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32:温かい一日
リードはデイビッドに手を引かれてデイビッドの家に向かっていた。
今日は強制休暇の日である。事務の繁忙期以外は、本気で毎月必ず一日は休ませるつもり満々らしい。
デイビッドの大きなゴツい手が温かくて、なんだか落ち着く。
ご機嫌な様子のデイビッドが歩きながら口を開いた。
「昨日、ばあちゃんと一緒にモブリットから教えてもらった南瓜のパイを作ったんだ。ちゃんと上手くできてたから、今日のおやつな!」
「ありがとう。すごく楽しみ」
「その前に寝かす! 家に着いたら温かいミルクを飲んで寝ろー」
「人間湯たんぽ欲しい」
「喜んで!! ふふん。リードさんや。もっと我儘を言いまくるがいいわ!」
「もう厚かましいにも程があるくらい言ってると思うんだけど」
「もっと! もーっと! 我儘を言えるようになれ。自分を大切にするための第一歩だぞ」
「んー。じゃあ、抱きしめて。できるようならまたセックスがしたい」
「いいとも! セックスは……防音結界を張ればなんとかなるな。一応練習しといて正解だった! 教えてくれた先輩に感謝!」
「君って本当にすごいなぁ」
「リードが魔術師になってたら、俺よりもすごい魔術師になってたと思うぞ。真面目だし、コツコツ頑張れるし、日々の生活に役立つ魔術とか開発してそう」
「そうかな? ……未だに魔術師に憧れはあるんだけど、事務の方もなんだかんだで楽しいというか、やり甲斐はあるんだよねぇ。繁忙期はめちゃくちゃ忙しいけど、魔術協会を裏から支えてるって感じがして、なんというか、夢を追いかけ続けている人達の手助けができるのがすごく嬉しい」
「まぁ、実際、リード達事務の人がいなかったら組織として成り立たないしな。地味に思われがちだけど、かなり重要だよな。事務って」
「そう思ってくれると嬉しいかなぁ。事務って軽く見られがちだから。馬鹿にされることもあるしね」
「縁の下の力持ちを馬鹿にする奴の方が馬鹿なのになー」
話していると、デイビッドの家に着いた。
玄関のドアから中に入ると、奥の方からパタパタとマリアンナがやって来て、リードの顔を見て安心したように笑った。
「おはよう。リード君の顔色、だいぶよくなってきたわね」
「おはようございます。マリアンナさん。またお邪魔します」
「ふふっ。昨日ね、デイビッドと一緒に南瓜のパイを作ったの。午後のお茶の時間に一緒に食べましょうね。お昼ご飯は今が旬のお魚を揚げて野菜と一緒に甘酢に漬けたものよ。それと美味しいベーコンたっぷりの野菜スープ。期待していてね」
「いつもありがとうございます! お昼ご飯が本当に楽しみです」
「んじゃ、着替えて寝るかー。俺も昨日は寝てないし」
「そういえば、デイビッドって帰らない時はどうしてるの? ご飯の関係で連絡しないとマリアンナさんが困るよね?」
「ん? あぁ。これ使ってる」
「ピアス?」
「連絡用の魔導具なんだよ。長時間は無理だけど、まぁ小半時くらいなら通話ができるんだ。夕食の支度を始める前までには、これで連絡するようにしてる」
「へぇー。便利だなぁ」
「リードもいるか?」
「え? なんで? 毎日中庭で会ってるじゃない」
「あ、それもそうか。んー。リードにも持っててもらいたいなぁって思ったら贈るわ」
「あ、うん」
「さぁ。二人とも。お喋りはそこまでよ。温かいミルクを飲んで、まずは寝ること!」
「はぁい」
「はい。ありがとうございます。マリアンナさん」
居間に向かえば、すぐにマリアンナが温かい蜂蜜入りのミルクを手渡してくれた。
お礼を言って一口飲むと、優しい甘さが疲れた身体に染み渡る。
シェンリーが少しずつまとまって寝てくれるようになり、リード達もそれなりに眠れるようになってきたが、それでも疲労は溜まる。
デイビッドの家はなんだかほっとする空間で、途端に眠くなってくる。
温かいミルクを飲み干すと、デイビッドに手を引かれて部屋に移動した。
