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7:初めてのお出かけ
リードは少し緊張しながら魔術協会の入り口に立っていた。
今日はデイビッドと買い物に行く。午前中に買い物をして、昼食を一緒に食べたら解散の予定である。
ダメ元でデイビッドに一緒にプレゼントを買いに行ってくれないかとお願いをしてみたら、ちょっと引くくらい大喜びされた。
お洒落なんてしている金銭的余裕はないので、とりあえず無難ないつもの白いシャツと黒いズボンを穿いてきたが、この格好でよかったのだろうか。
いつも使っている肩掛け鞄のボロさがなんだか気になってきた。もうちょいマシな仕事用の鞄にすればよかっただろうか。
色々気になり始めた頃に、デイビッドが傍から見ても浮かれた足取りでやって来た。
デイビッドも白いシャツと黒いズボンだった。多分だけど、デイビッドもお洒落とは縁がないのかもしれない。研究馬鹿っぽいし。
デイビッドがニコニコ笑って口を開いた。
「おはよう! 好敵手よ! 今日は楽しもうじゃないか!」
「あ、うん。よろしく?」
「昼飯はうちのばあちゃんオススメの喫茶店はどうだろう。珈琲が美味いし、季節の野菜を使ったパスタが絶品らしい」
「いいね。パスタなんて極たまにしか食べないし」
「そうなのか? 作るのが楽じゃないか。パスタ」
「人数が少なければね。十二人前を一度に作るのは手間なんだよ」
「あーー。それだけ人数が多いと確かにな。じゃあ、今日はとことん楽しんでいこう」
「うん。先に文房具屋さんかな。僕が知ってるのはおじいちゃんも通ってた老舗なんだけど、そこでいい?」
「いいぜ。老舗の方が質がいいものを取り揃えてそうだ。どうせなら長く使いたい」
「じゃあ、行こうか」
「あ、手を繋ぐ?」
「手は繋がない」
「残念。また今度で」
デイビッドが悪戯っぽく笑った。
世間話をしながら何度か祖父と訪れたことがある老舗の文房具屋に向かった。
店内に入れば、以前と変わらない落ち着いた雰囲気だ。
店内をぐるっと見て回り、硝子ペンが置いてあるコーナーで足を止めた。
陳列してある硝子ペンは様々な色や太さがあり、値段もピンキリだ。
とりあえずデイビッドに何色が好きなのかを聞いてみることにした。
「何色が好き?」
「んー。水色。淡い感じのやつ」
「淡い水色……これなんかはどう? 透明からグラデーションで先端が淡い水色になってる」
「お洒落感すごいな。普段使いしていいものなのか? これ」
「さぁ? ペンだから飾っといたら意味ないと思うけど」
「それは確かに。隣のもいい感じの色合いだな。握ってみて使いやすそうな方を選んでいいか?」
「うん。その方がいい。どうせなら使ってもらいたいから」
「んーー。こっちのグラデーションの方がしっくりくる」
「じゃあ、それにしよう。プレゼントってそのまま渡すの? 何かするの?」
「ん? プレゼントを貰ったりあげたりしたことないのか?」
「ないよ。今回が初めて」
「そうか! 初めてのプレゼントが俺か! んんっ。プレゼントは基本的に包装してもらうんだ。で、誕生日だったら誕生日の日に渡すと」
「なるほど? 包装ってしてもらえるのかな?」
「店員に頼めばしてもらえる」
「じゃあ、頼んでみる」
デイビッドが選んだ硝子ペンを持ってカウンターに行くと、ドキドキしながらプレゼント用に包装して欲しいと頼んでみた。
初老の店員がおっとり笑って快諾してくれて、何種類もある包装紙の見本を見せてくれた。
水色の包装紙があったので、それでお願いしたら、硝子ペンを箱に入れ、あっという間にきれいに包装紙で包んでくれた。
あまりの手際の良さと丁寧さに、ほぁーと感心して眺め、支払いをした。
とてもお洒落できれいな硝子ペンだが、割と手頃な値段だった。
文房具屋を出ると、次はデイビッドの祖母への手土産を買いに服屋へ向かう。
