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3:ちょっとした一騒動
休日。今日はハルトがお嫁さんになる子を連れてくる日だ。両家の顔合わせは来月の頭の予定である。
リードはいつもより早めに起きると、寝間着から着替えて階下の脱衣場へ向かった。
顔を洗ってうっすら伸びている髭を丁寧に剃ってから一回目の洗濯を仕掛ける。
大きな魔導洗濯機があって本当によかった。もし手洗いだったら、洗濯で一日が終わるところだ。
手早く朝食を作りながら、昼食用のご馳走の仕込みもする。ちょっと痛い出費だったが、まるごとの鶏を五羽買ってきた。腹の中に香草と野菜を詰め、表面に塩と香草を擦り込んでじっくり弱火で焼くので作るのに時間がかかる。一羽目を焼き始めながら、昼用のスープも作り始める。野菜とベーコンごろごろのスープだ。他にもサラダやパン、苺をたっぷりのせたタルトを用意する。パンとタルト生地は昨夜のうちに焼いてある。あとは生クリームを泡立てて、苺を飾るだけだ。
いつもの朝食が出来上がると、家族を起こしに行く。
朝食を食べながら、母ハルーアがのほほんと口を開いた。
「ハルトのお相手のお嬢さんはどんな子かしらねー。商家なら援助が期待できるわねー」
「母さん。ハルトの婿入り先にそんなことさせないからね?」
「あらぁ。なんで? リード。援助してもらったら生活が楽になるじゃない」
「父さんと母さんも節約に協力してくれたら十分生活できるでしょ。昨日も服を買いに行ってたじゃない。もう少し考えてお金を使ってよ」
「えー。だって、お嫁さんになる人と会うのよ? ちゃんとした服を着なくっちゃ」
「一理あるけど、五着も買う必要あった? 今しか着られないのに」
「だって欲しかったんですもの」
「母さん……」
「まぁまぁ。いいじゃないか。ハルーアちゃんはいつでも可愛い格好していいからな!」
「うふふ。ありがとう。ドーム」
「父さん。母さんに甘くしないで」
「まぁ、落ち着けよ。今日はめでたい日なんだからな!」
「絶対に! 絶っ対に! ハルトのお嫁さんに援助のこと言わないでよ」
「えぇー。でもぉ……」
「『でも』じゃない! そのことでハルトの結婚が駄目になるかもしれないんだよ! それに恥ずかしいでしょ! うちは父さんと僕の収入でなんとかするから!」
「それじゃあ、好きなお洋服とかたまにしか買えないじゃない」
「母さん達が無責任にぽんぽん子どもをつくらなければ、もう少し楽な生活ができてたかもね」
「ひどいわっ! なんてこと言うのよ! リード!」
「身の丈に合った生活をするしかないんだから、母さんもいつまでもお嬢様気取りはやめてくれないかな」
「リード! 言いすぎだ! ハルーアちゃんに謝りなさい!」
「絶対に嫌。間違ったこと言ってる? 僕。父さんと母さんの無駄遣いがどんだけ家計を厳しくしてると思ってんの?」
「めでたい日に言うことじゃないだろう」
「そうだね。でも、母さんがお相手の家から援助をもらうとか言い出すのが悪いと思うよ。父さんだってプライドがあるだろ? 僕にだってある。僕と父さんの稼ぎでちゃんと生活はできるよね?」
「お、おぅ。ハルーアちゃん。援助の話はしないでおこうな」
「そんな……ドーム。でも援助してもらえたら二人で旅行もたくさん行けるじゃない」
「それはそうだが、まずはハルトの結婚が正式に決まるのが先だ。援助は……まぁ、そのうちな」
「ははは。援助なんて僕がさせないから」
朝から楽しくない話題で朝食が美味しくない。
リードは急いで食べきると、今日も『やさいやだー!』とぐずるミアを宥めながら食べさせつつ、溜め息を吐いた。
昼前にご馳走が完成したタイミングで、ハルトが可愛らしいお嬢さんを連れてきた。
歳は十八歳で、大人しそうな雰囲気だが、控えめな笑顔が可愛らしい子だ。
奮発して買ったお高めの紅茶を淹れ、居間でハルトに紹介してもらう。
「婚約者のリリーナ」