秋物の楽な服を借りて、一緒にベッドに寝転がる。布団の中でデイビッドに抱きしめられたらなんだかすごく安心して、リードはすやぁっと寝落ちた。
優しく起こされて、とても美味しい昼食をご馳走になった。
しっかり満腹になると、また眠くなる。リードが小さく欠伸をすると、マリアンナがニコニコと嬉しそうに笑った。
「ちゃんと眠れるのなら安心だわ。疲れすぎるとね、逆に眠れなくなる時もあるから。睡眠は本当に大切なのよ? 心と身体の健康のためには、美味しいご飯としっかりした睡眠が大事なの」
「はい。シェンリーが一歳になる頃には、夜はちゃんと寝れるようになると思うので、それまでは厚かましいんですけどお世話になります」
「うちはいつでも大歓迎よ! いつもはデイビッドと二人だもの。一緒にお料理するのも楽しいわ」
「マリアンナさんに弟子入りしたいくらいです。どんな料理も本当に美味しいから」
「あら! 嬉しいこと! あっ! いけない。忘れるところだったわ! リード君。ちょっと採寸させてもらえないかしら?」
「採寸?」
「編み物が趣味なのよ。リード君に似合いそうな毛糸玉を見つけてたから、セーターを作りたくって」
「えっ! あの、いいんですか? その、僕は嬉しいんですけど、厚かましすぎないですか!?」
「大丈夫よ。私の趣味だもの。どうせ作るなら着て欲しいじゃない? 今は自分用かデイビッド用のものしか作れないから、リード君のものも作らせてくれたらすごく嬉しいわ」
「あ、あ、その! 厚かましいとは思うんですけど、よろしくお願いします! ……手作りのセーターって貰ったことがないから、本当にすごく嬉しいです」
「ふふっ。気合を入れてお洒落なのを作るわね」
「あの、編み物って難しいですか?」
「いえ? 編み方にもよるけど、簡単なものもあるわ。初心者なら単純な編み方でマフラーから始めるのがオススメかしら」
「双子がもうすぐ就職試験なんです。願掛けというと大袈裟だけど、少しでも応援してやりたくて……小さな布のお守りは作ったけれど、できたらもうちょっと何か作りたくて……もしよかったら、マフラーの作り方を教えてもらえませんか?」
「まぁまぁ! 勿論いいわよ! そういうことなら、気合を入れなきゃね! リード君。今日の体調はどう?」
「午前中にしっかり寝たから身体がいつもより軽いです」
「んー。それじゃあ、ちょっとだけ三人で出かけましょう。毛糸玉と棒針を買いに行って、基本中の基本を教えるわ」
「ばあちゃん。俺もやりたい。ばあちゃんとリードにマフラー作る。最終的な目標は膝掛けだけどな!」
「あら。いいわよ。デイビッド。さぁ、そうと決まれば、まずはサクッと採寸してから出かけるわよー!」
楽しそうに笑うマリアンナに、こっちまで楽しくなってくる。
採寸をされたら、デイビッドの家を出て、比較的近所にあるマリアンナ行きつけの手芸店へ向かった。
リードは悩みに悩んだ結果、マーカーには赤色の毛糸玉を、ダービーには青色の毛糸玉を選んだ。二人の好きな色だから、きっと気に入ってくれると思う。ちゃんとしたマフラーになればの話だが。
デイビッドは唸りながら悩んでいたが、白い毛糸玉を選んでいた。
「デイビッド。汚したらかなり凹むから白はちょっと……」
「あ、それがあるか。んーー。じゃあ、黒? いや、それだと地味すぎるな。いっそ黄色はどうだ!? リード。黄色は好き?」
「普通」
「よし! 嫌いじゃないならいい! じゃあ、今回は黄色にする」
「さっ! 毛糸玉を選んだし、棒針も選んだわね! お会計したら、帰って早速編み物教室よ!」
「よろしくー。先生」
「よろしくお願いします。先生」
「あら! 『先生』だなんて、ちょっと照れちゃうわ!」
嬉しそうに笑うマリアンナと一緒にカウンターへ行き、会計をした。
かなり手頃な値段で助かった。毛糸玉もぴんきりらしいが、あの店はかなり良心的な値段設定をしているらしい。