デイビッドの祖母の行きつけだという服屋は女性客ばかりだったので、男二人で入るのにはかなりの勇気が必要だった。
それでも、デイビッドの祖母に喜んでもらいたい一心で店内に入り、夏物のストールを探す。
ストールが何種類も置いてあるコーナーを見つけて、デイビッドに問いかけた。
「お祖母さんは何色が好き?」
「んー。赤とか黄色とか? なんか明るい色」
「赤とか黄色……何種類もあるな……あ。これはどうかな? 全体はオレンジだけど、ところどころに赤が入ってる」
「お洒落感すごいな。ばあちゃんが好きそう」
「あ、ほんと? じゃあ、これにしようかな」
「リードは家族に買わないのか?」
「んー。基本的にうちってプレゼント交換とかしないし。親が旅行に行っても特にお土産とかないかな」
「へぇ。そういうご家庭もあるんだ」
「はは……強いて言うなら赤ちゃんがお土産かもね……」
「リードの両親、ちょっと元気すぎないか?」
「うん。まぁ……ははは……これも包装してもらおう。女性だし、可愛い感じがいいのかな?」
「さぁ? 多分?」
「デイビッドはお祖母さんにプレゼントとかするの?」
「お互いに毎年してる。包装は店員任せだけどな」
「へぇー。仲良くていいね」
「二人暮らしが長いしなぁ」
「ご両親っていつからいないの?」
「俺が五歳の時くらい? その当時はじいちゃんも生きてたし、研究に集中するのに子ども連れだと面倒だからって置いていったらしい。だったら子どもをつくるなよって話なんだがな」
「お互い、親が勝手気まますぎると苦労するよね」
「だなぁ」
デイビッドの祖母へのプレゼントは可愛らしい赤色の袋に入れて、黄色いリボンをつけてもらった。
これも値段が手頃で助かった。ちまちま貯めていた貯金で十分足りて一安心である。
服屋から出て今度は喫茶店に向かう。喫茶店には一度だけ先輩に連れて行ってもらったことがあり、その時に初めて珈琲を飲んで、その美味しさに目覚めた。
デイビッドの案内で入った喫茶店は落ち着いた雰囲気で、ドキドキしながら二人がけのテーブル席に座った。
まだ昼食には少しだけ早い時間帯だからか、客はぽつぽついるくらいで、小さな笑い声が聞こえてきたりしている。
メニュー表を見れば、『今日のオススメ野菜のパスタ』というものがあったので、それと珈琲、デザートに南瓜のタルトを注文した。
南瓜のタルトなんてすごく珍しい。野菜の南瓜をタルトにするだなんて初めて見た。
デイビッドと他愛のないお喋りをしながらワクワクしていると、パスタと珈琲、タルトが運ばれてきた。
目の前に置かれたパスタを見てみれば、今が旬のアスパラガスとベーコン、茸がお洒落に盛り付けられていた。すごく美味しそうな匂いがしている。
「お洒落感がすごいな」
「ねー。見た目がすごくきれいだなぁ。それにいい匂い」
「食べようか」
「うん。……ん! 美味しい!」
「あ、ほんとに美味いな」
「アスパラガスって高いから買わないんだよね。初めて食べたけど瑞々しくてすごく美味しい」
「ばあちゃんが春頃にたまーに買ってくるけど、こんなお洒落料理じゃないなぁ。美味い」
「あ、珈琲も飲みやすくて美味しい」
「ん。香りがいいな」
「このベーコンも美味しいなぁ。アスパラガスと合うー」
「ベーコンだけでも売って欲しい美味さ」
「分かる」
じっくり味わってパスタを食べきると、今度は南瓜のタルトである。口に含めば、ふわっと優しい南瓜の甘みが口の中に広がる。ねっとりした食感がバターの香りがいいサクサクのタルト生地と相まって、本当にすごく美味しい。
世の中にはこんなに美味しいものがあるのだなぁと、自分の世界の狭さを思い知った気分になる。
「タルトも美味いな。お洒落タルト」
「うん。ほんとにすごく美味しい」
「ばあちゃんに教えてもらわなかったら絶対に口に入ってないなー。このお洒落料理」
「デイビッドのお祖母さんに感謝!」
「俺と違って、ばあちゃんはお洒落好きだし、交友関係も広いもんなぁ。編み物友達と見つけたんだってさ。この喫茶店」