「リリーナと申します。あの、よろしくお願いいたします」
控えめに笑って挨拶してくれたリリーナに、家族全員がそれぞれ自己紹介をした。
賑やかにお喋りをして、昼食のご馳走を温めて居間に運ぶ。
下の子達が鶏の丸焼きを見て嬉しそうな歓声を上げた。
事前に『とにかくお行儀よく!』と言い聞かせていたからか、普段よりもちゃんと皆お行儀よく食べている。
ほっとしながらデザートのタルトを切り分けてリリーナとハルトに皿を渡したり、追加の紅茶を淹れたりして、何事もなく終わりそうだなぁと油断していると、ハルーアがやらかしてくれた。
「リリーナさん。ハルトと結婚したら、うちに少し援助をしてくれないかしら? ほら。もうすぐハルトの兄弟も生まれるし?」
「母さん! その話はなしって言っただろ! ごめんね。リリーナさん。聞かなかったことにしてくれるかな? 援助なんて絶対にさせないから」
「あ、は、はい」
「はぁ……リード。あなたっていつから母親の私より偉くなったの? いつもぐちぐち口うるさいし、好きなものを買わせてくれないし。稼ぎが悪いんだから余計な口出しはしないでちょうだい」
「……っ! ……母さん。とにかくハルトとリリーナさんに援助なんて絶対にさせないから。ハルトはリリーナさんと家族になって、これからは自分の家族のためだけに頑張るんだから」
「私達とも家族だわ。家族なんだから助けてくれてもいいでしょ?」
「うちは金銭的に助けてもらうほど落ちぶれてないよ。父さんと僕の収入でちゃんと暮らせる」
「ま、まぁまぁ。ハルーアちゃんもリードも落ち着けよ。リリーナさんがビックリしちゃうぞ?」
「あ、ごめんね。リリーナさん。今のは聞かなかったことにしてね。君とハルトに負担を強いることはあり得ないから安心してください。ハルトをよろしくね」
「あ、はい」
ハルーアが拗ねた顔をしているがスルーして、リードはリリーナににこやかに笑いかけた。
あれだけ釘を刺しておいたのにやらかしてくれたハルーアに心底腹が立つ。祖父母がいればもう少しマシだったのだろうが、まだ旅行から帰ってきていない。
途中微妙な空気になったが、なんとかリリーナとの顔合わせは終わった。
リリーナの家に向かうハルトとリリーナを見送ってから、リードは大きな溜め息を吐いた。
今からこれじゃあ、両家の顔合わせの時が不安すぎる。両家の顔合わせはおそらく両親同士だろうし、なんとしてでもハルーアが暴走しないようにドームに手綱を握っててもらわないと、せっかくのハルトの結婚が台無しになる。
リードが大量の食器を洗っていると、『水仕事は手が荒れるから絶対にしないわー』と言って普段は台所に来ないハルーアがやって来た。
子どものように唇を尖らせているハルーアが、ぷりぷりしながら口を開いた。
「もう! リードったら! 本当に生意気だわ! リード達の稼ぎが悪いから色んなものを我慢しているのよ!」
「欲しいものを我慢しているのは皆一緒だよ」
「魔術協会なんかじゃなくて娼館で働けばいいじゃない!」
「僕に身体を売れと? 自分が何言ってるか分かってる?」
「だってそうでもしないとお洒落の一つもできないもの」
「母さん。僕は母さんのために生きてるんじゃない」
「あら。息子なんだから母親の私のために頑張るのは当然のことでしょ。生んであげたんだもの。恩返しして当たり前よね」
「……僕はこんな家に生まれたくなかった」
「まぁ! ひどいわ! あなたって本当に冷たい子ね! 失望したわ!」
「なんとでも言えばいいよ」
「ほんと可愛くない子! あなたはこんな冷たい子に育っちゃ駄目よー」
ハルーアが大きなお腹を撫でながら、嫌味ったらしく言った。
リードは大きな溜め息を吐き、まだぐちぐち言ってくるハルーアを無視して、無言で食器を洗った。
本当にこんな家に生まれてきたくなかった。
祖父母も両親も自分勝手で、リードは物心ついてから、友達と遊ぶことなく、ずっと下の子達の面倒や家事をしていた。
