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6:デイビッドのお誘い
昼休憩の鐘が鳴ると、リードは書き上げた書類をまとめて机の上に置いた。
鞄の中から弁当を取り出したタイミングで、先輩から声をかけられた。
またデイビッドかなぁと思えば、案の定である。
断っても断りきれないのが目に見えているので、弁当と水筒を持ってカウンターに向かった。
デイビッドが嬉しそうにニッと笑い、布に包まれた大きな箱を見せてきた。
「今日の昼飯はすごいぞ! 期待してろよ!」
「ありがとう?」
「中庭に行こう!」
「うん」
カウンターから出てデイビッドと並んで歩き、中庭へ向かう。ちらっと隣のデイビッドを見れば、リードよりも頭半分背が高い。羨ましいことこの上ない。デイビッドくらい背が高かったら、流石に女に間違われることはないだろうに。
中庭に着くと木の下に座り、デイビッドがいそいそと包んでいた布をといて、二重箱を開けた。
中には美味しそうなパイが入っていた。
大きな水筒から木のコップに珈琲を注ぎ、デイビッドが手渡してきたので受け取る。
「ばあちゃん直伝の挽肉のパイ! めちゃくちゃ美味いぜ! いっぱい食えー!」
「えっと、じゃあ、一つ貰うよ」
「一つと言わずに何切れでも!」
「あっ。ほんとに美味しい! 中に入ってるのって胡桃?」
「そう! 胡桃入り! んっ! ちゃんと美味くできてる!」
「……珈琲も美味しい」
「だろ? 今日はばあちゃんに淹れてもらったからな。冷めても美味いの。リードさんや」
「え、なに?」
「再来週、俺の誕生日なのだよ」
「おめでとう」
「ありがとう! じゃなくて! うちでお茶会しないか!? 休みの日に一刻くらい時間をくれよ!」
「無理かな」
「即答は嫌っ! なぁなぁ。一刻だけ。一刻だけ。ばあちゃんが苺のパイとジャムクッキー焼くって言ってたしー。頼むっ! 俺とばあちゃんとお茶会してくれっ!」
「えぇ……困ったな……」
正直に言えば、ちょっと行ってみたい。デイビッドの祖母が淹れてくれたという珈琲はぬるくなっていても本当に美味しいし、人様の家にお邪魔したことがないので好奇心がうずうずする。
とはいえ、家のことや下の子の面倒をみなきゃいけないし、一刻も家に不在になるのはどうだろう。
リードは暫し悩み、最終的に頷いた。
暫くは祖父母がいるらしいから、二人には申し訳ないが、ちょっとだけお呼ばれしてみよう。もしかしたら息抜きとやらになるかもしれない。
いつも仕事と家事と育児でいっぱいいっぱいで、自分の時間なんてほぼない。祖父母がいてくれる時くらい、ちょこっとだけ自分を優先しても許されるんじゃないだろうか。
リードが頷くと、デイビッドがパァッと笑顔になった。
手を握られてぶんぶん振られながら、デイビッドがニコニコ笑顔で嬉しそうに口を開いた。
「ありがとな! すっげぇ楽しみにしてる!! 気合を入れてばあちゃんと色々作る!」
「あ、ありがとう? 君の家ってどのあたり?」
「第四地区の大通りからちょっと離れた所。少し分かりにくいから、魔術協会の前で待ち合わせしよう」
「あ、うん。手土産って何を持っていったらいいかな」
「いらないぞ? 俺の誕生日を一緒に祝ってくれるだけで十分お釣りが出るしな!」
「そういうわけにもいかないよ。高価なものは買えないけど、君の誕生日プレゼントもあった方がいいだろう」
「プレゼントはリードがいいな!」
「それ以外で」
「えー。じゃあ、硝子ペンが欲しい。今使ってるの、かなり古いし。まぁ、じいちゃんが使ってたのだからなぁ」
「硝子ペンね。お祖母さんは何が好き?」
「ばあちゃん? 珈琲かな。かなりこだわってる」
「珈琲……飲むのは好きだけど全然詳しくないなぁ。喫茶店に行ったのも先輩に連れて行ってもらった一回だけだし。お祖母さんはなんだったら喜んでくれるかな……」