「編み物できるんだ。すごいね。僕は縫い物しかできない」
「それでも十分すごいが? 俺は魔術の研究しかできない」
「料理上手じゃないか」
「あ、料理はできたか。でも、ばあちゃんに手伝ってもらうことが多いしなぁ。今度、お洒落料理も教えてもらおう。弁当にする」
「すごく豪華な弁当になりそう」
「昼休憩の時間が一番の楽しみというか、いい息抜きだし。なによりリードを太らせるという目的があるからな!」
「なにそれ」
「痩せすぎてて、見ていて不安になる」
「そこまで極端に痩せてないよ」
「いや、もっと健康的に太った方がいい」
「そうかな?」
「来週はしこたま美味いものを食べさせるからそのつもりで!」
「君の誕生日なのに君が用意するの?」
「それが俺の楽しみだから問題ないな。ばあちゃんと一緒に作るし」
「誕生日のお祝いってそういうもの?」
「うん。まあ、ご家庭によって違うだろうけど」
「ふぅん」
「リードの誕生日は?」
「七の月の十日目」
「家族で祝ったりしないのか?」
「しないよ。物心つく前はどうか知らないけど、記憶にある限り誕生日の祝いなんてしてもらったことがない。いつだってちびっ子達の世話でてんてこ舞いだし」
「なるほど。今年は俺の家で誕生日のお茶会をしよう。よし! 決定!」
「え?」
「気合を入れて美味いものを用意する! あ、プレゼントはこうして一緒に買いたい。その方が楽しい」
「あ、うん。ありがとう?」
「俺は今日めちゃくちゃ楽しかったんだが、リードは?」
「楽しかったよ。ほんとにすごく。新鮮なことばっかりだった」
「よかった! また機会をつくって一緒に出かけよう!」
「あーー。来週のお呼ばれ以降は数年は厳しいかも。赤ちゃん生まれるし」
「むぅ。まぁ、そこはなんとか妙案を考える」
「がんばれ?」
のんびり珈琲を楽しんでから喫茶店を出て、魔術協会まで行き、デイビッドと別れた。
今日はすごく楽しかったなと小さく笑って、リードはプレゼントが入った鞄をやんわりと撫でた。
今日はデイビッドと買い物に行く。午前中に買い物をして、昼食を一緒に食べたら解散の予定である。
ダメ元でデイビッドに一緒にプレゼントを買いに行ってくれないかとお願いをしてみたら、ちょっと引くくらい大喜びされた。
お洒落なんてしている金銭的余裕はないので、とりあえず無難ないつもの白いシャツと黒いズボンを穿いてきたが、この格好でよかったのだろうか。
いつも使っている肩掛け鞄のボロさがなんだか気になってきた。もうちょいマシな仕事用の鞄にすればよかっただろうか。
色々気になり始めた頃に、デイビッドが傍から見ても浮かれた足取りでやって来た。
デイビッドも白いシャツと黒いズボンだった。多分だけど、デイビッドもお洒落とは縁がないのかもしれない。研究馬鹿っぽいし。
デイビッドがニコニコ笑って口を開いた。
「おはよう! 好敵手よ! 今日は楽しもうじゃないか!」
「あ、うん。よろしく?」
「昼飯はうちのばあちゃんオススメの喫茶店はどうだろう。珈琲が美味いし、季節の野菜を使ったパスタが絶品らしい」
「いいね。パスタなんて極たまにしか食べないし」
「そうなのか? 作るのが楽じゃないか。パスタ」
「人数が少なければね。十二人前を一度に作るのは手間なんだよ」
「あーー。それだけ人数が多いと確かにな。じゃあ、今日はとことん楽しんでいこう」
「うん。先に文房具屋さんかな。僕が知ってるのはおじいちゃんも通ってた老舗なんだけど、そこでいい?」
「いいぜ。老舗の方が質がいいものを取り揃えてそうだ。どうせなら長く使いたい」
「じゃあ、行こうか」
「あ、手を繋ぐ?」
「手は繋がない」
「残念。また今度で」
デイビッドが悪戯っぽく笑った。
世間話をしながら何度か祖父と訪れたことがある老舗の文房具屋に向かった。
店内に入れば、以前と変わらない落ち着いた雰囲気だ。
店内をぐるっと見て回り、硝子ペンが置いてあるコーナーで足を止めた。
