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26:両親の帰宅
両親が旅行に出かけて二週間目の夜。
夕食を終え、フローラと一緒にシェンリーを沐浴させ終えたタイミングで、ドームとハルーアが帰ってきた。
ドームが脳天気な顔で『ただいまー! 疲れたから寝るわー』とほざきやがったので、リードはフローラにシェンリーを任せ、台所にいるハルトに声をかけた。
「ハルト。皆を二階に」
「うん。僕もいなくていい?」
「大丈夫。ちびっ子達を任せていいかな」
「うん。分かった」
ハルトが下の子達を二階に連れて行ったので、リードは両親と向き合った。
「おっ。家出小僧も帰ってきてたのか」
「父さん。話がある」
「えー。疲れてるんだけど。僕。なー。ハルーアちゃん」
「えぇ。邪魔よ。リード。早く寝たいの」
「母さんは寝てていいよ。邪魔だから」
「はぁ!? 親に向かってなんてこと言うのよ!」
「うるさい。父さん。居間で話そう。逃さないから。ちゃんと話をしてくれないと肉切り包丁で金玉を切り落とす。僕は本気だ」
リードがにっこり笑うと、ドームが引き攣った顔をした。
ドームが話し合いに応じなければ、本気で金玉を切り落とすつもりで肉切り包丁をしっかり研いで切れ味をよくしてある。
デイビッドに去勢する魔術がないか聞いてみたのだが、性犯罪者にしかかけることが許されていない魔術で、デイビッドも『専門外だから無理だ』と言っていた。
魔術で去勢できないのならば物理的に肉切り包丁で切り落とすしかない。
リードはドームの金玉を切り落とすために毎晩毎晩肉切り包丁を研ぎまくっていた。
「あー。分かった。ハルーアちゃんは先に寝ててくれよ!」
「……分かったわ」
ハルーアがぶすくれた顔で家の奥へと向かっていった。
ドームと居間に移動すると、リードは一冊の本を差し出した。ここ二年の家計簿である。
「父さん、仕事で経理してるよね? これを見てうちの家計が如何に厳しいものか、当然理解できるよね?」
「えー。別に見なくても大丈夫だろ。リードとハルトの給料だってあるんだし」
「どんだけ脳みそお花畑なの? とやかく言わずに見ろ。じゃなかったら物理的に去勢する。ちゃんと肉切り包丁は研いであるから」
「お、おっかないこと言うなよ……えー、どれどれ……」
暢気な顔でペラペラと家計簿を眺め始めたドームが、次第に顔を強張らせていった。
最後まで見たドームが難しい顔をして口を開いた。
「……もうすぐハルトの結婚式があるよな」
「そうだね。全員分の礼服が必要になるし、祝い金も必要になる。それにもうすぐシェンリーが保育所に行くし、来年の春にはデイビーが初等学校に通い始めて更にお金がかかる。ハルトに援助なんてさせる気はない。で。それ見て本当にどうにかなると思うわけ?」
「…………無理だ」
初等学校は六歳から十二歳まで通う。中等学校は十三歳から十五歳までだ。デイビーが初等学校に通い始めると、当然色んなものが必要になってくる。
「そうだよね。どこかでお金を借りるか、父さんが副業するしかない。父さんの職場は副業禁止じゃなかったよね? 父さん達が家のことと小さい子の世話がまともにできるのなら僕が働くけど、無理でしょ。今までおばあちゃんと僕らに任せてなんにもしなかったんだから」
「…………」
「家のことなんにもできないなら働いて稼いできて」
「……いやだが、体力的に……」
「そんな甘ったれたこと言ってる場合じゃないのが分かんないの? 無計画かつ無責任に子どもをぽんぽんつくったのは自分だよね? 少しでもプライドがあるなら働いて」
「……分かった。知り合いのバーで働かせてもらう」
「そうして。ねぇ。父さん。前から聞きたかったんだけど」
「なんだよ」
「なんでこんなに子どもをつくったの。世話をして可愛がるわけでもないのに」
「……避妊せずにセックスするのが楽しくて……」
「最低。自分がやったことの責任くらいちゃんと取れよ。……母さんは僕に娼館で働けって言ったよ。稼ぎが悪いからって」
「は、はぁっ!?」
「僕の給料がそれなりにいい方なのは父さんなら分かるでしょ。なんであんな自分のことしか考えてない女と結婚したのさ。顔? 身体? どっちも歳をとったら衰えるだけなのに」