「なんでも喜ぶと思うぞ?」
「んーー。再来週までに考えて用意しとくよ」
「そこまで気を使わなくてもいいのに」
「お呼ばれするんだから、ちゃんとしないと」
「相変わらず真面目だなぁ。そこがいいとこなんだけど」
「……どうせ融通がきかない性格してるよ」
「融通がきかないんじゃなくて、きっちりしてるってこと! かなり大事だぜ? 皆が大雑把だとなんでもごっちゃごちゃになるだろ? 締めるところは締める人間がいなきゃまとまらない」
「……そんなもん?」
「そうそう。おっと、そろそろ昼休憩が終わるな。じゃあ、明日な! 明日も期待しててくれよ!」
「明日も一緒に食べる気?」
「当然! リードの胃袋を掴む気満々だからな! 俺!」
「なにそれ」
「男の心を掴むにはまずは胃袋からって、ばあちゃんが言ってた! ということで、餌付けからスタートだ!」
「餌付けかよ」
満面の笑みで言い切ったデイビッドが可笑しくて、思わず小さく吹き出してしまった。
昼休憩が終わるギリギリの時間になったので、急いで事務室に戻った。
一刻くらいなら、自分の好きなように時間を使ってもいいよな……と思いながら、リードは初めてのお茶会にワクワクしてしまう胸を押さえて深呼吸をした。
いつも通り家に帰ると、洗濯物が取り込んであった。
鞄を自室に置いて洗面台で手を洗ってから台所へ向かった。
台所ではマグダラが料理本らしき本を見ながら、野菜を刻んでいた。
「ただいま。おばあちゃん。洗濯物ありがとう」
「あら。おかえりなさい。今夜は野菜たっぷりのあんをかけた揚げ鶏よ。旅行先で食べてすっごく美味しかったの」
「一緒に作るよ」
「えぇ! あら? なんだか今日はご機嫌ね」
「え? そうかな」
「何かいいことでもあった?」
「あー。……おばあちゃん。再来週の休みなんだけど、一刻くらい出てきていい?」
「あら! いいわよー。恋人ができたの?」
「いや、多分友達」
「多分なの?」
「……と、友達……」
「いいわよ。いってらっしゃい。一刻と言わずに一日でもいいわよ。たまにはね、あなたも友達と遊ばなきゃ」
「いや、一日は流石にちょっと……誕生日のお茶会にお呼ばれしたんだよね。誕生日プレゼントは決まってるんだけど、家族の人に何を手土産にしたらいいかな? お祖母さんと二人暮らしなんだ。珈琲が好きらしいけど、僕、珈琲には詳しくないし」
「そうねぇ。無難なのは珈琲に合いそうな焼き菓子とか?」
「お菓子を作ってくれるんだって」
「食べ物系が無理なら……あっ! 夏物のストールなんていいんじゃない? まぁ、好みがあるけど、爽やかな色合いのものにしたらいいんじゃないかしら。『好みに合わなかったら誰かにあげてください』って言って渡せばいいわよー」
「なるほど。問題はいつ買いに行くかだなぁ」
「来週の休みに行ったらいいじゃない」
「二週続けておばあちゃん達にちびっ子達任せるのもちょっと……」
「いいのよー。旅行で暫くいなかった分、大変だったでしょ。たまの骨休めだと思いなさい。それに、赤ちゃんが生まれたら暫くは骨休めどころじゃなくなるしねぇ」
「あーー。それは確かに。じゃあ、ごめんだけど、来週の休みもちょっと出かけるね」
「のんびり喫茶店に行ってみるのもありよ。赤ちゃんが生まれるまであと二か月もないんだから、今のうちに気晴らししてらっしゃい」
「ありがとう。おばあちゃん」
一人で出かけるのはいつぶりだろうか。ぱっと思い出せないくらい前だ。
なんだかワクワクしてきた。ふと、デイビッドと一緒に買いに行けばいいんじゃないかと思いついた。
デイビッドが一緒なら、硝子ペンも夏物のストールも好みのものが買える。どうせなら喜んで使ってもらえるものを贈りたい。
家族内でプレゼントなんてしないし、誰かにプレゼントを贈るのは初めてだ。
リードは明日デイビッドにお願いしてみようと決めると、うきうきとマグダラと一緒に夕食を作り上げた。