陳列してある硝子ペンは様々な色や太さがあり、値段もピンキリだ。
とりあえずデイビッドに何色が好きなのかを聞いてみることにした。
「何色が好き?」
「んー。水色。淡い感じのやつ」
「淡い水色……これなんかはどう? 透明からグラデーションで先端が淡い水色になってる」
「お洒落感すごいな。普段使いしていいものなのか? これ」
「さぁ? ペンだから飾っといたら意味ないと思うけど」
「それは確かに。隣のもいい感じの色合いだな。握ってみて使いやすそうな方を選んでいいか?」
「うん。その方がいい。どうせなら使ってもらいたいから」
「んーー。こっちのグラデーションの方がしっくりくる」
「じゃあ、それにしよう。プレゼントってそのまま渡すの? 何かするの?」
「ん? プレゼントを貰ったりあげたりしたことないのか?」
「ないよ。今回が初めて」
「そうか! 初めてのプレゼントが俺か! んんっ。プレゼントは基本的に包装してもらうんだ。で、誕生日だったら誕生日の日に渡すと」
「なるほど? 包装ってしてもらえるのかな?」
「店員に頼めばしてもらえる」
「じゃあ、頼んでみる」
デイビッドが選んだ硝子ペンを持ってカウンターに行くと、ドキドキしながらプレゼント用に包装して欲しいと頼んでみた。
初老の店員がおっとり笑って快諾してくれて、何種類もある包装紙の見本を見せてくれた。
水色の包装紙があったので、それでお願いしたら、硝子ペンを箱に入れ、あっという間にきれいに包装紙で包んでくれた。
あまりの手際の良さと丁寧さに、ほぁーと感心して眺め、支払いをした。
とてもお洒落できれいな硝子ペンだが、割と手頃な値段だった。
文房具屋を出ると、次はデイビッドの祖母への手土産を買いに服屋へ向かう。
デイビッドの祖母の行きつけだという服屋は女性客ばかりだったので、男二人で入るのにはかなりの勇気が必要だった。
それでも、デイビッドの祖母に喜んでもらいたい一心で店内に入り、夏物のストールを探す。
ストールが何種類も置いてあるコーナーを見つけて、デイビッドに問いかけた。
「お祖母さんは何色が好き?」
「んー。赤とか黄色とか? なんか明るい色」
「赤とか黄色……何種類もあるな……あ。これはどうかな? 全体はオレンジだけど、ところどころに赤が入ってる」
「お洒落感すごいな。ばあちゃんが好きそう」
「あ、ほんと? じゃあ、これにしようかな」
「リードは家族に買わないのか?」
「んー。基本的にうちってプレゼント交換とかしないし。親が旅行に行っても特にお土産とかないかな」
「へぇ。そういうご家庭もあるんだ」
「はは……強いて言うなら赤ちゃんがお土産かもね……」
「リードの両親、ちょっと元気すぎないか?」
「うん。まぁ……ははは……これも包装してもらおう。女性だし、可愛い感じがいいのかな?」
「さぁ? 多分?」
「デイビッドはお祖母さんにプレゼントとかするの?」
「お互いに毎年してる。包装は店員任せだけどな」
「へぇー。仲良くていいね」
「二人暮らしが長いしなぁ」
「ご両親っていつからいないの?」
「俺が五歳の時くらい? その当時はじいちゃんも生きてたし、研究に集中するのに子ども連れだと面倒だからって置いていったらしい。だったら子どもをつくるなよって話なんだがな」
「お互い、親が勝手気まますぎると苦労するよね」
「だなぁ」
デイビッドの祖母へのプレゼントは可愛らしい赤色の袋に入れて、黄色いリボンをつけてもらった。
これも値段が手頃で助かった。ちまちま貯めていた貯金で十分足りて一安心である。
服屋から出て今度は喫茶店に向かう。喫茶店には一度だけ先輩に連れて行ってもらったことがあり、その時に初めて珈琲を飲んで、その美味しさに目覚めた。
デイビッドの案内で入った喫茶店は落ち着いた雰囲気で、ドキドキしながら二人がけのテーブル席に座った。
まだ昼食には少しだけ早い時間帯だからか、客はぽつぽついるくらいで、小さな笑い声が聞こえてきたりしている。
