですけど」
「初体験ですね」
「その言葉は別のものを連想しちゃうから、あんまり言わない方がいいですよ。いや、確かに初体験ではありますけど」
「だーちゃん。不束者ですが、よろしくお願いします」
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