「その……ハルーアちゃんが言ったことは忘れてくれ」
「無理でしょ。僕がどれだけ傷ついたか分かる?」
「……ハルーアちゃんは世間知らずだから、娼館がどういうところなのか知らないんだ」
「そんなわけないよね。身体を売れって言ったのに」
「…………………」
「父さんって役所の経理課の副課長でしょ。そんな人の息子が家計が苦しいからって娼館で身体を売るってかなりの醜聞だよね。出世にも影響するのは間違いない。父さん。母さんを甘やかしてばかりいないで、少しは考えてものを言うように躾けたら? 家事も育児も今更二人に期待なんてしてない。せめて、僕達の邪魔にならないようにして。余計なこと言って傷つけないで」
「…………その、すまん」
ドームが渋い顔で謝ってきたが、謝られたところで嬉しくもなんともない。
流石に今の状況が本気でマズいと今更気づいたのだろう。明日、知り合いのバーで働けないか頼んでくると言っていた。
とりあえずドームの方は少しは現実を見て、ちゃんと働いてくれそうだ。
リードはほっとすると同時になんだか疲れて、小さく溜め息を吐いた。
翌朝。朝食と弁当を作り上げて居間に朝食を運ぶと、ハルーアが睨みつけてきた。
「リード。なんでドームがバーなんかで働かなきゃいけないのよ。私と過ごす時間が減るじゃない。あなたが働けばいいでしょ」
「家事も育児もできない役立たずが何言ってんの? 何もできないなら黙ってて」
「はぁ!? 親に向かってなんてこと言うのよ! 誰が生んであげたと思ってるの!」
「『生んであげた』ね……子どもを生んだ後の責任をなんにも果たしてない人に言われてもなんとも思わないよ。黙ってろよ。無責任ババア。言っとくけど、僕にこんなことを言わせてるのは母さん自身のせいだから」
「なっ、なんっ……」
「ハ、ハルーアちゃん。今だけ、今だけちょっと辛抱してくれな? いやほら。色々と物入りだしさ。昨日もちょっと話しただろ?」
「でも、ドーム……」
「色々落ち着いたら、また二人で旅行に行こう! それまで、ちょっと我慢してくれ! なっ! 頼むよ!」
「……分かったわ」
ハルーアが渋々感満載で頷いた。
どこかギスギスした空気の中、朝食を食べ、上の兄弟でバタバタと家のこととシェンリーの世話をしてから、デイビーとミアを連れて仕事に出かける。
ドームがどんな話をハルーアにしたのかは知らないが、少しはマシになるといい。ドームだって、本当にリードが娼館で働き始めたらかなり困る筈だ。
ドームは金遣いは荒いがそれなりに仕事ができて、順調に出世している。それが閑職に追いやられても不思議じゃない。職場での居心地もかなり悪くなるのは目に見えている。
これできっちり稼いでこなかったら本当に金玉を肉切り包丁で切り落とそう。肉切り包丁をしっかり研いでおかなければ。
やるといったからにはやる。今後のドーム次第では本当に金玉を切り落とす。
保育所に二人を預けると、リードは少しだけ上向きになった気分で職場へ急いだ。
帰宅して泣いているシェンリーを抱っこしてあやしつつ、足にくっついているミアを宥めていると、ドームが帰ってきた。
「リード。明日から勤務後にバーで働くことになった。晩飯はいらない。バーでまかないが出るらしい」
「そう。頑張って」
「あ、うん。その、なんだ。……ハルーアちゃんのことをあまり邪険にしないでくれよ。朝も皆冷たい目で見てたし……」
「は? 母さんがしてきたことの結果でしょ」
「うっ……それはそうかもしれないが……」
「ミアも、ミア以外も、赤ちゃん返りした時に母さんに泣きついたことある? それが答えだよ。僕達は誰も母さんのことなんか好きじゃない。それは母さんが産むだけで母親として何もしてこなかった結果だ。父さんのことも嫌いだ。無責任クソ野郎。少しでも家族として思って欲しいのなら稼いできてよ」
「…………」
ドームが傷ついたような顔で、とぼとぼと二階へ向かっていった。
ドームが傷つく意味が分からない。なんにもしてこなかったくせに、父親として慕われていると思っていたのだろうか。
リードは溜め息を吐いて、ふとデイビッドに会いたいなと思った。
これ以上、デイビッドに甘えるのはよくない。それは分かっているが、抱きしめて『大丈夫だ』と言ってもらいたい。