メニュー表を見れば、『今日のオススメ野菜のパスタ』というものがあったので、それと珈琲、デザートに南瓜のタルトを注文した。
南瓜のタルトなんてすごく珍しい。野菜の南瓜をタルトにするだなんて初めて見た。
デイビッドと他愛のないお喋りをしながらワクワクしていると、パスタと珈琲、タルトが運ばれてきた。
目の前に置かれたパスタを見てみれば、今が旬のアスパラガスとベーコン、茸がお洒落に盛り付けられていた。すごく美味しそうな匂いがしている。
「お洒落感がすごいな」
「ねー。見た目がすごくきれいだなぁ。それにいい匂い」
「食べようか」
「うん。……ん! 美味しい!」
「あ、ほんとに美味いな」
「アスパラガスって高いから買わないんだよね。初めて食べたけど瑞々しくてすごく美味しい」
「ばあちゃんが春頃にたまーに買ってくるけど、こんなお洒落料理じゃないなぁ。美味い」
「あ、珈琲も飲みやすくて美味しい」
「ん。香りがいいな」
「このベーコンも美味しいなぁ。アスパラガスと合うー」
「ベーコンだけでも売って欲しい美味さ」
「分かる」
じっくり味わってパスタを食べきると、今度は南瓜のタルトである。口に含めば、ふわっと優しい南瓜の甘みが口の中に広がる。ねっとりした食感がバターの香りがいいサクサクのタルト生地と相まって、本当にすごく美味しい。
世の中にはこんなに美味しいものがあるのだなぁと、自分の世界の狭さを思い知った気分になる。
「タルトも美味いな。お洒落タルト」
「うん。ほんとにすごく美味しい」
「ばあちゃんに教えてもらわなかったら絶対に口に入ってないなー。このお洒落料理」
「デイビッドのお祖母さんに感謝!」
「俺と違って、ばあちゃんはお洒落好きだし、交友関係も広いもんなぁ。編み物友達と見つけたんだってさ。この喫茶店」
「編み物できるんだ。すごいね。僕は縫い物しかできない」
「それでも十分すごいが? 俺は魔術の研究しかできない」
「料理上手じゃないか」
「あ、料理はできたか。でも、ばあちゃんに手伝ってもらうことが多いしなぁ。今度、お洒落料理も教えてもらおう。弁当にする」
「すごく豪華な弁当になりそう」
「昼休憩の時間が一番の楽しみというか、いい息抜きだし。なによりリードを太らせるという目的があるからな!」
「なにそれ」
「痩せすぎてて、見ていて不安になる」
「そこまで極端に痩せてないよ」
「いや、もっと健康的に太った方がいい」
「そうかな?」
「来週はしこたま美味いものを食べさせるからそのつもりで!」
「君の誕生日なのに君が用意するの?」
「それが俺の楽しみだから問題ないな。ばあちゃんと一緒に作るし」
「誕生日のお祝いってそういうもの?」
「うん。まあ、ご家庭によって違うだろうけど」
「ふぅん」
「リードの誕生日は?」
「七の月の十日目」
「家族で祝ったりしないのか?」
「しないよ。物心つく前はどうか知らないけど、記憶にある限り誕生日の祝いなんてしてもらったことがない。いつだってちびっ子達の世話でてんてこ舞いだし」
「なるほど。今年は俺の家で誕生日のお茶会をしよう。よし! 決定!」
「え?」
「気合を入れて美味いものを用意する! あ、プレゼントはこうして一緒に買いたい。その方が楽しい」
「あ、うん。ありがとう?」
「俺は今日めちゃくちゃ楽しかったんだが、リードは?」
「楽しかったよ。ほんとにすごく。新鮮なことばっかりだった」
「よかった! また機会をつくって一緒に出かけよう!」
「あーー。来週のお呼ばれ以降は数年は厳しいかも。赤ちゃん生まれるし」
「むぅ。まぁ、そこはなんとか妙案を考える」
「がんばれ?」
のんびり珈琲を楽しんでから喫茶店を出て、魔術協会まで行き、デイビッドと別れた。
今日はすごく楽しかったなと小さく笑って、リードはプレゼントが入った鞄をやんわりと撫でた。
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