鞄の中から弁当を取り出したタイミングで、先輩から声をかけられた。
またデイビッドかなぁと思えば、案の定である。
断っても断りきれないのが目に見えているので、弁当と水筒を持ってカウンターに向かった。
デイビッドが嬉しそうにニッと笑い、布に包まれた大きな箱を見せてきた。
「今日の昼飯はすごいぞ! 期待してろよ!」
「ありがとう?」
「中庭に行こう!」
「うん」
カウンターから出てデイビッドと並んで歩き、中庭へ向かう。ちらっと隣のデイビッドを見れば、リードよりも頭半分背が高い。羨ましいことこの上ない。デイビッドくらい背が高かったら、流石に女に間違われることはないだろうに。
中庭に着くと木の下に座り、デイビッドがいそいそと包んでいた布をといて、二重箱を開けた。
中には美味しそうなパイが入っていた。
大きな水筒から木のコップに珈琲を注ぎ、デイビッドが手渡してきたので受け取る。
「ばあちゃん直伝の挽肉のパイ! めちゃくちゃ美味いぜ! いっぱい食えー!」
「えっと、じゃあ、一つ貰うよ」
「一つと言わずに何切れでも!」
「あっ。ほんとに美味しい! 中に入ってるのって胡桃?」
「そう! 胡桃入り! んっ! ちゃんと美味くできてる!」
「……珈琲も美味しい」
「だろ? 今日はばあちゃんに淹れてもらったからな。冷めても美味いの。リードさんや」
「え、なに?」
「再来週、俺の誕生日なのだよ」
「おめでとう」
「ありがとう! じゃなくて! うちでお茶会しないか!? 休みの日に一刻くらい時間をくれよ!」
「無理かな」
「即答は嫌っ! なぁなぁ。一刻だけ。一刻だけ。ばあちゃんが苺のパイとジャムクッキー焼くって言ってたしー。頼むっ! 俺とばあちゃんとお茶会してくれっ!」
「えぇ……困ったな……」
正直に言えば、ちょっと行ってみたい。デイビッドの祖母が淹れてくれたという珈琲はぬるくなっていても本当に美味しいし、人様の家にお邪魔したことがないので好奇心がうずうずする。
とはいえ、家のことや下の子の面倒をみなきゃいけないし、一刻も家に不在になるのはどうだろう。
リードは暫し悩み、最終的に頷いた。
暫くは祖父母がいるらしいから、二人には申し訳ないが、ちょっとだけお呼ばれしてみよう。もしかしたら息抜きとやらになるかもしれない。
いつも仕事と家事と育児でいっぱいいっぱいで、自分の時間なんてほぼない。祖父母がいてくれる時くらい、ちょこっとだけ自分を優先しても許されるんじゃないだろうか。
リードが頷くと、デイビッドがパァッと笑顔になった。
手を握られてぶんぶん振られながら、デイビッドがニコニコ笑顔で嬉しそうに口を開いた。
「ありがとな! すっげぇ楽しみにしてる!! 気合を入れてばあちゃんと色々作る!」
「あ、ありがとう? 君の家ってどのあたり?」
「第四地区の大通りからちょっと離れた所。少し分かりにくいから、魔術協会の前で待ち合わせしよう」
「あ、うん。手土産って何を持っていったらいいかな」
「いらないぞ? 俺の誕生日を一緒に祝ってくれるだけで十分お釣りが出るしな!」
「そういうわけにもいかないよ。高価なものは買えないけど、君の誕生日プレゼントもあった方がいいだろう」
「プレゼントはリードがいいな!」
「それ以外で」
「えー。じゃあ、硝子ペンが欲しい。今使ってるの、かなり古いし。まぁ、じいちゃんが使ってたのだからなぁ」
「硝子ペンね。お祖母さんは何が好き?」
「ばあちゃん? 珈琲かな。かなりこだわってる」
「珈琲……飲むのは好きだけど全然詳しくないなぁ。喫茶店に行ったのも先輩に連れて行ってもらった一回だけだし。お祖母さんはなんだったら喜んでくれるかな……」
「なんでも喜ぶと思うぞ?」
「んーー。再来週までに考えて用意しとくよ」
「そこまで気を使わなくてもいいのに」