さっさと家を出たいが、下の子達が心配で中々踏み切れない。
リードは小さな溜め息を連発しながら後片付けを終わらせて、夕方の家事を始めた。
リードはいつもより早めに起きると、寝間着から着替えて階下の脱衣場へ向かった。
顔を洗ってうっすら伸びている髭を丁寧に剃ってから一回目の洗濯を仕掛ける。
大きな魔導洗濯機があって本当によかった。もし手洗いだったら、洗濯で一日が終わるところだ。
手早く朝食を作りながら、昼食用のご馳走の仕込みもする。ちょっと痛い出費だったが、まるごとの鶏を五羽買ってきた。腹の中に香草と野菜を詰め、表面に塩と香草を擦り込んでじっくり弱火で焼くので作るのに時間がかかる。一羽目を焼き始めながら、昼用のスープも作り始める。野菜とベーコンごろごろのスープだ。他にもサラダやパン、苺をたっぷりのせたタルトを用意する。パンとタルト生地は昨夜のうちに焼いてある。あとは生クリームを泡立てて、苺を飾るだけだ。
いつもの朝食が出来上がると、家族を起こしに行く。
朝食を食べながら、母ハルーアがのほほんと口を開いた。
「ハルトのお相手のお嬢さんはどんな子かしらねー。商家なら援助が期待できるわねー」
「母さん。ハルトの婿入り先にそんなことさせないからね?」
「あらぁ。なんで? リード。援助してもらったら生活が楽になるじゃない」
「父さんと母さんも節約に協力してくれたら十分生活できるでしょ。昨日も服を買いに行ってたじゃない。もう少し考えてお金を使ってよ」
「えー。だって、お嫁さんになる人と会うのよ? ちゃんとした服を着なくっちゃ」
「一理あるけど、五着も買う必要あった? 今しか着られないのに」
「だって欲しかったんですもの」
「母さん……」
「まぁまぁ。いいじゃないか。ハルーアちゃんはいつでも可愛い格好していいからな!」
「うふふ。ありがとう。ドーム」
「父さん。母さんに甘くしないで」
「まぁ、落ち着けよ。今日はめでたい日なんだからな!」
「絶対に! 絶っ対に! ハルトのお嫁さんに援助のこと言わないでよ」
「えぇー。でもぉ……」
「『でも』じゃない! そのことでハルトの結婚が駄目になるかもしれないんだよ! それに恥ずかしいでしょ! うちは父さんと僕の収入でなんとかするから!」
「それじゃあ、好きなお洋服とかたまにしか買えないじゃない」
「母さん達が無責任にぽんぽん子どもをつくらなければ、もう少し楽な生活ができてたかもね」
「ひどいわっ! なんてこと言うのよ! リード!」
「身の丈に合った生活をするしかないんだから、母さんもいつまでもお嬢様気取りはやめてくれないかな」
「リード! 言いすぎだ! ハルーアちゃんに謝りなさい!」
「絶対に嫌。間違ったこと言ってる? 僕。父さんと母さんの無駄遣いがどんだけ家計を厳しくしてると思ってんの?」
「めでたい日に言うことじゃないだろう」
「そうだね。でも、母さんがお相手の家から援助をもらうとか言い出すのが悪いと思うよ。父さんだってプライドがあるだろ? 僕にだってある。僕と父さんの稼ぎでちゃんと生活はできるよね?」
「お、おぅ。ハルーアちゃん。援助の話はしないでおこうな」
「そんな……ドーム。でも援助してもらえたら二人で旅行もたくさん行けるじゃない」
「それはそうだが、まずはハルトの結婚が正式に決まるのが先だ。援助は……まぁ、そのうちな」
「ははは。援助なんて僕がさせないから」
朝から楽しくない話題で朝食が美味しくない。
リードは急いで食べきると、今日も『やさいやだー!』とぐずるミアを宥めながら食べさせつつ、溜め息を吐いた。
昼前にご馳走が完成したタイミングで、ハルトが可愛らしいお嬢さんを連れてきた。
歳は十八歳で、大人しそうな雰囲気だが、控えめな笑顔が可愛らしい子だ。
奮発して買ったお高めの紅茶を淹れ、居間でハルトに紹介してもらう。
「婚約者のリリーナ」
「リリーナと申します。あの、よろしくお願いいたします」
控えめに笑って挨拶してくれたリリーナに、家族全員がそれぞれ自己紹介をした。
