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11:幸福とは何だ
バルトロは分厚い辞書をパタンと閉じた。
『幸福』というものが一体何か、複数の辞書で調べてみたが、どれも似たり寄ったりな内容だった。『心が満ち足りていること』『恵まれた状態にあること』『不満がないこと』『満足できて楽しいこと』。大体そんな感じのことが書かれていた。
バルトロは『神様からの贈り物』を産卵し、シュタインと共に生まれてきた子供を幸福に育てなければならない。
『幸福』とは何だ。
バルトロは、自分が嬉しいと、幸せだと、感じたことを思い出してみた。ふわふわの温かい焼きたてのパンを食べている時、厳しいと評判の上官に『よくやった』と褒められた時、作戦を無事に実行できて成果が出た時、キツい仕事が終わった後、馴染みの酒屋でいつもの安酒を飲んだ時。バルトロの経験だけでは、『子供を幸福に育て上げる』ということが、どういうものか分からない。
育つ環境は最上級のものだろう。食うために幼い頃から働かなくていい。何もしなくても、腹一杯に美味しいものを食べることができる。服も最高級品のものを着て、使用人達が色々してくれるので、なんの不便もない。ベッドの布団は常にふかふかで温かい。学びたいものがあれば専門の家庭教師を呼んだり、書斎の本を読めばいい。運動がしたければバルトロが付き合ってやったり、屋敷の警備の者達に遊んでもらえばいい。この上なく恵まれている環境だと思う。
あとは何が必要なのだろうか。親の愛?そもそも『愛』とはなんだ。少し前に会った神官長が、『お2人は愛し合っておられるのですな!』と言っていた。シュタインの方はどうかは知らないが、バルトロはシュタインを愛していない。愛するということが、よく分からない。離れていても、故郷の家族は大事だ。これはおそらく家族愛というものだろう。バルトロは娼館に行って女を抱いていたが、恋とやらをしたことがない。軍に入るまでは日々の生活の為に必死だったし、軍に入ってからは生き延びることに必死になった。恋ができる余裕なんてなかったのだろう。
バルトロには、『愛』とか『恋』とか、よく分からない。
シュタインならば分かるのだろうか。先日会ったシュタインの両親は、シュタインが元気に過ごしていることを喜び、不自由はないか、欲しいものはないか、好きなお菓子を持ってきたから食べなさい、とシュタインのことをとても気遣っていた。あぁいうのが親子愛なのだろう。
そういえば、バルトロの両親も、バルトロが軍に入ってから、よく手紙をくれていた。『元気か?怪我をしていないか?食べるものはあるか?友達はできたか?』そんな内容ばかりだった。
おそらくだが、親の愛とは、子供を大事に思って、心配をして、子供を気遣う、そんな感じのものなのだろう。多分。
バルトロはぺったんこの下腹部を撫でた。この中に『神様からの贈り物』がいる。順調に行けば、あと半年程で産まれてくる。産まれた子供に、バルトロは親の愛を与えてやることができるのだろうか。なるようにしかならないと思う反面、どうしても、頭の片隅に不安が巣を作ってしまっている。
バルトロは眉間にできた深い皺を伸ばすように、指先で自分の眉間をグリグリと撫でた。
産卵まであと半年はあるのだ。今考えて悩まなくてもいい。
バルトロは、ふぅ、と小さな息を吐いて、自分の太腿を見下ろした。シュタインがバルトロの太腿を枕に、間抜け顔でぐっすりと寝ている。暢気過ぎるシュタインの寝顔を眺めていると、今まで考えていたことが、割とどうでもよくなってきた。バルトロは小さく溜め息を吐いて、静かに上着を脱いだ。シュタインの身体に上着をかけてやり、勝手に人の太腿で寝る前までシュタインが読んでいた本を手に取る。
この屋敷で暮らし始めた頃は魔術書ばかり読んでいたシュタインだが、最近はバルトロが読むような冒険小説を読むようになった。目ぼしい魔術書を読みきったからだろう。1冊の本を読みきると、『どれが面白かった?』と聞いてくる。たまに感想を告げてくることもある。本の話題で盛り上がることもあり、新鮮な楽しさがある。以前のバルトロにはなかった経験だ。