「お呼ばれするんだから、ちゃんとしないと」
「相変わらず真面目だなぁ。そこがいいとこなんだけど」
「……どうせ融通がきかない性格してるよ」
「融通がきかないんじゃなくて、きっちりしてるってこと! かなり大事だぜ? 皆が大雑把だとなんでもごっちゃごちゃになるだろ? 締めるところは締める人間がいなきゃまとまらない」
「……そんなもん?」
「そうそう。おっと、そろそろ昼休憩が終わるな。じゃあ、明日な! 明日も期待しててくれよ!」
「明日も一緒に食べる気?」
「当然! リードの胃袋を掴む気満々だからな! 俺!」
「なにそれ」
「男の心を掴むにはまずは胃袋からって、ばあちゃんが言ってた! ということで、餌付けからスタートだ!」
「餌付けかよ」
満面の笑みで言い切ったデイビッドが可笑しくて、思わず小さく吹き出してしまった。
昼休憩が終わるギリギリの時間になったので、急いで事務室に戻った。
一刻くらいなら、自分の好きなように時間を使ってもいいよな……と思いながら、リードは初めてのお茶会にワクワクしてしまう胸を押さえて深呼吸をした。
いつも通り家に帰ると、洗濯物が取り込んであった。
鞄を自室に置いて洗面台で手を洗ってから台所へ向かった。
台所ではマグダラが料理本らしき本を見ながら、野菜を刻んでいた。
「ただいま。おばあちゃん。洗濯物ありがとう」
「あら。おかえりなさい。今夜は野菜たっぷりのあんをかけた揚げ鶏よ。旅行先で食べてすっごく美味しかったの」
「一緒に作るよ」
「えぇ! あら? なんだか今日はご機嫌ね」
「え? そうかな」
「何かいいことでもあった?」
「あー。……おばあちゃん。再来週の休みなんだけど、一刻くらい出てきていい?」
「あら! いいわよー。恋人ができたの?」
「いや、多分友達」
「多分なの?」
「……と、友達……」
「いいわよ。いってらっしゃい。一刻と言わずに一日でもいいわよ。たまにはね、あなたも友達と遊ばなきゃ」
「いや、一日は流石にちょっと……誕生日のお茶会にお呼ばれしたんだよね。誕生日プレゼントは決まってるんだけど、家族の人に何を手土産にしたらいいかな? お祖母さんと二人暮らしなんだ。珈琲が好きらしいけど、僕、珈琲には詳しくないし」
「そうねぇ。無難なのは珈琲に合いそうな焼き菓子とか?」
「お菓子を作ってくれるんだって」
「食べ物系が無理なら……あっ! 夏物のストールなんていいんじゃない? まぁ、好みがあるけど、爽やかな色合いのものにしたらいいんじゃないかしら。『好みに合わなかったら誰かにあげてください』って言って渡せばいいわよー」
「なるほど。問題はいつ買いに行くかだなぁ」
「来週の休みに行ったらいいじゃない」
「二週続けておばあちゃん達にちびっ子達任せるのもちょっと……」
「いいのよー。旅行で暫くいなかった分、大変だったでしょ。たまの骨休めだと思いなさい。それに、赤ちゃんが生まれたら暫くは骨休めどころじゃなくなるしねぇ」
「あーー。それは確かに。じゃあ、ごめんだけど、来週の休みもちょっと出かけるね」
「のんびり喫茶店に行ってみるのもありよ。赤ちゃんが生まれるまであと二か月もないんだから、今のうちに気晴らししてらっしゃい」
「ありがとう。おばあちゃん」
一人で出かけるのはいつぶりだろうか。ぱっと思い出せないくらい前だ。
なんだかワクワクしてきた。ふと、デイビッドと一緒に買いに行けばいいんじゃないかと思いついた。
デイビッドが一緒なら、硝子ペンも夏物のストールも好みのものが買える。どうせなら喜んで使ってもらえるものを贈りたい。
家族内でプレゼントなんてしないし、誰かにプレゼントを贈るのは初めてだ。
リードは明日デイビッドにお願いしてみようと決めると、うきうきとマグダラと一緒に夕食を作り上げた。
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