大家族のお兄ちゃんは恋なんかしてる暇はない!

丸井まー(旧:まー)

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18:今だけ忘れさせて※

 美味しい夕食をたらふく食べて、露天風呂でまったりしていると、じわじわとまた罪悪感がこみ上げてきた。
 大変なの思いをしている弟達に申し訳ないし、リードを気遣って旅行に連れ出してくれたデイビッドにも申し訳ないと思ってしまう。

 リードが俯いて下唇を噛むと、デイビッドがつんつんとリードの頬を優しく突いた。


「またなんか後ろ向きなこと考えてるだろ」

「……いや?」

「吐けー。吐いてスッキリしろー」


 胸の中のじくじくするような色んな思いを吐き出してしまいたいが、一度口に出したら、もう二度と家に帰りたくないと思ってしまう気がした。
 ハルーアには会いたくないが、弟達にこれ以上負担をかけるわけにはいかない。長男なのだから、帰ったら今まで以上にしっかり頑張らなきゃいけない。でも、今だけは全てを忘れてしまいたい。
 リードは少しだけ躊躇ってから、デイビッドに問いかけた。


「セックスってオナニーよりも気持ちいい?」

「ん? 多分?」

「多分なのかよ」

「だってやったことねぇし」

「そうなの?」

「うん。俺、童貞。エロ本読みまくって知識は蓄えてますけどね!」

「ふぅん。……あのさ」

「なんだ?」

「セックス、したいって言ったら困る?」


 デイビッドがきょとんとした後で、ぶわっと顔が赤くなった。


「急にどうした!? 自分のことはもっとちゃんと大事にしなきゃ駄目だろ! このお馬鹿ちん!!」

「別に自棄になってるとかじゃないよ」

「じゃあ、なんで急にそんなこと言い出すんだよ」

「オナニーより気持ちいいのなら、してみたいなって思って。昨日のオナニー、気持ちよかったし、デイビッドなら大丈夫かなって。……今だけでも、何もかも忘れてしまいたいんだ」

「……やっぱりちょっと自棄になってないか?」

「……多分、ちょっとだけ? でも、気持ちいいことに興味があるのは本当」

「あーーーー。その、あれだ。俺としては、ちゃんと恋人になってからセックスがしたい」

「今だけ恋人ってことで」

「軽いな!?」

「駄目かな」

「うーー。俺は! お前にちゃんとお前自身を大事にして欲しい」

「んー。多分、僕はうまくできないよ。ずっと家族のために何かするのが当たり前だったから。ねぇ、ものすっごい我儘言っていい?」

「どうぞ」

「僕の代わりに僕を大事にしてよ。今は何も考えたくないから、『気持ちいい』でいっぱいにして何もかも忘れさせて。……駄目?」


 デイビッドが眉間に皺を寄せて、ガシガシと頭を掻き、大きな溜め息を吐いた。


「リードのこと、ほんとに大事にしたいから、ちゃんと恋人になってからセックスはしたい。が」

「が?」

「……リードが本当にセックスがしたいのなら、する。本っ当に! セックスしたいのか?」

「うん」

「即答! ……知識は一応あるけど、うまくできないかもだぞ!」

「それでもいいよ。デイビッドに触ってもらうだけで気持ちいいから」

「ぐぅっ……天然可愛こちゃんめ……ちんこ勃っちゃったじゃん!」

「なんでちんちん勃つの? 触ってないのに」

「触ってなくても興奮したらちんこって勃起するの! リードが可愛すぎて勃起したわーー!!」

「うん? じゃあ、ベッド行く?」

「ちょー行く。……めちゃくちゃ優しくする! 全力で優しくしまくる!」

「あ、うん。……ありがとう。デイビッド。僕の我儘に付き合ってくれて。……ごめんね。僕は君のことを利用してる」

「細かいことは気にするな! 俺はお前の我儘ならなんでもどんとこいだ! ……その、ぶっちゃけ役得だし……こちとらお前に惚れて十年だ! オナニーのオカズだってお前なんだぞ! 主に妄想だけども!」

「オナニーのオカズってなに?」

「オナニーする時の興奮材料的な」

「ふぅん?」

「その……キスも、していいのか?」

「いいよ。いっぱいして」

「興奮しすぎて鼻血出そう」

「それは出すなよ。違うものを出せ」

「ベッド、行く?」

「行く」


 デイビッドがリードの手を握って立ち上がった。
 リードも立ち上がり温泉から出ると、ふわっと柔らかい風が身体を包み込んだかと思えば、髪も身体も乾いていた。


「今の魔術?」

「うん。髪の毛乾かすのが面倒だから開発した俺オリジナルの魔術。開発に三年かかった。特許が取れたから、その利権で俺はちょっとした小金持ちだ」

「すごいな」

「魔術師に大好評な魔術だぜ!」

「あ、そっか。魔術師って皆髪が長いもんね」

「ちゃんと髪を痛めないようになってる」

「だからデイビッドの髪はサラサラなんだ」

「まぁな! んんっ。じゃ、じゃあ、そろそろベッドに」

「うん。デイビッド」

「ん?」

「いっぱいして」

「……やっぱ鼻血出そう」

「出すな。別のを出せ」


 真っ赤な顔で鼻を押さえるデイビッドが可笑しくて、リードはクスクスと笑った。
 デイビッドと手を繋いで寝室に移動したら、二人並んでベッドに腰掛けた。
 何をどうすればいいのか全く分からないが、デイビッドに任せておいたら大丈夫だろう。
 デイビッドはリードに酷いことはしない。そう確信している。