バルトロは頁に挟まれた栞を落とさないように気をつけながら、シュタインが読んでいる本を読み始めた。胸踊る冒険だけでなく、主人公の甘酸っぱい恋模様も描かれている小説だ。バルトロにとっては『恋』なんて空想上のものだ。シュタインは本の内容に恋愛要素があると喜ぶ。小説の登場人物達の恋の行方を読むのが楽しいそうだ。分かるような、分からないような、微妙なところである。
バルトロはシュタインが自然に目覚めるまで、静かに頁を捲り続けた。
ーーーーーー
シュタインは心地よい酔いを感じながら、ワイングラスを傾けた。拳1つ分開けて隣にバルトロが座り、蒸留酒を飲んでいる。シュタインなら確実に噎せるようなキツい酒を、バルトロは平然とした顔で次々と飲み干していく。同じ生き物とは思えない。バルトロは蟒蛇と呼んでもいいくらい酒に強い。
秋が深まり、朝晩が少しずつ冷えるようになってきた。たまには酒を飲もうということで、居間で2人で飲んでいる。身体がぽかぽかと温かく、頭の中がふわふわする。シュタインは、ふふっと意味もなく笑った。
バルトロが肴のチーズを手に取り、シュタインの口元に運んできたので、シュタインは口を開けてチーズを受け取った。もぐもぐとチーズを咀嚼する。とても美味しい。
「もう1つ」
「自分でとれよ」
「もう1つ」
「ほらよ」
「……おいしい」
「あぁ。酒に合うな。このチーズ」
バルトロも自分の口にチーズを放り込んだ。咀嚼して飲み込む。嚥下に合わせて、バルトロのくっきり浮き出た喉仏が動いた。
シュタインはふわふわした頭で、ここ最近気になっていることを口に出した。
「バルトロ。何を考えている」
「酒がうめぇ」
「違う。ここ最近、何か考えているだろう」
「あー……」
「話せ」
「……別に大したことじゃねぇよ。『幸福』ってやつはどんなもんなんだろうなって。ちょっと疑問に思っただけだ」
「『幸福』」
「『神様からの贈り物』を『幸福』に育てなきゃいけねぇだろ。じゃあその『幸福』って何だよって」
「改めて言われてると、確かに何だろうな。『幸福』って、多分とても主観的な感覚によるものだろう?」
「だよな」
「……好きなことや、やりたいことを好きにできる、とか。愛する人が側にいるとか?んー……なんだろう。その当事者自身の物事の受け取り方次第な気がする」
「物事の受け取り方」
「例えば、このチーズ。経済的に豊かで何でも好きに食べられる人間がこのチーズを貰うのと、食べるものすら事欠くような人間がこのチーズを貰うのでは、きっと受け止め方が違うだろう」
「まぁな」
「自分が『これは幸せな事だ』と思えば、それは『幸福』なんじゃないか?」
「……なるほど」
「まぁ、多分だけど。『幸福』なんて、きっと人各々だ。お前が悩む程考えることでもない」
「……そう、なのか」
「あぁ。『神様からの贈り物』を『幸福』にしようと無理に考えなくてもいいんじゃないか?性根が真っ直ぐに育つように見守って慈しんで、普通に可愛がってやればいい。成長の手助けさえしてやれば、あとはきっと勝手に『幸福』になる。何せ、私達の子供は『神様からの贈り物』だからな」
バルトロが驚いたかのように、まじまじとシュタインを見た。
「…………お前、すごいな」
「何が?」
「いや、そうだな。そうなのかもしれない。シュタイン」
「ん?」
「……お前が伴侶で良かったかもな」
バルトロが小さく笑った。バルトロの笑顔なんて殆んど見たことがない。バルトロの貴重な笑顔に、シュタインは機嫌よく笑った。
「ふふん。そうだろう。もっと褒めてくれてもいいぞ」
「調子に乗るな」
「私は褒められて成長するタイプだ」
「あっそ」
クックッと、なんだか楽しそうにバルトロが笑う。バルトロの笑顔を見ていると、シュタインはなんだか胸の中が温かい何かで満たされるような感覚を覚えた。
バルトロがくっと一息でグラスの酒を飲み干し、ゴツい手でほっそりとしているシュタインの手をゆるく握った。
「……寝室、行くぞ」
「ヤるのか?」
「ヤる」
「いいぞ」
ご機嫌な様子のバルトロに頷いてみせると、バルトロが頬をゆるめてシュタインの手を握ったまま立ち上がった。鼻歌でも歌いそうな雰囲気で、肩に担ぎ上げられる。バルトロはそのままズンズンと寝室目指して歩き始めた。