リードはまた小さく溜め息を吐いて、うんちをしたシェンリーのおむつを替え始めた。
夕食を終え、フローラと一緒にシェンリーを沐浴させ終えたタイミングで、ドームとハルーアが帰ってきた。
ドームが脳天気な顔で『ただいまー! 疲れたから寝るわー』とほざきやがったので、リードはフローラにシェンリーを任せ、台所にいるハルトに声をかけた。
「ハルト。皆を二階に」
「うん。僕もいなくていい?」
「大丈夫。ちびっ子達を任せていいかな」
「うん。分かった」
ハルトが下の子達を二階に連れて行ったので、リードは両親と向き合った。
「おっ。家出小僧も帰ってきてたのか」
「父さん。話がある」
「えー。疲れてるんだけど。僕。なー。ハルーアちゃん」
「えぇ。邪魔よ。リード。早く寝たいの」
「母さんは寝てていいよ。邪魔だから」
「はぁ!? 親に向かってなんてこと言うのよ!」
「うるさい。父さん。居間で話そう。逃さないから。ちゃんと話をしてくれないと肉切り包丁で金玉を切り落とす。僕は本気だ」
リードがにっこり笑うと、ドームが引き攣った顔をした。
ドームが話し合いに応じなければ、本気で金玉を切り落とすつもりで肉切り包丁をしっかり研いで切れ味をよくしてある。
デイビッドに去勢する魔術がないか聞いてみたのだが、性犯罪者にしかかけることが許されていない魔術で、デイビッドも『専門外だから無理だ』と言っていた。
魔術で去勢できないのならば物理的に肉切り包丁で切り落とすしかない。
リードはドームの金玉を切り落とすために毎晩毎晩肉切り包丁を研ぎまくっていた。
「あー。分かった。ハルーアちゃんは先に寝ててくれよ!」
「……分かったわ」
ハルーアがぶすくれた顔で家の奥へと向かっていった。
ドームと居間に移動すると、リードは一冊の本を差し出した。ここ二年の家計簿である。
「父さん、仕事で経理してるよね? これを見てうちの家計が如何に厳しいものか、当然理解できるよね?」
「えー。別に見なくても大丈夫だろ。リードとハルトの給料だってあるんだし」
「どんだけ脳みそお花畑なの? とやかく言わずに見ろ。じゃなかったら物理的に去勢する。ちゃんと肉切り包丁は研いであるから」
「お、おっかないこと言うなよ……えー、どれどれ……」
暢気な顔でペラペラと家計簿を眺め始めたドームが、次第に顔を強張らせていった。
最後まで見たドームが難しい顔をして口を開いた。
「……もうすぐハルトの結婚式があるよな」
「そうだね。全員分の礼服が必要になるし、祝い金も必要になる。それにもうすぐシェンリーが保育所に行くし、来年の春にはデイビーが初等学校に通い始めて更にお金がかかる。ハルトに援助なんてさせる気はない。で。それ見て本当にどうにかなると思うわけ?」
「…………無理だ」
初等学校は六歳から十二歳まで通う。中等学校は十三歳から十五歳までだ。デイビーが初等学校に通い始めると、当然色んなものが必要になってくる。
「そうだよね。どこかでお金を借りるか、父さんが副業するしかない。父さんの職場は副業禁止じゃなかったよね? 父さん達が家のことと小さい子の世話がまともにできるのなら僕が働くけど、無理でしょ。今までおばあちゃんと僕らに任せてなんにもしなかったんだから」
「…………」
「家のことなんにもできないなら働いて稼いできて」
「……いやだが、体力的に……」
「そんな甘ったれたこと言ってる場合じゃないのが分かんないの? 無計画かつ無責任に子どもをぽんぽんつくったのは自分だよね? 少しでもプライドがあるなら働いて」
「……分かった。知り合いのバーで働かせてもらう」
「そうして。ねぇ。父さん。前から聞きたかったんだけど」
「なんだよ」
「なんでこんなに子どもをつくったの。世話をして可愛がるわけでもないのに」
「……避妊せずにセックスするのが楽しくて……」
「最低。自分がやったことの責任くらいちゃんと取れよ。……母さんは僕に娼館で働けって言ったよ。稼ぎが悪いからって」
「は、はぁっ!?」
「僕の給料がそれなりにいい方なのは父さんなら分かるでしょ。なんであんな自分のことしか考えてない女と結婚したのさ。顔? 身体? どっちも歳をとったら衰えるだけなのに」
「その……ハルーアちゃんが言ったことは忘れてくれ」
「無理でしょ。僕がどれだけ傷ついたか分かる?」