 デイビッドが大きく深呼吸をしてから、真剣な顔でこちらを見た。


「今からお前を抱く」

「うん」

「一緒にいっぱい気持ちよくなろう」

「うん。何もかも忘れちゃうくらい溺れさせて」

「まっかせとけ! 俺だけしか見えないようにしてやるよ!」


 デイビッドがニッと笑った。
 いつものデイビッドの笑顔に、なんだかほっとする。
 リードを大事にしたいというデイビッドの気持ちはすごく嬉しい。でも今は、デイビッドにいっぱい触れてもらって、気持ちよくなって、今だけでも何もかもを忘れてしまいたい。

 ベッドの上に移動して仰向けに寝転がると、デイビッドがリードの身体を跨ぎ、鼻先にキスをして、照れたように笑った。


「興奮しすぎて早打ちになっても笑わないでくれよな!」

「早打ち?」

「めちゃくちゃ早く射精しちゃうこと」

「笑わないよ。僕で興奮してる証拠でしょ? 僕といっぱい気持ちよくなって」

「うん。リード。ほんとはもっとロマンチックな感じで言いたかったんだけど、俺はお前が好きだよ」

「…………うん」


 デイビッドが何度も頬にキスをしたかと思えば、そっと唇に触れるだけのキスをした。
 唇にふにっと柔らかいものが当たっている。くちゅっと小さな音を立てて、やんわりと下唇を吸われた。
 なんとなく小さく口を開けると、ぬるりとデイビッドの舌がリードの口内に潜り込んできた。

 ぎこちなさを感じる動きで口内を舐め回される。デイビッドの舌が歯列をなぞり、ねっとりと上顎を舐めてくる。特に上顎を舐められると、背筋がぞわぞわして、じんわり気持ちがいい。
 なんとなく奥に引っ込めていた舌にデイビッドの舌が触れ、ぬるりと舌を舐めるように絡ませてきた。

 ぬるりぬるりと舌同士を擦りつけるように絡め合うと、それだけで気持ちよくて、ペニスが勃起した感覚がした。
 はぁっと熱い息が混ざり合う。デイビッドの瞳が爛々と光っている。いつもと違うのがちょっと怖くて、でも何故だか背筋がゾクゾクして、先走りがどっと溢れ出る感覚がした。

 デイビッドの手が脇腹をやんわりと撫で始めた。ちょっと擽ったいけれど、じんわり気持ちがいい。 
 首筋をねろーっと舐められ、熱い舌が肌を這って鎖骨の中心に向かい、くっきり浮き出た鎖骨をねろーっと舐められる。これもじんわり気持ちがいい。

 はぁ、はぁ、と自然と呼吸が荒くなる。デイビッドの舌が、存在感が薄い小さな乳首に触れた。べろべろと舐められると擽ったい。
 リードはクスクス笑いながら、デイビッドの結っていない髪を梳くように頭を撫でた。


「舐めても吸っても何も出ないよ」

「ん。ここでも気持ちよくなれる」

「擽ったいだけだよ」

「まぁまぁ。もうちょい弄る」

「うん」


 乳首の先端をちろちろと舐められ、自然と硬くなった乳首を転がすように舐め回される。優しくちゅくちゅくと吸われていると、じんわり気持ちよくなってきた。
 リードはデイビッドの頭を抱きしめて、耳元で囁いた。


「ちょっと、気持ちいい」

「んっ! 反対側も」

「うん。舐めて」


 デイビッドが乳首から口を離し、反対側の乳首も同じように唇と舌で弄り始めた。
 同時に、唾液で濡れた乳首を優しく指で摘んでくにくにと弄ってくる。『擽ったい』よりも、じわじわと『気持ちいい』の方が大きくなっていく。
 はぁっと熱い息を吐いて、リードは一生懸命乳首を弄っているデイビッドの頭に頬擦りをした。

 デイビッドの口が乳首から離れ、まるで味わうかのようにねっとりと肌を舐めながら、下へと下がっていく。
 臍の穴にも舌先を突っ込まれて舐められた。
 不思議と気持ちよくて、リードは身体をくねらせて熱い息を吐いた。

 薄い陰毛が生えている下腹部に何度も吸いつかれる。何気なく見てみれば、小さな薄い赤い痕が残っていた。
 昨日と同じように勃起したペニスを舐められそうになって、リードは慌ててデイビッドをとめた。

 ペニスを舐められたら気持よすぎてすぐに出してしまう。ちゃんとセックスがしたい。ちゃんとしたセックスなんて知らないけれど、デイビッドと一緒に気持ちよくなりたい。一方的にされるのはちょっと嫌だ。

 そんなことを言うと、デイビッドが迷うように目を泳がせ、何故か両手でパァンと自分の頬を叩いた。


「こうなったら全力で一緒に気持ちよくなろう!」

「うん。デイビッド」

「ん?」

「ありがとう」

「セックスの不満は後でちゃんと言ってくれ。反省して次回に活かすから」

「うん」


 中等学校の時も思っていたが、デイビッドは基本的にすごく真面目だ。
 それがこんなところでも発揮されるなんて、ちょっと面白い。
 リードはなんだか楽しくてクスクス笑いながら、デイビッドに促されるがままに四つん這いになった。

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