賑やかにお喋りをして、昼食のご馳走を温めて居間に運ぶ。
下の子達が鶏の丸焼きを見て嬉しそうな歓声を上げた。
事前に『とにかくお行儀よく!』と言い聞かせていたからか、普段よりもちゃんと皆お行儀よく食べている。
ほっとしながらデザートのタルトを切り分けてリリーナとハルトに皿を渡したり、追加の紅茶を淹れたりして、何事もなく終わりそうだなぁと油断していると、ハルーアがやらかしてくれた。
「リリーナさん。ハルトと結婚したら、うちに少し援助をしてくれないかしら? ほら。もうすぐハルトの兄弟も生まれるし?」
「母さん! その話はなしって言っただろ! ごめんね。リリーナさん。聞かなかったことにしてくれるかな? 援助なんて絶対にさせないから」
「あ、は、はい」
「はぁ……リード。あなたっていつから母親の私より偉くなったの? いつもぐちぐち口うるさいし、好きなものを買わせてくれないし。稼ぎが悪いんだから余計な口出しはしないでちょうだい」
「……っ! ……母さん。とにかくハルトとリリーナさんに援助なんて絶対にさせないから。ハルトはリリーナさんと家族になって、これからは自分の家族のためだけに頑張るんだから」
「私達とも家族だわ。家族なんだから助けてくれてもいいでしょ?」
「うちは金銭的に助けてもらうほど落ちぶれてないよ。父さんと僕の収入でちゃんと暮らせる」
「ま、まぁまぁ。ハルーアちゃんもリードも落ち着けよ。リリーナさんがビックリしちゃうぞ?」
「あ、ごめんね。リリーナさん。今のは聞かなかったことにしてね。君とハルトに負担を強いることはあり得ないから安心してください。ハルトをよろしくね」
「あ、はい」
ハルーアが拗ねた顔をしているがスルーして、リードはリリーナににこやかに笑いかけた。
あれだけ釘を刺しておいたのにやらかしてくれたハルーアに心底腹が立つ。祖父母がいればもう少しマシだったのだろうが、まだ旅行から帰ってきていない。
途中微妙な空気になったが、なんとかリリーナとの顔合わせは終わった。
リリーナの家に向かうハルトとリリーナを見送ってから、リードは大きな溜め息を吐いた。
今からこれじゃあ、両家の顔合わせの時が不安すぎる。両家の顔合わせはおそらく両親同士だろうし、なんとしてでもハルーアが暴走しないようにドームに手綱を握っててもらわないと、せっかくのハルトの結婚が台無しになる。
リードが大量の食器を洗っていると、『水仕事は手が荒れるから絶対にしないわー』と言って普段は台所に来ないハルーアがやって来た。
子どものように唇を尖らせているハルーアが、ぷりぷりしながら口を開いた。
「もう! リードったら! 本当に生意気だわ! リード達の稼ぎが悪いから色んなものを我慢しているのよ!」
「欲しいものを我慢しているのは皆一緒だよ」
「魔術協会なんかじゃなくて娼館で働けばいいじゃない!」
「僕に身体を売れと? 自分が何言ってるか分かってる?」
「だってそうでもしないとお洒落の一つもできないもの」
「母さん。僕は母さんのために生きてるんじゃない」
「あら。息子なんだから母親の私のために頑張るのは当然のことでしょ。生んであげたんだもの。恩返しして当たり前よね」
「……僕はこんな家に生まれたくなかった」
「まぁ! ひどいわ! あなたって本当に冷たい子ね! 失望したわ!」
「なんとでも言えばいいよ」
「ほんと可愛くない子! あなたはこんな冷たい子に育っちゃ駄目よー」
ハルーアが大きなお腹を撫でながら、嫌味ったらしく言った。
リードは大きな溜め息を吐き、まだぐちぐち言ってくるハルーアを無視して、無言で食器を洗った。
本当にこんな家に生まれてきたくなかった。
祖父母も両親も自分勝手で、リードは物心ついてから、友達と遊ぶことなく、ずっと下の子達の面倒や家事をしていた。
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