『幸福』というものが一体何か、複数の辞書で調べてみたが、どれも似たり寄ったりな内容だった。『心が満ち足りていること』『恵まれた状態にあること』『不満がないこと』『満足できて楽しいこと』。大体そんな感じのことが書かれていた。
バルトロは『神様からの贈り物』を産卵し、シュタインと共に生まれてきた子供を幸福に育てなければならない。
『幸福』とは何だ。
バルトロは、自分が嬉しいと、幸せだと、感じたことを思い出してみた。ふわふわの温かい焼きたてのパンを食べている時、厳しいと評判の上官に『よくやった』と褒められた時、作戦を無事に実行できて成果が出た時、キツい仕事が終わった後、馴染みの酒屋でいつもの安酒を飲んだ時。バルトロの経験だけでは、『子供を幸福に育て上げる』ということが、どういうものか分からない。
育つ環境は最上級のものだろう。食うために幼い頃から働かなくていい。何もしなくても、腹一杯に美味しいものを食べることができる。服も最高級品のものを着て、使用人達が色々してくれるので、なんの不便もない。ベッドの布団は常にふかふかで温かい。学びたいものがあれば専門の家庭教師を呼んだり、書斎の本を読めばいい。運動がしたければバルトロが付き合ってやったり、屋敷の警備の者達に遊んでもらえばいい。この上なく恵まれている環境だと思う。
あとは何が必要なのだろうか。親の愛?そもそも『愛』とはなんだ。少し前に会った神官長が、『お2人は愛し合っておられるのですな!』と言っていた。シュタインの方はどうかは知らないが、バルトロはシュタインを愛していない。愛するということが、よく分からない。離れていても、故郷の家族は大事だ。これはおそらく家族愛というものだろう。バルトロは娼館に行って女を抱いていたが、恋とやらをしたことがない。軍に入るまでは日々の生活の為に必死だったし、軍に入ってからは生き延びることに必死になった。恋ができる余裕なんてなかったのだろう。
バルトロには、『愛』とか『恋』とか、よく分からない。
シュタインならば分かるのだろうか。先日会ったシュタインの両親は、シュタインが元気に過ごしていることを喜び、不自由はないか、欲しいものはないか、好きなお菓子を持ってきたから食べなさい、とシュタインのことをとても気遣っていた。あぁいうのが親子愛なのだろう。
そういえば、バルトロの両親も、バルトロが軍に入ってから、よく手紙をくれていた。『元気か?怪我をしていないか?食べるものはあるか?友達はできたか?』そんな内容ばかりだった。
おそらくだが、親の愛とは、子供を大事に思って、心配をして、子供を気遣う、そんな感じのものなのだろう。多分。
バルトロはぺったんこの下腹部を撫でた。この中に『神様からの贈り物』がいる。順調に行けば、あと半年程で産まれてくる。産まれた子供に、バルトロは親の愛を与えてやることができるのだろうか。なるようにしかならないと思う反面、どうしても、頭の片隅に不安が巣を作ってしまっている。
バルトロは眉間にできた深い皺を伸ばすように、指先で自分の眉間をグリグリと撫でた。
産卵まであと半年はあるのだ。今考えて悩まなくてもいい。
バルトロは、ふぅ、と小さな息を吐いて、自分の太腿を見下ろした。シュタインがバルトロの太腿を枕に、間抜け顔でぐっすりと寝ている。暢気過ぎるシュタインの寝顔を眺めていると、今まで考えていたことが、割とどうでもよくなってきた。バルトロは小さく溜め息を吐いて、静かに上着を脱いだ。シュタインの身体に上着をかけてやり、勝手に人の太腿で寝る前までシュタインが読んでいた本を手に取る。
この屋敷で暮らし始めた頃は魔術書ばかり読んでいたシュタインだが、最近はバルトロが読むような冒険小説を読むようになった。目ぼしい魔術書を読みきったからだろう。1冊の本を読みきると、『どれが面白かった?』と聞いてくる。たまに感想を告げてくることもある。本の話題で盛り上がることもあり、新鮮な楽しさがある。以前のバルトロにはなかった経験だ。