上手くできるようになったら、他の子達にも作りたいな……と思いながら、帰宅すると、リードは真剣にマリアンナから基本の編み方を習い始めた。
今日は強制休暇の日である。事務の繁忙期以外は、本気で毎月必ず一日は休ませるつもり満々らしい。
デイビッドの大きなゴツい手が温かくて、なんだか落ち着く。
ご機嫌な様子のデイビッドが歩きながら口を開いた。
「昨日、ばあちゃんと一緒にモブリットから教えてもらった南瓜のパイを作ったんだ。ちゃんと上手くできてたから、今日のおやつな!」
「ありがとう。すごく楽しみ」
「その前に寝かす! 家に着いたら温かいミルクを飲んで寝ろー」
「人間湯たんぽ欲しい」
「喜んで!! ふふん。リードさんや。もっと我儘を言いまくるがいいわ!」
「もう厚かましいにも程があるくらい言ってると思うんだけど」
「もっと! もーっと! 我儘を言えるようになれ。自分を大切にするための第一歩だぞ」
「んー。じゃあ、抱きしめて。できるようならまたセックスがしたい」
「いいとも! セックスは……防音結界を張ればなんとかなるな。一応練習しといて正解だった! 教えてくれた先輩に感謝!」
「君って本当にすごいなぁ」
「リードが魔術師になってたら、俺よりもすごい魔術師になってたと思うぞ。真面目だし、コツコツ頑張れるし、日々の生活に役立つ魔術とか開発してそう」
「そうかな? ……未だに魔術師に憧れはあるんだけど、事務の方もなんだかんだで楽しいというか、やり甲斐はあるんだよねぇ。繁忙期はめちゃくちゃ忙しいけど、魔術協会を裏から支えてるって感じがして、なんというか、夢を追いかけ続けている人達の手助けができるのがすごく嬉しい」
「まぁ、実際、リード達事務の人がいなかったら組織として成り立たないしな。地味に思われがちだけど、かなり重要だよな。事務って」
「そう思ってくれると嬉しいかなぁ。事務って軽く見られがちだから。馬鹿にされることもあるしね」
「縁の下の力持ちを馬鹿にする奴の方が馬鹿なのになー」
話していると、デイビッドの家に着いた。
玄関のドアから中に入ると、奥の方からパタパタとマリアンナがやって来て、リードの顔を見て安心したように笑った。
「おはよう。リード君の顔色、だいぶよくなってきたわね」
「おはようございます。マリアンナさん。またお邪魔します」
「ふふっ。昨日ね、デイビッドと一緒に南瓜のパイを作ったの。午後のお茶の時間に一緒に食べましょうね。お昼ご飯は今が旬のお魚を揚げて野菜と一緒に甘酢に漬けたものよ。それと美味しいベーコンたっぷりの野菜スープ。期待していてね」
「いつもありがとうございます! お昼ご飯が本当に楽しみです」
「んじゃ、着替えて寝るかー。俺も昨日は寝てないし」
「そういえば、デイビッドって帰らない時はどうしてるの? ご飯の関係で連絡しないとマリアンナさんが困るよね?」
「ん? あぁ。これ使ってる」
「ピアス?」
「連絡用の魔導具なんだよ。長時間は無理だけど、まぁ小半時くらいなら通話ができるんだ。夕食の支度を始める前までには、これで連絡するようにしてる」
「へぇー。便利だなぁ」
「リードもいるか?」
「え? なんで? 毎日中庭で会ってるじゃない」
「あ、それもそうか。んー。リードにも持っててもらいたいなぁって思ったら贈るわ」
「あ、うん」
「さぁ。二人とも。お喋りはそこまでよ。温かいミルクを飲んで、まずは寝ること!」
「はぁい」
「はい。ありがとうございます。マリアンナさん」
居間に向かえば、すぐにマリアンナが温かい蜂蜜入りのミルクを手渡してくれた。
お礼を言って一口飲むと、優しい甘さが疲れた身体に染み渡る。
シェンリーが少しずつまとまって寝てくれるようになり、リード達もそれなりに眠れるようになってきたが、それでも疲労は溜まる。
デイビッドの家はなんだかほっとする空間で、途端に眠くなってくる。
温かいミルクを飲み干すと、デイビッドに手を引かれて部屋に移動した。