「……ハルーアちゃんは世間知らずだから、娼館がどういうところなのか知らないんだ」
「そんなわけないよね。身体を売れって言ったのに」
「…………………」
「父さんって役所の経理課の副課長でしょ。そんな人の息子が家計が苦しいからって娼館で身体を売るってかなりの醜聞だよね。出世にも影響するのは間違いない。父さん。母さんを甘やかしてばかりいないで、少しは考えてものを言うように躾けたら? 家事も育児も今更二人に期待なんてしてない。せめて、僕達の邪魔にならないようにして。余計なこと言って傷つけないで」
「…………その、すまん」
ドームが渋い顔で謝ってきたが、謝られたところで嬉しくもなんともない。
流石に今の状況が本気でマズいと今更気づいたのだろう。明日、知り合いのバーで働けないか頼んでくると言っていた。
とりあえずドームの方は少しは現実を見て、ちゃんと働いてくれそうだ。
リードはほっとすると同時になんだか疲れて、小さく溜め息を吐いた。
翌朝。朝食と弁当を作り上げて居間に朝食を運ぶと、ハルーアが睨みつけてきた。
「リード。なんでドームがバーなんかで働かなきゃいけないのよ。私と過ごす時間が減るじゃない。あなたが働けばいいでしょ」
「家事も育児もできない役立たずが何言ってんの? 何もできないなら黙ってて」
「はぁ!? 親に向かってなんてこと言うのよ! 誰が生んであげたと思ってるの!」
「『生んであげた』ね……子どもを生んだ後の責任をなんにも果たしてない人に言われてもなんとも思わないよ。黙ってろよ。無責任ババア。言っとくけど、僕にこんなことを言わせてるのは母さん自身のせいだから」
「なっ、なんっ……」
「ハ、ハルーアちゃん。今だけ、今だけちょっと辛抱してくれな? いやほら。色々と物入りだしさ。昨日もちょっと話しただろ?」
「でも、ドーム……」
「色々落ち着いたら、また二人で旅行に行こう! それまで、ちょっと我慢してくれ! なっ! 頼むよ!」
「……分かったわ」
ハルーアが渋々感満載で頷いた。
どこかギスギスした空気の中、朝食を食べ、上の兄弟でバタバタと家のこととシェンリーの世話をしてから、デイビーとミアを連れて仕事に出かける。
ドームがどんな話をハルーアにしたのかは知らないが、少しはマシになるといい。ドームだって、本当にリードが娼館で働き始めたらかなり困る筈だ。
ドームは金遣いは荒いがそれなりに仕事ができて、順調に出世している。それが閑職に追いやられても不思議じゃない。職場での居心地もかなり悪くなるのは目に見えている。
これできっちり稼いでこなかったら本当に金玉を肉切り包丁で切り落とそう。肉切り包丁をしっかり研いでおかなければ。
やるといったからにはやる。今後のドーム次第では本当に金玉を切り落とす。
保育所に二人を預けると、リードは少しだけ上向きになった気分で職場へ急いだ。
帰宅して泣いているシェンリーを抱っこしてあやしつつ、足にくっついているミアを宥めていると、ドームが帰ってきた。
「リード。明日から勤務後にバーで働くことになった。晩飯はいらない。バーでまかないが出るらしい」
「そう。頑張って」
「あ、うん。その、なんだ。……ハルーアちゃんのことをあまり邪険にしないでくれよ。朝も皆冷たい目で見てたし……」
「は? 母さんがしてきたことの結果でしょ」
「うっ……それはそうかもしれないが……」
「ミアも、ミア以外も、赤ちゃん返りした時に母さんに泣きついたことある? それが答えだよ。僕達は誰も母さんのことなんか好きじゃない。それは母さんが産むだけで母親として何もしてこなかった結果だ。父さんのことも嫌いだ。無責任クソ野郎。少しでも家族として思って欲しいのなら稼いできてよ」
「…………」
ドームが傷ついたような顔で、とぼとぼと二階へ向かっていった。
ドームが傷つく意味が分からない。なんにもしてこなかったくせに、父親として慕われていると思っていたのだろうか。
リードは溜め息を吐いて、ふとデイビッドに会いたいなと思った。
これ以上、デイビッドに甘えるのはよくない。それは分かっているが、抱きしめて『大丈夫だ』と言ってもらいたい。
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