大家族のお兄ちゃんは恋なんかしてる暇はない!

丸井まー(旧:まー)

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31:フローラのお見合い

 フローラのお見合いの日がやってきた。
 祖父母や両親には、この件については内緒にしている。『久々のデートだ!』と出かけていく祖父母達を見送ると、双子達がシェンリーとちびっ子の相手をしてくれている間に、可愛らしいワンピースに着替えたフローラの髪をきれいに結い上げ、白いリボンを着けてやった。

 魔術協会へモブリットを迎えに行けば、デイビッドも既に来ており、和やかに喋っていた。


「おはよう。二人とも待たせてごめんね」

「おはようございます。リード先輩。ちょっと早めに来ちゃっただけです」

「おはよ。今日は楽しもうな!」

「うん。モブリット君。今日はよろしくね」

「あ、はい。あのー、この格好で変じゃないですか? お洒落とは縁がなくて……」

「大丈夫だよ。清潔感があるし。僕もお洒落とは無縁だしね」

「俺も無縁だな。リードの言う通り、清潔感があっていいと思う」

「あ、よかったです。南瓜のパイ以外にも、胡桃のクッキーとイチヂクのタルトを作ってきたんです。ちょっと張り切りすぎちゃって」

「わぁ! すっごい喜ぶよ! ありがとう!」

「すごいな。お菓子作りが好きなんだな」

「はいー。子どもの頃から作るのも食べるのも好きで。まぁ、そのせいでこの体型なんですけどねぇ」

「ふにふに柔らかそうでいいと思うよ」

「腹とかむにむにしてみたくなるよな」

「あははー。お二人はデブって馬鹿にしないでくれるんですね」

「ん? モブリット君に馬鹿にする要素ある?」

「人の体型を馬鹿にするのは馬鹿がやることだろ」


 リードがきょとんとしながら言うと、モブリットが何故か嬉しそうに笑った。
 モブリットは全体的に丸っこい。顔立ちも丸っこくて、優しくて穏やかな雰囲気をしている。
 早速自宅へと一緒に向かい、玄関のドアを開けたら、バタバタッとフローラとちびっ子達が走ってきた。


「おかえりなさい! そして、いらっしゃい! フローラです!」

「デイビーです!」

「ミアー!」

「……うん。三人とも居間で大人しくしててくれた方がよかったかな?」

「だって、そわそわしちゃって落ち着かなかったんだもん」

「んんっ。モブリット君。妹のフローラです。今年の冬で十四歳になります。フローラ。この人がモブリット君。僕の後輩」

「はじめまして。モブリット・ヒューストンです。僕も冬生まれなんです。今年で二十歳になります」

「フローラです! えっと、今日はよろしくお願いします!」

「あ、はい。こちらこそ。南瓜のパイは好きですか? 他にも胡桃のクッキーとイチヂクのタルトがあって……」

「わぁ! 食べたことないです! モブリットさんが作ったんですか?」

「あ、はい。作るのも食べるのも大好きなんです」

「立ち話もなんだから、居間へどうぞ。散らかってるけどね。紅茶を淹れるよ」

「ありがとうございます」

「リード。手伝う。あ、珈琲を持ってきたんだが、どうする?」

「僕は珈琲の方がいいな。モブリット君は?」

「あ、じゃあ、珈琲をいただいてもいいですか? 紅茶も好きだけど、珈琲も好きなんです」

「私も珈琲飲んでみたいわ。飲んだことないもの」

「双子も試してみたがると思うから、上の子達は皆珈琲で。下の子達には紅茶を淹れるよ」

「じゃあ、台所へ行くか」

「うん。フローラ。モブリット君を居間に案内しといて。ついでに双子達の自己紹介とかもよろしくね」

「はぁい。モブリットさん、こちらにどうぞ」

「ありがとうございます」


 デイビッドと二人で台所へ行き、お湯を沸かして、それぞれ紅茶と珈琲を淹れた。
 パイやタルト用の皿などものせたお盆を持って居間に行けば、モブリットが質問攻めに合っていた。
 モブリットはおっとり笑って答えてくれている。フローラ的にはモブリットはありっぽい。モブリットはどうかは分からないが、そう悪い感じではないと思いたい。

 珈琲と紅茶を配り、モブリットが作ってくれたお菓子も分けて、ものすごく豪華なお茶の時間の始まりである。
 デイビッドが淹れた珈琲を飲んで、初めて珈琲を飲む双子とフローラがキラキラと目を輝かせた。