バルトロは頁に挟まれた栞を落とさないように気をつけながら、シュタインが読んでいる本を読み始めた。胸踊る冒険だけでなく、主人公の甘酸っぱい恋模様も描かれている小説だ。バルトロにとっては『恋』なんて空想上のものだ。シュタインは本の内容に恋愛要素があると喜ぶ。小説の登場人物達の恋の行方を読むのが楽しいそうだ。分かるような、分からないような、微妙なところである。
バルトロはシュタインが自然に目覚めるまで、静かに頁を捲り続けた。
ーーーーーー
シュタインは心地よい酔いを感じながら、ワイングラスを傾けた。拳1つ分開けて隣にバルトロが座り、蒸留酒を飲んでいる。シュタインなら確実に噎せるようなキツい酒を、バルトロは平然とした顔で次々と飲み干していく。同じ生き物とは思えない。バルトロは蟒蛇と呼んでもいいくらい酒に強い。
秋が深まり、朝晩が少しずつ冷えるようになってきた。たまには酒を飲もうということで、居間で2人で飲んでいる。身体がぽかぽかと温かく、頭の中がふわふわする。シュタインは、ふふっと意味もなく笑った。
バルトロが肴のチーズを手に取り、シュタインの口元に運んできたので、シュタインは口を開けてチーズを受け取った。もぐもぐとチーズを咀嚼する。とても美味しい。
「もう1つ」
「自分でとれよ」
「もう1つ」
「ほらよ」
「……おいしい」
「あぁ。酒に合うな。このチーズ」
バルトロも自分の口にチーズを放り込んだ。咀嚼して飲み込む。嚥下に合わせて、バルトロのくっきり浮き出た喉仏が動いた。
シュタインはふわふわした頭で、ここ最近気になっていることを口に出した。
「バルトロ。何を考えている」
「酒がうめぇ」
「違う。ここ最近、何か考えているだろう」
「あー……」
「話せ」
「……別に大したことじゃねぇよ。『幸福』ってやつはどんなもんなんだろうなって。ちょっと疑問に思っただけだ」
「『幸福』」
「『神様からの贈り物』を『幸福』に育てなきゃいけねぇだろ。じゃあその『幸福』って何だよって」
「改めて言われてると、確かに何だろうな。『幸福』って、多分とても主観的な感覚によるものだろう?」
「だよな」
「……好きなことや、やりたいことを好きにできる、とか。愛する人が側にいるとか?んー……なんだろう。その当事者自身の物事の受け取り方次第な気がする」
「物事の受け取り方」
「例えば、このチーズ。経済的に豊かで何でも好きに食べられる人間がこのチーズを貰うのと、食べるものすら事欠くような人間がこのチーズを貰うのでは、きっと受け止め方が違うだろう」
「まぁな」
「自分が『これは幸せな事だ』と思えば、それは『幸福』なんじゃないか?」
「……なるほど」
「まぁ、多分だけど。『幸福』なんて、きっと人各々だ。お前が悩む程考えることでもない」
「……そう、なのか」
「あぁ。『神様からの贈り物』を『幸福』にしようと無理に考えなくてもいいんじゃないか?性根が真っ直ぐに育つように見守って慈しんで、普通に可愛がってやればいい。成長の手助けさえしてやれば、あとはきっと勝手に『幸福』になる。何せ、私達の子供は『神様からの贈り物』だからな」
バルトロが驚いたかのように、まじまじとシュタインを見た。
「…………お前、すごいな」
「何が?」
「いや、そうだな。そうなのかもしれない。シュタイン」
「ん?」
「……お前が伴侶で良かったかもな」
バルトロが小さく笑った。バルトロの笑顔なんて殆んど見たことがない。バルトロの貴重な笑顔に、シュタインは機嫌よく笑った。
「ふふん。そうだろう。もっと褒めてくれてもいいぞ」
「調子に乗るな」
「私は褒められて成長するタイプだ」
「あっそ」
クックッと、なんだか楽しそうにバルトロが笑う。バルトロの笑顔を見ていると、シュタインはなんだか胸の中が温かい何かで満たされるような感覚を覚えた。
バルトロがくっと一息でグラスの酒を飲み干し、ゴツい手でほっそりとしているシュタインの手をゆるく握った。
「……寝室、行くぞ」
「ヤるのか?」
「ヤる」
「いいぞ」
ご機嫌な様子のバルトロに頷いてみせると、バルトロが頬をゆるめてシュタインの手を握ったまま立ち上がった。鼻歌でも歌いそうな雰囲気で、肩に担ぎ上げられる。バルトロはそのままズンズンと寝室目指して歩き始めた。
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