秋物の楽な服を借りて、一緒にベッドに寝転がる。布団の中でデイビッドに抱きしめられたらなんだかすごく安心して、リードはすやぁっと寝落ちた。
優しく起こされて、とても美味しい昼食をご馳走になった。
しっかり満腹になると、また眠くなる。リードが小さく欠伸をすると、マリアンナがニコニコと嬉しそうに笑った。
「ちゃんと眠れるのなら安心だわ。疲れすぎるとね、逆に眠れなくなる時もあるから。睡眠は本当に大切なのよ? 心と身体の健康のためには、美味しいご飯としっかりした睡眠が大事なの」
「はい。シェンリーが一歳になる頃には、夜はちゃんと寝れるようになると思うので、それまでは厚かましいんですけどお世話になります」
「うちはいつでも大歓迎よ! いつもはデイビッドと二人だもの。一緒にお料理するのも楽しいわ」
「マリアンナさんに弟子入りしたいくらいです。どんな料理も本当に美味しいから」
「あら! 嬉しいこと! あっ! いけない。忘れるところだったわ! リード君。ちょっと採寸させてもらえないかしら?」
「採寸?」
「編み物が趣味なのよ。リード君に似合いそうな毛糸玉を見つけてたから、セーターを作りたくって」
「えっ! あの、いいんですか? その、僕は嬉しいんですけど、厚かましすぎないですか!?」
「大丈夫よ。私の趣味だもの。どうせ作るなら着て欲しいじゃない? 今は自分用かデイビッド用のものしか作れないから、リード君のものも作らせてくれたらすごく嬉しいわ」
「あ、あ、その! 厚かましいとは思うんですけど、よろしくお願いします! ……手作りのセーターって貰ったことがないから、本当にすごく嬉しいです」
「ふふっ。気合を入れてお洒落なのを作るわね」
「あの、編み物って難しいですか?」
「いえ? 編み方にもよるけど、簡単なものもあるわ。初心者なら単純な編み方でマフラーから始めるのがオススメかしら」
「双子がもうすぐ就職試験なんです。願掛けというと大袈裟だけど、少しでも応援してやりたくて……小さな布のお守りは作ったけれど、できたらもうちょっと何か作りたくて……もしよかったら、マフラーの作り方を教えてもらえませんか?」
「まぁまぁ! 勿論いいわよ! そういうことなら、気合を入れなきゃね! リード君。今日の体調はどう?」
「午前中にしっかり寝たから身体がいつもより軽いです」
「んー。それじゃあ、ちょっとだけ三人で出かけましょう。毛糸玉と棒針を買いに行って、基本中の基本を教えるわ」
「ばあちゃん。俺もやりたい。ばあちゃんとリードにマフラー作る。最終的な目標は膝掛けだけどな!」
「あら。いいわよ。デイビッド。さぁ、そうと決まれば、まずはサクッと採寸してから出かけるわよー!」
楽しそうに笑うマリアンナに、こっちまで楽しくなってくる。
採寸をされたら、デイビッドの家を出て、比較的近所にあるマリアンナ行きつけの手芸店へ向かった。
リードは悩みに悩んだ結果、マーカーには赤色の毛糸玉を、ダービーには青色の毛糸玉を選んだ。二人の好きな色だから、きっと気に入ってくれると思う。ちゃんとしたマフラーになればの話だが。
デイビッドは唸りながら悩んでいたが、白い毛糸玉を選んでいた。
「デイビッド。汚したらかなり凹むから白はちょっと……」
「あ、それがあるか。んーー。じゃあ、黒? いや、それだと地味すぎるな。いっそ黄色はどうだ!? リード。黄色は好き?」
「普通」
「よし! 嫌いじゃないならいい! じゃあ、今回は黄色にする」
「さっ! 毛糸玉を選んだし、棒針も選んだわね! お会計したら、帰って早速編み物教室よ!」
「よろしくー。先生」
「よろしくお願いします。先生」
「あら! 『先生』だなんて、ちょっと照れちゃうわ!」
嬉しそうに笑うマリアンナと一緒にカウンターへ行き、会計をした。
かなり手頃な値段で助かった。毛糸玉もぴんきりらしいが、あの店はかなり良心的な値段設定をしているらしい。
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