「苦いけど美味しい!」

「なんか口の中がサッパリする? 僕は好きー」

「私も好きだわ! 甘いものとすっごく合いそう! えっと、モブリットさん。いただいてもいいですか?」

「どうぞ。お口に合うといいです」

「……お兄ちゃん! すっごい! 南瓜のパイ、すっごい美味しい! すっごい美味しい!」

「あ、ほんとだ。すっごい美味しい! 柔らかい甘さが珈琲にも合うー」

「胡桃のクッキー、うんまー!」

「イチヂクのタルトもうんまー!」

「モブリット。この南瓜のパイの作り方教えてくれないか?」

「おいしーい!」

「おいしーー!」

「あはっ。喜んでもらえてすごく嬉しいです。デイビッドさん、すごく簡単なので後で紙か何かにレシピを書きますね」

「よろしく! 南瓜は栄養満点だからリードにいっぱい食わせたい」

「あのー、フローラさん。僕はこの通りおデブちんなのですが、どう思います?」

「え? ぷにぷにしてそう? 抱き枕にしたら温かそうで最高っぽい感じ?」

「僕がデブで嫌じゃないですか?」

「全く気にならないです。むしろほっぺたとかお腹をむにむにしてみたいです。モブリットさんはどうなんです? 私」

「えっと、すごく可愛らしくて、僕なんかじゃ釣り合わないかなぁと……」

「釣り合うとかそういうの抜きで、正直な感想をお願いします」

「……僕が作ったものを美味しそうに食べてくれるのが嬉しいし、笑顔がとても魅力的だと思います」

「モブリットさんって小さな子どもの世話ってできます?」

「できますよ。赤ちゃんのお世話も一応できます。四人兄弟で、一番下の子はまだ八歳なので。僕は次男なんです」

「モブリットさんさえよければ、結婚を前提にお付き合いしてもらえませんか? 初恋もまだなので、恋人ってどういうものかよく分かんないんですけど」

「えっと……本当に僕なんかでいいんですか?」

「モブリットさんがいいです! こんなに美味しいものを作れるなんて本当に素敵ですもの! あ、ちょっとお願いがあるんですけど」

「ん? なんでしょう?」

「お腹をつんつんむにむにさせてください」

「あはは。いいですよ」

「やったー! じゃあ、早速……わあ! ぽよんぽよん! お兄ちゃん! すっごいぽよんぽよん! 楽しいわ! ほんとに抱き枕にしたい! お手手も貸してください。わぁ! ぷにぷに温かい!」

「楽しいです?」

「すっごく! ほっぺたむにむにしてもいいですか?」

「あはは。どうぞ」

「ほぁー。柔らかーい。癖になるむにむに感。モブリットさん。是非とも結婚前提でお付き合いしたいです! このぽよんぽよんな魅力的なお身体を誰かに盗られたくないですし。私が成人するまでお付き合いしながら、のんびりお互いのことを知っていきたいです」

「えっと、それじゃあ、よろしくお願いしますね。……こんなに可愛らしい女の子と釣り合わないと思うんですけど……」

「そこは気にしない! 私はモブリットさんに興味津々だし、私のことも知ってもらいたいです。成人まで二年ありますから、のーんびりなペースでお付き合いしたいです」

「えっと、じゃあ、今度は僕の家で一緒にお菓子を作りませんか? んー。葡萄をのせたチーズケーキなんてどうでしょう」

「わぁ! お洒落! 美味しそう! 是非とも! あ、家族の分も作っていいですか? 下の子達にも食べさせたいので」

「勿論! 一緒に作りましょうか」

「はい!」


 トントン拍子な感じで、フローラに恋人ができた。
 うまくいって何よりである。リードは嬉しくて小さく笑い、美味しい昼食を作るべく、デイビッドと一緒に台所へ移動した。
 デイビッドにスープを頼み、刻んで炒めた玉ねぎなどを入れた挽肉を捏ねながら、デイビッドと話す。


「うまくいきそうな感じだな」

「ねー。よかったよ。一安心かな」

「モブリットと一緒に料理をしても楽しそうだが、それはフローラちゃんと結婚した後の楽しみにしとくかな。今はリードと新婚さん気分を味わいたいし」

「新婚さん気分になるの? ご飯作るだけで?」

「こういう何気ない日常を共にするのがよいのだよ」

「そんなものか。……まぁ、僕もデイビッドが一緒の方が楽しいけど」

「今すぐちゅーしたい。が! 耐える!」

「なんで?」

「いやほら。下の子達にうっかり見られたらちょっと照れくさいというかなんというか」

「ふぅん?」


 リードはふと悪戯を思いついた。
 肉まみれの手がデイビッドに当たらないように、少し背伸びをしてデイビッドの頬にキスをした。
 デイビッドの顔がぶわっと赤くなった。子どものように唇を尖らせたデイビッドが口を開いた。


「悪戯っ子か」

「嫌だった?」

「めちゃくちゃ嬉しいが?」

「ははっ!」


 リードが尖らせた唇にもキスをすると、デイビッドがリードの頬にキスをした。


「イチャイチャしたいけど、それはまた今度で」

「うん。僕の手、今は肉まみれだしね」


 リードはデイビッドと顔を見合わせて、なんとなくへらっと笑った。
 二人で作った昼食はモブリットにも好評だった。
 家デートの約束をしている若い二人を見守りつつ、リードはなんとなく隣に立つデイビッドにくっついた。

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